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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
21/66

第19話:夢想、灯夜と湊

今回は使ったギャグが記号を使うものでして……それって文字化けするから使えないんですね。

完成していたのが思いっきり消えてはじめっから書き直しましたよアハハハハハハハ……。

記号のギャグは抜いたし、急いで作っていたものをなぞっただけですから、文字数が少ない上に雑です。申し訳ありません。

夢を見ていた。

大して楽しくも無い、むしろ忘れたいぐらいの。

そんな気持ちの悪い夢。

だから俺は――私は。



                ***



姉が居た。

妹が居た。


その夢の時、私は5歳ぐらいで、姉は一つだけ年上、妹は4歳だった。


姉はいつも勉強をしていた。

勉強といってもただの数学や国語だけじゃない、社会経済や地理地形などを、幼い頃から叩き込まれていた。

分かっている。私たちは大きな家の娘であって、それを継ぐ義務がある。

だから、父にとって長女以外は長女を失った時のストック扱いだった。


でも、三女は違う。

彼女は三歳ぐらいの頃から鎖で縛られていた。

家の中に居なければいけなかった理由は分かる、彼女は体が弱いのだ。

でも、どうして鎖まで必要だったのか。

その理由が分かるのは、その時から一年後――。



一年経った。

姉は相変わらず恐ろしいほどの勉強量をこなしており。

自分も相変わらずストックとして同じような勉強をしており。

妹までもが相変わらず鎖を付けられて生活していた。


それだけならば、良かったのに。


朝起きた時、いつも起こしにきてくれる人が、何故かその日は来なかった。

いつもご飯を作ってくれる人も居なかった、いつも掃除をしている人も居なかった。


だって、彼等は妹の糧になったのだから。


その日の妹は真っ赤に染まっていた、いつも首に繋いでいた鎖を右手に、いつもは握るはずの無いガラス片を左手に。

死者三名、そして彼女は「ごめんなさい」と言い残してどこかへ行ってしまった。


彼女が生まれつきそういう・・・・病気なんだと言う事は後で聞いた。

精神こころ身体からだも生まれつき悪いだけだったのに、それだけなのに彼女は大変な事をしてしまった。相手にとっても自分にとっても。


ほどなくして、父は妹を探し始めた。

初めの内、私は喜んだ。父はきっと妹を助けてくれるのだと。いつも全てを正しく導いてきた父ならば、全てを正しく終わらせる事ができるのだと。

でも、違った。


父は、私たちの家系の汚点を消す為に、彼女を探していたのだ。


それを知った日、私は始めて家出をした。




行き着いた所は公園、自分の足で外に出歩いた事なんて幼稚園に行くぐらいしか無かったし、その途中にあるこの場所ぐらいしか知っている場所が無かった。

私はただ怖かった。

ストックである自分はいつ妹の様になってもおかしくは無い、そして姉を追い越せば父の様になるしかない。

自分が嫌った者になるか、自分が恐れた者になるか、その二択。


そんな事を考えていると、隣に少年が座った。

自分と同い年ぐらいで、自分と同じぐらい情けない顔をしてた。


――だぁれ?


――悪い子だよ。


――変わったお名前ね。


――……冗談か?


少年は苦笑を浮かべながら、手を差し伸べてきた。


――僕は師走しわす よもぎ、君の名前は?


――…………変わったお名前ね。


――言われ慣れてる。で、君の名前は?


――小鳥遊たかなし 灯夜ともよ……。


そして少年は、差し伸べた手をさらに突き出してきた。


――…………?


――握手だよ、あーくーしゅ。これをやるといがみ合っててもとりあえず表面上は仲良くなれるだけの効果があるっておじ……義父とうさんが言ってた。


そして少年は少し気まずそうな顔をした。

そのときはやはり場の空気を読もうと思ったのか、私は差し伸べられた手を握った。

少年の顔は少し明るくなった、私の顔は少し緩んでいた。


――で、どうしてこんな所でそんな顔してるんだ?


――それはあなたもでしょう?


