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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
27/66

第25話:交わった

新キャラ大量、でも多分脇役多い。

グロテスクなシーンを含みます、でも表現ぼかしてるので。

なんだか詰めすぎた感が否めません、でもこんな伏線話を何話かやっても面白くないと思うので(笑)


誰が望まずとも始まり

誰も望まぬから終わらぬ

そして全ては交わり

彼らを巻き込む


 

                 ***



これは、彼らの花見の後、その日の深夜の物語。

昼間の騒ぎで閉鎖された小鳥園、その端の端にとある物体が落下した。

銀色の円筒形の先に銀色の円錐、それは分かりやす過ぎる位に“ロケット”の形をしていた。

物体の表面下部、その一部が自動ドアのように横にスライド。

そして中からは6人の、全員が銀髪碧眼の男達が出てきた。

それぞれが西洋風の鎧を着込み、腰にはそれぞれ剣を差している。


「無事ですか、騎士長殿きしちょうどの?」


男の内の一人、革製のような鎧をまとった男が、銀の鎧の男に問うた。


「この程度でどうにかなるほど、やわではないよ。それよりも“あの方”を捜そう」


彼は柔らかく、しかしはっきりとした意志を込めた言葉で答える。

その意志は強固、目的のためならばどんな苦労も辞さないという覚悟。


「敵性勢力が地球に下りてくる可能性は低いが、十分注意して事にあたるように」


銀の鎧の彼が、腰からすらりと剣を抜く。

そしてそれを前方にかかげると、周りの男たちもそれにならった。


「では、我らに天運あらんことを」


言葉の後、全員が剣を軽く触れ合わせる。カン、という軽い音。

これが彼らの、作戦前の儀礼行為。

ここまでが彼らの、作戦前の儀礼行為。




「あら、なにやら楽しそうね。参加させていただけます?」




と、彼ら一団から離れる事約数メートル、そこから声が響いた。

月夜に映える紅い眼と、そこだけ闇を遠ざけるようにたなびく白い髪。

小鳥遊たかなし みなとが、そこに居た。

まず反応したのは、銀の鎧の男に話しかけた革鎧の男。


「クッ! 原住民か!?」


合わせていた剣を離し、そのまま上段に構えて彼女に挑みかかる。

銀の鎧の男は知っていた、彼が自分の指揮する『騎士団』の特攻隊長であることも、今現在の行動は交渉を有利に進めるための脅しであることも、そして彼の実力も。

だから、止めなかった。止める要素は何一つとしてなかった。


「まぁ、せっかちさん。あまりに手が早いと女性に嫌われますよ?」


しかし、彼の期待も予測も信頼も全て打ち砕くように。

いきなり闇から現れた腕に、革鎧の男の頭が掴まれる。


「な……! がっ……!」


革鎧の男は必死でもがくが、いかんせん腕の持ち主と比べて力負けしている。

闇から現れた腕の持ち主は青年だった。

安物のジーンズに、闇に紛れるような黒い上着、頭には顔を隠すようにニット帽をかぶってある。


「……嬢、無茶が過ぎる」


無感動に無躍動に、その青年は湊に声を向けた。

それに向けて、湊は一言。


「あら、どんな状況でも貴方は守ってくれるでしょう、私の執事?」


湊の言葉に青年は答えず、ただすこし憂鬱そうにため息を吐いた。

その様子に唖然としていた鎧の男たちだが、いち早く思考を回復させた銀の鎧の彼が叫ぶ。


「気をつけろ! 奴ら、まともじゃないぞ!」


彼の言葉に鎧の面々は、湊と青年に敵意を向けた。

その様子を見て、青年は嘆息し、湊は複雑な顔をしている。


「あらあら、もうなのね……ごめんなさいね、それほどやりたい訳でもないんだけど……」


