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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
24/66

第22話:賑やか『過ぎる』お花見【前編】

累計ユニークアクセス(一日間重複しないアクセス数です)5000突破!

皆様の日頃のご愛好のおかげです、ありがとうございます。

「…………」


空が青い。

反芻する、彼女に――小鳥遊 湊に言われた事を。

そうだ、彼女に言われた言葉は「天詩あまうた 文一ふみひとでは小鳥遊たかなし 灯夜ともよを守れない」というニュアンス。

白髪赤眼の、しかし守るべき人に似た彼女から突きつけられた事実。

実際そうなのだろう、魔道書の力を借りても手加減した湖織に勝つのが精一杯の自分では、実戦で彼女を守りきれるか分からない。

いや……そもそも、自分は本当に彼女を守りたいのだろうか。

父を、母を、妹を失って見つけた逃げ口、それにすがっているだけなのではないだろうか?

だとしたら、僕は――


「あ〜る〜じ〜!」


元気な少女の声に、意識が現実へと引き戻される。

目の前に立つ我が魔道書は、清潔そうな青いワンピースと麦わら帽子というCMコマーシャルなんかに出そうな格好だった。

……いや、確かCMの格好なのだ。今日の茜はおめかしのためにテレビの中から服装模写している。


「なんていうかな、便利だよなー、お前の能力」


「えへへ〜」


洗濯要らずだし、楽で助かる。

ふと、思いついて茜の頭を帽子越しに撫でる。


「わわっ! 何かな?」


「いや、ただこれからも――というより、これからより一層よろしくなって」


僕の言葉の意味を、茜は理解してくれたようだ。

やはり生活していると分かる事だが、この魔本の少女は普段の姿よりもずっとさとい。


「任せてよ、灯夜を守るんでしょ。主が頑張る限り、私もがんばるっ!」


言葉は見た目相応のものだが、目が本気の輝きを放っていた。

なんだかんだ言っても彼女は魔道書――戦闘の道具なのだ。


「おい、何やってるんだ! そろそろ行くぞ!」


と、遠くからお嬢様の声が聞こえる。

いつもドレスなので分かりにくいが、今日はいつも着ている物より上等なのだろう。

彼女の足元には大量の荷物、もちろん持つのは僕だが。


「はい、今行きます!」


僕たちは今日、花見をする事になっていた。

発端となったのは一昨日の一聖からの電話。

5日前から、彼の家では少女を一人居候させているらしい、まぁ一聖は良い人気質なのでそのような事は前にもあった。

その問題の彼女がまぁ、なんというか手に負えないらしく、色々と相談したいとのこと。

それを耳聡く聞きつけた桜樹が「じゃあ、その日はお花見ね!」と言ってきた。

そういう訳で――なんだか『自由参加! 天下無双学園花見パーティー!』が開かれる事になったとさ。



                 **



小鳥遊町と黒椿峰町の境にある自然公園『小鳥園ことりえん』、どうやら一番乗りのようだ。

と、思っているうちに桜樹と煉斗が現れた。


「うわああああああああぁぁぁぁ! ゆ、結華! もっとスピード下げて!!」


「や」


煉斗の本気の懇願を一文字で拒否した桜樹は、そのまま僕たちのいる広間に突撃してきた。

二人乗りの自転車は僕の目と鼻の先でようやく停止、まぁいつもの事だ。


「おはよう灯夜ちゃん! 良い桜だね!」


「お前のせいで大分散ったがな」


苦笑しながらお嬢様が答えた、桜樹の起こした風圧で散った桜は数知れずな現状だ。

と。その時頭上から声が聞こえてきた。


「むー、まだ5人ですかー」


この声と喋り方は湖織だな、とあたりを付けて頭上を見渡すと桜の木の枝に座っていた。

しかも、堂々と、巫女服で。

桜樹withキャミソールとか煉斗with革ジャンとか、それなりにきめてきた奴らも居るというのに……。

僕? 一年中執事服ですが何か?


