第50話:ファミリアセカンドシーズン!(前編)
セカンドシーズンです、第二部です。
コメディの癖を忘れているのもありましたが、いろいろあって登校遅れました。
これからはもう一つのラブコメも書いていこうと思っているので更新速度落ちそうです、スイマセン。
100m四方にもなろうかという広々とした空間、床も壁も天井まで全て木製で、良く手入れが行き届いている。入り口には扉ではなくのれんがかかっていて、入り口とは別の方の壁に『一意専心』と達筆で書かれた掛け軸もある。
そこは道場だった。
「こん――のっ!」
中央では一組の男女が、組み手というにはあまりに激しすぎる組み手を繰り広げていた。
「まだまだ……!」
女性――馬子坂 魅伊香が踏み込んで、男性――田中 太郎の胸元へと拳を放つ。
対する太郎はその拳を片手でいなし、懐へと踏み込んだ。もう一歩、と思わせるフェイントからの足払い。
魅伊香は軽く飛び避けながら、いなされた方とは逆の手で牽制代わりの肘打ちで顔を狙う。
身を低くする事でかわす太郎。そのまま払いに行った足を軸として踏み込み、腕を取る。
そしてぐるりと器用に回り、魅伊香を道場の冷たい床へと叩きつけた。
「勝負あり、ですね。魅伊香はまだまだ動きが雑すぎます」
「あーもうチクショウ! ありがとうござっした!」
倒れながら、一応は礼儀を述べる魅伊香。流派は違うが太郎は師範代であり、魅伊香より何倍も強い。
「では、学校の準備をしましょう。朝はこちらで食べますか?」
乱れた胴衣を軽く直しながら、太郎が尋ねる。
「おう、そうする。ていうかどうせ私の分も作ってんだろ? 姉貴にゃそんぐらい分かってるだろうし」
ダン、と足の力だけで立ち上がりながら、魅伊香は言った。近くに置いてあったタオルで汗を拭き、そのまま道場の外へ向かう。
太郎と魅伊香は義兄妹の関係である。魅伊香の姉が、田中家に嫁入りしているのだ。二人は家がお互い近くで――二人とも、黒椿峰町の山のふもとにある道場の子供である――そういった関係柄ゆえ、たまにこうして手合わせすることもある。
「しかし魅伊香、こんな朝から付き合えなどとは、いつもとは様子が違いますね。何か心配事でも?」
軽く微笑みながら、太郎が問うた。魅伊香は背を向けながら、ポツリと口を開く。
「……お前の話、超能力とか、そういうの……本当なんだよな?」
背を向けている魅伊香には見えないにもかかわらず、太郎は曖昧に笑みを浮かべた。
「えぇ、本当です。隠していた事は謝りますが、かといって聞きたいわけでもなかったでしょう?」
太郎は魅伊香に、この市の真実をある程度話した。宇宙人や四つの町の特性、異能の力。
そして、天詩。四つの町の全てに属しながらどれにも属さず、異能を抑制する舞台裏の存在。
太郎の武術、月見里流は天詩源流の武術体系であり――否、小鳥遊流も桜樹古武術も黒椿峰の儀礼剣術も、元を辿れば全てが天詩のものだ。
「そっか……」
魅伊香は、心ここにあらずといった様子で頷き、道場ののれんを持ち上げた。
そんな魅伊香の様子を見て、太郎はふと笑い、後ろから大声で話しかける。
「魅伊香が元気ないの、俺はまたてっきり、一聖と上手くいっていない事かと思いましたよ!」
魅伊香がずっこける。
「な……テメッ……それ、違っ……!」
「やれやれ、夏休み中携帯が通じなかったんでしょう? 家の方に電話しても誰も居ない、それで魅伊香は不安なのかと」
魅伊香は振り向く。顔が真っ赤になっていた。
「なっ……なんで知ってんだよそんな事!?」
「ふ……やれやれ、義理とはいえ、妹の生活を管理するのも兄の役目」
太郎はいつの間にか持っていたピンク色の携帯電話を、ストラップに指を引っ掛けてクルクル回していた。
「誕生日ちょっと早いだけだろ……って、私の携帯!?」
