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学園珍事 ファミリア!  作者: ニコ
一学期
15/66

第14話:ドキッ!新キャラだらけの恋愛事情【後編】

第一次ラブコメ編、完結! ドコドン(効果音)!

「ありがとうございました〜」


…………さて、状況説明をしようか。

まずは右手、店員さんにお金を差し出している。

あ、ちなみにここは志乃崎町の喫茶店ね、なんかオシャレめの(いきつけの所より高い、気に食わん)。

そして左腕は……義妹が絡みついてます。

なんかアレですよ、さながらクラーケン? 「掴んだ獲物は決して放さぬぞフゥアハハハ!」って感じ?


「兄貴〜、次どこ行く〜?」


ストロベリーパフェ(790円也)を食べた我が義妹は御満悦な様子でこちらを見上げる。

うん…………なんでこんな状況になってんだよ……。


「どこでも……いいです……」


喫茶店の割引券を受け取りながら、僕は無気力に呟くのでした……。



               ***



「あ、動きました! 移動するみたいです!」


俺の頭の上にのしかかる形になっている北川が、小声で叫ぶ。


「むー、文一、妹に抱きつかれて嬉しいんですかねー」


さらに北川と俺の間に挟まるように様子をうかがっている椿(黒椿峰くろつばきのみねの事だが、長いので大抵の人は略してる)が、訝しむような視線を向けながら呟く。


「てーかさ、どうして私まで連れてくるかなぁ。ふみくんの恋愛事情なんて関係ないんだけど……」


俺の下、無気力に結華が言った。


…………む、俺の視点か。

小鳥遊たかなし 灯夜ともよだ。

あの後、俺はあの事を友人三人に伝えた。

そして俺がやりたかった訳じゃないが椿が尾行をしようと言い出した、もちろん俺は反対したけど。

もう一度念のために言っておく、別に俺がやりたかったわけじゃない。


「あのさぁ、みんな……。そんなにふみくんが気になるんだったら別に私は口を挟まないよ? でもさぁ……どうして私まで……」


一番乗り気じゃないのが……いや、俺を除いて、だぞ! 一番乗り気じゃないのが結華だ。

……あ、そういえばまだ煉斗の事話してないな。……後でいいか。


「旅は道連れ世は情け、ですー。三人集まれば文殊の知恵だから、四人集まればきっとすごい事になるはずですー」


逆に一番やる気があったのは椿、そういえば天詩の幼馴染みだったな。

…………もしかして、…………いや、邪推はよそう。ただ単純な興味である可能性が高……


「私としては文一が誰かに盗られるのは許せないですからー」


……………………え?


