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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
34/66

第31話:怪獣出現(ケース1)

今回は結構急いで書いたので、色々と粗い所があります。……つーかなんかもう、後半すいません。


「か、か、神無月君!!」


「あーあー、はいはいはい、大声出さなんでも聞こえてますよ、校長センセ」


職員室、小さく切り取られた窓から外の様子を伺う。

空から落ちてくるのは異形、形容しがたい獣だか虫だかが一直線に落ちてくる。

規模から見て、街では混乱が起きている事だろう。


「アレは何なのかね!? こ、これでは学校がぁ!」


「ソレヨリ、アトノモンダイダ」


割り込んできたのは職員室で席が隣の正井まさい先生だ。

基本的に薄着であり、今日も半ズボンに無地のTシャツと言うガキ大将ルックだ。


「うふふ……お庭荒らされちゃうと……困りますしね……」


さらに一年二組の担任、白佐賀しらさが先生も話に加わった。


「んー、そこら辺の対応は校長センセに頼んどこか。で、私らはどうしたらええん?」


そうだ、まずは自分たちがどうするかだ。

『何も知らない一般生徒』の避難を優先するか、『裏事情を知っている生徒』との連携を図るか、それとも私達『非常時対策のための教師』だけで迎撃するか。

それに対して、幾分か落ち着きを取り戻した校長が、しかし少し焦った声で答える。


「今日は日曜日で生徒が少ないのが幸い……と言いたい所だが、この様子では町全体が覆われている可能性が高い。つまり隠蔽は不可能だろう。となるとごまかすしかないのだが……そこは私たちの管轄ではないから、もう好き勝手迎撃を」


多少無責任なようだが、それは致し方ない。

こちらはこちらで大変なのだ、『別の公務員』に任せられる仕事があるなら、こちらは頼らなければやっていけない。

だが――


「そ〜れ〜ぐ〜ら〜い〜は、分かってるちゅうねん! 問題はその『好き勝手』の部分や!」


校長の足を掛けて倒し、そして頭を踏む。


「あ〜! もっと、もっとおおおぉぉぉ!」


たまに、この男が自分たちのトップであるのが情けなくなってくる。

そんな男が、私の足の下で口を開いた。


「白佐賀先生は各入り口を塞いでください、貴方ならば可能でしょう。正井先生は遊撃として入り口に近い敵から各個撃破を。教頭先生、放送で敷地内の生徒は学校内に避難するようにと連絡を」