「いやはや、可愛いじゃないですか。これを見せたら、一聖だって少しは認識を改めるんじゃないですか?」
「テメェには関係ねぇだろっ! 返せ、タロー!」
朝の道場に、賑やかな声が響き渡る。
***
「し、静かにしててくださいねー……」
朝、電車のホーム。
ボストンバッグを覗き込んでささやく、妙な金髪の少女が居た。服装は天下無双学園高等部の制服である。
その光景を視界に収め、朝っぱらからなんか変なのいるー、と天詩 真紀は少し憂鬱になった。
「ほ、本当は連れて行くのも駄目なんだよ……見つかっちゃ駄目なの、ね? 分かった?」
『ぴっぴぴ♪』
少女が話しかけていたバッグから、雛鳥の鳴き声を電子音声で再生したような、妙な音が響く。
周りの人は少し怪訝そうに辺りを見渡すが、しかし何も見つからないとそのまま歩いていった。
真紀も当然そうする――つもりだったが、そうもいかなくなった。
『ぴー♪』
バッグから突然、羽が生えた球体が飛び上がったのだ。
「わー! 駄目だって言ったのにー!」
金髪の少女が涙声で叫びながら、上空を見上げる。周りの人は声に反応するが、その球体はあまりに速すぎて目に留まらなかったようだ。
それは好都合だけど、朝から面倒くさいなぁ、と真紀は息を吐き。次の瞬間、そのまま垂直に飛び上がった。
『ぴっ?』
これにはさすがの球体も驚いたようである。なにせ、人間が垂直に1メートルも飛び上がるのだ。
巻きはそれを近くで見て、球体ではない事を知った。非常にデフォルメされた鳥である。黄色がかった白の体に、申し訳程度に丸い目と小さなくちばしが付いていて、明らかに小さい羽をパタパタ動かして浮いている。
真紀はそれを両手でやさしく包む。落下。
「はい、お姉さん。どうぞ」
金髪の少女に声をかける真紀。
周りの人間は再びの異常に目を巡らせているが、まず真紀が飛んだなどとは思わないだろう。人間、分からない出来事は他の現象に置き換える生物である。
「あ、どうも」
少女は軽く頭を下げながら鳥を受け取った。鳥はは不満気にぴ〜、と鳴き、豪華な表紙の本に形を変えた。それを見届けて胸を撫で下ろし――そして、ビクッと顔を上げて真紀を見る。
「あー、大丈夫です。私、一応そちら側ですから」
真紀の台詞に、少女は安心した様子で、今度は落ち着いた顔を向けてきた。
「えっと……ありがとうございます、真紀チャン。私、澄々(すみずみ) ムゥって言います」
ニコリと、小首をかしげて微笑みながら自己紹介をする少女――ムゥ。真紀は相手が年上にもかかわらず、少し可愛いと思ってしまった。
「真紀チャンは天下無双学園中等部の生徒ですよね? 私、高等部なので途中まで一緒にどうですか?」
そのまま可愛い笑みで、ムゥは雪色の手を差し出す。
金髪碧眼。憎々しい恋敵の影を感じつつも、真紀は彼女の提案に応じた。
***
黒椿峰 湖織は、やけにおどおどしながら歩いていた。黒椿峰大社の中心部、央の社の廊下である。
いつもと同じ巫女服だが、頭には帽子をかぶっている。緋袴もやけにサイズが大きく、足より長い部分は内側に折り返していた。
「はぁ……やってしまった……」
『オイオイ湖織よ宿主さんよー、過ぎた事を言ってもしゃァねぇだろうが。ポジティブで行こうぜー!』
湖織は溜め息を吐きながら、誘宵の言葉を聞き流した。そしてそのまま、広いだけの日本家屋といった風情の神社居住区を歩く、歩き続ける。
ふと耳を傾けると、騒がしい音が聞こえてきた。自分が向かう先、中庭では彼が修行をしているはずだ。
足取りは重く、しかしやがては中庭に到着する。
「ふっ!」
息を一気に吐き出す声、彼――一聖が踏み込む。
「っと」
軽く声を漏らしながら、桃子がそれを模擬戦用の先を潰した薙刀の柄で受けた。