――あー、僕はちょっと家に居たくないから。はい、次は君の理由ね。


――……私も、同じです。


そして私は少年に全てを話していた。汚い部分も、何もかも、全部。

同い年のはずなのに、彼は私の話を最後まで聞いてくれて、そして助言までくれた。


――あー、そこまで複雑だと良く分かんないんだけどさ、ちょっと環境を変えてみたら?


――…………?


――だから言葉使いを変えたりさぁ……あんまり枠に収まるとそれ以外の選択肢って見えにくいものなんだよね。ちょっと気分を変えてみたら?


――……はい。


彼が居たから、今の私が居る。

彼は私を救ってくれて……そして、今もそばに居る。

だから私は――俺は。



                 ***



夢を見ていた。

ただ何も知らずに自分の幸せだけ考えていれば良かった頃の。


(そうだ……確かあの後……)


自分のした行動を思い出し、思わず肩を震わせて笑う。

「言葉使いを変えればいい」、その言葉の鵜呑みにした昔の俺は翌朝のテレビの内容を参考にした。

そしてその日は日曜日であり、結果的に観る事になったのは戦隊ヒーロー物。

悪の帝王の口調が印象に残り、それを真似してこうなったのは最早いい思い出だ。


「……くく」


堪えきれずに口から笑みがこぼれた所で、自分の居場所を確認した。


電車内。


…………。


「あ、……申し訳ない」


隣の乗客に謝る、どうやらかなり奇異の視線で見つめられていたようだ。

そうだ、自分現在本家から帰る途中……帰るのだ、彼の居る場所に。


あの後、自分は彼の環境も変えられればと思い、傘下であった孤児院を勧めた。

今思えば師走家とは厄介な所だったが、運よく彼にはあまり興味が無かったらしい。

だから俺は口調を変え、彼は名前を変えた。

『天詩孤児院』に入り、その後私の執事となった少年は、現在『天詩 文一』と名乗っている……。



                   ***



僕は、自分の記憶を反芻はんすうする。

まだ自分がよもぎという名前だった頃、あの人の名前を名前と思わぬ勢いで母が付けた名前だった頃。

僕はあの日、小鳥遊 灯夜と出会い、色々あって孤児院に入った訳だ。

そしてその後、僕は彼女をずっと守っていこうと思い、本家から飛び出した彼女の執事になった。

…………あー、思い出したぞ。確か初めて話した日に妹が居るとかナントカ……。




「つかぬ事をお聞きいたしますが……」


反芻終了、僕は目の前の白髪赤目の少女に声をかける。


「何かしら?」


「あの〜、非常に失礼ですが……人とか……えぇと、殺してたりは……」


思いっきり失礼な問いかけに、目の前の小鳥遊 みなとはとても慎ましい笑顔で答えた。


「えぇ、たくさん」


「お帰りはあちらですー」


いや……だってさぁ! 怖いじゃん! 誰が殺人鬼を家に入れるかっつー話ですよ!!


「あらやだ、私、用件がある時は殺したりなんてしないわよ?」


「終われば殺すんですか?」


「場合によりけりね」


「お帰りはあちらですー」


なんですかこの状況は!? 話にだけ聞いていたお嬢様の妹が襲来してきてそれが殺人鬼で!!?