そしてそのまま、青年が掴んでいる革鎧の男の首筋に、脈を計るように人差し指と中指を置いて、小声でしかし朗々と呟いた。


ゆがめ。我が手を伝い、我が指を這い、あっせよきしつぶせ】


瞬間、ゴキリ、と、嫌な音が、響いた。

男の首は、不自然な方向に曲がっている。

男はもう、もがきはしない。

男はもう、二度と動きはしない。


「すまないね、嬢もこれはこれで不本意なんだ。事故にあったとでも思ってくれればいい」


遅れて、青年がやはり感情を込めずに告げる。

それが、鎧の男たちが持つ理性の限界だった。


「っ……! 貴様ああああああああぁぁぁぁ!!」


怒声と共に飛び出したのは一際大きい体の男、腰に差す剣も刃が厚く彼の足ほどの長さの物。

その後ろからもう一人、無言ながらも確かな怒りを込めた目で湊を睨んでいる男が駆け出した。

その男は小柄で、既に手の平に収まっている剣も小振りで、どちらかといえば短刀のような形状だ。


大柄な方の男は青年に向かって走る、そしてそのまま刃を大上段に掲げ持った。


「第23星系騎士団エリオス部隊所属、ダイド・フレイド! 小僧、名乗れええええぇい!!」


男の叫びに、青年はひどく落ち着いた様子で返した。


「小鳥遊 湊の従者、死乃裂しのさき 刃音はおん


それは禁忌の名。裏社会に関わる者ならば誰もが恐れ慄く恐怖の対象。

しかし不幸な事に、大柄な男はそれを微塵も知らなかった。


「その名は墓まで持っていく……くらえええええぇぇぇぇ!」


そのまま接近、大上段に構えた刃を裂帛の気合と共に振り下ろす。

空気を切り裂くその刃は正に必殺、人の身程度で耐え切れるものではない。

ただ、青年――刃音は、それを三歩下がる事で完全に回避した。

三歩、刃を振り下ろすという1アクションに対し、3アクションの行動。

その差は、両者の圧倒的な速度の差。


「西洋剣……か。さすがに、戦った事はなかったな」


言葉と共に踏み込む、男は衝撃に対して身構える。

が、遅い。

男の手が中途半端に持ち上げられた時、刃音は既に密着に近い位置に居た。

そして拳による打撃、狙いは腹部、見事命中。

鎧が震え、男がよろめく。


「でも、たいした事ないんだな。近づかれると脆すぎる」


よろめいた男に、さらに頭部への回し蹴りで追い討ち。

そのまま器用につま先を首にかけ引き寄せ、顔に肘鉄ひじてつ

ダメ押しとばかりにもう一撃、砕けた鼻に向かってストレート。


「が……っは!」


そして男は、無様に顔を押さえてうずくまった。

そしてその頃、湊は――


ゆがめ。我が手を伝い、我が指を這い、あっせよきしつぶせ】


男の剣を持っている方の腕に手を置き、そして詠唱。

当然のごとく、きんぞくが圧壊する音と、にんげんが圧壊する音の二重奏。


「ぐ、……アアアアアアアアァァァァァ!」


そして、悲鳴が加わり三重奏。

不自然な方向に曲がった腕から、短剣がコトリと落ちる。

湊はそれを無造作に拾い上げ、そしてクルクルと弄ぶ。


「これは頂いておくわね。このレベルの刃物は中々ないのよ」


小柄な男は悲鳴を上げ続け、大柄な男はうずくまり続ける。

そして小柄な方の男を踏みつけて、湊は笑う。


「アハハハッ! 弱い弱い弱い脆い脆い脆い軟い軟い軟い! 宇宙人? 何よ、全然人間じゃない! 弱くて脆くて軟くて壊れやすくて――全然、変わらない……」


笑いを止め、残りの鎧たちを睨みつける湊。

残るは三人、それをどう蹂躙しようかという品定め。

それに対し、男の内の一人が動いた。


「……騎士長殿、ここは任せてくだせぇや」


男は一歩前に出て刃を抜く。


「しかしっ! あれは一人で相手できるものでは……!」


銀の鎧の彼は、男をさえぎる様に前に出て、命令というよりは懇願に近い形相で胸に手を当てる。

しかし、男はその手を跳ね除けそれよりもさらに前に出る。


「帰ったら……」


そこで溜め息を一つ、間髪入れず笑みを浮かべた。