硬直はせいぜいコンマの世界、桃子はがら空きの腹を目掛けて足を振るう。見事に命中するが、一聖はこらえた。身をよじり、威力を殺したのだ。
そこまでした所で、二人は湖織が居る事に気づいた。
「お、椿か。朝飯?」
一聖は着ていたシャツで汗を拭いながら(これも汗だらけであんまり意味は無いが)、湖織に向かって片手を上げる。
「こ、湖織ちゃん……あぁ、私今抱きついたら汗臭い……湖織ちゃんは今から学校……あぁ、でも湖織ちゃん可愛い……あぁ、あぁ! 今日はなんだかぶかぶかだ……ぶかぶかの服……あぁ、はふぅ……」
桃子はぶつぶつ呟いてから、鼻血を拭いてダウンした。いつもの事だから、二人は気にしない。
「とりあえずご飯が出来たので知らせに来たのですー。ベルと隊長はもう食卓に居るので、早く来るのですー」
「ん、了解」
履いていた靴を脱ぎ廊下に直接上がる一聖。夏休み初日以来、ずっと黒椿峰で修行を続けていた一聖は、もうこの神社にある程度馴染んでいた。
ふと、湖織のかぶっている帽子を見つめる。
「やっぱり……治らないのか、それ?」
「はいー。あそこまで誘宵を使いましたから、当然のリスクですー」
湖織は気にする様子も無く、食卓へと足を向けながら言った。
納得していない様子の一聖の目は、彼女の腰に差してある長刀へ。
「誘宵さん、アンタもどうにかできねーのかよ? このままじゃ椿は……」
『ンな事言われてもネェー。我は化物を殺すために化物を成す刃、メリットとデメリットはギブアンドテイクじゃなくて表裏一体なのよ』
ヒヒ、といやらしく笑って、誘宵は続ける。
『それに、ドーセクラス中色々変わってんだろうぜ。お前みたいにな』
言われ、一聖は立ち止まった。思わず自分の手の平を見つめる。
蛮を退けたあの日、変身が解かれた一聖の腰にはあのベルトが無かった。
同化した、と説明された。あのベルトは一聖の中にあると。そして、一聖が生きている限りは外す事ができないと。
『フツーに暮らす分にゃ問題ねーが、テメェも十分人間以外なんだぜぇ? レントゲンでも撮られちゃオシメェだ、もう医者には行けネェな』
あくまで嘲るように、誘宵は言葉を続ける。
しかし一聖は、ふっと唇を歪めた。
「別に、いいさ」
次の瞬間、顔面総崩れで笑う。
「だって学園異能バトルwith美少女だぜ!? ワクワクウハウハ男のロマン!」
そして誘宵の鞘でその顔をぶっ叩かれた。
「ぶほぉ!?」
「まったく……緊張感が足りないのですー、何のために修行したんですかー」
『ヒッヒ、楽しいねぇ、楽しい奴だネェ。永住をオススメするぜぇ』
もう一撃、朝早くから黒椿峰霊山の山頂に、景気のいい音が鳴り響いた。
***
朝、白咲 煉斗は布団の中でまどろんでいた。掛け布団を全身で抱きしめ、学校には昼から行くかなー、と自堕落な思考にとらわれる。思いっきり惰眠を貪っていた。
ふと、煉斗の耳元に柔らかく湿った感触が押し当てられる。軽く触れるか触れないかの位置をさまよう感触にくすぐったさを感じ、しかし決して不快ではない。むしろ気持ちいいぐらいで、時折耳の奥を刺激する吐息も中々いい感じだ。
そこで、吐息という自分の感想に疑問を持って――その次の瞬間だった。
「起きて」
大きな声ではなかったが、耳元で突然だ。体に叩き込まれた本能に従って、煉斗は手を使って転がり、足の力で跳ね起きた。
「あ……愛さん、か……」
心臓をバクバクさせながら、同居人の顔を確認した。
今日も大きな瞳をミリ単位で動かさない少女、愛はエプロン姿でかがんでいた。おそらく、あの体勢で煉斗の耳元に顔を近づけていたのだろう。
思い至った瞬間、顔が熱くなる。この少女、本人にそのつもりは無いのだろうが、かなり無防備である。
「朝ご飯、出来てる」
淡々と、数秒前まで煉斗の耳を濡らしていた唇から言葉が紡がれ――意識しすぎるのも馬鹿なので、目を逸らした。
