表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倶有の代 -the world-  作者: 風間 秋
◇斜陽の星
3/9

人類を蝕む脅威「サーフェナイリス症候群」


 時は二十二世紀。不治の病とされた癌も過去の話。科学万能の世紀。

 そんな人類の幻想を嘲笑うかのように、ソレは肉を喰らい骨を砕き皮を突き破り人の体内より現れ出た。


 制御に失敗したバイオマイクロマシンが生物に生じさせる、雑多な腫瘍の集積物。或いは人工胎盤黎明期に見られた、無作為に増殖するヒトの成り損ないを思わせる、醜悪で生理的嫌悪を呼び起こす肉塊。


 ソレは周囲のモノを生物無生物区別なく飲み込み巨大化し続けた。対応に遅れた結果、事態の収拾に核すら用いられた地域もある。そして多くのケースに於いて、ソレの飛散した肉片が更なる地獄を周囲に齎した。ソレの肉が体液が人間に触れると、その人間の殻を砕き再びソレが姿を現したのだ。


 第二種特殊環境災害、事象U、黄泉竈食ひ、神罰、審判者、御使い。

 ありとあらゆる部門の専門家と宗教家によって、数多の呼称が与えられた。


 明確な答えの得られぬまま、ただ事態の収拾に明け暮れる日々に人々が疲弊し、絶望がその面に陰を作り始めた頃、サガラ上の有象無象が集まるフォーラムに、ノトカ・サーフェナイリスの名で膨大な臨床データが公開された。


「特定疾病感染者の身体的変異及び諸療法の効果と影響」


 そう題された資料により、人類は脅威に対する抜本的な解決策を見出せないまでも、対症療法的措置を構築することに成功する。そして人々はソレを疾病として断じる事に迷いを抱きながらも、著者の名を冠し「サーフェナイリス(sarphenairis)症候群」と称する事で一先ずの一致を見た。

 世界は著者が「感染者(罹患者)」と称した「発症者」未満の潜在的脅威を多く抱え、如何にしてこれら迷惑極まりない被害者と向き合うべきかという、大きな問題に直面していたのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