……うん、指揮能力が高いのは認める、マゾだけど。

この男はいつでも冷静だ、マゾだけど。


「神無月先生はそのまま私の頭を踏み続けぶえええええぇぇぇぇぇ!!」


とりあえず男の大事な部分を踏み潰してやった、マゾだから。


「え〜っと、……私は正井センセと別方面に遊撃するけど、ええか?」


男性教師全員(白佐賀以外)が股間を押さえながら頷いた。



                ***



鉄には友情、木には愛情、柱一つに親愛を込め、床板一枚に黄金の価値を見出し、コンクリは親より深く気にかけよ。


伊井宗いいむね 禅次ぜんじは大工の弟子だ。

この市で様々な職業を多角経営している男、天詩あまうた 文紀ふみのりに弟子入りし、一生を建設に捧ぐと決めた将来有望な労働者である。

今日は自分も通っている天下無双学園高等部の老朽具合を確認しに来たのだが……


「すー、すー、……ぐー」


屋上の貯水タンクの上、作業服のままで思いっきり熟睡していた。

基本的に真面目で仕事に誇りを持っている彼だが、一仕事終えるとそれはもうのん気だ。

例えば、空から降ってくる化け物など目に入らず、春のポカポカ陽気に誘われる程度には。


「おっっっきろーーー!!」


と、少女の声が屋上に響く。

見ると、屋上の入り口には同じく作業服を着た少女が口に手を当てて叫んでいた。

常盤ときわ せん、禅次と同じ同じ会社、天詩工務店で働く鳶職見習いだ。

首まで程度の髪を後ろで乱雑に固め、作業服も禅次の物とは所々デザインに違いが見られる、鳶職用なのだろう。


「ふぁ、ああぁー……。ん、常盤?」


上半身を起こした禅次は、眠そうに目をこすりながら少女を見る。


「『常盤?』、じゃないっ! こんなSF状況でナニのん気にドリームワールドにトリップしてんですかっ!」


泉が空を指差すと、禅次はゆったりと首を縦に持ち上げた。

視認する、獣の輪郭に虫の表面を持つ醜悪な化物を。


「ね? ね!? そこはかとなくSFチックで頭からバリバリいかれちゃいそうな雰囲気MAXですよっ!?」


興奮する泉、だが禅次はそれを見てもゆっくりと首を泉に向けるだけ。


「あー、……でもさ、俺達にとって重要なのは、アレが何かって事じゃないだろ」


「うんそうですね逃げる事ですねヘイトンズラレッツゴー! 逃げるよ伊井宗っ!」


バタバタと泉が手を振っても、禅次はゆっくりと立ち上がるだけ。

そうこうしている内に、化物の内一体が降りてくる。


「ぎゃ、ぎゃあああぁぁぁ!? 私は食べたらきっとお腹壊すレベルじゃなくて盲腸とかになったりですよーっ!?」


「俺たちにとって大事なのはな、常盤――」


錯乱する泉、どんどん降り立つ化物を無視して、禅次は独白のように話し続ける。

降下してくる化物の重みに耐え切れず屋上のコンクリが舞う、動く足に砕かれる。


壊す者てきか、創る者みかたかって事だろ。まぁ、どうやら前者みたいだけどな」


「重要じゃないです逃げますはい私は逃げますさぁこの世の果ての地平線までーっ!!?」


トン、と禅次は貯水タンクという足場を軽く蹴る。

そして宙へ、そして屋上へ。


「さて、と。折角作ったモノを壊される気分、お前らに分かるかな?」


禅次は悠々と歩き、そして形容しがたい怪獣へと声を向けた。


――Gaaaaaaaaaa……


分かっているのかいないのか、怪獣は不気味に口器を揺らすだけだ。


「逃げようよーっ! 私としてはグロチックにサイエンスフィクションな猛獣ちゃんを相手にする義理は無いように思うのですがーっ!」


「逃げたきゃ逃げろよ、俺は校舎に被害が出なければいいんだから」


錯乱し続ける泉に、呆れたような顔を向ける。

それを見て何を思ったのか、泉は少し落ち着きを取り戻した。


「え〜っと、最終確認しちゃいますと禅次が戦う、私が戦わない場合は邪魔だから帰れ、と?」


「概ね間違いじゃない」


それを聞いた泉は考えるような顔をしてから、屋上の部屋、その裏側へと消えていった。

見届けた禅次は、まずクマのような体の怪獣を見据える。


「さて……まぁ、生物相手より静物相手が専門なんだが……」


踏み込む。

その距離およそ2メートル、それを一瞬でゼロに変える。

トン、と再び安全靴が地面を鳴らした時、その持ち主の体は怪獣にほぼ接していた。


「お前が俺の敵ならば……解体バラしてやるよ」


ほぼ密着したような状態で右腕を引く。

左の足ささえを前に、右の足どうりょくを後ろに。

ただ解体バラすだけならば道具など必要ない。


「天詩工務店解体術『柱折はしらおり』」


ドン! という鈍い音が響き渡った。

ズルリと根幹を失ったように仰向けに倒れ伏す怪獣、その胸の甲殻は真っ直ぐに貫かれていた。

禅次は手に付いた血と肉片をタオルで拭い、そして再び悠然と歩く。

と、その後ろに犬のような姿の怪獣が走り寄ってきた。


――Gaaaaaaaaaaaa!


その知性は獣ゆえに一片の迷いも無く、ただその爪を振り上げる。

しかし禅次は振り向かない、『振り向けない』のではなく『振り向かない』。


「ああぁもうっ! 私としてはさっさと仕事終わらせてドラマの録画でも見たかったというのに、これ何というハードな残業っ!?」


泉が、怪獣の頭上へ現れた。

その手に握られているのは長さおよそ3メートルにもなろうかという鉄パイプ。

ガン、という音を立てるほどの勢いで、鉄パイプは真横に怪獣へと叩きつけられた。

そしてその鉄パイプの端へと、軽業師のように泉が着地した。


「泉ちゃんは平和主義なのでこんな事は真っ平御免の介なのですが、伊井宗を方っておけるほど薄情でもなかったりしたりっ!」


そのまま、鉄パイプは泉を力点、怪獣を支点、もう一辺を作用点として高く持ち上がる。

その鉄パイプを泉が蹴ると、吸い込まれるように怪獣へと――刺さった。

その後、瞬のためらいも無く力点であった場所をもう一度、踏みつける。


―Gaaaaaaaaaaaa!!


