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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
40/66

第37話:【D】 He is not HERO

今回は短いです。その代わり伏線をぶち込みまくってます。

さて、文一は刃音にやられ、一聖は真実を知り、煉斗は危機に陥っている訳だが。

ここで一度、視点を外そう。

主人公達から、主人公になりきれなかった者へと。


     

                 ***



「よ、姫紀。元気かー」


ここは黒椿峰町、西の社と呼ばれる所。

神社を目前にした広い敷地内に、少女と少年は居る。

その二人――卯月うづき 姫紀ひめき赤坂あかさか 響玖ひびくを見つめ、西の社の管理者である巫女服と隈取りが印象的な少年、黒椿峰くろつばきみね 甲陽こうようはひっそりため息をつく。


(「赤坂」……文献を漁っても欠片も正体が掴めない上、殺し名でも無さそうだし……やっぱり、突然変異かな)


殺し名、古くから裏社会に存在する一族は、一般的な姓とは別に“名乗り”のための姓がある。

湯上ゆがみならゆがみ位丸くらいまるなら喰魔くらいま氷見屋ひみやなら斬嫌きいや、そして霜月しもつきなら――死乃裂しのさき

もっとも、霜月は有名すぎて殺し名以外にも偽名を持たなければいけない、と甲陽は聞いている。


「ん、そっか。無事なら良かった」


響玖は頷く姫紀を見て、満足そうに笑みを浮かべる。

しかしそれを見て、甲陽はなんとも言えない微妙な表情を浮かべた。


卯月 姫紀を保護したのは、純粋な善意とは言えないとしても、むしろ好意的な事だ。

それはつまりいかがわしい事をするつもりは無く、それ故情報なんてほとんど漏れようも無かった。

だと言うのに、この赤坂 響玖という少年は――組織に属する訳でも、それに特化する能力も持たない少年が――一日でこの場所を突き止めたのである。

理由は友達のため、方法は聞き込み、あまりにも地道な行為の中、彼は正解を短時間で引き当てた。

彼は特殊能力を持っている、「何も無い場所に線を描く」という他愛の無い能力。およそ何の役にも立たないであろう力。

しかし逆に言えば最低限、所持はしているという事であって――そんな能力者には十分警戒しているはずなのだが。


つまりこの少年は、何の助けも借りずに、むしろ常人より不利な条件で、ここに辿り着いたのだ。


(いくら脆弱な能力だって言ったって……突然変異である以上は、どう転ぶか分からない。先の見えない力にこの執念、運を引き当てる事といいすぐに人脈を作る事といい……小鳥遊と黒椿峰の暗部や“最強クラス”にコネのある一般人なんて信じられないよ……)


突然変異、親の遺伝に関係無く振るえる力と言えば、魔法か科学だ。

妖怪と、それ等三種に分類されない力――超能力は遺伝する。けっとうを重ねて強化される。

しかしたまには居るのだ、こういう遺伝無しで超能力を使える人間が。

始まりの人間が居ないと血を重ねる事自体が出来ない以上、ある意味当たり前とも言えるのだが。

とにかく、響玖がそんな人間である以上、彼の子孫が新しい勢力になる可能性すらあるのだ。

その上、小鳥遊の戦闘機関における幹部、近江谷おうみがたに 怜哉れいや、黒椿峰神社北の社の戦力、空井からい 映恵はえ、さらにはこの場に居る“最強クラス

”認定を受けた最も危険な超能力者、卯月 姫紀。

その三人と深い関わりを持っているのだ、これは扱いが難しい。


と、甲陽が考えも巡らせていると、遠くから銃撃や獣の雄叫びのようなものが聞こえてきた。

戦闘だ、如月町が攻めてきたらしい。

現在、東の社の管理者である湖織は如月の鎮圧に向かっており、南の社の桃子は町へ見回り、北の透に至っては昨日から姿が見えないが、どうせまた女の家に泊まりこんでいるのだろう。