夏休みに入ってすぐに同居人になったこの少女、本体はデータだという話だが、人並みに食べる、寝る、考える。煉斗としてはそれが意外で、そして最大の誤算であった。
愛は煉斗を主人と認め、まるで歳の離れた兄を見るように慕っている。それはいいのだが、問題は人間の思考を持ち、人間の姿をしているという事で。
毎朝朝食を作ってくれる――いい娘じゃないか。無表情で淡々と、でも時折可愛い仕草だったり――二次元じゃどストライクだ。胸が無い――俺は貧乳万歳だ。無防備で色々とやってくる――本能が刺激されない訳がない。
とまぁそんな訳で、煉斗はこの一ヵ月半、悶々とした生活を送り続けていた。
欲望に突っ走りそうになった事もある。正直、体が勝手に動きそうになった事もある。
そんな時は結華の顔を思い浮かべ、声を思い浮かべた。そうだ、自分は結華一筋なのだと言い聞かせて己を律してきた。
「煉斗くーん! 学校、今日からだよー!」
そう、こんな感じに。
「……って、結華!?」
本当に声が聞こえていた。ドア越しだが、すぐそばだ。
冷や汗がドバっと流れ落ち、そしてそのまま一分で着替える。髪はいつも通り寝起きのまま。
「煉斗?」
「わーわー、声出さないで!」
「ん? 煉斗君、何か言ったー?」
「あー! 結華、もうちょっと待って! 今、着替えてるから!」
心臓はバクバク鳴っている。そう、煉斗が一番心配しているのはTHE・鉢合わせ。
彼女が居るのに同居はまずいと本人も思っているのだが、諸々の事情でここに居るのが一番なのだ。立場的にも死乃裂か如月か微妙なので、それらの施設も使えないのだし。
諸々の事情――それらの一つには、煉斗の修行も含まれている。
初めての戦闘の時、裂黒は重さを感じず、技の反動すらない変わった武器だと煉斗は思っていた。
だが、違うのだ。電算人体の本体は実体ですらない何かであり、持ち主と同調する武器化は持ち主の影響も受ける。つまり手ごたえがないというのは、武器をリアルと認められていない、使いこなせていないと言う事。
初めて使えばそうなると真も分かっていたはずだ。だとすれば、愛を自分に託したのはますますおかしい、と煉斗は常々思っている。考えても仕方のないことだとはしても。
「……煉斗、朝ご飯」
「うわった!」
考えた込んでいた煉斗は、愛の声で現実に戻った。
そして朝ご飯はいらない、と言おうとして――その瞳が、若干上目遣い気味にこちらをみつめているのに気づく。表情は特に変わっていないが、肩が少し下がっていて、どことなく不安そうだ。
「れーんーとーくーん! 早く来ないと、学校行っちゃうよー?」
外からは結華の声が聞こえる。若干呆れたような声音だ。
煉斗は知っている。彼女は決してこういう事では怒らない、いらつかない。むしろ呆れているのが最後通告なのだ。
朝ご飯か登校か、愛か結華か。朝っぱらから選択を迫られる煉斗だった。
勘弁してくれよ、と呟きながら見る天井は、いつもより若干低く感じた。
***
文一は帰ってきた。小鳥遊別邸――灯夜の元に。
「主……」
隣を歩く茜の声は沈みがちだ。
夏休みで、文一は知った。知りたくない事や知らなければならない事や知るべきではない事。どれもこれも最悪だ。世界は全然優しくなかった。
「大丈夫だ、茜。――僕は、まだ、日常に居られる」
変わってしまったのは、認識だけ。見た目が変わったわけではないのだ。繕え、本音を見せるな、騙せ。自分に言い聞かせる。
頬を触り、顔面の筋肉をほぐした。少し伸びてきた髪をいじり、出来るだけ暗い目線を隠そうとする。
「よし」
一つ声を空け、文一は屋敷の扉を開けると――
なんだかホラーゲームチックな切り傷が壁中に。
「「…………」」
茜と文一、沈黙。
「……間違えましたー」
「間違えてない、助けろ」
