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弱いからこそ強くなれる!  作者: かみかみん
第一章 ネコ科!?
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第四幕

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

 人間は少し無茶をしても……いや、猫は少し無茶をするくらいが丁度いいという事がわかった。


 ゴブリンBが犬を襲おうと茂みから飛び出てきた瞬間、俺も同じく茂みから文字通り飛び出した。

 犬は突然現れた俺とゴブリンBに驚いていたようだったが、すぐに現状を理解し、たった今相手をしていたゴブリンAの喉に噛み付いていた。

 一方のゴブリンAはゴブリンBが現れるのは手はず通りだったみたいだが、突然現れた俺を見て驚愕の表情をした。 無理もない、この狩りは失敗=死を意味している。

 そんな中で超イレギュラーな俺が現れたんだからな。


 俺は犬等を飛び越えると、同じく飛びあがっているゴブリンBの横っ面にこれでもかって言う位の本気の猫パンチをお見舞いした。

 さて、ここで一つ考えてほしい。 つい先ほど俺は木に向かって軽く腕を振った際、何が起きたのかを。

 ……まぁ、何となくは想像できるよね。 そう、俺が腕を本気で振るったためゴブリンBの頭部は、まるでハンバーグを作る時、ミンチの中に手を突っ込んだような音と共に文字通り吹き飛んだ。 ソレと同時に俺の前足には肉を潰す感覚が伝わってくる。

 次の瞬間、真っ赤に塗りつぶされた俺の視界、そしてドサリと音を立てながら地面へと落下していく何かが足りないゴブリンBだったモノのなれの果て。

 ……考えるまでも無く、ゴブリンBが死んだという事は理解出来た。


「以外と軟いかも?」


「――――キキ!? な、何だお前は!」


 俺のつぶやきを無視するかのように犬と対峙していたゴブリンAが俺に向かって吠える。 どうやら、余りにも急な出来事だった為に、犬も止めを刺し損ねてしまったらしい。

 そんな犬は突然の出来事だった為に、今迄対峙していたゴブリンから目を反らして俺の方を目をまん丸にして見ている。


「お取り込み中の所失礼しました。 それでは、続きをどうぞ~」


 俺はソレだけ言い残すと、その場を後にしようときびきを返した。 そういえば、初めてみたとはいえ、生き物を殺した事に関してはそれ程嫌悪感を示す事が無かったことに俺は内心驚いた。

 それ以前に、ゴブリンなんてファンタジーな生物が居るという事実にも驚くべきだったのだが、この時の俺にはそんな考えは微塵にも気付く事は無かった。


「キキキ! ま、待ちやが――――」


「待つのはアンタ……だっての!!」


 ゴブリンAの怒りに満ちた声と、その直後に犬の声が聞こえ、直後に『――ザシュッ!』という何かを貫くかのような生々しい音と、醜い『ギャァ!!』という断末魔が同時に聞こえた。 実際に視界に入っていなかったからどうなったかは予想でしかないが、ソレを俺は敢えて何も触れずに犬達を背にしたまま前に歩きだした。

 しかし、水を飲みがてら食糧を探す筈だったのに嫌なもんを見てやっちまったな。 これからは自重しないといけないな、うん。


「ちょっとアンタ!」


 まだ5mも歩いていない時、先程の犬が制止を求めるように声を発した。 ソレは間違いなく俺に向けての言葉である。 しかし、その声は先程ゴブリンAと話していた時とは違い、苛立ちなどは一切含まれていなかった様に感じる。


「――――何?」


 俺はある種の賭けに出た。 犬猫と言われると俺が知っている限りでは仲が悪い印象しか持っていない。 まぁ、例外的に仲良くしている動画はインターネットとかで見たことがあるけれど……

 仮にこの犬が俺に対して友好的に接してきた場合、色々とこの世界の事について聞く事が出来るいいチャンスだと判断したからだ。 俺の予想……と言うよりも確信だけれど、この世界は間違いなく俺がいた世界では無い。 だって、喋る犬や猫、はたまたゴブリンなんていうファンタジーに満ち満ちた生物がいるのだ。

 事実は小説よりも奇なりということわざがある通り、今俺のいるリアルは間違いなく奇な出来ごとに溢れている。

 そんな中、世界を知るなどの情報を抑える事は生きていく上で限りなく有効な手段だ。

 少しの間でそう結論付けた俺は、なるべく相手に不信感を与えないように後ろを自然な動作で振り返った。






「――――ウォ、近ッ!!」


 び、ビビったぜ……振り向いた瞬間、俺の眼前には視野全体にどアップで先程の犬の顔が映し出されているのだから。


「……何よ、失礼しちゃうわね」


「いや、誰でも目の前に顔があったらビビるっての」


 犬に対してとはいえ、真っ先に出た言葉が『近ッ』は流石に失礼だったとは思う。

 俺の対応に少し苛立ちを覚えたのか、犬は俺から少し離れて怒り気味な声を出した。


「まぁいいわ。 取りあえず、助けてくれた事に関してお礼でも言って…………ほしいかしら?」


 ……はい?