「「「え?」」」


椿以外の三人の声が重なった。


「む、この集まりは結華以外そういう事・・・・・ではないのですかー?」


…………堂々としてるな、コイツ。

……………………ん、結華以外、という事は……


「わ、私は……別に……そんな事、無いですよ……」


否定してるが顔が赤いぞ、北川。

……って、もしかして、この面子めんつ、結華以外全員……あ、俺も違うとして……。


「はいはい、否定一人と無言一人だけど顔赤いし、丸分かりだよ?」


「な、いや、俺は別に!」「ち、違います!」


俺と北川の否定の声が重なる。

それを聞いた結華が面倒くさそうに肩をすくめて、話を続けた。


「んー、じゃあとりあえず私が全員ふみくんの事が好きだって仮定・・した、って事で「「するな(しないでください)!!」」


再び声が重なる。

その様子を見た結華が、次は意地悪そうな笑みを浮かべだした。


「どーして駄目なのかなぁ? きちんと、はっきりと、明確に、お答えください!」


「「…………」」


沈黙まで重なってしまった。

結華は満足そうに頷くと、まず椿を指差した。


「湖織ちゃんは幼馴染みだよね」


次に俺。


「それで、灯夜ちゃんが仕える人」


最後に北川。


「んで、ひじりちゃんは友達の妹」


そして、大仰に溜め息。


「こりゃあ……ふみくんの性格から言ってかなり難しいと思うよ?」


「「「何故(どうして)!?」」」


次は三人の声が重なった。


「あのね、ふみくんって大して鈍感じゃないよね?」


「あ、あぁ……。場の空気は最低限読めるし、よく気が付く」


「そう、別にふみくんはラブコメ主人公にありがちな『誰か一人を選ぶなんて出来ないよ』or『鈍感すぎて好意に気づかない』状態ではないの」


おぉ……なんだか講釈を始めた結華が頼もしく見えるぞ……。


「私はね、珍しくもふみくんが告白されたシーンを見たことがあるのよ。二年前だけど」


「珍しくってなんですかー、ひどいですー」


こ、こくはっ……い、いや……二年も前の話か……いやでも……そんな事俺には一言も……いや、言わないのが普通なのか……それでも俺にぐらいは……どうして……アイツ……。


「や、ふみくんって受けをやらせたい顔ではあるけど飛びぬけてかっこいい訳じゃないし、勉強運動共に並だし、灯夜ちゃんの執事だから付き合い悪い上に付き合ったら別の女の世話してるのを見なきゃだし、とりあえず割に合わないのよ、色々と……って灯夜ちゃ〜ん、なに思考の渦にはまってるの?」


ハッ! 危ない危ない、思わず考え込んでしまった……。


「え〜っと……で、結果言っていい?」


これまた全員が一斉に頷く、普段からこのチームワークを発揮できれば天下を狙えると思う、なんのかは知らないが。


「あのね、そのが告白した時にふみくんはね、断りの言葉も受ける言葉も無かったの」


……それじゃあ一体どうしたんだ?


「分からないって顔してるねみんな。……ふみくんはこう言ったの、『何の罰ゲームだ?』って」


…………………………………………は?


「分かったでしょ……ふみくんはね、自己評価が絶対的に低いのよ。そんなふみくんが親しすぎる湖織ちゃん、仕える対象である灯夜ちゃん、友達の妹であるだけの聖ちゃん、あなた達に好かれてるなんて夢にも思ってないでしょうね」


…………………………………………え?


「で、でも! ふみくんは真紀とデートしてるですー!」


「多分……その裏に合った灯夜ちゃんの思いは気付いてないと思うし、義妹さんのデートは何かの冗談だと思ってるはずよ」


「そ、それじゃあ……俺たちがやってる事って……」


「まったくの……無駄足ですか……?」


結華が、重々しく頷いた。

それが合図となったように、結華以外の全員が脱力して地べたに座り込む。

というか、よく見ると話し込みすぎて天詩と義妹を見失ってしまっていたようだ。


「…………聖、何か食べますか?」


「そう……ですね……」


その後、椿と北川は先ほど天詩が出てきた喫茶店に入っていった。次の日、二人の体重が増えたのは内緒の話だ。


「ふぅ……灯夜ちゃん、私たちはどうする?」


「う〜ん、そうだな……」



                  ***



僕は、どうしてこんな場所に居るのだろう。


「あ、白咲さん。真紀とお兄さんはあそこに入っていったですです!」


そう、ワタクシ白咲しろさき 煉斗れんとは、何故か少女と共にゲームセンターに来ているのであった。


「あのねぇ、え〜っと……一谷さんだっけ?」


「風香でいいですです」


「じゃあ風香ちゃん、どうして僕まで来る必要があるのかな?」


「え〜っと……あのあの、煉斗さんも気になるでしょう?」


何気に呼び方が煉斗さんに変わった? ……まぁ、いいか。

というか文一の様子が気にならない訳じゃないけど、正直結華に早く会いたいし、この町に長居するのもマズイんだよなぁ……。

……まぁでも、これも何かの縁か。


「分かった、付き合おう」




文一はゲームセンターに入ってすぐの所にいた、ガンシューティングって奴だ。


「うぅ……ゾンビの奴ですです……」


「だね。少し前流行はやったグールハンターの続編、グールハンター2。ステージが全4面から全8面の二倍に増えてて、さらに連射性のマシンガン、範囲のハンドグレネード、威力のライフルと三種類から武器が選べるようになってる。体力が3までしかないのは前と同じだけど、回復アイテムなんかもあるらしいね。最近のなのにもうあるのか、この町も捨てたもんじゃないね」


