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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
28/66

第26話:コードファミリア 反逆のアカネ

今回のお話は茜が絶対遵守の力を手に入れて、小鳥遊町を支配する小鳥遊家と知恵と力を手に立ち向かっていく物語……ではありません(笑)

お嬢様、事件です。


そう言うしかなかった。それ以外に道はない。

彼女の手を煩わせるのも嫌だし、それよりもなによりも僕にだってちっぽけなプライドはある。

ノミ程度の小さなプライドだが――否、小さなプライドだからこそ決して捨てる訳にはいかない。

そう、これは男として残された最後のプライドなのだ。

だから……だから……


「やっぱり……無理です……」


ここは僕の部屋のすみ、僕はそこまで追い詰められていた。

凶暴なまでに黒い体躯、その移動速度は正に高速、そして双眸はこちらを逃がすまじと観察している。


「く……う、うわああああああああぁぁぁぁぁ!!」


奴には勝てない。

僕程度の実力では、奴に対抗する手段がない。

悔しい、自分に力がないのが悔しい。奴を倒せる力が。

敵は突進の構え、こちらに退路は無し、これ以上の抵抗は不可能だ。

僕は、死を覚悟した。


「おい、何やってんだ?」


聞きなれた声、それと共にバシィン! という心地いい音が響く。

彼の右手にある武器が、奴を破壊した音だ。


「い、イッセー!」


目の前に現れたのは、一聖だった。


「うぎゃあ! 飛び付くな! 男に抱きつかれても嬉しくねぇ!」


「ありがとう! マジでありがとう! アイツ……僕じゃあ無理で……」


「は? お前ってゴキ「言うな! 名前を言うな! 名前を言うだけで10匹は増える!!」


彼の手には、聖剣(スリッパ)が握られていた。




そしてその後、一聖は座布団へ、僕は布団へ腰を下ろす。


「とりあえず、今日は一聖が来る日で本当に助かった……」


安堵の溜め息を吐く、今の状況は僕一人では対応しきれない。

それに対し、一聖は疑問顔。


「んあ? ゴ……黒い侵略者一匹の話じゃないのか?」


「あぁ、ゴ……台所の支配者だけじゃないんだ、問題は」


この状況の深刻さを伝えるために、一拍おいて、そして出来るだけ重々しく告げる。


「茜が……クーデターを起こした……」


「は?」


うわ、すっげぇ淡白な反応。


「ま、まぁ、とりあえず順を追って話してくれ」


「クーデターが起きたのは今日の朝、今が1時だから大体4時間は逃げ回ってたかな……。で、今日の朝の事なんだが、茜が地位向上を求めて反乱したんだよ」


本人曰く魔道書というのは基本、持ち主に忠実らしいが……フランクに育てすぎたか……。


「ふぅん。しかしそれがどうして高速の黒影の件と結びつくんだ?」


「それがだな、茜はどうしてか動物、昆虫と意思疎通できるらしいんだよ……」


また42の能力の一つだろうが、一聖はそんな事知らない。教える気も無い。

だからまぁとりあえず、曖昧に納得してもらうに留めた。


「そして報酬があるのか何か知らないが、お屋敷中の虫とネズミとかが大挙して襲ってきて……現在、お嬢様とも分断されてる」


そう、それが痛い。

お嬢様がこの件に気づいていないならそれに越した事はないのだが、この様子ではどの道彼女に協力を要請するしか無さそうだ。


「頼む一聖……動物なら狼が襲ってきても大丈夫だが、虫だけは駄目なんだ!」


必死の懇願、うん、自分でも女々しい事は分かってるんだがどうしようもないから仕方ない。

僕の言葉に一聖は嘆息した。


「はぁ……ま、さっさと片付けよう、この騒ぎじゃあ仕事も出来ないしな」



                 ***



「一聖、本当に大丈夫なんだな?」


「おう、任せろ」


僕と一聖は今、廊下を走っている。

一聖が言うには、裏庭にさえ出れば一発逆転の手があるらしい。

だから走る、一刻も早く事態を収拾しなければいけない。


「……っと、お出ましだ」


目の前にあるのは巨大なクモの糸、その前には数十匹のクモが蠢いている。


「一聖、本体は頼んだ! 僕は糸を何とかする!」


「分かった!」


一聖は聖剣スリッパを右手に、大群へと立ち向かう。

この隙に、僕も自分の仕事を果たさなければならない。


「うおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」


状況は思い浮かべるな、声だけを聞いてくれ、そうすればかっこいいはずだ。

絶対に想像するなよ! スリッパでばしばしクモを払っていく男と木の棒でグルグル糸を絡めとっていく男の姿なんて、絶対に想像するなよ!


