第2話:幻だったらどんなに良かったか……
しばらく書けない可能性がございますので、いきなり2話。
……あったかい。
……あれ? 布団……布団だよな?
……僕……どうしてこんな所で……
「よぉ、天詩」
「……お嬢様、ですか」
目を開けて起き上がってみる。うん、どうみても僕の部屋だ(僕はお屋敷の離れに住み込みで働いてます)。
そして窓からの情報が正しいとすれば現時刻思いっきり夜。
どうしてこんな時間に寝てるんだっけ?
「あのなぁ、俺は掃除しろとは言ったが倒れるほどやれとは言わなかったぞ。
一谷が途中から来なかったか?」
…………あー、思い出した。
ってかお嬢様の口ぶりだったらあれは夢だったんだな、良かった良かった。
「いや、一人で何時間も頑張りましたけど。一谷ちゃんが来る予定だったんですか?」
「当たり前だ、お前一人にやらせるものか。しかし、ということは一谷の奴はまたサボったという事か……!」
お嬢様、表情が般若です。
ちなみに一谷ちゃんというのはお屋敷のバイトで……まぁ、なんていうか軽い子だ。
「まぁまぁ、一谷ちゃんも本業の方が大変なんですよ」
「本当に大変ならあんな格好はしないと思うがな、まったく……。
しかし、いくらなんでも今回は良くないぞ」
「ん? どうしてですか? 一谷ちゃんのサボりはいつもの事じゃないですか」
「いやな、今回は小さな女の子に手伝わせていたじゃないか」
「おやすみなさーい」
……これは夢だ。夢です。夢なの!
まさかリアルに幻想バリバリな髪の色の女の子が本があの子でそんな訳があるわけがというか小さな女の子だからまだあれだと決まった訳じゃ……!
「むにゃ? 主?」
ぎゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
なに寝てる人の胸部分に上半身を預けて「看病してたらそのまま寝ちゃいました☆」なベタポーズしてんだよ!? てか気付けよ、僕!
「おはよう、主」
「とりあえずそのへらへら笑った顔を背けその後ダッシュで消え去り何事もなかったようにするというのはどうですか?」
「ん〜、却下〜」
…………あれ? マジ現実?
「1、日頃ストレスと鬱憤が溜まりに溜まった僕が暴走して知らずの内誘拐。
2、実は成長した妹は外見的に幼女でした展開。
3、この世の全てが僕の生み出した妄想。
さぁ、今日のご注文は、どっち!」
「血迷うな」
あ、お嬢様の存在忘れてた。
「あのあの、おじょーさま……この子、貴女の知り合いではないですか?」
「いや、初対面だぞ?」
「むしろ私はこの世界と初対面だよ」
黙ってろ、少女。
てかあぁもう何!? 何事!? 掃除してたら本が真っ赤な髪の美しい少女になりました〜ってそれなんてエロゲ!?
「主、なんだかお顔がヒートアップだよ?」
「気にするな。天詩は物事を深く考えすぎる体質だから知恵熱をよく出す」
黙ってろ、少女&お嬢様。
「え? いやほんとこれ何? お嬢様はどうして驚いてらっしゃらないのデスカ?」
「あぁ、うん。そりゃ長い人生、人間の形になる本と出合うこともあるだろう」
ねーよ。
「まぁ、そういう訳だからしっかりと話し合え。とりあえずこれはお前の問題だ」
「え? いやいや見捨てないで! こんな非常識空間に独りっきりにしないで! ねぇ! お嬢様! お嬢様!! 小鳥遊ーーーーー!!!」
***
「どうしたのかな? なんだかブルーだよ?」
「ブルーを通り越してブラックだよ……」
お嬢様――小鳥遊は、僕の説得虚しく扉の向こうに去っていきましたとさ。
「うんうん、そりゃ主も魔道書を手に入れるとは思わなかっただろうからね。
私に出来る事なら説明するよ?」
こんな事を隣で言いやがってる少女がマボロシならいいんだけど……ほぼ確実に現実だ。
……とりあえず前向きに事情聴取でもしましょうかね。
「質問一、お前何者?」
「んー、魔道書。まだ著されて50年程度だけど、それなりに良い能力持ってるつもりだよ?」
「いやだからまず魔道書って何、と一般人である僕は問いかけたい」
「魔法使いが魔力を込めた本。魔法を使えない人も魔力さえ払えば魔法が使えるようになる本」
うわぁ、簡潔に説明されちゃった。
ていうかマホウツカイとかマリョクとか、これはどこのRPGですか?
