第七幕
この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。
「あのさ……取りあえず話し合わない?」
「うっさい黙れ!」
「ギン、少し黙ってもらえぬか?」
やぁ、気が付いたらケットシーになっていてリザードマンのルジーナさんと仲間になりたてほやほやの俺改めてギンだよ。
今俺の前ではルジーナさんと雌の犬が激しく言い合っている最中なんだ。 両者ともに、牙を光らせたり、眼光を鋭くしてなど、一触即発の状況だったりする。
……え? いきなりすぎて分からないって? 大丈夫、俺もどうしてこんな状況になったかは……何となくわかるね。
だったら説明しろってか? まぁ、そんな難しい話じゃないんだけれど……取りあえずは、回想シーンへ――――
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「――――漸く見つけたわよケットシー! アンタ、私に黙ってなに勝手にどっか行ってんのよ!!」
事の始まりは、ギンが一匹の犬(?)を助け出したことから始まった。 彼は何も考えずに手を貸してしまったようではあるが、彼女にとってはそうも言っていられない状況なのだ。
彼女のレベルはこの地では決して低くは無いのだが、この場にいる3体の魔物の中で最も低いレベル3だ。
最も、彼女はその事を知る由も無いのだが……しかし、そのレベルという概念があるからこそ、彼女はギンに対して憤怒していた。
そもそも、ケットシーという種族は元々が非力な種族であり、とてもではないが単独でゴブリンを討伐するなんてまねは出来ないのだ。
しかし、目の前にいるギンは不意打ちとはいえ、ソレをこともなげに前足を少し振るっただけで倒してしまった。
そう、簡単に言えば彼女は自分よりもレベルの低い種族が自分よりも簡単にゴブリンを仕留めてしまったという事実に対して怒っていたのだ。
至極簡単に言ってしまえば……
「なに、私より弱いくせしてしゃしゃり出てきてんのよアンタは!!」
……と、言うことである。
この一方的にも聞こえる物言いに対して当のギンは出来るだけ穏便に済ませようと考えていた。 確かに、一方的な感じのする物言いに聞こえるが自分が余計な事をしたのは事実であり、通常ならばアレは放置するというのがこの世界での常識なのかもしれないと認識したからだ。
なので、この場で自分が謝罪をすれば事は簡単に済むと踏んでいた。 しかし、それに対して納得できない者がこの場に一体だけ存在した。
「ふむ、そう言うのであればお主はギンより強いのか?」
つい先ほどギンの仲間となったばかりのリザードマン改めルジーナその人であった。
彼女とて仲間になったとはいえ、当初はギンの問題にあまり深入りしないでおこうという考えであった。
だからこそ、今現れた犬(?)には自分の縄張りに入ったことに関して追求をしなかったし、追い出そうともしなかった。
しかし、寛大な彼女にも許容できないことを犬(?)は口にしてしまった。
リザードマンは通常、十数体の群れで生活するのが常である。 仲間がいなくなった彼女は例外中の例外ではあるが。
更には仲間意識というものが強く、仲間の侮辱は自分の侮辱ともとってしまう種族なのだ。
そんなおり、種族が違うとはいえ彼女にとっての唯一の仲間となったギンに対しての侮辱ともとれる発言にはさすがの彼女も黙っていることはできなかった。
「誰よ、アンタ?」
まるで、今ルジーナの存在に気が付いたといわんばかりに振り向く犬(?)。
勿論、ルジーナは半ば無視されている状況で面白くないし、何よりも他人を見下しているその目が気に入らなかった。
「我はお前が『弱い』などとのたうち回っておるギンの仲間だが何か?」
「へぇ~……リザードマンだっていうのにケットシーなんかと仲良くしてるんだ。 ――――バッカじゃないの?」
――――その瞬間、ギンの耳には間違いなく切れてはいけない『何か』がキレてしまったような音がした。
「それに、私がそこのケットシーより強いかって? そんなの当たり前じゃない! どこの世界にケットシーよりも弱いウルフがいるっていうわけよ!!」
「ほぉ、ウルフだったのか? 悪いな、あまりにも大きさといい器量といい『小物』染みていたのでな、てっきり我はそこいらの人間に飼われている犬と思っていたようだ」
ハッハッハと悪びれた様子もなく、むしろ挑発せんとばかりな発言をしたルジーナ。 すでにギンは、この場の空気があまりにも重たくなっていると悟って一歩下がって事の顛末を見守っている。
一方のメスのウルフは明らかな挑発と分かっていながらも、自身を侮辱されていると悟るや否や猛烈に反撃に出た。
「はん! どこの馬の骨……あぁ、ごめんなさいね『猫の骨』とつるんでいる『トカゲモドキ』に種族を見分けるなんて頭がないわねぇ? ごめんなさいねぇ〜気がきかなくて!」
明らかに一触即発の状態である。 そして、この不毛ともとれるやり取りを経て……
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「ガルルルルルル……」
「シューシュー……」
「……今に至るわけと」
なぜに、話の中心人物の俺をおいてけぼりにしながら自分達で話を進めているのでしょうか?