「湖織……お前なぁ、折角遊びに来たんだからそれやめろよ」


見慣れていない人には桜と相まっていい感じかもしれないが、僕としては湖織が仕事中みたいで落ち着かない。


「なになにー、ちょっとサボって抜けてきたんですー。朝のお掃除は友達にやってもらいますー」


それいいのか神職。


と、油断している所に思わぬ奴が来た。


「やぁやぁ諸君、お揃いで!」


…………オイ。


「え〜っとなぁ、お前さぁ、呼んだ覚えはないんだけど?」


「ひゃはは、俺がこ〜んな楽しそうな事、逃すと思うか?」


目の前にいたのは赤坂あかさか 響玖ひびく、一年二組の奴で中学時代の友人だ。

とりあえず人生の大半はろくでもない事を考えるのに使っていて、ついたあだ名が『学園最凶のイタズラ師』。……ある意味煉斗のあだ名よりタチ悪い。


「ま、とりあえず俺とかあともうチョイ呼ぶけど、参加OK?」


振り向くと大半が首を縦に振っていた、賑やかな方が楽しいからまぁいいか。


「じゃあ、適当に人呼んでくれ」


響玖はおう、と片手を挙げると、ポケットから携帯を取り出して通話を始めた。


「よ、映恵、お花見だ。小鳥園に集合な」


『な!? ちょっと待ちなさぁ、響玖! わたしゃあ、神社の先輩に頼まれた仕事があってなぁ――』


「まぁまぁ、息抜きも必要だぜ?」


『うー、まぁ響玖がそう言いなるんなら〜行かねでもねが〜』


「ありがとう映恵、愛してる」


『ぬあぁ!!? なっ、ひび、ちょ、なにい――ピッ。


響玖は地面に転げまわって爆笑していた、どんな時でもイタズラを欠かさないのはさすがと言うべきか。

一通り笑い終わると、また別の人に電話をかけ始めた。


「よ、怜哉。お花見だ。今すぐ小鳥園来い」


『了解だ。今そこで卯月と会ったんだが、もちろん一緒に連れて行けばいいよな?』


「イエース。わざわざメールする手間減ったな。ありがと」


『あぁ、では今から行くぞ』


「オゥケィマイブラザー! んじゃ、愛して――ピッ。


途中で切られた。悔しいらしく、木の幹をドンドン叩いている。


「あ〜! またやられた! 怜哉んだけは一回も成功してねぇんだよなぁ」


そう言われても僕が知っているのは響玖だけだ、電話をかけていた二人のことは知らない。


「まぁ、何はともあれ後は一聖組だけ「こらああああああぁぁぁ!! わ・た・し・を! 忘れるなああああぁぁぁ!!」


全力疾走してくる女性が一人。あ、忘れてた。


「ぜぇぜぇはぁはぁ……おい、テメェラ! 私の事おもいっきり忘れてただろ!」


「「「「「「うん」」」」」」


声が重なる、ほぼ全員の。


「だってさぁ、ウマコさんの出番ってラビリンスの時だけじゃん?」


「は? 出番って何?」


僕の前に立っているのは馬子坂まごさか 魅伊香みいか、あんまり影薄いので存在すら忘れかけてた。

いやぁ〜、クラスに一人は居るよねこういう奴…………え? 居ない?