おそらく彼の人生最良最後の笑みを。


「酒でも、奢ってくださいや」


その言葉に、銀の鎧の彼はもうさえぎることは出来なかった。

ただ、悲しそうに笑うだけで何も出来なかった。


「給料が入れば……特上のを、な」


別れの挨拶は、それだけ。

男は前へ、残り二人は後ろ――“ロケット”へ。


刃音は残り二人を追いかけ、湊は向かってきた男に刃を向ける。

激突する、その瞬間――


「……っ! 嬢!」


刃音が叫び、そして湊の下へ飛び退く。

そのまま後ろから抱きかかえ、さらに後ろへ。


「誰か来る……死乃裂か小鳥遊か、どっちにしても面倒だ」


さきほど声を荒げたのが嘘のように、刃音の声音は無躍動の無感動に戻っていた。


「黒椿峰でも……さすがに助けてはくれないでしょうしね」


腕に抱かれたまま湊が答える、二人はそのまま公園を横切り、林の奥へと走っていった。

そしてそのまま、5秒ほど無音が続く。


「…………助かった、のか……?」


痛みで気絶した小柄な方といまだ顔を押さえている大柄な方、二人の同僚を見つめながら、食い止めるために残った男が口を開いた。

後ろで稼動音がする、あの二人は全力で逃げているからこの事には気づかないだろう。

アレには隠密航行ステルスがついている、だからもう二度と見つけることは出来ないかもしれない。

それでも、男は嬉しかった。

自分と、そして仲間二人の命が残っている事を、居ないと分かっている神に感謝した。


「へ、はは……」


気の抜けた笑みと共に、気を失っている同僚の下へ歩き出す。

助け起こさなければ。まだ生きてる。地球人もきっと悪い奴らばかりじゃないはずだ。事情を話して治療してもらおう。

彼の頭では希望がグルグルと回っていた、これからの事を考えていた。


のに。


ヒュン、と空気を切り裂く音がする。

音に気づいて辺りを見渡す、しかし何も無い。

だから、彼は再び歩き出した。あぁ、早く彼らを助けなければ、と。


「あらあらあらあら、まだ動いちゃってるのが居たり?」


声が聞こえた。若い女の――ともすれば少女かもしれないような声。

男は気づいてそちらを見る。そこには確かに少女が居た。

金に染めた髪をツインテイルにまとめており、シャツには胸に大きくハートのマーク。

スカートはギリギリまで短くしており、足にはスニーカー。

これは一般的な服装だ、地球の一般的な服装だ、彼の知識はそれを知っている。

なのに。

どうしてもこんなに、恐怖を抱かなくてはならないのか。


「だ、誰……誰だ!」


喉から搾り出すように声を出す。喉に何かが詰まっているかのような圧迫感。


「誰と聞かれれば答えるのが世の情け、だっけかな? うん、じゃあとりあえず名乗れば納得?」


女の声が夜闇に響く。普通の少女の声だ、街中で聞こえる声となんら変わりはない。

なのに、どうしてもこんなに冷たく響くのか。

男が焦燥のあまり同僚の下に這いずって移動しようとすると、その同僚たちが動いた。

しかし、決してありえない風に。

先ほどの骨がどうかという話ではなく、本当に生物ではありえない風に。


「我が名は、死乃裂しのさき 符弓ふゆみ。ってね」


女が上機嫌そうに笑うと共に、同僚の変化が顕著けんちょになった。

ズル、という音がする。

ゴトリ、という音がする。

それだけ。それだけで同僚は「生物」から「死物」になった。

顔に何かが当たる。理解できない。理解したくもない。

折角、助かったはずだったのに、理解できない。


「あ、あぁ……あああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」


故に叫ぶ。現実など見れず。目の前の光景など受け入れられず。


「そんなにうるさいと近所迷惑だぜ、おっちゃん♪」