「……あのあの……あれ、好きなんですか……?」


「いや別に。ただちょっとそういう情報には詳しくてさ」


二次元を愛するオタク同士なかまには、こういうのも好きな奴がいるからね。

にしても……アイツ、こういうのやったこと無さそうだよなぁ……アイツもゲームやるけど、RPGばっかりだもんなぁ……。


「あ、始めるみたいみたいですよ?」


お、始まった。文一はマシンガンで義妹ちゃんはライフルだ、初心者っぽい割にはバランス考えてる……わけないか、文一は適当だろうし義妹ちゃんは派手好きっぽいし。


会話は聞こえないけど、様子だけならここからでも十分見えるね。


お、文一なかなか上手いな、あくまでなかなかだけど。

義妹ちゃんは……あー、外してばっかりだ。まぁ、上級者向けの武器だしねぇ。

あー、あー、なんだか義妹ちゃんは文一のおかげで生き残ってる感じだなぁ。

あ……ボス来た。

うわっ、あのボス辺り判定でかいのにそれでも外してるよ義妹ちゃん。

……ってあー! 投げちゃ駄目! コントローラ投げてもダメージ与えられないよ!?

うお、文一止めた! ……って駄目だー! 年上の男を振り切るって義妹ちゃんどんな筋力してんだよ!

あ、ゲーム内でやられた……ってそれどころじゃない! ゲームキャラじゃなくてゲームが死ぬ!

あ……文一がなんか言ったっぽい……お、義妹ちゃんがなんか嬉しそうな顔に……。

おー、筐体の危機は救われた……。



「ま、真紀……こんな所でも相変わらずですです……」


いつもあんなに暴れてるのか……出入り禁止になってもおかしくなかったぞ……。


「はぁ……とりあえず、尾行はもういいかな?」


風香ちゃんが頷いた、けどそれからさっきのゲームを見て


「せっかくですから、私もやってみたいですです」


と言った。

まぁ、僕もゲームセンターのゲームはあんまりやらないし新鮮でいいかも。


「分かった、やろうか」


財布から硬貨を二枚取り出し、一枚を風香ちゃんに渡す。


「え? いいですです、自分の分は自分で払いますますよ?」


「いや、気にしないで。女の子にお金を使わせないのは僕の主義みたいなものだから」


……財布の中身は気にするなよ、読者の皆さん。


「ではでは……お言葉に甘えさせて頂きますます」


「うん、じゃあやろうか」


そして僕たちは筐体に硬貨を投入し……




「何やってるのカナ?」




全身から、冷や汗が出た。

振り向く。

そこには、鬼神。


「え……あの、ゆ、ゆゆゆ結華?」


もとい、結華。


「えっとね、私はね、何をやってるか、聞いてるの……」


極めて普通のリズムで、結華は歩く。

でも今の僕にはそれが何よりも恐ろしい。百鬼夜行なんて足元にも及ばない。


「ずっと会いたいのを我慢して」


一歩。


「それなのに何の連絡もよこさずに」


一歩。


「こぉんな所で手ぇ出したら確実にアブナイ年齢の女の子と」


一歩。


「何を――してるのかな?」


…………先立つ不幸をお許しください、お母さん。クソ親父には謝らないけど。

ってそうじゃねぇ! きちんと誤解を解かないと!


「誤解だ結華! 僕だって今日出たばっかりで……そりゃ初めに連絡しなかったのは悪かったけどさ! ちょっと小鳥遊さんの家に行ったら色々あって……この子とは別になんでもないんだって!」


