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弱いからこそ強くなれる!  作者: かみかみん
第一章 ネコ科!?
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第三幕

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。


 よぉ、俺だ。あの飴玉を食ったあと、俺は洞窟の入り口まで戻ったんだ。 なんて事はない。ただ、雨が止んだかを確認するためだ。

 俺は行きの時とは何の変化も無い洞窟を戻って行った。 洞窟の隙間から差し込む光は行きの時とは違い少し赤みを帯びている。

日が傾いてきたのだろう。 それに、先程まで聞こえた雨の音とかは聞こえなくなっている。

恐らく、先程の雨はゲリラ豪雨と言う奴だったんだ。 いやはや、直ぐ止む雨だったら洞窟の入り口で待っていても良かったな。


 少し悪態をつきながら俺は歩みを止めることなく洞窟を進んだ。 そうして気がつくと俺は先程まで居た洞窟の入口に立っていた。 ……何故だろう洞窟の最深部から入り口まであまり時間がかからなかった気がする。 俺の勘では行きで2時間掛かっていたのに、帰りは30分位に短縮した様な気がする。 それに、同じ距離を歩いたのにあまり疲れを感じていない様な……それに、飴玉しか食べていないのに先程まであった空腹感が嘘のように消え去っている。 まぁ、あくまでも俺の感覚だが。

 ……うん、難しいことを考えるのは後回しにして今は、


「――――寝よう」


 全てを考えるのは明日だな~うん、そうしよう。もしかしたら無いと思うけれどすべて夢落ちという最初に捨て去った仮説が正しいのかもしれないし。


 少し現実逃避をしながら俺は洞窟の入り口で丸くなり、意識を手放すのだった。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



「う、うーん…………身体痛てぇ」


 翌日、俺を起こしたのは誰かの声でも光でもなく体中に広がる痛みであった。 まるで筋肉痛を酷くさせたかのような痛みが俺の体を支配する。

 ギギギと擬音がつきそうなほど軋む体に鞭を打って無理やり体を起こした。


「……あれ? なんだか昨日よりも視点が…高い?」


 そのとき、昨日と比べて視点の高さが違うことに気がついた。 昨日は地面ギリギリの高さに視点があったと思うのだが、今日は明らかに昨日よりも視点が高い。 大体、自分の部屋のシングルベッドに寝転んだときの視点の高さくらいに感じる。


若干、昨日とは違う様子に疑問を抱きつつも俺は洞窟の外を見た。 太陽はすでに昇っており、森の中に木漏れ日が差し込んでいる。 どうやら、昨日の雨も夜のうちに上がったみたいだ。

 そう結論付けた俺は筋肉痛のような痛みにこらえながらも洞窟の外へと歩き出した。 別段、腹が減ったとかは無かった。 しかし、その分かなり酷い喉の渇きを覚えたためだ。

それに、残念ながら最後の希望であった夢オチは無くなった。 ……まぁ、最初から当てにはしていなかったけれど。


兎に角、この地で暮らしていかないといけなくなったんだ。 水場を探しながらこの辺の地理を覚えること位しておかないと最低限生きていけない。 つーか、ついでに猫(?)になった俺の食料も探しておいたほうがいいかもしれない。


そう結論付けて俺は歩き出したんだ。 だけれど、そこで一つ問題が生まれた。 さっきも言ったが、何故だか俺の体全身は筋肉痛のような痛みで思うように動かず、一歩一歩出す脚も自分の足ながら少しおぼつかないんだ。

しかし、ここで歩くのを諦めてしまったら必要最低限、生きていくための知識すら得ることができない。 明日やればいいと思うかもしれないけれど、昨日みたいに雨が降ったら何日も動けなくなるかもしれない。 そうなったら、水には困らないけれど餓死コースまっしぐらだ。 流石にそれは御免被(ごめんこうむ)りたい。


 痛む体に鞭を打ちながら俺は確実に一歩一歩確実に脚を出して前に進む。 その度に全身を剣山で刺されるような激痛が襲ってくるが、それは精神力でカバーだ。

 もちろん今いた洞窟の場所を忘れないように頭の中でマッピングしておくのも忘れない。 こう見えても俺はマッピングとかは得意なほうなんだぜ。

 ……でも、もし間違えると困るからな。 一応その辺に生えている木に傷をつけて……と……ッ!!?


 手ごろの木に傷をつけようと俺は爪を立てて木にあてがった。 そしてその瞬間見てしまったんだ。 ……俺の前足が昨日よりも確実に大きくなっているということに。 俺の記憶が正しければ昨日の前足は丸く、子猫のような小さくかわいらしい手だった。 しかし、今の俺はどうだ?


「――――おいおい、明らかに動物園で見たライオンみたく凶暴な前足に変化しているんだけれど…」


 毛に覆われた皮膚から嫌な汗が吹き出てくるような感覚が体全身を駆け巡った。


「そう言えば、昨日より視点も高くなっているんだったよな? ……たった一晩で成長したっていうのか!? …………ま、いっか」


 うん、子猫のままだと色々と大変だし別に問題なくね? それに、人間から猫になるって言うわけのわからん事態に比べたらそれほど驚くようなことじゃないしな。

 俺は急激な生長のことについては深く考えることなく、木に傷をつけるべく腕を軽く振るった。





















―――――――――――――― メキ…メキィ……バキバキバキィィィ!!!!!


