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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
25/66

第23話:賑やか『過ぎる』お花見【中編】

今回はお花見のシリアス回です、一応。

次回はほぼコメディでいくつもりです、予定では。

「イッセー! 次はどこ行こっかー♪」


…………こんにちは、北川 一聖です。


「あのね、俺たちは花見に行く途中なの。花見も楽しいぜ?」


「駄目駄目、お買い物楽しいサ♪」


何だコイツは……作者が滅多に使わないはずの「♪」が常に語尾だと!?

え〜っと、この状況が何なのかというと……とりあえずコイツを――居候を拾った次の日までさかのぼってみようか……。



                 ***



朝だ。

え〜っと、確か昨日誰か拾ったんだよな……んでその夜鍋食って……で、アイツはリビングで寝かしたんだな。

よし、とりあえず落ち着いただろうし、ちょっくら事情聞いてみるか。

と、身体を起こす。

だが、なぜか重い。


「ん?」


人にはよく意外と言われるのだが、俺の部屋は片付いている。

漫画やCD類はきちんと棚に50音順で整理され、勉強道具も机の中に収納だ。

という訳で、何かが上に落ちて重い、という状況になった事がないのだが……おかしいな?

と思いながら顔だけそちらに向けてみると……


「くう……すう……くう……」


えっと、例の居候が俺の上で寝てました、もちろん掛け布団は隔ててあるけど。

うん、これなんでしょうね、新手のドッキリ? それとも今日からラブコメ主人公?

いやもう主人公はふみたんに譲るよ、永遠のいじられ役でいいからさぁ……


「一聖ー、早く起きて――きゃあ! 何をやってるんですか!?」


こんな聖に見られてお説教という王道パターンだけは勘弁願いたかったんだよなぁ……。





一時間後、説教が終わった。その後学校へ行った。

とりあえずその説教のせいで朝はうやむやになったので、夕方から事情聴取タイム。

居間にあるソファに聖が腰掛け、その隣の地べたに俺、そして真正面に電波という配置。


「で、まずはだ」


「あぁお父さんお母さん……二人が居ない間に一聖は大変な間違いを起こす所でした……」


……まだ言ってるよ、聖のやろー。

しかし間違いを起こす所だと言われても、両親出張で妹と二人暮らしという超王道展開も悪いと思うんだ、間違いを起こす事推奨状態じゃねぇか。


「……聖、話進めていいか?」


「うぅ……確かに一聖は年頃の男の子ですが拾ってきた子とそんな不純なそんな理由で拾うなんて正義感だけは本当だと信じてたのに……よよよ」


泣き崩れるな。

とりあえず聖を無視して進める。


「で、アンタ本当はどこ出身? 場合によっては親御さんに引き渡すけど」


とはいえ、『追っ手』なんかがついているようだしまともな人間とも思えない。

裏社会に関わるのはちとメンドイ気がするが……いざという時は小鳥遊に頼ろう。

ま、この期に及んでまで宇宙人とか言ったらチョップだけどな、あっはっは。


「だから、銀河統一連……」


チョップ、効果は抜群だ、電波娘に127のダメージ。


「いったあああああぁぁぁぁい!」


あっはっは、そりゃ脳天モロだからな……ん? コイツこんなに賑やかだっけ?

そのまま倒れこんでゴロゴロ転がっている電波娘に声をかける。


「なぁ……お前さぁ……」


「猫かぶっちゃ駄目だとでも!?」


いきなりぐわっと起き上がり、そのまま身を乗り出して叫んでくる。

重い、うるさい、だが体勢的においしいから許す。


「折角外に出れると思ったら嬉しくて! でも右も左も分からなくて! 挙句の果てに十年近く猫かぶってたからなかな調子戻せないのが悪いって!? 悪いのは私なのデスカ!?」


すごい迫力に、とりあえず首を横に振る。


「じゃあこんな可哀想な子を保護するぐらいお安い御用だよね?」


…………コノヤロウ、このまま居座る気か……。


「で、証拠は?」


「ん?」


「宇宙人だって言う、証拠は!?」


とりあえずこれで追い出そう、電波にいつまでも構っていられるほど家の家計も楽ではない。二日三日ならともかく、んな半永久的に面倒見れません。


「証拠……証拠……う〜ん、地球じゃ『干渉』出来ないみたいで〜……あ!」


電波は思いついたように手を打つ。

そしてゴソゴソとクソ長い髪の毛の中をまさぐりだした。


「これ!」


「ちょっと待てお前それ今どこから出した?」


なんだか髪の毛から出てきたんですけど!? どらえ○ん!?

