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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
19/66

第18話:兆し

今回はアホみたいに新キャラ多いです、しかもそれぞれの事情が面倒くさい事になってます。

という訳でなんかすいません、一話に詰め込みたかったんです……。

「つまらないわ」


ここは、志乃崎町。

町自体が大きな商店街となっている志乃崎町だが、郊外にはビル群などもあったりする。

ここは、多くのビルの内の一つ、その地下空間。

入り口も通路も巧妙に隠された暗い部屋に、その女性は居た。


「つまらないとは、何がですか?」


途端、暗いだけだった空間から滲み出るように、男が姿を現した。

ネクタイ、スーツに革靴と社会人としての装備を整えているが、金髪でピアスをつけている姿はオフィスよりも歓楽街が似合う、そういう風貌だ。


「つまらないったらつまらないわ」


再び、女性が声を上げる。

年のころは20代後半から30代前半と言った所、クルクルとパーマをかけてある髪をいじっている。

その瞳はさして特徴のある色を浮かべる訳ではなく、ただ退屈そうに虚空を見つめていた。

ワンルームのリビングに居れば、暇をもてあます既婚女性にしか見えない。

しかして、彼女が裏社会において影響の大きい『死乃裂一族しのさきちぞく』の最高責任者、『核爆夫人ミセスアトミックボム』と呼ばれる存在だとどれだけの人間が信じるだろうか?