「……え、何これ怖い」


その瞬間俺は凍りついた。


「木……折れちった」


 いやいやいやいや! 折れちったじゃねーっての!! なんだぁこの木? もしかして枯れきっていてものすごく脆い木だったとか?

 しかし木の断面図を見ると、途中まで鋭い刃物で切断したかのような滑らかな切り口になっている。

 どんなに控えめに考えても誰かが途中までこの木を切ったというのがわかる。


「……なんか、一晩しただけで色々とぶっとび気味に進化しているなぁ」


 自分自身に言いしえぬ恐怖を抱きつつ、俺は前足に目を向ける。

 そこには、相変わらず数分前に確認したとおりの肉食獣を思わせるかのような凶悪な爪がある。


 しかし、どんなに考え込んだとしても現状に変化が起きるわけではない。

 俺は心のなかで盛大なため息を吐いたのち、再び水場を探すために先程よりも重くなった感じのする前足を動かすのであった。




 洞窟から出て一時間程経過しただろうか。 今日一日は食糧や水を調達するのに費やすであろうと考えていた俺の予定は早くも良い方に崩れ始めていた。


「うぉ……コレまた綺麗な湖な事で」


 俺の眼前には今迄写真でしか見たことが無い様な綺麗な湖が広がっていた。 森が開けたそこは、規模としては野球のドームくらいの大きさであろうか。 その水は限りなく澄んでいて、淵から湖底をのぞき見る事が出来る程である。 そして、中には色とりどりの魚がいるのも確認出来る。

 どうやら、此処にいれば飲み水には困らないだろう。 魚は……いるのは確認出来るけれど、獲る手段はそのうち考えるとしましょうかね。

 取りあえず、渇いたのどを潤す為に俺はさっそく湖の傍まで行き舌を使って器用に水を飲み始めた。 何だか普通の水だって言うのに、やけに美味しく感じられる。 やっぱり、そのモノに飢えていると得た時の満足感が半端無く大きくなるんだろうな。

 勝手に自己解決した俺は、一心不乱に水を口へと運んでいく。 そういや知っているか、猫って自分の舌を水面に叩きつけて跳ねた水を加えるんだってさ。 前に動物の特番で見たんだよ。 それで、俺も試してみたんだけれど、身体が猫だからか分かんないけれど、すっごく簡単に出来たんだよね。 ……うん、軽く人間から遠ざかっている感が否めないけれど俺は気にしないぜ!

 口を少し止めて自分の状態に嘆く。 しかし、幾ら考えても考えはまとまらず、正に堂々巡りな考えになってしまう。


 ふと、湖面に映った自分の姿に目を見張った。 毛の色は前足と同じで銀色一色。 耳はピンと立っていて顔の輪郭は猫だけあって、やはり丸っこい様な印象を受ける。

 そしてその顔には……


「なんだこれ? 模様のように見えるけれど……」


 丁度、額にあたるところだろうか、ローマ数字が幾つも重なった様な妙な模様になっている。 ……しかし、模様って言うよりも入れ墨に近いなこの形は。


「――――つくづくワケのわかんねぇえ体になってんな」


 しかも、この顔の猫って見たことねぇんだけれど? 銀色の毛色をした猫って……灰色なら何種類か知ってんだけれどな。 あれか、俺が知らない品種か何かか?



――――――ガサガサ……



 その時だ、妙な気配を背後から感じたのは。 猫になった所為で気配には敏感になっているみたいで、後ろの妙な気配の様子が手に取るように脳へと伝わってくる。

 しかし、俺に対しての敵対心は無いように感じる。 って言うか、俺の第六感が正しければ俺には全く気が付いていないと言った感じであろうか。

 まるでこの二つの気配が喧嘩しているような……そう、言うのであれば俺は蚊帳の外と言った感じであろうか。 まぁ、俺に対して不利な状況に働かなければそれで良いんだが、もし俺と言う存在に気がついて危害が加わる様だったらソレはそれで困る。


 俺は猫にデフォルトで備わっている隠密スキルを(感覚的に)フル活用してその気配がする方に近づいて行った。

 傍まで行くと誰だかわからないが言い争っているように聞こえる。 片方は男でもう片方は女であろうか? って言うか、この姿になって初めて言葉が通じる相手を見つけたんだけれど!

 あ……だけれど、口論している最中に俺が割り込んだら『何コイツ? マジKYじゃない?』とか『何だか美味そうな猫だな。よし、今日のランチはコイツに決めた!』とかになったら最悪じゃないかな?