髪の毛から出てきたのは、多分ベルトだ。

多分というのは確証が持てないからであって、その見た目はズボンを止めるベルトよりも遥かに太く、金属製でなんだか機械類っぽい物までついている。

……これは


「仮面○イダー?」


思わず口をついて出た。だってまんまだし。

そして少女の口から出たのはこんな言葉。


「それは、干渉力制御装置。男ものだけど、それがあれば私の干渉の力が上手く働くようになるはずサ」


どうやら電波の設定もうそうではあながち間違った物ではないらしい。


「で、これが?」


「調べてくれれば地球にない物質が検出されるはずサ」


調べろたってねぇ……俺、そんな技術ねぇし。


「おーい、ひじりー」


「あはは……そりゃあね、私もしっかりと手綱を引き締めてるつもりでしたよ。仕方ないじゃないですか、あんな朝早くから……はい、何?」


なんかムカつくが仕方ない、頼めるのはコイツだけだし。


「お前ってさ、如月町の方にコネあったよな?」


「…………はい、でも何?」


コイツ……聞いてなかったな。


まぁ、とりあえずそういう事でベルトを如月の方の研究所に持っていくことになった。



                 ***



そして鑑定の結果が出たのは一昨日おとといの話。

しかもそれが最近の宇宙開発で見つかった『宇宙空間を漂う加工された金属』と同じ材質だったらしい。

確かに最近の学説では、宇宙人が居るとする説が有力だ。

先ほどの加工された金属の話は他に説明がつかないし、最近各地で宇宙人の目撃情報が相次いでいる(ほとんどがブームに便乗したガセらしいが)。


「はぁ……」


「ヒジリー、これもかわいいサ♪」


「そ、そうですね……でも集合の時間が……」


つまりは、今壁一枚隔てた向こうで我が妹と共に下着を選んでるあの電波は宇宙人or宇宙開発関係者という事になる。

うーむ、気になるな……あ、壁の向こうの光景じゃなくて。

とりあえずは家においてやっているが……これからの状況次第ではどこに預けるかも決めないとな。


「かったりぃ……途中合流か」


そんな訳で、しばらくはこの買い物に付き合うことにする。



                 ***



「うー、見つからないですねー」


「仕方ねーべさ、場所がわがんねーじゃ、そう簡単にゃーなー」


「まぁ、気長に探すしかなかろう」


「だね〜」


ううぅ……一聖はどこ行ったのですかー。

……はう!? 湖織の視点ですか? 初ですー。

あぁ……戦闘担当だった湖織が……快挙ですー。


「む、湖織ー? なんで道の真ん中で感激してるのかな?」


「はう、なんでもないですー」


あ、状況説明ですね。

湖織は遅れた一聖たちを探すために神社での仕事仲間である空井からい 映恵はえ、その友達である近江谷おうみがたに 怜哉れいや、そして茜と一緒に町に出ているですー。


「むぅ……茜、聞き込みでもしてきてくれますかー?」


「了解だよ」


さすがは魔道書、認めた人間には従順ですー。

という訳で、魔道書には退散してもらった所で……


「では、折角集まったんですから楽しくもない話でもしましょうかー」


自分がまずベンチに座り、映恵と怜哉にもすすめる。

二人が腰掛けた所で、本題に入った。

もちろん、仕事モードで。


「……映恵、『北の社』はどう?」


とりあえず、仲間内である映恵に話しかける。

黒椿峰の神職は社の管理者か下働きの妖怪の二択で、映恵は後者だ。

そして映恵は昇竜水神タツガミを奉る『北の社』の妖怪、自分とは管轄が違う所の情報はやはり現地の者に聞くのが一番だ。


「一応、戦ば起きたられるようにはなっとるけん。だけんども、如月には分が悪いぜよ」


それは分かっている。

黒椿峰は妖怪、死乃裂は殺人術、小鳥遊は魔法、如月は科学。

『人間』に対する殺人術は人外である妖怪には効果が薄く、近代兵器の裏打ちされた能力相手では本能に近い所で戦う妖怪は分が悪く、人間の知性とそれ以上の能力を併せ持つ魔法ならば科学を上回る事も多い。