「つまらないと言うのは、最近旦那様にお会いになっていらっしゃらない事ですか?」


男は慇懃丁寧な口調で話しかける。

それはそうだ、誰も核爆アトミックボムの発射スイッチを押したいとは思わないだろう。


「それもあるんだけどね……ほら、あの子はいつまで経っても『おかあさん』って呼んでくれないし」


ぶーぶーという擬音が似合うような動作で、核爆婦人は不満を述べる。


「それは仕方ないでしょう。あの子は前の母をとても慕っておりました。……それに、両親が『こちら側』というのも本人にとっては複雑なのでしょう」


少し目を伏せながら、男は言う。

核爆婦人の夫は一度妻を亡くしており、彼女とは再婚でこの場所におさまっている。

そしてその彼には連れ子が居た、今は母方の姓を名乗り学校に行っているはずだ。


「それにさぁ……最近ちょっと、静か過ぎるんじゃない?」


核爆婦人の言葉の意味が、男には理解できた。

魔術結社の動きは一度確認し、妖怪もちらほらと出てきているが、明らかに足りなさ過ぎる。

この町は、混沌としていない方がおかしいのだ。

水面下にあるそれを水面下のまま抑え、そして滅するのが四つの町の長の役目だ。

表向きの代表は違う人間とはいえこの町の長は彼女である、どうやら仕事が無くて暇なようだ。


「……もしや、何事か大きな事が起こるやも知れません。如月の博士イカレ共は何を考えているやら分かりませんし……」


そこで、男はちらりと核爆婦人に目線を送った。

それを受けた核爆婦人はクスクスと笑いながら口を開く。


「そうねぇ……私の方から何かするって言うのもアリねぇ」


クスクスと愉快そうに笑う核爆婦人。

しかし、不意にその動きが止まった。


「あぁ、でも駄目。……最近は、幅を利かせているのが居るでしょう?」


「連続殺人鬼、ですか」


そう、隣町の連続殺人鬼。

他の町はこれを死乃裂のせいだと思っている節がある、まぁ殺害方法が似ているから仕方ないのだが。

とりあえず、今動くのはまずい。

それに気づいた核爆婦人は溜め息を吐き、そして何度目かも分からない言葉を吐き出した。


「はぁ……つまらないわ」



                   ***



所変わって、ここは如月町。

如月町は科学と化学の町、それ故に大学などもあったりする。

だが――この区画、中央部には大学などは欠片も見当たらず、それ以前に飲食店すらもまばらだ。

そして中央部のさらに中央、地理的にも権力的にも経済的にも街の中心となる『第一研究局』に、その男は居た。


「んっふっふー、さぁさぁさぁ皆様、研究成果をご覧に入れましょうではないデスカ!」


如月きさらぎ 大門だいもん、この研究局の局長であり、たった一人で300年先を歩いているといわれる男だ。

ざんばらに振り乱れた長髪は金色だが肌は紛れも無く東洋人であり、彼に外国の血が混ざってある事を物語っている。

乱れた白衣には手入れの一つも見られず、ただ乱雑にペンやら何やらが詰め込まれていた。


「ではではではぁ! カッモーン、我が愛しき子供達!」


そして。

ジジ、とノイズの走るような音が聞こえたかと思えば、彼の前には三人の少年少女が立っていた。


「父上、『皆様』というのはどなたなのか説明を願うであります」


その中で、一番前に立っている晴天のような色の髪と目をした少女が口を動かした。


「エ? いえいえ、それは場の気分というやつ「説明を願うであります」


と、空気が凍ったようにしばらく間が空き、


「だからワタシの気分であって特に理由は「理由が無い理由をご説明願うであります」


そう返された如月は精魂尽き果てたように膝をついて嘆いた。


「ううぅ……青衣あおぎぬチャン……そんなパパを追い詰めるように作った覚えはないデスヨ……」


「申し訳ありません、私は知的好奇心旺盛な可愛い子ちゃんなのであります」


表情を変えずに真面目に真摯な瞳で、晴天色の少女は告げる。

それを気遣うように近づいたのはもう一人の少女だ。

髪と目は若草色であり、その身は全身をすっぽり覆う黒いレインコートをまとっている。

その少女は気遣うように如月を見て、背中をさする。


「あうー、パパは、大丈夫、ですか?」


「うぅ……観緑みみどりチャンは優しいデスヨ……それに、きちんとパパと呼んでくれマスヨ……」


「む、みーは、パパが、大好き、ですから」


時々喉に詰まったように言葉を途切れさせながらも、若草色の少女は饒舌じょうぜつに喋る。


「我々の外見年齢は16歳前後であります、パパと呼ぶにはいささか不相応であります、娘が大好きという歪んだ性癖をお持ちなら外見年齢の調整をオススメするであります」


そこで、晴天色の毒舌が一閃。


「くっくっく……もうその程度で怯むワタシではないデスヨ! 人生とは失敗を重ねてもそれを糧とし不死鳥のように「では、そろそろ出かけさせて頂くであります」


口上を無視された如月は、今度こそ完全に落ち込んだ。

その肩を叩くのは、若草色とは違うもう一つの影。

霜のような白さの髪と瞳の、すこし大柄な青年だ。


「ああぁ……青衣チャンはワタシが嫌いなんでしょうかねぇ、白亜はくあクン……」


その様子を見て、青年は表情こそ変わらないが無言で首を横に振った。

それに続くように、若草色も言葉を紡ぐ。


「です、あの子も、きっと、好きだけど、照れてる、だけだと、思います!」


