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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
23/66

第21話:訪問、煉斗と一谷

後書きに重大(?)発表が!

さぁて、と。

とりあえず名乗り、白咲しろさき 煉斗れんとです。

今日は結華とデートです……と言うとなんかおおげさだけど、実際はお互い暇だったので買い出しに付き合ってもらっただけだったり。

僕は一人暮らしなので、こういう買い物なんかも自分でしなければいけないのが不便だと思う。

だからまぁ、たまに結華に手伝ってもらったりするんだけどね。


「…………ねぇ、煉斗くん?」


「なに?」


結華が少し不満と言うか不安と言うか、そういう声で話しかけてくる。


「私だってね、あんまり個人の食生活にツッコム気はないよ……」


気まずそうに、目を逸らしながら言ってくる。


「でもさぁ、ずっとこれだけはさすがに駄目だと思うんだよね……」


そう言って結華が非難したのは袋の中身。

そこには大量の野菜ジュースと大量のカロリー○イト的な食料。


「そうかな? 基本的に腹は満たせるし、野菜ジュースを飲めば栄養は補えるし……」


「そういう問題じゃないよ! これ絶対人間として何か間違ってるよ!」


む、失礼な。

僕は食事を楽しむ人間じゃないので、そんなことは気にしてないんだけど……。


「僕だって仕送りだけで生きてるんだから、少しは切り詰めないと遊べないし……」


「もう! そんなんだったら仕事をすればいいのに! 簡単なお仕事くらい紹介できるよ?」


皆さん、忘れがちでしょうが結華もお嬢様です。


「面倒くさいからヤダ。というかそんなに気になるんだったら結華が作ってよ」


「う〜、煉斗くん、知ってるくせに〜!」


結華は料理が出来ない、というかしたことが無い。

ここらへんはさすがお嬢様と言うべきか、家では包丁を握らせてすらもらえないそうな。

しかしそんな態度の僕に、業を煮やした結華が怒り口調で叫んでくる。


「もう! せめて今日ぐらいは普通の物食べなさい!」


参ったな、結華も結構頑固だからなぁ……なんか安い喫茶店にでも入ろう。

と、目に映ったのは食堂。あの規模なら個人経営っぽいしそんなに高くないだろう。

よし、ここに決めた。


「じゃあ、結華。ここにしようよ。安そうだし」


「……煉斗くん、そういうのは思ってても口に出しちゃ駄目なんだよ?」


ははは、と笑いながら店に近づく。

店に近づくと共に看板が良く見えるようになってくる。

看板にはこう書いてあった。




一谷食堂




「ん? なぁに、煉斗君? なんだかダラダラ汗かいてるよ?」


「い、いいいや、ななななんでもないっ!」


確かこの前のゲーセンの時に修羅場の発端となった風香ちゃんの名字は一谷……。

それに文一に聞いた話じゃ、食堂経営って……ほとんど間違いないじゃないか……。


「ね、ねぇ結華!? べべべっ、別の所にしないかなっ! 何でもおごるよ!?」


「ん? 煉斗君、声が裏返ってるよ? ……まぁいいや、早く入ろうよ」


あぁもうおごるに釣られないなんてこの金持ち! 一聖とかなら絶対ついてくるのに!

ヤバイ、……このまま二人を引き合わせる訳にはいかない……。


……ん? 扉の前に看板がー……『本日営業停止』?


「ね、ねぇ結華! ほらこれ!! 今日は休みだってさ!!」


「む、残念。ところでどうして煉斗君はあたふたしてるかなぁ?」


結華にちょっと怪しまれたけど……まぁなんとかいった。

僕は結華の手を引いて今きた道を引き返――


扉が、開け放たれた。


そりゃもう唐突に、えぇもう本当破滅へのナイスタイミング?