 ……うん、もう少し様子を見るとしよう。 そう結論付けた俺は茂みに身をひそめながら声の主たちが見える位置へと移動した。


「だからいい加減、鬱陶しいって言ってんのよ!!」


「キキキキ~久々の獲物を取り逃がしてたまるカ!」


 ……うわ、何このカオス? 余りの訳のわからん光景に一瞬だけ俺の意識がふゅ~ちゃりんぐわ~るどしかけたぜ……自分で言っていて意味の分からん言葉だけれど。

 と、取りあえず俺の目の前に起きている状況について説明しようと思う。

 まず女の声の主だ、俺は始め人間だと思っていたんだけれど、ソレはテンで違ったみたいだ。 なんと女の声の主は今の俺より小柄な体系の茶色い毛並みをした犬だ。大体、動物園で見る狸くらいの大きさだと思ってくれて構わない。 ……いやいや、何で犬が喋ってんだよ!? どこのわんわんストーリーだっての!!

 ……あ、状況からしてみたら俺も同じか。


 少しばかりトリップしていた俺は直ぐ様意識を戻して男の声の主を見た。

 ……そんでもって、男の声の主なんだけれど此方は人間か獣かと聞かれたら人間に近いんだが……いや、人間には分類しちゃいけないんだけどさ。 だって、体長が1m位の小柄な奴で、耳の先っぽが鋭く尖っている。 もう既にこの時点で人間では無い。 更に目を引くのはつるっぱげな頭と人間にしては濃すぎるダークブラウンの体色。 そして、真紅に燃える白目の無い目玉、手には刃こぼれしまくりのナイフが一振り……え、どこのゴブリンですか?


 どうやら話を聞いていると、こういう流れのようだ。


 犬歩く→ゴブリン遭遇→ゴブリン腹減った→お前(犬)頭丸かじり


 だなうん。 ……うん、食物連鎖って素晴らしい。 いやいやいや、何だか色々と論点がずれまくり立っての!


「だーかーらー! 私は此処で終わるわけにはいかないって言ってんのよ!! そんなにあたしの相手をしたいなら力ずくでそうしなさいよ!!」


 ちょ、犬さん! ソレ死亡フラグDeathよ!? 本当に喰われちまいますよ(食物的な意味で)!?

 ゴブリンはともかく、同じ哺乳類として犬さんの無残な姿はみたくないなぁ~ でも、ここで助けに行って下手すりゃ俺の命も危ないからな……


 そんな薄情な事を考えていると、2匹は同時に突っ込んでいた。 犬(?)は自慢の牙を遣い、ゴブリンに噛みつく攻撃を繰り返している。 時折、俺ほど鋭くは無いが爪を遣って引っ掻く攻撃も織り交ぜている。 また、軽い身のこなしでゴブリンのナイフを避けている。

 一方のゴブリンはと言うと、犬の猛攻を避けつつもあの切れ味の悪そうなナイフを振り回して犬に攻撃を与えようとしている。 しかし、犬の素早さが勝っているようで、致命傷を与える事が出来ずにいる。寧ろ、あの細い腕や足を犬に噛みつかれてどちらかと言うとゴブリンの方がボロボロになってきている。

 どうやら、この勝負は犬の圧勝で終わりそうだ。 この先に起こる事を少し予想しつつもこの場から離脱しようとすると、ある一点に目を奪われた。


 俺が居る場所から2匹が戦っている場所への丁度対角線上に何かが動いたように感じたのだ。

 始めは気のせいだと思い、少し意識を向けるだけにとどめたが、明らかに犬がゴブリンを追い込むたびにその動いているモノが2匹に近づいてきている。

 そして、俺は見てしまったのである。 その近づいて来るモノの正体を。


「(――――んな!? もう一匹ゴブリンがいやがったのか! ……と言う事は)」


 俺はもう一度戦っている最中の2匹へと視線を向けた。

 恐らく、あの犬と戦っているゴブリンは囮なのだろう。 そして、本命は犬が勝利を確信した瞬間に飛び出して一網打尽にする作戦に違いない。 ……ややこしくなるから犬と戦っている方をゴブリンA、潜んでいる奴をゴブリンBにしよう。

 それにしても悪知恵が働くゴブリンズだ。 ……いや、生きるために必死になった結果がこうなのだから仕方無いことだと思う。 しかしだ、オメオメと俺が目の前で同じ哺乳類を殺させてたまるかったんだ。


 その時の俺はさっきまで考えていた『自分の命が云々』と言う事を忘れてしまっていたのは言うまでも無い。


 俺は身を潜めているゴブリンBに意識を集中した。 多分、あのゴブリンBは出ていくタイミングを見計らっているんだ。 俺の勘が告げている。犬がゴブリンAに対して止めを刺す瞬間、犬が勝利を確信した瞬間に事が起きるって……そしてその瞬間は訪れたんだ。


ありがとうございました。 今話は一人称に戻しました。


確認はしたのですが誤字脱字があると思いますので、見つけられた方はこっそりと教えて頂けると幸いです。


そして、文章の書き方……これは本当にリハビリな話になっていますね。今後も精進しなければ…

感想&ご意見&アドバイスはいつでも受け付けております。ではでは、次回もよろしくお願いします

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