「あ、あの〜……おに、……主〜」


「兄貴、私らはどうすれば?」


あ、この二人が居るんだった。ていうか茜、お前今お兄ちゃんって言いかけただろ。

とりあえずこの二人には……どうしてもらおうか……。


「えぇっと……お帰りはあちらですー」


「兄貴、落ち着いて」


「何を言うか妹よ、お前こそおちけつ」


「主……ちょっと深呼吸してから手の平に人の字を書いて飲んでみようか?」


む、何気にそんな知識も入ってるのか魔道書は。

とりあえず深呼吸をして……


「はー、すー、はー……グエホゲホッ!」


「先に吐いちゃだめでしょ!?」


あぁ……殺人鬼にツッコまれた……人生初体験……。

えぇっと、次は人の字を描いて……


「人の字とはー、棒的な何かを棒的な何かで支える図であるー」


「兄貴……もう本当落ち着いて……」


「というか言葉の内容に意味が無いよ……」


いかんな、普段ツッコミをしている分、僕がボケだすと話が進まない。

とりあえず、本題に入ろうか。


「えぇっと……湊さんはどうしてここに来たんだ?」


「湊でいいわよ、年下だし」


クスリと、微笑しながら港が言う。……ウチのお嬢様にも見習わせたい清楚さだ。


「ぶー……なによ見詰め合っちゃって……年下好きなら別に私でも……」


真紀が何か言っているが、小声なので聞こえない。


「じゃあ湊、どうしてここに来たんだ? 僕としては早く帰ってほしいんだけど」


湊は殺人鬼で、なによりもお嬢様の妹で、そして色々な発端となった人物だ。

今、お嬢様には会わせたくない。

なのでお嬢様が帰ってくる前にカタをつけたい訳だ。


「えぇ……では、用件を済ましましょうか」


湊が呟いた、その瞬間。

ふわりと、彼女の白髪が風に揺れて




彼女は、僕に抱きついていた。





(え、えぇ、ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇ!!!!?)


一応声には出していない(というか出せない)が、心の中では大絶叫。

女の子の匂いがする、というか柔らかい。

うん、能動的に抱きつかれたのなんて、小さい頃の真紀以来だと思いますぜ。


「ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」


真紀がなんか叫んでいる。

というかこれ……やばくないか?

僕に抱きついているのは殺人鬼であって。

さらに言うと義妹の前で抱きつかれているのであって。

ヤバイ、なんかゾクゾクしてきたけど「役得だぜヒャホオオオォォォイ!」っていう震えじゃないと思う。




と、抱きついてきた時と同じように、湊はすぐに離れた。




良かった良かった、思春期のオトコノコ特有の病、「若気の至り」が発動しなくて本当に良かった。


「ぐるるるぉおおおおおらあああああぁぁぁ!!! なに私の兄に勝手に抱きついているかアアアアアアアアアアァァァァ!!!!」


真紀が口調変わるほどの勢いで詰め寄っている。

しかし湊はそれを無視しているように呟く。


「ふぅん……まぁまぁね」


「なにがまぁまぁだごらあああああああああぁぁぁぁ!!! 抱き心地か! 抱き心地なのか!? ……羨ましい」


後半はなんだか聞き取れなかったが、真紀は大層ご立腹のようだ。

そんな真紀に湊は言葉を返す。


「なにって……筋肉の具合とか体のバランスを調べただけなんだけど……」


……………………さいですか。




「さて、私はもう帰ることにするわ」


真紀を鬼神に仕立てておいて、そんな事をサラリと言ってのけやがる湊。


「え? ていうか用ってこれだけ?」


「そう……今の所はね」


言いながら、湊は僕の部屋の窓に腰掛けた。

そして、開く。


「さようなら、可愛い従者。次は私の執事も連れてくることにするわ」


危ないと思ったのか、単純に話を続けたいと思ったのか。

それは分からないが、窓から仰け反る湊に、僕は手を伸ばそうとした。

した、が――次の言葉で動きが止まった。




「それまで、貴方に姉様が守りきれるかしら?」




それは言外に無理だと言われているようで。

その言葉に深く胸が痛んで。

結局、窓の下に消えていく彼女を見届けることすら出来なかった。


それで最悪は終わりだと思っていたのに、悪い事は続くもので――




真紀をなだめようと振り向くと。

扉が目に入る訳で。

そこには。


小鳥遊 灯夜が居た。





 別題、「文一の暴走」。

文一(以下文)「何がだ」

 いやぁ、大分マシになったけど、消える前のでははっちゃけてたんだぜ?

文「…………消えてよかった」

 HAHAHA、……ゴメンナサイ正直疲れたんで後書きも早々に終わらせて頂きます。

文「さようなら、みなさん」

 さ、さよー……な、……ガクッ。Zzz……

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