今度の叫びは、威嚇ではなく慟哭だった。

腹に突き刺さった鉄パイプはそのまま上方向へ突き抜けて、ぐしゃりと甲殻を潰す。


「あぁ、ありがとう、常盤」


「どうせ私がこうするぐらいお見通しデッショーガっ!? んなわざわざ恩に着せられちまったぜみたいな謙虚な物言いは不要でしてよっ!」




二人が叫びあっている頃、校庭したでも激戦が繰り広げられていた。


「うふふふふくふふふふふふにふっふふふふふ……」


不気味に笑う白佐賀は、ポケットから小瓶を三つ取り出し、それぞれを三方へと放った。


「頼みますよ、ドリンダちゃん、グリーネちゃん、リドリーちゃん」


一つは球形の体の中心に口、その中に目、さらに無数の触手を持つ物。

一つはチューリップのような形の鮮血色の花に、三日月形に裂けた口がついた物。

一つは毒々しい黄疸のような色のアジサイが、なにやら甘い匂いを放っている物。

これではどちらが悪役か分からない。


そして彼から少し離れた所では正井が石槍を振るっており、神無月がチョークを投げている。

ここは既に、戦場だった。



                ***



「上は大水、下は大火事、これな〜んだ?」


「鍋」


「正解なのサ。じゃあ次は、上は大火事、下は大水、これな〜んだ?」


「それってさっきのと一緒……じゃないのか! あぁ入れ替わってるのか! つーか知らねぇよ、そんなの!」


「漏らしちゃった子供」


「それはまた惨事だな、恥ずかしさで大火事か」


「じゃあ次は上は大火事、下は天ぷら油、これな〜「大惨事だな、オイ!!」


俺は居候と一緒に町を歩いていた。

買い物のためだ、日用品が切れたので居候を荷物持ちに連れてきた。

ちなみになぞなぞはあれだ、昨日クイズ番組見てハマッたらしい。


「……ねぇ、イッセー」


と、突然居候の声音が神妙なそれに変わった。

口調こそ違うが……そう、まるで出会った頃のような……。


「上は化物、これなんだ?」


は? と言いながらも上を見上げると……。

ひゅるるるるるるるるぅぅぅぅ……ドン! ギャアアオオオオォォッォォ!

って感じの光景だった。


「……さて、逃げるか」


周りを見ると既に誰も居ない。建物の中だろう、賢明な判断だ。

だって怖いもん、ホラ、何というかB級映画っぽいし。

正直言うと錯乱したいよ? つうかこれ、どっちかと言うとびっくりして硬直してるだけであって。


「イッセー、逃げるサ!」


「ここは俺が食い止める! お前は先に逃げろ!」


「それ死亡フラグ!」


切れのいいツッコミだ……でも今回ばかりは憎いぜ、『この事』がばれるじゃねーか。


「居候、いいか。これから俺が言う事を良く聞け、一度しか言わないぞ……」


「それも死亡フラグっぽい!?」


居候の言葉を無視し、俺は告げる。『この事』を……!




「腰が抜けました」


「馬鹿イッセー!!」


そのまま居候は俺の手首を掴んでドタドタと走る。


「あぁもう正義感強いだけで小心者!? 事件に首つっこんで真っ先に死にそうサ!」


「いやそりゃ仕方ないだろ、あんなの見たの、初めてだし」


もう一度観察するが、あんなもの――いや、あれと同系統というだけの生物すらこの地球上に存在するのだろうか?

なんというか、醜悪にしてどこかシュールだ。

あんな形の虫なんて……虫? …………ふみたんが心配だな、こりゃ。


「お、もう立てるぞ。離してくれても大丈夫だ」


俺が言うと、居候は手を離す。実際、重かったのだろう。


「で、とりあえず路地裏でも入るか……店、全部0閉まってるっぽいし」


薄情だな、とは言えない。この状況なら一人ぐらい見殺しにしたって誰も文句は言えない。

そう、俺のような奴以外は。

ホント、難儀な性格だよな。


「イッセー、路地裏入ると逃げ場がなくなるサ。もうちょっと広い所に――」


「いや、路地裏の方が逃げ遅れてる人も多いだろ。助けるぞ、居候」


これだけは誰にも譲れない、俺は絶対誰も見捨てない。

死にかけも悪人も老若男女、全人類、俺は絶対見捨てたりはしない。


「イッセー……自分も危ないって事、忘れてる?」


居候が呆れたような顔で聞いてくる。

しかし、どこか分かったように。

むしろ、背中を押すように。


「危ないとか、死ぬぞとか……俺が、その程度で諦める男だと思うか? 俺は北川一聖だぜ?」


「うん、馬鹿サ」


嬉しそうに居候は言った。

しかしまぁ、ここまでは良かった。問題は次の言葉だ。




「じゃあ、変身しよう!」




電波キターーーーーー!