シュルシュル、という空気を裂く音が鳴り、少女の手元には数枚の金属の板が現れていた。

ただの板、見た目にはそうとしか見えない。


「じゃ、とりあえず排除いっとく?」


三度、空気を裂く音。

既に少女の手元に板は残っておらず、ただ音だけが響く。

シュルシュルと、ヒュンヒュンと、何かが舞う音。

次の瞬間には、男の命を奪う音。

“それ”は、男の首筋に飛来し――


「やぁ」


何かに弾かれて、金属音を立てた。

男の前には青年が立っている。

宮司の服で脇差を構えているその青年は、体つきこそがっしりとしているがいかにも気弱そうであり、男は目の前の光景が信じられなかった。

目の前の少女は気まずそうな顔をして立ち尽くしている。

と、青年は少女に話しかけた。


「こんばんは、符弓」


「…………昇竜水神タツガミ……」


「ひどいな、役職名で呼ぶなよ」


青年は苦笑する、どうやらこの二人は面識がある――それもそこそこ親しいようだ。


「私の仕事なのよ。邪魔しないでよね」


「俺の仕事でもあるんだ。邪魔するのが仕事」


焦り慄きまったく何も出来ない男を尻目に、話は進む。


「じゃ、アンタもられとく?」


「やだな、俺は符弓と戦いたくないよ」


『…………とおる、戦闘を推奨する』


男は驚愕する。今、脇差から低い女の声が聞こえたのだ。

ただ、青年はその言葉に対して苦笑するだけだった。


「あー……邑真おうまはこう言ってるけど、僕の意思じゃないからね?」


「つまり、私の独断で今回の仕事を諦めろって事? アンタ、私を脅せるほど強いのかな?」


「少なくとも君の武器……消失の砕刃バニシングスラッシャーだっけ? それのトリックは分かってるから、俺の方が有利だと思うけど?」


青年の言葉に、少女は大きく息を吐いて答えた。


「分かった分かった。その代わり、今度何か奢ってよ」


そして、少女はそのまま背を向けて歩いていった。


「さ……て、と。後はこの人を小鳥遊に引き渡して終わりか」


そして青年の方は、まだ状況が飲み込めていない男に手を差し伸べた。







「パパ、終わった、みたい」


『ンッフッフ、観緑チャンはいい子ですヨ』


「みーは、偉いです」


『その通りですヨ。録画もキチンとしてありますカ?』


「です。……ところで、パパ、これ以上、追わなくても、いいのですか?」


『いいのですヨ、観緑チャンに危険なことをやらせる訳にはいきませんからネェ』


「みーは、愛されているのです」


『もちろんですヨ』





 祝! 高校入学! ……はい、やっぱり更新速度落ちました。

 あ、今回はキャラ呼びません。この話に関わらすのは駄目ですから。

 代わりに製作裏話をします、どうでもいい人は戻ってください(笑)


 今回出た透&邑真のコンビ、実は湖織&誘宵のコンビの役どころにあてるつもりだったんですね。

 製作中は湖織偉い人でした、そして年上でした。

 でも「ラブコメとして男女比率がこの程度ってのは大丈夫なんだろうか……」と思い直して湖織でストーリーを作り直すと、こっちのがハマリ役だったんですよ。

 というわけで透は脇役に左遷されましたとさ(笑い)


 消失の砕刃バニシングスラッシャー、実はトリックというほどでもないので既に分かった人もいると思います、合ってるかどうかは種明かしの時にでも見てください。

 元々、符弓は糸使いのつもりでした。でも糸使いで殺人者って結構多いですよね。

 という訳でバニシングスラッシャーを思いついた時に符弓の武器にしました。

 ちなみに名前はツッコまんといてください、バニシングって使いたかっただけで後半適当です……。


 はい、終了です。

 このような戯言に付き合ってくださった皆様に感謝を申し上げます。

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