第3話:初めての食事、そして執事は日常へ
朝は毎日やってくる。
心地良い布団の感触、窓から入り込む美しい朝日、聞き慣れた目覚ましの急かす音、
昨日から全身を包む虚脱感。
「…………体がだるい……」
なんかすげぇ虚脱感……すごい運動した次の日みたいな感触の最高潮
立ち上がりたくねぇ……。
「あ、おはよー主」
しかも例によってこいつ居るし。
「おはよう本、ところで僕の体がなんだかギシギシいってるんだが?
もう歳なのか、僕は?」
「ん〜ん、私のせいだよ」
やっぱりか、この古本娘め。
「…………具体的にどういう事なのか説明願えるか?」
「え〜っとね、私の人間の体は普段は保存してある物を取り出してくるって感じで別に幻術とかじゃないのね。
だから活動するには人間と同じエネルギーが必要で、今はそれを主から頂いているのでした〜」
「でした〜、じゃねぇよ。ジャ○プとまとめてちり紙交換に出すぞオラ」
あ、泣いた。
……とりあえず人間と同じエネルギーって事は、飯食わせりゃいいのかな?
***
「ごっはん♪ ごっはん♪ はじめっての、ごっはーん!」
黙って欲しいと、切に願う。
現在、僕と本はお屋敷一階のキッチンにいる、なんかあの対面式の奴。
お屋敷は基本豪華な造りになっているが、一階部分だけ(僕の部屋も含めて)従業員専用の居住区になっているので庶民的だ。
「おい本、何食べたい?」
「クロカンブッシェ!」
「却下だ」
ていうかなんでそんなマイナーな、しかも結婚式用の洋菓子を知ってますか。
「じゃあ……活け作り! 魚を切り身でぴちぴちさせるサービス付きで!」
「全身全霊で却下だ」
朝っぱらからそんな職人技を見せられるかいな、いや朝じゃなくても無理だけど。
「トーストでいい、5分で作れ」
「あぁそれなら…………ってお嬢様!?」
いつの間にか背後にお嬢様が!?
「どうしていきなり現れ……るんですか、アンタは!」
「敬語に戻そうとしてるみたいだけど失敗してるぞ……」
あぁ、お嬢様なんか眠そう。きっとうるさかったから起こしちゃったんだな。
「……まぁ、了解って事で顔洗ってきてください」
「あぁ……ご飯、頼んだ……」
あぁ、ふらふらしてる。あ、よろめいてる。
………………………あ、角に頭ぶつけた。
***
現在、登校中。
「うぅ……デコ痛い……」
お嬢様がなんだか呻いています、この人見た目は完璧主義っぽいのにたまに抜けてるんだよなぁ。
「ふぁふひ、ふぉはんっふぇふぃひふぇ!(主、ご飯っていいね!)」
こっちは本です、契約するの初めて=人型になるの初めてなので食事は始めてらしい。
さて、学校ということで服装の紹介でもしましょうかね。
僕の服はもう見事に執事服、蝶ネクタイは標準装備です。
一応学生服もあるんだけど私服もOKなので、基本的に仕事をしている生徒はそれぞれの作業服で来ることが多い(仕事をしている生徒が多い理由はまた今度)。
次はお嬢様。
こちらは見事に真っ赤なドレス、このまま舞踏会に参加できそうです。
ちなみにお嬢様も着たくて着てる訳じゃない、着替える暇がなかっただけだ。
…………寝巻きがドレスなのもどうかと思うけど、本人曰く寝やすいらしい。
次は本。……………………ちょっと待て。
「おい本、何だその服は?」
「学生が着る服、いわゆる学生服。セーラー服とも言う」
そんな事聞いてねぇよ。
うちの高校、「私立天下無双学園高等部」は一応男子校女子校に分かれている。
校庭が隣り合うように設置されており、それぞれの学園の間には10メートルばかりの空きがあるわけだ。
その間に「教師棟」と呼ばれる、まぁいわゆる職員室や準備室に当たる建物があるのだ。
…………今はそんな事どうでもいい。
問題は、その女子校制服を、本が着ている事だ。
「What do you do?(訳:てめぇなにやってんだゴラ)」
「私42の能力が一つ、服装模写。…………ゴメンナサイそんな目しないで」
模写って事は……あぁ、ここに来るまでも女子がいっぱい歩いてるもんな。
それを見るだけで自分もその格好になれるのか……極めてどうでもいい。
「ちなみにぃ〜、また魔力使っちゃいましたぁ〜」
「うわぁ何やってんだお前!? 女子高生風に言ってもごまかされねぇぞ!」
すごい蹴りたいが女性の姿なので我慢、うん我慢、そうだ僕、偉いぞ。
「そういえばさ、どうして主は私の事否定しなくなったのかな?」
「んー……アレだ、天詩は分からない事はとことん考えるけど、それでも分からないと思考放棄するんだよ」
お嬢様、眠くて口調崩れてます。
「じゃあ、主はもう私が居ても大丈夫?」
「居ない方が楽なんだが……まぁ、お嬢様に仕事もらえたらな」
「ぜんぜん……大丈夫……」
うわぁ眠いからって適当に返事しないで下さい。
「部屋も……空いてる所を使っていいし……うん大丈夫、大丈夫……」
うわぁ適当じゃなくてちゃんと考えてるっぽいけどこっちからすると余計嫌だ。
「やったぁ! これでずっと主と一緒だね!」
「……昼間は学校に行くぞ、僕は」
「何言ってるの? 私が何のために学生服に変わったと思っているのかな?」
……………………もしかして、こいつ
「なぁ本、ちなみに言っておくが学生服を着てれば誰でも学生になれる訳じゃないぞ」
うわぁ、すっげぇ絶望って顔してる。
「…………え? なにかな、なんでそんな嘘……。え、嘘?」
「中学校までは年齢相応だったら行けるけどな、高校は試験を受けないと無理なんだ」
「さらに言うと……身分が、はっきりしてないとな……ふわぁ〜」
往来の真ん中で大あくびしないで下さい、小鳥遊の令嬢が。
「ううぅ、うう嘘だあああああああぁぁぁぁぁぁ!」
あ、本が走り去っていく。……しかも学校の方向だ。
「なぁ……お嬢様……アレ……」
「うん……ほっとけばいいだろ……別に、後で迷子案内の放送でもすれば……」
その時はまだ、お嬢様の発言に「デパートかよ!?」と心の中でツッコむだけで、本を本気で止めると言う発想はなかった。
でも……やっぱり止めておけば良かったなぁと、後々僕は後悔する事になるのでした。
アハハ、僕落ちた!
文一(以下文)「鉄棒? ビル? 飛行機?」
後半二つならこの世に居ないよ、高校受験だよ。
文「ご愁傷さま〜♪」
てかさ、僕が落ちたら更新できなくなるから君たちにも害が出るんだよ?
文「…………お前ならさ、受験中でも書いてくれると信じてるよ」
信じるなよ!? 僕をニートにする気か!?
文「おぉ、執筆時間が増えるじゃないか」
うわぁ、コイツ鬼だ!
文「まぁ作者はしばらく書かないと言ってますが、お優しい方はこれからもお付き合い願います」
そういや、コイツ僕には敬語使ってないのに……