すがるような気持ちで横の……後ろに逃げてしまった風香ちゃんを見る。

彼女は怯えながらも、少し残念そうな様子でこう言った。


「煉斗さん……彼女、居たんですね」


多分彼女にとっては単純で、そして他意の無い純粋な問い。

しかしその言葉はこの場においては限りなく危険なわけで――つまり、超大型核弾頭結華様の誘爆を招くわけで――


「ねぇ……煉斗君……?」


意識を失う前に見た彼女の顔は、逆に怖いぐらい完璧な笑顔だった。



                ***



「兄貴〜! 早く撮ろうよ〜!」


「はいはい」


僕と真紀が居るのはプリクラの密集地帯。

……真紀の恐怖が発動したあの時、僕は彼女に一つ、提案をした。

つまり、「プリクラを一緒に撮ろう」だ。

うんうん、真紀はこういうの結構好きだからごまかせるだろうという読みは的中だ。伊達に義兄やってないぜ。


「あ〜に〜き〜!」


どうやら真紀はやりたいのを見つけたようだ、僕も真紀に続いてその中に入る。


「うおぉ……結構広いな」


「そういや兄貴ってゲーセンなかなか来ないよね?」


「ん、ここ一年は全然行ってなかったし、大体プリクラは初めてだ」


「わ、じゃあ兄貴の初プリクラGET?」


やれやれ、何がそんなに嬉しいんだか。

まぁ、この歳になっても懐いてくれる妹が居るのは、少し嬉しいな。




「兄貴! ここのボタンを押すんだよ!」


「ん……これで周りのを変えられるのか」


現在、真紀に教わってプリクラの操作方法を学んでいる、まぁ二度と使う事無さそうだけど。


「えっと……それでこっちの……」


真紀の指し示す方に手を伸ばし……伸ばし……届かない……。

仕方がないから手を真紀の体の後ろから通す……お、押せた。


「うわ……っと。兄貴、これって不安定……」


僕に囲まれる視線になるのが嫌なのか、真紀は少し身じろぎした。


それが運悪く、僕の足に当たってしまったわけで。

そして運悪く、僕がバランスを崩してしまったわけで。

そして言うと、真紀を機械の方に押し倒す形になってしまったわけで。


はい、今のがたった一秒の内に起きた事件の全貌でした☆


「うおっと……真紀、すまん」


「あ……う……う、うん」


真紀が微妙な表情を浮かべてこちらを見上げてきた。

その微妙な空気が嫌で体をどけようと……




なんか、後ろに白人女性が。




ってお嬢様じゃねぇか!!?


「よぉ、天詩、奇遇だな(台本を用意したようにすらすらと)」


「え、えぇ……偶然でこの中をのぞかないで下さい……」


「いやぁ、それは悪かったな、でもお前の方が悪い事をしていると思うぞ(同上)」


「い、いえ……これはその……事故で……」


「まさかなぁ、お前が12の義妹に手を出す変態野郎だったとはなぁ(例のごとく同上)」


や、やばい……何かリカバリーできるセリフは……


「あ、あの……お嬢様……」


「何だ?(最早説明する必要も無いぐらい同上)」


「えっと……真紀の誕生日は2月でしてもう13歳……「死に曝せ」


最後のその声だけは、やけに冷たかったのを覚えている。



                  ***



「ふぅ……」


「はぁ……」


少女二人は、ゲームセンター前でため息をついていた。

ちなみに隣には二人の青年したいが転がっている。


「ねぇ……灯夜ちゃん……」


「なぁ……結華……」


二人は顔を見合わせ、疲れ切ったような顔で本日最後のチームワークを見せた。


「「お互い、大変だねぇ(なぁ)」」


果たして不幸だったのは少女二人か青年二人か、その問いに答えられるものはこの場に居ない……。




 ふひー、ある意味シリアスよりも疲れるかもですねぇ。

文一(以下文)「その割にはやけにやりきった顔してるが……」

 ひゃっはっは、ちょっぴりドロドロさせてやったぞ!

文「それがやりたかっただけか……」


 さて、次回は多分戦闘アリの話です。

文「お、シリアス入るのか?」

 さぁてねぇ……どーでしょー?

文「ぐ……なんだかむかつく……!」


 いやぁ、しかし今回の編は先生以外はメインキャラは全キャラ出たねぇ。

文「いやぁ、全キャラ出すのって結構難しいみたいだなぁ」

 そうだねぇ、全キャラ出すのはねぇ。

文「あっはっは」

 あっはっは。




一聖「俺は……? 俺の存在価値は……?」


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