色々な意味でめまいを憶えたが、今はそれどころではない。
とにもかくにも二人の暴走を止めなければいけない。
「はん、そこまで言うのならアンタ等のレベルを言ってみなさいっての! どうせケットシーは1レベルでリザードマンの方は2レベルか、よくてアタシと同じ3レベルってところよね」
あ、それ死亡フラ……
そう言いながらウルフは胴体の左半身が見えるように回転した。
なるへそ、確かに胴体の左側に縦線が3本入っているな。
しかしルジーナさんには5本の線があったし、俺にいたっては複雑な図形状態になっている。 ルジーナさん曰く、俺のレベルは30レベルと言うことだから、ウルフのレベルは決して高いわけではない。
だけれど、この自慢の仕方を聞くに、3レベルってのはこの辺りではそれなりに高いのだろう。
だったら『わ~スゴ~い』くらい驚いた方がいいのかもしれないな。
それで、このウルフがいなくなるなら簡単だ。
よし、そうと決まればさっさと実行に……
「わ~すご――――」
「お主の目は節穴か? あぁスマン、どうやらその目は飾りのようだ。 ……ギンよ、ここに居ては埒があかぬ、行くぞ」
……見事なまでに俺の作戦が爆散した瞬間であった。 そして、何故かルジーナさんは俺を小脇に抱えてウルフから離れるように歩きだした。
「クッ……舐めくさって! ……いいわよ、そこまで言うなら決闘よ!!」
流石にウルフはそのまま俺たちを帰してくれるということもなく、俺たちの前に回り込んで『決闘』と、なにやら物騒なことをのたうちまわっている。
ってか、このウルフが決闘って言った瞬間から何やらルジーナさんの目が先ほど以上に細くなり、マジで恐ろしいことになっているのですが、大丈夫かな?
「ほぅ……ガキが我に歯向かおうと言うのか? 悪いが我は女子供でも容赦はせぬ、我に牙をむく以上はその息……確実に止めるが良いのか?」
ルジーナさんは俺を地面に下ろすと、自分の腰に掛けてあるボロボロのロングソードを構えてその切っ先をウルフの鼻先へと向けた。
流石のウルフも何かヤバイ空気を感じ取ったのか、一瞬体をビクつかせたが、ここまで来てしまった以上後には引けないのだろう。
「は、はん! アンタなんかボッコボコのギッタンギッタンにしてやるんだからね―――――
―――――ケットシー!!」
「――――って、俺かよ!?」
ありがとうございました。
今話は今までで一番短い文章となってしましました。ご了承ください。
さて、この先々も考えているのですが……考えた話を自動で書いてくれる機会があったらほしいところですね。
マジで自分の文才のなさに落胆しまくりです。
感想&ご意見は随時受け付けております。 お気軽にどうぞ。
ではでは、次回もお楽しみに~