後ずさる文一の肩に手が置かれる、刃音だ。
気配には気づいていたのだがそれを悟られると厄介だ、そう思い、とりあえず驚くふりをする文一。
「うひぁ!? 刃音! 死乃裂さん家の刃音君!? このごろ最近変よ!?」
「歌うな。助けろ」
刃音が着ているのは文一とまったく同じ執事服だ、どうやら同じ物を支給されたらしい。左腕――ヨモギが消し去った部分は不自然に袖が揺れているが、サイズはぴったりのようだ。違和感を感じた文一が良く確認してみると、服装に合わせたのかニット帽の代わりに中折れ帽をかぶっている。
しかしそんな事よりも、文一が気になった事は――
「お前、なんだか顔が青くないか……?」
刃音はふらふらとよろめく。頭から倒れこみ、痙攣しながら一言。
「みぞおちを……やられた……気をつけろ……」
「刃音? はおーん!?」
それきり動かなくなる刃音。そしてそれと共に――足音。
ぺたぺたとかスタスタじゃない。ドドドドだ。全力疾走の気配を感じ、文一は咄嗟に刃音から知らされたみぞおちをガードする。
瞬間、衝撃。
「――ガハッ!」
手から腕へ、臓腑へと、凄まじい衝撃が駆け上る。刃音に斬られた傷が痛み出した。というか、ものすごく痛かった。
恐る恐る自分の腹に突き刺さったものを見てみると、案の定というべきか、湊だった。
「あら? 文一さん?」
みぞおちに埋まった顔を少し上げ、小首をかしげる湊。
文一は、湊に“そういう精神異常”があるという事を思い出し――この惨状は湊が原因か、と思い当たる。
壁を直してもらわなきゃなー、でも小鳥遊本邸は顔出しにくいなー、フロルさんに伝言頼むかなー、などと考えながら、文一は湊を引き離そうと脇から抱え上げる。
湊、脇で挟む。文一、体から引き離す。ただ、手を脇から抜く事はできず、そのまま硬直する。
「姉様はもう学校へ行ったわよ。待ってられないって」
「あー、やっぱりお嬢様怒ってるんだな……ところで湊」
「何かしら?」
「離せ」
そうすると、いかにも放っておいたらいけませんオーラを出しながら、上目遣いに見つめてくる湊。
「ねぇ文一さん、今日ぐらい休んでもいいんじゃないかしら? 親睦を深めるのもいいんじゃないかしら? 名案だと思うのだけれど」
「はいはい、残念だが駄々っ子ビームは孤児院の妹弟で慣れてます。どうせ遊びたいだけだろ?」
「うふふ」
まだまだ子供だなぁなんて文一が思っていると、湊は意味無く笑って実をこちらに預けてきた。湊の頭が肩に回り、自然と子供を抱っこしているような姿勢になる。
微笑ましさを感じて自然と顔が緩むのを止められない文一。今日ぐらい休んでもいいかなぁなんて思い始めていると、唐突に、肩に鋭い痛みを感じた。
「うふ、ふふふふ……そう、遊びたいの、私……。ねぇ、文一さん――」
ガリガリガリと何かを削る音がする。湊が頭をうずめたままの肩に痛みが絶え間なく発生する。何か、切れ味の悪い刃物で強引に削られているような感覚だ。
執事服の腕を軽く血が伝うのと、湊が顔を上げるのは同時だった。
「遊びましょ?」
口元から血をこぼし、やけにホラーチックになった湊を見て、文一は登校する決意を固めた。
というわけで、準レギュラーの内二人が登場しました! あとの二人については後編で、という事で。
澄々ムゥは準レギュラーなのにメインっぽい武器を持ってます。色分けしているのは、ファミリア内では特殊な武器の象徴ですね。
今の所英語フリガナ付きで出ているのは茜と今回の鳥(仮)ぐらいですが、他の武器のもありますよ。第一部では自分内文字数規定の都合で書きませんでしたが(笑)
では、キャラが多すぎますが一部はモブキャラとして割り切って頂けると嬉しいなぁと思いつつ、後書きを終わらせていただきます。
第二部、学生メインの“学園珍事”を楽しんでってください。