「全く何よ? 急に出てきてゴブリンを仕留めたからって良い気になってんの? 私は別に『助けて~』なんて一言も言って無いっての! あんなのあたしの華麗なるステップで余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で避けれたわよ! 全く、これだからケットシーは嫌なのよね~恩着せがましいって言うかなんというか……」


 ……何でか分からないけれど、ご立腹のようだし帰ろう。

 イキナリそっぽを向きながら訳の分からん言いがかりを付けられた俺の心は一瞬にして、この犬には関わるなと結論を付けた。

 その後の俺の行動は早く、直ぐ様犬に背を向けて猫ならではの素早さでその場から立ち去った。


 未だに俺がその場から離れていくのに気付かずに何かを捲し立てている様子を尻目に俺は一気にその場から離れていく。

 遠くなっていく犬の姿が俺には滑稽に映ったが、そんな事を気にせずに俺は前へと進み続けた。

 途中で漸く俺がその場から居なくなった事に気が付いたようだが、時は既に遅く、俺の姿は犬からは見えない位置まで移動している。 後ろの方で何かを叫んでいるようだが、俺は敢えて何も聞こえないふりをして走る足を止めなかった。

 ……あ、やっべ犬って確か鼻がきくんだよな? だったら、俺の匂いを消しておかないと。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


あのあと、俺はワザワザ遠回りをして先程喉を潤していた湖まできた。

そして躊躇なく、湖にダイブを決め込んだ。 一瞬、猫って見ずに濡れるのは苦手じゃないのか? と言う疑問が頭をよぎったが、いざ入ってみると水は冷たく、プールに入っているような感じがした。


こんな水浴びで犬の嗅覚を誤魔化せるのか心配だったが、モノは試しともことわざで言うからやるだけやってみよう。

……しかし、さっき犬が言っていた言葉が気になるな。 確か『ケットシー』だったか? あんまり本は読まないけれど、ゲームとかの雑魚敵とかにそういった名前の魔物(モンスター)がいたようないなかったような……

 でもって、あの犬は俺に向かってケットシーだつってたんだよな? ……もしかして、猫じゃなくて実は魔物(モンスター)フラグが成立した?


 ……ま、難しい事はあまり深く考えないでおこう。 折角貰ったセカンドライフだし、長く生きていれば自分が何者になったか位は分かるだろう。

 俺はそう結論付けると湖に潜った。 特に意味は無いが、何となく泳いでみたくなったからだ。 通常、猫は自分から進んで水に入る事は無い。 まぁ、例外として結構前に見たテレビではトラが水浴びをしている姿が映し出されていたが、ソレは本当に例外中の例外だ。 最も、身体は泳ぐことに特化していないから泳ぎにくいったらありゃしないけれど。

 しかし、今の俺はそれを色々と無視している状況だったりする。 全く、身体能力が猫以上になっていたり、4足歩行をしても違和感を感じなかったリ、水に入っても大丈夫だし、極めつけは話す猫だと?

 何処まで俺の体は魔改造されているんだっての。

 俺は水中でそんな事を考えていた。 そんな折、ふと浅い湖底に何か動く影を見つけた。 一瞬『魚か?』と思ったけれど、直ぐ様それは違う事が分かった。 だって俺の目に入ってきたのは……


「(蟹……沢蟹かな? でも、少し大きい様な……)」


 俺が見たものは紛れもなく蟹だった。 決してザリガニやエビでは無い、沢蟹だ。 しかし、そのサイズに俺は少し驚いた。 あまり蟹には詳しくないし、知っていると言っても小さい頃キャンプ場の近くにあった川で遊んでいた時に見た蟹のイメージが強すぎて、沢蟹=小さいという図式を成り立たせていた。

 しかし、今俺の目の前にいるかにはどうだろうか? 俺に背を向けているため此方には気が付いていないであろうかには明らかに30㎝を超えているように見える。 爪に至っては片方が胴体と同じ位巨大なのである。

 その瞬間だ、俺が今迄押さえていた空腹を感じたのは。 腹の虫がまるで自己主張するかのようにくぐもった音を立てている。

 そんな俺が目の前の蟹を『食べる』と言う結論付けるのに時間は必要なかった。


 魚を取るのは難しそうでも、蟹ならばいくらか勝機はある。 それに、湖底とはいえ、大体深さが50㎝程の浅い所だ。 きっと頑張れば俺でもあの蟹を取る事は出来ると思う。

 ただ、注意しないといけないのは明らかに凶悪そうなハサミだけだ。

 その時、俺は犬に会う前に木を切り払う程の鋭さがある自身の爪の存在を思い出した。

 なんて事は無い、例え水中だとしてもこの体は色々とおかしな性能を持っている。 だったら、ソレをフルに活用させて貰おうじゃないか。


 そうと決めた俺の行動は早かった。 なるべく気付かれないように俺は一度湖面にあがり、空気を吸った後もう一度潜水をした。 そして、ゆっくりと湖面を這うようにしながら蟹の背後へと近づいた。

 相変わらず蟹は俺に背を向けたままである。

 これは幸いと、俺は迷わずに右前足を振りかぶり……


 水の抵抗はあったが俺のこの爪は難なく蟹の右側にある巨大なハサミを難なく、特に抵抗を感じるわけでもなく、まるで飴でも斬るかのように俺の爪はハサミを切り落とした

 流石に蟹も俺の奇襲に驚いたらしい。 しかも、武器でもある巨大なハサミを切り落とされてしまったんだ。 残念ながら抗う術は無いと判断したのか、一度俺の姿を視認した後蟹ならではの横歩きで俺から逃げようとした。

 しかし、そうは問屋が卸してたまるかってんだ! 折角見つけた食べられそうな蟹(食材)を前にして逃がしてなるものか~!