えっと、おいこれ、なに、えぇ……やっぱり、電波なのか? 電波さんなのか!?

俺が混乱している内に、居候は髪の中(別名:四次元○ケット)から例のベルト(23話参照)を取り出した。


「なぁ、こんな時に冗談やってる場合じゃないと思うんだが」


「イッセー、『こんな時』と『場合』で二重表現サ」


知らねぇよ。


「もうっ! とりあえず付けてよっ!」


「そんないきなりぶりっ娘になられても」


「ふ、ふん! べ、別に付けてほしくなんか無いんだからね!」


「そんないきなりツンデレになられても」


「付けろ」


「そんないきな……ってオイ」


路地裏に向かいながら、居候の頭をはたく。


「とりあえずイッセー、これさえ付ければイッセーもアレに対抗できるようになるサ」


「あのなぁ、そんな特撮ヒーローみたいな都合のいい展開、現実にあるかっての」


そうだ、そんなことがある訳無い。

どんなピンチでも立ち上がれるのは、いつでも颯爽と駆けつけるのは、どんな苦境でも乗り越えるのは、日曜朝番の特権だ。

だから俺は地道な人助けなんかやっている、出来ない事は警察やらに任せようとする。

でも――それでも、警察や他の人の手が届かないのならば。

俺が行くと、決めている。


「と、少しシリアスになった一聖さんだ。だから水差すな」


「……分かった。信じてもらえるのを待つサ」


まだ言ってるよ、電波。

と、その時。


――Gaaaaaaaaaaa!!


目の前に、化物が現れた。

今までどうして気付かなかったのかと思うほど近くに、ゾウの形の化物が。

大きさは確かにそれほどでもないが……明らかに、草食じゃない。

ギチギチと甲殻がこすれ、こちらに歩み寄ってくる。


「イッセー、逃げるサ!」


「例のごとく腰が抜けた!」


「大馬鹿イッセー!」


ズン、と大きな音。

歩み寄る怪物、死を覚悟するほどの威圧。


しかし、それは突然断ち切られた。


一直線に、上から下へ、綺麗に綺麗に滑らかに。

それは剣だった、俺は余り詳しくないが良い剣だと一目で分かる。

無駄な装飾など無く、ただ斬るためにのみ存在する刃の完成形。

その刃を握っている男が、こちらに一瞥をくれた。

それは居候と同じような銀髪碧眼で、でも長身で鼻筋も通っていて。

白銀の騎士鎧に全てを射抜くかのような瞳、そしてこのタイミング。

奇しくも彼は、英雄のようだった。



俺は、日曜の朝、ブラウン管の向こう側に夢見るように、ボウっとその光景を見つめるしか出来なかった。





 伊井宗禅次&常盤泉のコンビはしばらく出ないので覚えなくても大丈夫です。

 今回は半分ぐらい顔見せみたいなもんです。

禅次(以下禅)「そうなのか」

 うん、とりあえず僕が登場させたかっただけというか……。

 

 これは色々な連載案の原型を組み合わせて作ったので、色々と設定が混じっております。

 その中で禅次が主人公なのは「子供だろうが就職」という設定の元だったりします。

 これは多分、一番ファミリアに近い設定で作ったので思い入れがあるんですよ。

禅「まぁ、そう言われると相棒がテンション高めな所とか……」

 まぁそんな感じ。題名は「Worker Brave」。

 ……なんというか、もう書けないとなると懐かしくなる人類の神秘。


 では、短編を書いているせいで更新状況がアレですが、どうか見捨てないでくださーい。

禅「実はもう短編を五個ほど書き初めでやめていたり」

 こ、今度の二つは絶対に書き上げるよ!

禅「……本当か?」

 ……………………一つぐらいは。

禅「だめだこりゃ」

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