「おおぉ……優しいデスヨ、パパはかんげ「早く行くであります、父上に付き合っているといつになるか分からないであります」


今度こそ、如月はしばらくの間立ち直れなかった。



               ***



次の舞台は遥か上空、宇宙空間。

そこはとても不思議な場所だった。銀色の部屋だ。

銀色で、窓からはどこまでも美しい星が見える。

しかしその光景は、この部屋に居る少女の気には召さないようで……


「……外に、出たい」


ぼそりと、少女が呟いた。

少女の外見特徴としてまず目を引くのが長い銀髪だろう、彼女は椅子に座っているのだが、髪は床に流れてからでも彼女の身長ほどある。

しかしその碧眼に生気は無く、椅子の背もたれにもたれて身を保っていると言う状態だ。


「すみません、今はまだ……」


その言葉に、隣に控えていた男が答える。

少女と同じ髪の色、瞳の色だが、彼の方は鎧を纏っている。

何よりも違うのが目、彼の目は意志と使命に燃えていた。


「…………外に、出たい」


壊れたレコーダーのように、少女が同じ言葉を繰り返す。


「我慢してください、帰る事さえできれば「また、閉じ込めるの……?」


自分の声に重なるように発せられたその言葉に、男は絶句する。

血が出るのではないかというほどに拳を握り締め、そして言った。


「すみません……! 私では、外に出す事はおろか守りきることさえもできるかどうか……」


男が言葉を発した、その瞬間。

衝撃。

大きな揺れが彼らを襲った。

男が床に倒れ伏す中、どうなっているのか少女の椅子だけは倒れずにユラユラ動くだけだ。


「くっ……! 対空監視! 何をしていた!」


『す、すいません!』


そしてどこからか、違う男の声が響いた。

それを聞き届けながら男は立ち上がり、そして少女の前へ移動してからひざまずく。


「敵襲を受けました、しかし貴女の事は必ず我らが「もう……いい」


男の真摯な言葉に、しかし少女は首を横に振る。


「どこに居ても、変わらないもの」


少女は、悲しげに、儚げに、呟いた。


「……………………」


沈黙の帳が落ちる。

だが、それも一瞬。

再びこの場所を衝撃が襲った。


「くっ……何!?」


しかし、先程のとは意味することが違う。

この部屋に大きく穴が開き、そこからは暗く冷たい闇が覗いていた。


「か……っは……!」


宇宙空間、その闇の中では全てのものに等しく呼吸が許されない。

しかし、その常識を打ち破るものが一人。


「……貴方達は、……私を追わなくても大丈夫」


極めて正常に少女は呟き、そして胸に手を当てた。

そして、その終わりそうな瞳からはかけ離れた朗々とした声で虚空に告げた。


「真空の概念を、限定的に、破壊します」


バキン、と。

何かが割れるような音がし、そしてこの空間は先ほどとほぼ同じ状態に回復した。

違う所があるとすれば一つ。

少女が、立ち上がっている。


「ゲホッ、ゴホッ! ……ま、待ってくださ……!」


呼吸を取り戻した男の叫びを無視し、少女は先ほどの穴と向き合った。


「……外に、出る」


少女は、暗闇に飲まれていった。


               ***



そしてその頃、小鳥遊町。





「ぷあー、たまには外で食うのもいいなー」


あ、どうもー、文一です。今日は色々あって学校が半日授業だったんですよ。

それでお嬢様は時々本家に出向かなくてはいけない日があって、運悪くそれが今日でした。

だからまぁ、茜にぐらいは何か振舞ってやるかと思ってたら、友達と一緒に何か食べに行きました。

そしてさすがに自分一人のために飯作るのもなんだかアレだし、外に食事にいったんですが、何故かいつも行く一谷食堂が休業してたんですね、だからちょっと遠出しました。

はい、説明終わり。


「まぁ、毎日も行ってたらお財布ちゃんがダイエットする羽目になるけどな、なんとも不条理な反比例だこと」


一人で呟きながら、自分の部屋の扉に手をかける。

が、止める。少し騒がしかった。


(……ま〜た茜が僕の部屋に友達呼んでるな……)


茜は何故か僕の部屋の方が好きらしい、寝る時は本状態で本棚に収まっている事も珍しくなかったりする。

まぁそれはいいのだが、友達まで招く事もあるのには困っていた。

僕の部屋には男のロマン的なアレやコレや×××はないが、それでも女性が部屋に居るというのは落ち着かないものだ。


という訳で、丁重にご退出願うために扉を開ける。


「お〜い、茜!」


「あ、兄貴ー!」

「……ふ〜ん、あれが兄様……」

「あ、え〜っとえ〜っと、お、お兄ちゃん?」


バタン。

さぁみんな! 誰が誰だか推理してみよう! もっとも真ん中のは未登場キャラだがな!

つーかなんで妹増えてんの!? 作者は本気で12人の妹を作成する気か!?

え〜っと、落ち着け、頑張れ、何をかは知らんが頑張れ。

開く。


「兄貴ー、どうして閉めるのー?」

「……ふん、適応力があるって聞いてたんだけど……」

「え〜っとえ〜っと、やっぱりお兄ちゃんという流れかな?」


バタン。

……そうだ、頑張る事はただ一つ。

僕の唯一才能ともいえること、とりあえず理由などは置いといて目の前の現実を受け止める適応力。

はい、わ〜ん、とぅ〜、すり〜、はい催眠術完成! これで僕は何者にお驚きません、はい絶対!

