第34話
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その日も午後五時を回る頃には仕事を終え、作っていたデータを保存して、パソコンを閉じた。そして夕食を作り、取る。疲れていたのだし、入浴して汗を流せば、後はゆっくりした。アルコールは控えていて、ビールなどは飲まない。不健康だからだ。酒の力を借りて嫌なことを忘れるほど、バカな行為はない。
読みかけの本を開き、読み進めた。やはり夏の夜は読書が一番だ。ネット書店でまとめて注文するのだし、本代は惜しまない。俺だって書く力こそないのだが、文学や文芸などは好きだった。
寝苦しい夜、ベッドに潜り込み、眠ってから一夜が明ける。午前七時に起き出し、寝床を出て、洗面所へ向かった。水道の蛇口を捻り、冷たい水で顔を洗う。そして歯を磨いた。キッチンでコーヒーを一杯淹れ、ヨーグルトで朝食を取って支度をしてから、一日を始める。パソコンを立ち上げて、キーを叩き出す。何かときついのだが、仕事をしないわけにはいかない。まあ、俺のやれることなど、所詮マシーンでの作業ぐらいだ。やるしかなかった。
午前中、淡々とキーを叩き、データを作っていく。変わらない感じだ。俺の日常は。日中は暇がない。別に他人から影響されることはないのだ。俺の周りに人間はいないのだし……。作業する。ずっと。
昼になり、自炊して昼食を食べた後、休憩してまた仕事する。楽なことはない。俺も散々苦労している。何せ腱鞘炎が続くからだ。その人間の苦しみなど、当人しか分からない。他人には何でもないように振る舞っていても、心の奥底で傷付いていることはある。そういったことを察しきれない輩は、どんなに社会的に偉かろうが、単なるバカだ。その手の人間を一切信用しない主義なのである。あくまで俺の意見だ。別に他人に言うこともない。
時間が過ぎていく。作業効率も落ちてきた。だが、午後五時まではやる。意志堅く。(以下次号)