つまりは、黒椿峰霊山に残っている幹部は――なかの社に居る“彼女”は別として――甲陽しか居ない。


「ねえ、赤坂さ――」


「分かってる、行けよ」


甲陽の言葉をさえぎり、響玖は笑いながら言う。

少なくとも、表面上は。


「逃げる事に関しちゃ本職にも負けない自信はある。それでいいんだろ?」


「……うん、頼みました」


卯月 姫紀に死なれると困る、それ以前にわざわざ人が死ぬのを見ているわけにはいかない。

それでも、自分が前線に行かないとより多くの妖怪なかまが死ぬ、ここは彼に任せるしかなかった。


『一般人にまっかせっても、だっいじょうっぶー?』


「うん、信じよう」


甲陽は言いながら背中にある弓――西の社のご神体である埜緒やおに触れる。


「さぁ行こう。ここからは僕たちの戦場だ」



                ***



第一研究局、局長室。

如月きさらぎ 大門だいもんは、変わらずそこに居た。

よれよれの白衣も、ぼさぼさの金髪も、町への反乱以前となんら変わってはいない。


「まったく……私は難儀な性格してマスヨ」


ふぅ、とため息をつく大門。

彼だって、ただ単純に権力が欲しい訳でも、ましてや人殺しをしたいわけでもない。

だから、自分の部下やプログラミングされた兵器、遺伝子をいじった動物類には、きちんと殺しはしないように命令してある。


「…………」


そんな大門の背を見つめる少年は白亜はくあ、大門を父と呼ぶ三人の内の一人。

白亜に向き直り、大門は懺悔するかのように、独白するかのように言葉を漏らす。


「一人目は町へと送り、君たちは私の目的に協力させ、五人目は彼に任せました。そして六人目――私の本当の意味での娘になるはずの彼女には、父も母も居ない生活を強いようとしてイマス。私は――父として、失格でショウカ?」


その言葉にフルフルと首を横に振る白亜だが、大門は彼に意見を求めた訳ではない。

この世界に、神様に――そう、自分が科学の最後に行き着いたあの存在に、懺悔している。

神様、とはよく言ったものだが、学を識る者としてはアカシクレコードと呼んだ方がいいだろうか、と大門は少々考えて――下らない思考を中断。

どうせ自分は、今日か明日には肉体的に死滅するか、社会的に抹殺されるか、そのどちらかなのだ。

それでも彼はやらなければいけなかった。

行き着いた者として――行き着いてしまった者として、後は若い世代に譲ろうと。

これは自分の最後を飾るための花道、その花がたとえ造花だろうが血に染まったバラだろうが関係無い。


「……来ましたカ」


正面にあるモニターを見て、大門はかすれる様に小さな声で呟く。

映っているのは正面から突入する妖怪たち――幹部が見えないという事は、あの利益主義の死乃裂は上手くやったのだろう。

そうだ――引退は本気で考えているが、“彼”がもし自分すら追い詰められないというのなら、返り咲くしかないだろう――如月町、自分の名を冠したこの町は、常に先に進まなければ行けないのだから。


「黒椿峰へと“採取”に向かった青衣あおぎぬチャンは無事でしょうカ……」


白亜は頷く、それは肯定ではなく信頼。自分の姉に対する絶対的な信頼。

裏口にも侵入者が居るだろうが、そちらには観緑が居る。

だから大門は、正面から来る雑魚を倒せばいい。


「さて白亜クン、行きましょうカ」


頷く白亜に、大門は手を伸ばし――



                ***



理解が、出来なかった。

私はあの巫女さんと女装君に助けられ、神社にかくまわれたのだ。

その後、響玖君が来た、嬉しかった。

うん、嬉しかった。

でも、なんでこんな事になってるんだろう。

ねぇ、誰か教えてください。どうしてこんな事になっているんですか?

どうして彼がこんな目に合わないといけないんですか?

どうして私は――こんな時でも、叫び一つ上げる事を許されないのですか?


「か……は、ガ」


「意外とあっけなかったでありますね、少年」


私の目の前には、女性に左胸を貫かれた響玖君の姿が見えた。





赤坂 響玖、実は一聖の代わりに主人公にしようとした時期がありました。

でも、なんというかちょっと、色々とヤバイんですよね、響玖は。

ダークな主人公は文一だけで十分だ、と思って脇役(?)になりました。



例の企画進行中、秘密基地様の仲間募集にて既にスレが立っております(5/26現在)。

読者様で楽しみにしておられる方は居るんでしょうかね?

とりあえず、7月ごろから本格始動の予定です。

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