「突破ァ!」


「敵将、討ち取ったりぃ!」


僕と一聖の行動が終わるタイミングはほぼ同時だった、ちなみにどれが『将』だったのかなんてツッコんではいけない。


「行くぞ!」


おう!」


そして再び走る。

長い長い廊下を走り抜けて、次に見えたのはカエルと蜂の混成部隊だった。


「クソッ! さすがにカエルはスリッパでは潰せない……その内に蜂が仕留める作戦か!?」


ちなみに蜂はスズメバチだ、今度業者を呼んで駆除してもらおう。

……ってかそんな場合じゃねぇ! これ死ぬ! 二回刺されたら死ぬ!!


「一聖……どうする?」


足元のカエルは絶妙な位置に配置されており、どう進んでもかなりのタイムロスとなる。

そしてスズメバチは一つの巣から丸々全隊が出ているのだろう、数十匹……いや、数百匹単位で滞空している。

スズメバチを刺激しないように近づかないというのも手だが、他の場所にも罠はあるだろう。

それに迂回すればそれだけのロスとなるし、最悪他の道にはハブとかクマとか即死級の奴が居るかもしれない。

それら全てを考慮し、そして答えが出ぬからこその質問。

どちらを選んでも危険な選択肢に、一聖は第三の選択肢を提示した。


「俺が……囮になる……」


ポトン、と彼の手からスリッパが落ちる。

見ると、右手には虫捕りアミ、左手には殺虫剤が握られていた。


「おい、さすがに今回は……!」


「小鳥遊が危険かもしれない、お前が助けないでどうするんだ?」


少し微笑みながら、一聖は告げる。


「大丈夫だ、死にはしない……俺一人なら、二階からでも三階からでも裏庭に出る事ができる」


その言葉で自分が足手まといになっている事を再認識した、彼程度の男なら一人で裏庭に出る事など容易い。

それをしなかったのは僕を連れて行くため、連れて行く理由としては、僕が居れば茜との交渉もスムーズに進むからだろう。


「分かった一聖……頑張れよ」


死ぬなとは言わない、死なないのが当たり前なのだから。


「あぁ……これが終わったら、俺、あの子に告白しようと思うんだ……」


やっぱ駄目かもしれない、最大級にして最有名な死亡フラグ立てやがって。


「うおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」


一聖は蜂に向かって殺虫剤を振り撒いた。

多くの蜂が仲間の苦しみに反応し、一聖に殺到する。カエルも同じく、だ。

そして虫捕りアミを駆使して蜂を寄せ付けない一聖を横目に、僕はただ前に走る。

茜の、間違った行為を止めるために……!



                 ***



「やっぱり来たね、主」


「茜……!」


目の前に居るのは茜、だけではない。

その横には、お嬢様が苦しそうな寝顔で横たわっていた。


「神経毒だよ、あんまり害は無いから安心して」


茜はその横に立ちながら、僕に話をしている。

彼女と僕を隔てるもの、それは無数のネズミたちだ。

それのせいで近づけない、いや、近づけるのだが襲われると危ない。

そんな訳で、場は一種の膠着状態こうちゃくじょうたいに陥っていた。


「茜、お前の目的は? 地位向上とは言うけど、具体的には何が不満なんだ?」


「それは灯夜にお願いする事だよ。部屋から連れ出すためにこうしたけど、後できっちり話すから」


「それは、こうでもしないと通らない願いなのか?」


「多分、ね」


会話は続く、ここまでは。

交渉の余地無しと判断、ネズミに襲われる心配はあるが少なくとも死にはしないだろう。

だから、拳を握る。足に力を込める。身体を前に向ける。意志を心に注ぐ。


「やっぱりだね。主は灯夜が一番大事だもんね」


そのときの茜は、少し寂しそうに見えた。

しかしそれも一瞬、次の瞬間には彼女の瞳が僕を捉え、そしてその華奢きゃしゃな腕が振り下ろされた。


進軍せよゴーアヘッド!」


ネズミが迫る、それを避ける。

走り走り走り、避けて避けて避けて、そして茜のそばを通り過ぎ――扉へと。


「っ! 何を!」


茜の叫びを無視して扉を開け放った。

そうだ、今お嬢様を助け出しても意味は無い、ネズミから逃げるのに荷物が増えるだけだ。

だから――まずは状況を変える!