「で、北川兄妹&その居候が来ない!」


ウマコさんが来てから10分経っても彼等は来なかった。

つー訳で電話、あぁ文明の利器とは偉大なり。

数回のコールの後、一聖ではなく北川妹が出た。


『はい、ふみくんですか!?』


「そうだけど、え〜っと、一聖の携帯にかけたのにどうして北川妹が?」


『ちょっと……色々と……あの娘が…………』


言葉が結構途切れ途切れに聞こえてくる、なんだか大変らしい。


『お花見は……先に始めてくださ――キャッ!』


ツーツーツー。

…………すっげぇ不安なんですけど。


「ま、まぁ……とりあえず行くか」


全員頷く、半分ほどは心配顔だが。

ちなみに心配してないのは煉斗(無関心)とか響玖(ニヤニヤ)とか茜(花見にドキドキ)とか。

という訳で僕たちは歩き出す、目指すは桜の多い公園中心部だ。






「姉様、お注ぎします〜」


「まぁ、悪いわねぇ」


「……姉様、これ食べていいのか?」


先客が居た、しかも外国人。

OK、認めよう。桜は日本の象徴だ、外国人に大人気だ。

だからまぁ、ここに金髪碧眼の三姉妹がいた所で基本的には何の問題も無い。

ただ、一つだけ問題がある。

その内の一人が、知っている顔というのが問題なのだ。


三姉妹、その中で一番小さい人影はローラだった。


皆さん忘れてる? ホラあれだよ、結構前に襲ってきた魔術師。

……なんでこんな所で和やかに花見してんねん……しかも思いっきり私服だよ、この前のローブ姿とは大違いだよ。

とりあえず幸いだったのが僕一人だということだ。

他のみんなは買出しや遅れた人間の様子を見にいったり、仕事に連れ戻されたり(湖織がさっき呼び戻されてた)色々とあったので、僕が場所取りに出向いたのだ。


「え〜っと……」


とりあえずこちらには気づいていない。

というかもし戦闘になったらどうしよう……お嬢様守る前に茜を守らなきゃいけないじゃないか。

というかローラの事忘れかけてたよ、一番身近な脅威なのに。


と、考えていると、花見をしてる内の一人と目が合った。


どことなくローラに似ている気がするが、こちらはかなり髪が短い。

活発そう……というかイタズラっぽい……というより凶悪な目だ。

もう一人のほわほわした空気の人が一番身長高いので、多分こっちを見た娘が次女だろう。


「…………」


「…………」


無言で3秒。


「……飲むか?」


「は? あ、いえ、遠慮しておきます」


ずいっと差し出されたのはオレンジジュースだ、あんまり年齢変わらないように見えるし未成年なんだろう。

なんというか見た目よりも優しそうだなぁ……とか思ってる場合じゃない!


「あーーー!!」


ほら見つかった……。


「まぁ、どうしたの、ローラ?」


一番大きい人がローラの肩を叩いて返事を促す。


「あ、あ、あ、ああれ! 魔道書の、持ち主っ!」


「あ、どうも〜」


とりあえずいつでも逃げられるように心構えはしておく。


「お前が、魔道書の持ち主か……」


なんだか次女(?)に睨まれてる気がするよアハハ……。


「こ、このぉ! 前は竜閃炎鎖ドラゴニカクロウズでしたが今なら――!」


と、ローラはポケットの中から懐中時計を取り出す。

……これ、やばくね? ほら、茜居ないから戦えないし……ねぇ?


【燃や――ぎゃ!


しかし、詠唱は中断された。

そちらを見れば次女っぽい人がローラの頭にゲンコツを落としている。


「こら、今は仕事中じゃないだろ」


と、それと同時にいつの間にか僕の後ろに居た長女っぽい人が僕の肩に手を置いた。


「まぁまぁ、今日の所は警戒しないで下さい。我ら魔術結社『そら』は、お花見に来ているだけですから」


「残念ながら、社長は来れなかったけどな」


…………へ? 何だこの状況?


「え、え〜っと、とりあえず……何?」


「状況を要約しますと……私たちは別に見境なく人を襲う訳ではないのです、この前はローラが先走ってしまったようですが……」


「それについては謝罪するよ」


ぺこりと次女が頭を下げてきた、ついでにローラも頭を押さえつけられて強制的に下げさせられている。


「そして我々は仕事と目的以外では決して無駄な戦闘をしません。それに、今はこんな綺麗な桜が咲いてるじゃないですかぁ」


「は、はぁ……」


なんだか長女さんが幸せオーラを放っている。

なんというかピンク色とか黄色とかが入り混じった色が長女さんの周りに見える。


「という訳で、一緒にお花見をしませんかぁ?」


「え!? 姉様、こんな奴――「ローラ、お前のお詫びも込みなんだ、自重しな」


なんというか……いいのかな?

いや……まぁ、良く考えたら情報を聞きだすことも出来るのか、湖織はそんなに色々と教えてくれないし。


「じゃあ……あとからもっと来ますけど、大丈夫ですか?」


「はい、お花見は賑やかな方が楽しいですからぁ」


うん、決まり。


「僕は天詩 文一、よろしくお願いします」


「フロレランス・リーリアです」


長女っぽい人改めフロレランスさんが先陣を切って自己紹介。


「メギトス・リーリア……まぁ、短い付き合いかもしれないけどよろしく」


続いて次女=メギトス。


「…………ローラ」


そして最後にむくれた様子でローラが続く。




なんだか……予想以上に賑やかな気がしてきた……。





 大変だな、この状況。

ローラ(以下ロ)「うぅ〜、どうしてアイツと……」

 なんだかあれだよな、お前。

ロ「ふぇ?」

 悪役になろうとしてなりきれず、中途半端な位置で目立たず消えそうだよな。

ロ「……消えるのはお前だこのクソ作者め、とローラは反論してみます」

 グハッ!……果たしてこの口調を覚えている人が何人居るのか……。


 7日から高校デビュー! ……はいすいません更新ペース落ちます。

ロ「今までが異様に早かっただけな気もしますが」

 どうせ遅筆ですよ……グスン。

ロ「え、え〜っと! それでは次回もゴチャゴチャしますがよろしくお願いします!」

 グスン。

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