第32話
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その日も仕事を終えてから、夕食を取って入浴し、ゆっくりし始める。疲れていたのだが、風呂場で冷たいシャワーを浴びると、気持ちいい。入浴後、ミネラルウオーターで水分補給して、本を読みながら寛ぐ。午後十一時を過ぎると眠くなり、ベッドに潜り込んだ。夏の夜は蒸し暑いのだし、一際寝苦しい。だが、朝まで何とか眠れた。
翌朝、午前七時に起きてから、洗面所へ行く。水道の蛇口を捻って水を出した。無色透明の水が出たので、手に掬い取って顔を洗う。そして歯を磨いた。コーヒーを一杯淹れ、朝食にヨーグルトを食べて、起き抜けの空腹を満たしてから、パソコンを立ち上げる。
ニュースやいろんなサイトなどを見ながら過ごす。平日、仕事の合間にネットしていても、なかなかトレンドが掴めない。俺自身、そういった年齢に来ているのだった、別に気にすることもない。極自然なことだ。人間の脳は加齢と共に委縮していくのだし……。
午前中はネットしたり、読みかけていた本を読んだりしていた。いろいろと考えることもある。日々家にいて、対人接触が少ないから、自ずと思索が深まってしまう。普段パソコンに向かい、業務をこなしながらも、考え事が多い。データ入力は単調な仕事だ。それに何かと疲弊する。そんな在宅の仕事を長年やってきた。外で働くことが苦手で……。
今日日曜は一日ゆっくりする。本来ならスマホでネットをしてもいいのだが、俺の場合、どうしてもパソコンになってしまう。ウエブの世界はいろんな情報が交錯していて、不気味さも幾分あった。だが、新聞を取らない以上、情報を得るにはどうしてもネットしかない。
街は絶えず動いている。マンションの前も人や車が通っていて、落ち着かないこともあった。だが、せっかくの休日だ。ゆっくりするつもりでいた。瑞子も来ないだろうし、俺の意識の中で彼女の存在も薄れ、遠くなっていたのである。大学時代の同級生など、所詮そんなものだ。気にすることもないだろう。同窓会なども一度として呼ばれたことがなく、皆散り散りバラバラなのだし……。(以下次号)