 俺も当然の如く蟹を追う、先程切り落としたハサミを咥えた状態で追いかけまくる。

 しかし、フィールドは水中。 どれだけ身体にスペックの差があったとしても、この場は蟹の庭と言っても良い場所だ。

 結果的に俺は巨大蟹に逃げられてしまった。 本当にあっという間に消え去ったとはこの事だと思う位一気に差を広げられたんだ。 最も、これが陸上だったらどうなるか分からないし、俺も息が続かなかったというのもある。

 俺は渋々蟹から切り取った巨大なハサミで我慢することにした。 まぁ、我慢と言いながらもこのハサミ自体先程の蟹の胴体と殆どサイズが同じくらいなので、満足する事は出来ると思うけれど……

 そう考えながら俺は蟹のハサミを咥えたまま陸に上がった。 身体を振りながらまとわりついてくる水を振り払った。


 さてさて、どうやってこのハサミを食べるとするかな……蟹のハサミを地面に置きどうやって食べるのかを俺は思案した。

 猫になったんだから多分、生でも食べる事は出来ると思う。 だけれど、中々気が進まない。 いや、刺身で食べる分には抵抗は無いけれど……なるべく初めて食べるんだから火くらいは通したいんだけれど……


「――――ハァ……」


 どうするべきかを考えながら俺は軽く眼を瞑りながらため息をついた。 ……ん? 何だか少しだけ辺りの気温が上がった様な気が……


 俺はゆっくりと双眼を開いた。 そこには……


「(パチパチパチ)……何か木が燃えているんですけれど?」


 一瞬、俺の目がおかしくなったのかと思った。 だって、俺の目の前にある木に火が付いているのだから……だって、火の気とか全くなかったんだぜ?

 なんだってイキナリ燃えて……いやいや、それどころじゃねえだろうが!

 この火を早く消さないと山火事ってレベルじゃなくなるでしょうが!!


「ど、どうしよう!? とと兎に角、水~それよか氷~」


 その直後、今度は先程まであった木が燃える音が消えて何だか辺りが気温が急に下がったように感じる。

 ふと、今しがた燃えていた木に目をやると……


「……今度は凍っているんですけれど?」


 訳が分からなかった。 だって、急に発火現象が起きたり、その直後に燃えていた木が冬でもないのにかちんこちんに凍っているのだから……

 もしかして、この世界ではこういう不思議現象が頻繁に起きているのかとさえ思った。 しかし、現実的に考えて燃える事に関しては起きる可能性はあるけれど、流石に寒くも無いのに急に凍るなんて流石にある筈がない。

 きっと、何かがあるに違いない。


 その時だ、先程までなりを潜めていた俺の胃袋が『腹減った』と言わんばかりに自己主張を始めたのは。 ……まぁ、難しい事は後にして取りあえず今は食べる事を優先にした方が良いかもしれない。

 ふと、足元に転がっている蟹のハサミに目をやった。 そこには先程の発火現象の影響であろうか、凄く良い赤色に変色したハサミが転がっている。 そして、俺は躊躇せずそのハサミに殻ごとかぶりついた。

 行儀が悪いって言われても腹が減っていたんだから仕方ないじゃん。 それに、色々と強化されているみたいなこの体からしてみたらこんな殻を噛み切る事くらい難しい事じゃないと判断したからだ。

 まぁ、結果的に殻は問題なく食べる事が出来た。 それに、身の方もギッシリと詰まっていて味も濃厚で凄く美味しかった。 しかし、問題が一つ……


「……猫だからな、猫舌なのはデフォルトな訳ですか」


 以前は大丈夫だった熱い物を食べる事が出来なくなったくらいであろうか。 我慢すれば食べれない事は無いけれど、結構舌が痛い位に火傷をしてしまいました。

 蟹の火の入りはかなり良かったみたいだけれど、こういった弊害があるなんて予想外だったな。

 俺は仕方なく、早く覚めるように食べかけの蟹のハサミに向かって息を吹き込んだ。 しかし、次の瞬間……


「……凍った。 蟹のハサミが?」


 俺の眼前には先程の木と同様に……まるで冷凍庫にほおり込んでいたかのようにカチンコチンに凍った蟹のハサミがあったのだった


「……え、俺の所為?」


 取りあえず、呟かずにはいられなかった。

ありがとうございました。

最後の方がグダグダになってしまいました。


そして、敢えて主人公猫をケット・シーと表記したのですが、二足歩行では歩く事はありません。

この辺は追々説明を入れていこうかと思います。


ではであh、これからも応援よろしくお願いします。

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