「は、ナイスタイミングだ」


上を見るとテラスに一聖、後ろには蜂の姿も見えるが、彼は口の端をゆがめて笑っていた。

そしてそのまま腕を振り下ろす、ちょうどさっきの茜と同じように。


「さぁ――出番だぜ」


ドン、という衝撃音。地面が大仰に揺れる。

まず見えたのは緑色の触手だった、地面から大量に生えている。

そしてその中心点から這い出るように現れたのはおなじく緑色の球体。

しかしその中心には、獰猛な歯が突き出た口、しかもその奥に目。

……これは


「ドリンダちゃん!?」


第8話参照。

いやとにかくそれよりも、どうしてアレがここに!?


「ふっふっふ、白佐賀しらさがに種を一個譲ってもらっておいて正解だったぜ」


アンタ、仕事場の庭になんて危ないもの埋めてんだよ!?

つーか生物教師! んな物、易々と渡すな!!


「これが庭師の真の力だ!」


確かに初めて庭師っぽいストーリーだけども! ちょっと違うよ、これは!!

僕が心の中でツッコミをいれていく内にも、ドリンダちゃんはバリバリと生物を食べている。

すごくグロイ、詳しく描写しちゃうと小学生の子は見れなくなる。


「あ、あぁ……」


茜は茫然自失としている……って、あ。


「きゃああああああああああああぁぁぁぁぁ!!?」


そのままドリンダちゃんに絡めとられた、あのヌルヌルした触手で。


「一聖、アレ、大丈夫か?」


「あぁ、1メートルより大きいものは飲み込めないようにしている」


ならば安心。

僕は、その光景を黙って2時間ほど静観した。



                   ***



「ぬ、ヌルヌルが……イヤ……変なところに…………やめて、ごめんなさいごめんなさい、ひっ、ひぃ、やめてえええええええええぇぇぇぇぇ!!」


茜の心にトラウマが刻み込まれた。

現在、僕と一聖、お嬢様に茜は食堂に集まっている。

僕たちは椅子に座っているが、茜はトラウマの再燃現象フラッシュバックで床に悶えている。


「で、茜、お前は何がしたかったんだ?」


床に座り込んで息を整えている茜に質問する。


「ぜぇぜぇはぁはぁ……あのね、私は正式に主と同じ部屋にしてもらいたかったの」


そういえばコイツよく忍び込むな、自分の部屋もあるのに。

とりあえず理由は僕にしか分からないが、おそらく何かが起きた場合にすぐ対応したいからだろう。


「で、それを灯夜に頼みたかったんだけど……」


「駄目だ、天詩が迷惑だろ」


お嬢様は食卓に突っ伏しながら答える、痺れが完全に抜け切っていないらしい。

で、茜の考えだが良く考えれば別に悪い事でもない。

女の子と同じ部屋というのは問題がありそうだが、コイツは本だし、しかも幼児体型だからアウトオブ眼中だし。


「僕は別にいいですよ、お嬢様」


「な、なにっ!?」


そんな大仰に驚かなくても……別にお嬢様に都合が悪い訳でも無いし。


「そういやさ、茜の奴、こうしなければ要求が通りそうに無いって言ってたのは何でだ?」


そういえばそうだな、と一聖の言葉でその事を思い出す。

その事を問うように茜に目を向けた。


「だってさぁ、灯夜って主の事すむぐっ!」


あ、お嬢様が茜の口を押さえた。

茜の耳元でなんか囁いて……それに茜が答えて……あ、茜の目が妖しく光った、ような気がする。


「…………同室を、認める」


お嬢様が何かを我慢しているような、硬い声で言う。

…………一体、なんなんだ?




そして茜の目的は達成された。

しかし、やはり好意に気づけない文一であった……。





 今回は『馬鹿な事を真面目にやる』、がテーマでした。

文一(以下文)「しかしいつにも増して文が粗いな」

 あははー、すいません、色々あって……これ、三時間で仕上げたんですよ?


 で、そろそろシリアスダークもやりたいと思っております。

文「そういえば色々と準備は進んでるのに、どうして僕たちは戦ってないんだ?」

 いや、誰かさんの能力詳細が思いつかなくって……『小説家になろう〜秘密基地〜』様の方で案を募集してるけど、最悪ありがちなものに……。

文「ふーん、誰かのせいか」

 あぁ、いつも不幸なアイツのせいだ……という訳で、後少しだけコメディを挟みます。

文「三部構成で作者が前からやりたいと思っていた話……らしい」

 ふっふっふ、コメディ系の話には定番の事をやってやりましょうではありませんか!


文「という訳で、次回も更新まで間が空くと思いますが、出来るだけ見捨てないで下さい」

 こんな時だけ敬語モード……あ、よろしくお願いします!

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