第29話
29
データを作りながらも、いろいろ考える。基本的に作業に集中していた。時間になればパソコンを閉じて、ゆっくりし始める。夕食を取り、風呂場でシャワーを浴びて汗を流した後、寛ぐ。慣れてしまった。一日の生活スタイルに。
独りの部屋にいても、外の雑音など、何か気になることがある。日雇いのきついバイトをした経験はあっても、正社員として働いたことがないから、他人と共にいろいろやるのは苦手だ。別に人間は不向きなことを無理にやる必要はない。自分に合ったことをすればいいと思っていたのだし、現に今、そうしている。厄介な人間関係などに巻き込まれなくて……。
一日が終わり、ベッドに入っても、夜は一際寝苦しい。眠れない時は夜食を作る。野菜スープ類はすぐに出来て、啜れるのだし、飲むと眠気が差してくる。工夫していた。食べるものに。
午後十一時過ぎには寝つき、翌朝も午前七時に起き出して、洗面所で洗顔した。もうあの赤黒い水は出てこなかったし、これ以上、恐怖を味わうこともないだろう。確かに夢に出てくることはある。夏の夜は何かと怖い夢を見やすい。思う。神経が過敏になっているのだと。掛かり付けの内科の病院で軽めの安定剤などを処方してもらったことがあり、まだ飲んでない分が残っている。今は新薬などいい薬が出来ているから、いろいろあった時も助かるのだ。
朝食後、通常通りパソコンを立ち上げてキーを叩き、データを作っていく。疲れはあった。だが、そう言ってもいられないぐらい、仕事はあるのだ。昼食を挟み、キーを叩き続けた。いつも時間を有効に使う方法を考える。パソコンの脇にある固定電話は主に仕事に使っていて、メールのやり取りで分からないことは電話で依頼人に聞く。
午後一時を過ぎても、今度は午後からの仕事が待っている。引き続き、パソコンのキーを叩く。何かと暇がない。まあ、在宅ワークをこなす人間も日常ではいろいろあるのだけれど……。(以下次号)