現れたのは中性的な顔立ちの……男だな、受け顔の。

男は看板を片付けて、そのまま入店を促してきた。


「あぁ、もう営業中なんで……どうぞ」


対応が良いとは言えないな、新人か。……そんな事はドウデモイイ。

結華はウキウキと店の中に入る、その中に誰が居るかも知らずに。



……誰か胃薬下さい。



               ***



店の中は和風。だがもちろんテーブル席もある訳で、僕と結華はそこに座る。

……つもりだった。


「あ、煉斗さん……」


「…………」


いわずと知れたゴスロリドレス、風香ちゃんが駆け寄ってくる。

うんでもごめん、今は笑顔で硬直してる結華が怖いんだ。


「れ〜んっと君♪」


「わぁ結華笑顔が一ミリも笑ってないよ?」


不安そうに風香ちゃんが見上げる中、僕はガタガタと膝を笑わせるだけだった……。


「いやぁ、まさかこの子が働いてるお店だったなんてねぇ」


「いや誤解だよ、適当に選んだらここだっただけで……」


「仲良しさんなんだねぇ」


「ねぇ結華落ち着いて。この子の年齢考えて。僕の射程範囲外。僕は健全に同年代の子が好きです」


「わぁ、私の知らない間にロリコンに目覚めてたんだぁ」


だ、駄目だ……今の結華には何を言っても通じない……。

食事にきただけなのに……血祭りに……。


「あの〜、私は煉斗さん歓迎しますし彼女さんもですですよ?」


やめてええええええええぇぇぇ! 火に油注がないでええぇぇぇ! 彼女さん『も』ってなんだよ、『も』って!?

ああああぁぁぁ! もう結華向こうで素振り(素蹴り?)してるし!


「あの〜、お客様、出来れば席に座って飯食ってほしいんだけど」


と、さっきの店員が話しかけてくる。


「じゃ、じゃあ結華を止めてよ!」


ごめんもう半分ヤケクソ。

すると店員は「あー、はい」と適当に返事をして結華に近寄っていった。



                 ***



その後、結華は見事に落ち着いた。

店員に聞くと「まぁ……姉で慣れてるんで」だそうだ。


「煉斗くん煉斗くん! ここ、和洋中全部揃ってるよ!」


問題といえば結華がご機嫌すぎて財布の中身が心配な事だが、まぁ治療費に比べれば安いものだ。


「え〜っと……んじゃ、僕はカレー」


「じゃあ味噌汁とご飯は基本として……アジのフライと揚げ出し豆腐にすき焼き(小)! デザートにプリンも!」


結華の背が伸びないのは永遠の謎です、まぁ小さい方が好みなんだけど。

という訳でご飯を待っていると、僕の隣に風香ちゃんが座った。

…………Why?


「あ! なんで来てるのよ、……え〜っと、ちっちゃい子!」


「貴女にちっちゃい言われたくないですです! 一谷 風香ですです!」


え〜っと、結華が僕と対面に座っているので、二人の視線の交錯が見えてすっごく怖い。

そしていがみ合った後、結華がこっちを向く。


「ねぇ、煉斗くん、私も隣行っていいかな?」


「え、え〜っと、ここ二人しか座れないんじゃあ……」


「じゃあその子と席代わってもらおうかな? いいよね、煉斗くん?」


…………なんだかヤバイ雰囲気……。

ここは、三十六計逃げるべし?


「あの、ちょっと、トイレに〜……」


そのまま立って走り出す。背後には殺気よりも恐ろしい敵意が渦巻いていた。




「や、上手くいきましたか?」


トイレから出た所でさっきの店員に出くわす。


「なんか……敵意が悪化してるような気が……」


「そうかもしれませんね。『彼女だと言うのなら逃がさない努力より振り向かせる努力をした方がいいと思います』と言っておきましたから。なかなか燃えてましたよ」


…………あぁ、殺意が直接こっちに来ないようになっただけで悪化してるのねん。


「アンタ……また余計な……」


「アンタじゃなくて稲生いのうです、そっちは?」


「ん? あぁ、白咲 煉斗だけど」


店員が驚いたような顔をしだした、何だ一体?


「いやぁ……もしかして繚乱荘7号室の白咲さんですか?」


「はぁ……そうだけど、なんで知ってるの?」


「いえ、此度お隣の6号室に越してきた者です。以後よろしく」


おぉ、なんたる偶然。

向こうが頭を下げてきたのでこっちも下げておいた。

……つーかこんな所でこんな事やってる場合じゃねぇ!

僕は、結華と風香ちゃんが居るであろうテーブルまかいへと向かった……。




はずだった、のだが。


「わ〜! 結華さん、これ持ってるんですか〜!」


「風香ちゃんの可愛いね〜!」


何故か全力で和やかムード。携帯をお互いに覗きこみあいながら、なんだか盛り上がっている。

男と女の思考は違うというけど、僕はこの時ほど女性の思考が不可解だった事はない。


「あ、煉斗くん! こっちこっち〜!」


結華に近づいて液晶を覗き込むと、そこに映っていたのはデフォルメされた女性のキャラクター、そして散らばる家具類や衣類。

これは携帯で登録すれば無料ですることが出来るゲームだ。

確か僕も登録していたと思う。


「……で、結華と風香ちゃん。共通の話題が出来て仲良くなったと」


「うん!」「ですです」


なんか……分かりやすいのか分かりにくいのか。


「煉斗さんも登録しましょう!」


風香ちゃんが近づいてくる。

登録といっているのは多分、あれだ。お互いのゲーム内での名前ハンドルネームを同意の元登録しておくと、今ゲームをやっているか、どのゲームをやっているかが分かるようになる。