そこに人間を狩る殺人術が魔法に打ち勝ち、こうして循環する力関係が生み出されるのだ。

つまり、黒椿峰と如月の戦争ということになれば明らかにこちらが辛い状況にあり――今、怪しい動きをしているのは如月なのだ。


「怜哉、と言ったかな? ……今回の件に、貴方たちの意見は?」


近江谷 怜哉、この男ももちろん普通ではない。

小鳥遊お抱えの戦闘機関、対危険存在対策部たいきけんそんざいたいさくぶというのは裏では常識だが、もちろんおおやけ計画プロジェクトではない。

その中でも特に秘部、中枢の中枢である小鳥遊家の利益のためには他の全てを犠牲にするための非人道課ひじんどうか、通称「不必要悪ふひつようあく」の課長が怜哉なのだ。

あまり信用できる男ではないが、情報量では知り合いの中で1、2を争うほどだ。


「黒椿峰の幹部、狗狐風神イヌガミともあろう方が俺程度の三下に質問か? 堕ちたものだな」


ふ、と嫌味な笑いと共に言葉を放ってくる。

多分、これがこの男の常套手段。少しでも怒らせて交渉を上手く進めようとする技術。


「……まどろっこしい事はやめにしよう、不必要悪。湖織達の情報は貴方に筒抜け、その代わり貴方の情報は湖織達に筒抜け、これでお互い様でしょ?」


「これは失礼、五分五分フィフティーフィフティーで満足できるほど楽観的な性格ではなくてね」


最後にもう一つ嫌味を吐き、それから向こうも情報を提示した。

すなわち、小鳥遊は今回の件には本格的に関わらないと。


「…………どうして?」


「こちらとしてもね、事情があるのだよ。一人、どうしても消さなくてはいけない人間が居る」


そしてその為の不必要悪だ、と言葉を打ち切った。

どうやらこれ以上話すつもりはないらしい。


と、ここまで話した所で魔道書が帰ってきた。


「ゼェゼェハァハァ……湖織ー!」


「お、茜ー、どうでしたかー?」


こういう切り替えの早さは自分でも良い所だと思う、日常と非日常を行き来するのに重宝している。


「あのね! 妖精さんが居た!」


「……………………は?」


「お店の中にね! あ、一聖も居たんだけどね! 女の子二人と妖精さんが居た!」


「……………………そうですかー」


とりあえず、深く聞かない方がいいと本能が告げていた。



             ***



風が吹いていた。

僕たちの隣ではバーベキューセットを組み立てている人たちが居る、あんまり荷物を持ってるようでは無かったのでフロレランスさんがバーベキューセットを貸し出したのだ。

何故持っていたかは知らない。

そういえばちょっとだけ話したあの人、なんだか見覚えがある気が……聞いてみたら「キニシナーイ」って返されたけど。

ま、いいか。


「…………」


今の問題はというと、何故かこっちを睨んでいるローラだ。

空気が和まない……気軽に話せない……色んな事聞こうと思ってたのに……。


「もぉ、ローラ、あんまり睨んじゃ駄目ですよ」


「だ、だって姉様! コイツの持ってる魔道書さえあればもしかして……」


「ローラ、とりあえず落ち着け」


なんか仲の良い姉妹だなぁ……こういうの見てると無性に孤児院に帰りたくなるなぁ……。

ん? 今、魔道書があればって…………。


「あの、フロレランスさん……」


「フロルでいいですよ」


今日会ったばかりなのになんか警戒心が薄いと言うか……ま、いっか。


「じゃあフロルさん、魔道書があればってどういう事ですか? それ以前に、あなた達の目的って……」


「君は、最後まで付き合える?」


僕の言葉に、返したのはフロルさんではなくメギトスだった。


「は?どういう……」


「私達の事情は君が考えているよりもずっと重い。中途半端に、首を突っ込まないで」


あぁ……そういえば湖織にも言われたよな、「中途半端に首を突っ込んでどうにもならなくなるのが文一の悪い所ですー」って。

自分ではそういうつもりは無いんだけどなぁ……まぁ、仕方ないか。


「分かったよ、……えぇと、君何歳?」


メギトスに問う、これはまぁ結構どうでもいいかもしれない事なのだが。


「……? 14歳」


「そっか。じゃあもう首は突っ込まないようにするよ、メグちゃん」


言った瞬間、メグちゃんの顔が赤く染まった。


「わ、なんかマズかった? フロレランスでフロルさんだから、メギトスでメグちゃんは間違ってないよね?」


「ちゃ、ちゃ、ちゃん付けはやめ……ん、それと、略さ、ないで……」


そう言われてもなぁ、略の方はともかく、年下はちゃん付けで呼ぶって決めてるし。


「ごめんなさいねぇ、この子、あんまり男の子と喋らないから」


「あぁ、はい。とりあえずごめんな、メグちゃん」


「だ、だから……やめ」


険しい視線が増えた。ローラ……とりあえずもう敵じゃないからローラちゃん&メグちゃんの視線が痛い……。

しかもローラちゃんの視線は思いっきり敵意だし……。

もう、話を聞くのは諦めた。

だから……みんな、早く来てくれと切に願う僕なのでした……。





 なんだかもう恒例になっちゃった気もしますが、女の子二人+妖精と「キニシナーイ」の人は「勇者以上魔王以上」よりです。

文一(以下文)「ハッ! そうだよ、あれあの人じゃないか!」

 ふっふっふ、評価・感想・後書きには作者結界が働いているから記憶が中途半端に消えたりするのだ。

文「うぅ……マジか。じゃ、もし次回に他キャラが出てきても気づけないのか……」

 イエース。


 次回もまた見てくださいねー。じゃんけん……ポン!(あの声で)

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