開く。


「兄貴〜」

「兄様〜」

「お、お兄ちゃん?」


さぁ、ここからは独壇場ツッコミタイムだ。


「まずは真紀、お前はどうしてここに居る? 次に茜、別に場の雰囲気で無理してお兄ちゃんって呼ばなくても大丈夫だぞ? そして最後、アンタ誰!」


ふぅ……疲れた……ってか一人新キャラだしね、こんな気軽に出て良いものかと。


「はい、まずは真紀!」


「え〜っと、ちょっぴり盗ちょ……じゃなくて聞き耳たててたら兄貴じゃない声が部屋から聞こえてきて……」


真紀、聞き耳も十分犯罪です。


「はい、茜!」


「あ〜うん、なんだか12人の妹計画を成就させたいかなって」


させたくねぇよ。


「はい次君ね! どうしてワテクシが貴女の兄にならないといけないのですか!」


「だって……姉様と貴方って、お付き合いしているのでは?」


微妙に首を傾げるこの少女、良く見るとなんか変だ。

いや変だとか見た目で差別しちゃいけないが、肌が異様に白く髪も同色、瞳は赤色だ。

……色素欠乏症アルビノ


「え〜っと、失礼ですが……なんか体大丈夫?」


一応聞いておく、たしか色素欠乏症の人は日光に当たりすぎたりすると危ないとか視力が弱かったりとかそういう話を聞いた事があるし。


「……? あ、やっぱり珍しいかしら?」


「えぇまぁ」


「でもここには髪も目も赤色なエキセントリックな子が居るじゃない?」


「まぁ見慣れれば視界がちらついてウザイ程度で「誰がエキセントリックかな!?」


あー、お忘れの読者様も多いと思うが茜はすっげぇ色してるし。


「まぁとりあえず、部屋の中であればなんら問題は無いわ。さほど症状は重くないもの」


「はぁ、そうですか」


っていかんいかん。どうもペースに飲まれる。

なんかさぁ、病人……でもないけどさぁ、こういう人って話しにくいじゃないですか。

とりあえず話を戻そう。


「え〜っと、で、なんで兄様なんてドコゾのシスコンが狂喜乱舞しそうな呼び名なのですか?」


「貴方と姉の仲がいい事を知っているからよ」


上品に、口に手を当ててクスリと笑う。

……なんだこのお上品オーラは……ん? つーか、もしかして……


「えっとー、お名前をお伺いしても……」


なんだか、とっても、嫌な、予感が……


「えぇ……小鳥遊、小鳥遊たかなし みなとです」


……的中した。




 新章開幕! つーわけで評価・感想でやっちゃてたネタバレの正体が段々と明らかに!

文一(以下文)「つーかごちゃごちゃしすぎだな」

 否定は出来ない、反省はしていない。

文「しろよ」

 仕方ないんですよ、これって元々色んな原案をより集めたものだし。

文「なんか0話でラブコメっぽいもの二作から、とか言ってなかったか?」

 いやいや、そっから派生した色んな話があったのですよ。

 文一が主人公の『お屋敷ラブコメディ』とか、一聖が主人公の『五姉妹押しかけ同居系アクションラブコメ』とか、湖織がヒロインの『妖怪退治アクション』とか、聖が主役級の『ほのぼの学園コメディ』とか!

文「……別々にやったほうが良くなかったか?」

 それだと色々と時間かかるし。大体この話から派生できる物語で連載できそうな話が二つもあるんだよね。

文「なんというかアイデアだけは豊富だな」

 だけとか言うな。


 では、次回から長編でバトったり短編でコメディったり両方でラブコメったりする学園珍事をよろしく!

文「お願いします」



追記:青衣が一部「薄墨色」と表現されていた所を修正しました、昔は黒かったんです、えぇ。名前が微妙だったので青にしましたが。

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