「う、うん……でも結華が……」


「ん? 私がどうかしたの、煉斗くん?」


さっきまで隣に座る事すら怒ってたのに……なんなんだこれは。

ま、まぁいっか。


「んじゃ、登録しようか」


「はいですです!」



               ***



そして夜。


「いつも通り寂しくカップ麺……と」


今日は切れていなかったから買わなかったが、夜の主食はこれであることが多い。

味は気にしない僕だが、さすがに団欒だんらんの時間は恋しいもので……あぁ、なんか寂しくなってきた。

現時刻ちょうど0時、誰かに電話でもかけようかな……。

かといって母は仕事中だろうしそれよりも何よりもたいして話したくもないし、クソ親父は論外だ。

結華は今日、早く寝るといっていたし、友人にかけても「寂しい? アホかお前は」とか爆笑されて切られることうけあいだ。


(あ、そうだ)


番号は知らないが、ゲーム内なら風香ちゃんを見つけることが出来るかもしれない。

さっそく携帯をインターネットに繋いで、いつも通りの手順でゲームを始めるログイン

そして自分の管理ページから友人リスト呼び出しで……検索(ちなみにキャラ名はそのまま「フーカ」だった)。

居た。

風香ちゃんは結構人気のMMORPG(多人数参加型ロールプレイングゲーム)をやってるっぽい。

迷わず始める、実を言うとこのゲームはそこそこやりこんでいるのだ。


[黒煉:レベル167]


液晶に表示された自分のレベルを見て、多少費やした時間を懐かしむ。

説明しておくと黒煉は自分のあだ名をハンドルネームにしたもので、このゲームのレベルは最大で200だから僕はそこそこ強い。

と、いう訳で風香ちゃんを探したのだけど、それはすぐに見つかった。


[フーカ:あれ? 黒煉さん?]


チャットウインドウに文字が表示される。

打つの早いなぁ、と思いながらも応戦。


[黒煉:やぁ、暇だったからちょっと探してみたよ]


そんな感じにチャットをしていると、風香ちゃんと戦列パーティを組む事になった。

状態ステータスを確認すると……


[フーカ:レベル198]


僕の自尊心は打ち砕かれた……。

軽く落ち込んだ後もう一度ステータス画面を見てみると、もう一人の名前があった。

良く見ると地図マップでも確認できるのだが、さっきから全然喋っていなかったので見逃していたのだ。

そこに表示されていたのは……


[AI:レベル34]


AIという名前。


(う〜ん、AIねぇ……AIでアイさん? むしろあいさん?)





僕はこの時、馬鹿な事を考えるだけでその先に待つことをまったく考えもしなかった。

しかしゲーム内で会ったこのAIという存在が、僕の人生に多大な影響を与える事になるのだった……。






 はい、ここで個人ルートは終わって次回は全員揃ったりします、多分お花見になる予定です。

文一(以下文)「そんな事よりも発表があるんじゃないのか?」

 おぉ、そうだそうだ。


【その1】

 「学園珍事 ファミリア!」の番外話、「学園奇譚 サイン」を公開!

 一年一組の面々に負けず劣らずあくの強い一年二組の三人が、たった一人の少女と仲良くなるために頑張る物語!

文「本編キャラ登場に加え、二組の奴らは本編に登場する予定アリだ」


【その2】

 「学園珍事 ファミリア!」の別ストーリー、「町内珍事 メイト?」を公開!

 ファミリアのような戦闘は無く、ほぼ全編コメディで突き進む! 変人たちに囲まれた稲生君の運命は!?

文「今回の話に出ていた稲生の話だな。同じ世界だが色々と別の所で色々とあったのが分かる、ほのぼの系のお話だ」


【その3】

 連載停止中の「人類異端 パラレル」を、本格的な書き方で復帰予定!

文「タイトルで気づいた方も居ると思いますが、これはファミリアの原初ストーリーです。シリアスだらけですが、作者の気分によりファミリアと物語をリンクさせる予定です」

 お、ふみが敬語だ。


 あー、と言う事で、【番外】【ほのぼの】【シリアス】三作品のニュースでした。

 一応繋がってる部分はあるというだけでそれぞれ単体でも読めるようにしております、これは決して「ファミリアを読むのならこれも読んでくれ!」という強情なお願いではなく、ただの宣伝です。

 という訳で、それぞれに興味のある方は是非読んでみて下さい。(パラレルはまだ出来ていませんが)

文「という訳で、次回もはっちゃける予定のファミリアをよろしくお願いします」



修正:「町内珍事 メイト?」は現在連載を停止して、まったく別の話を進めております。

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