第3話
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パソコンを閉じた後、冷たいシャワーを浴びて汗を洗い流してから、ゆっくりする。日々疲れていて、合間の時間にネット通販で買い込んでいた文庫本を読むこともあるのだが、基本的に午後十一時には眠る。自由なんだけど、時間がそう多くある方じゃない。むしろ時間の管理方法を考えていた。
ベッドに潜り込み、就寝する。夢を見ることもあるのだし、いい睡眠は取れてない。だが、目を瞑っていれば、辛うじて脳だけは休まる。とにかく夜間起きておくことはない。
その夜も蒸し暑かった。絶えず熱が滞留する。エアコンで冷やし、何とか凌いだ。街は眠らない。動き続けている。人間の活動は止まることがない。まあ、ここは大都会じゃないのだが、絶えず車がマンション前を行き来していた。
午前七時前に目が覚め、起き出してから、洗面所へと行く。蛇口を捻ると、水が出た。普通の水だ。赤黒いものは排水溝に絡んでない。やはり気のせいか?疲れていて、幻覚の類を見たとか?考えることは止めて、洗面を済ませ、髪を整える。身だしなみだ。立派な社会人なのだから、当たり前のことである。
食欲がなかったので、コーヒーとヨーグルトで何とか栄養を取った。夏場は食欲が落ちやすい。三十代後半だから、体調管理も万全にしておかないといけない。
パソコンを立ち上げて、午前八時半には仕事を始める。データ入力など、いろいろやることがあった。今の仕事が一番馴染んでいる。大学卒業後、きつい仕事をたくさんしてきた。日雇いなど、金はたくさんもらえてもヘトヘトに疲れきってしまう。やはり対人関係は苦手だ。人の輪に入ることが出来ない。性分なのだが……。
実家に帰ることはない。また、あの飲んだくれのオヤジと顔を合わすことになるからだ。仕事一つしないで、朝から一升びん入りの焼酎をラッパ飲みする醜い人間である。反吐が出た。アイツのせいで母親は殺されたのだ。ろくでもない。あんなヤツが一番嫌いだ。まあ、親子の縁とやらも完全に切れてしまい、ろくに相手にもしないのだが……。
その日、昼食を挟み、午後からも作業を続けた。相変わらず、だるさが続くのだが……。(以下次号)