……追求するとどこまでも質問してしまいそうなので、とりあえず要点だけを聞いておく事にする。
「えっと……じゃあ、その魔道書さんはどうして人間の姿になってんの?」
「うん、能力の一つでね、人型とか武器型とか色々形を変えられるの」
「いやそのぐらい出来そうなのは予想してたけどさ、別に本のままでも良かったじゃんってこと」
「この姿になった理由だね? うん、ただの雰囲気作りだよ?」
いやもう死ねよお前。
「ちなみにこの姿に変身する時、ちょっぴり魔力をもらっちゃいました♪」
「うわぁなにしてんだお前!? 僕を魔法に巻き込むな!」
なんか殴りたくなったが女の形をしているので殴れない、中身がどんな物だろうと一応見た目は女性。
一部例外を除き女は殴れない子です、僕は。
「とりあえずもう変身すんな。……んで次の質問、契約って何?」
「私が主の使い魔になる契約だよ。
魔道書はね、主から魔力をもらえないの、だから主がいないとただの本に戻っちゃうの」
「なるほど、次は魔力の供給を止める方法を教えてくれ」
「待って待って! 何、私はそんなに厄介なのかな!?」
「うん、これでもかってぐらい厄介だけど」
まず扱いに困る。
「私だって役に立つんだよ! ほらほら、武器になれるから通り魔対策とか!」
「そこらの不良には負けない程度の実力を持ってます」
小鳥遊家の使用人は大抵「小鳥遊流護身武術」を習う。
僕も強いと言うほどではないが、不良と2VS1でギリギリ勝てる程度の実力はある。
「ほらほら、私本だから色々とデータバンクとして……!」
「だから魔法の知識は要りませんと言っている」
新たに登録できるにしても、メモ帳とか持ってる方がよっぽど便利だ。
「観賞用!」
「何を言い出すんだ君は」
ンなもん部屋にあったらびっくりされるわ。
「じゃあ……洗濯炊事掃除!」
「OK」
「即答!?」
「てか僕じゃないけどな、小鳥遊だったら雇ってくれるだろ。
そしたらどうせ近くに居ることになるんだしオールオッケー」
ふぅ、小鳥遊に押し付ける事に成功したぜ。
まぁでも事情とか聞いてたら、随分と遅くなっちゃったな。
……………………!?
「ありがとう主! 助かったよ、本当初めての契約であんまり勝手が解らなくてさぁ……」
「……そんな事はどうでもいい」
「へ? それは酷いんじゃないかな」
「いや、とりあえず時計を見ろ」
壁に掛かってあるアナログな時計を指差す。
「んー、2時36分?」
「僕は! 明日! 学校が! あるんだああああああぁぁぁぁぁ!」
「え? ちょっと待って? 締め出さないで! お願い主! 寒いよ外は? まぁ、本だから関係無いといえば関係な……ってやめて! 挟まってる挟まってるああああぁぁぁぁぁ……」
本編終了、ここでコメディを始めたらやってみたいと思っていたことを始めます。
灯夜(以下灯)「なんか天詩の部屋から出たらいきなりこんな所に来てしまったんだが……」
うん、ご愁傷様。
灯「で、どうして俺はこんな所に居るのだ?」
完璧に僕の気分ですね。
灯「……二話にして作者に殺意を抱くキャラってどうなんだろうな」
あっはっは、いいじゃないですか。
とりあえず……コーナーの説明とか。
灯「あぁ。これから後書きではキャラの座談会、作者と対談、それと本編中では解りにくかった出来事や能力などの補足説明をするぞ」
上出来だね、じゃあ最後に一言
灯「作者がアレな性格なもので更新は遅くなると思うが、ファミリアをよろしく、だ」
アレな性格は余計だよ。