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弱いからこそ強くなれる!  作者: かみかみん
第一章 ネコ科!?
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第二十幕

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

 結果から言おう、コボルトの縄張りで感じた胸騒ぎは当たっていた。


 俺とヤスは殆ど休むことなく、コボルトの縄張りから中央の湖目がけて全力で駆け抜けた。

 ただ、レベルの違いからなのか途中でヤスがスタミナ切れを起たので俺はワイルドキャットになり、背中にヤスを乗せて走ったんだがね。


 そして、湖に戻った俺達が見た光景は予想以上に悲惨な光景だった。


「旦那……一体ここで何が起きたんすかね? コボルトにウルフ…更にはゴブリンの死体までありますぜ」


 そう、コボルトとウルフが攻め込んできたと俺は踏んでいたんだが、ソレに付け加えて何故か何体ものゴブリンの死体までもが湖周辺に乱雑していたのだ。俺は死体の中で一番近くで事切れているゴブリンへと近づいた。 ゴブリンの身体には肩から腹部にかけて刃物のようなもので切り裂かれた跡が確認できる。 ただ、周りの肉が引き契られた跡もあるので鋭利な刃物ではなくノコギリのような刃がガタガタな刃物で切ったのだろう。 これはおそらく、ルジーナさんのボロボロなロングソードでやられたに違いない。


「旦那、こっちのウルフは喉笛を喰い契られていやすぜ」


 ……そっちはクリーヌがやったと考えるべきだな。

 だけれど、何だってゴブリンまでいるんだ? ソレに肝心な二人の姿が何処にも見当たらない。

 状況を見るかぎりは大分混戦していたみたいだが……パッと見た感じではコボルトが3体、ウルフが2頭、ゴブリンが6体ってところかな。


「旦那、こんな所に折れた剣が転がっているっすよ」


 辺りを散策していると、ヤスが折れた剣を見付けたと言ってきた。 俺は急いでヤスの元へと駆け付けた。


 そしてヤスが示した剣を見て愕然とした。


 その剣は赤い血がベットリと付いているが、所々に錆が目立ち、刃先がボロボロとなっている……明らかにルジーナさんが常日頃から腰に帯刀していたロングソードなのだから……


 頭の片隅に最悪な結末がよぎった。

 もしかしたら、この辺りに飛び散っている血液は二人のものなのではないのか……

 もしかしたら、とっくに敵の胃袋に収まっているのではないか……

 運良く生き残ったとしても、死を選びたくなるほどの辱めを受けているのではないのか……


 元人間の俺が魔物に是ほど入れ込んでしまうのはおかしいのかもしれない。

 しかし、数日の短い間とはいえ、共に笑い慰めあってきた仲間だというのには変わりない。

 ルジーナさんには多大な恩があるし、クリーヌは時折甘えてくるので妹みたいな思い入れもある。

 だったら、どんな状態だとしても2人の安否を信じて行動を起こすべきなはずだ。


「――――ヤス、少し頼みがあるんだが良いか?」


「……何すか? 旦那には恩がありやす、何でも言ってくだせぇ」


 早速、行動に移したほうがいいと判断した俺はヤスにとある頼みごとをしたのだった。




――――一方その頃……



「アイタタタ……全く、乱暴に扱われちゃったね」


「『乱暴に扱われちゃったね』じゃ無いわよ! どうするのよ? 冒険出て初日にゴブリンに捕まって牢屋の中です~って笑い話にもならないわよ!」


「アンちゃん、レンちゃんも悪気があったわけじゃ無いんだから落ち着いて。 今はどうやってココから逃げ出すかを考えましょ?」


 ボクの名前はレン。 20歳になった今日から冒険者として暮らす事になったんだ。

 冒険には幼なじみのアンとカレンも一緒にいく事になったんだ。 これから始まる冒険に胸の鼓動を高めながらボク達は村を出た。


 冒険するにあたって、ボク達はまずこれから一緒に冒険をしてくれるファミリアを探すために森へと足を踏み入れた。

 ボクとしては前に命を助けてくれたギンがファミリアになってくれたら嬉しいんだけれど……

 アンとカレンはまだこれといった種族は決まっていないみたい。でも、出来るだけレベルの高い魔物を探すために森の奥深くへと進んでいった。


 そして、人が通りそうに無い獣道へと差し掛かった時なんだけれど、突如としてボク達を取り囲むように10体くらいのゴブリン達が現れた。

 当然だけれど、駆け出し冒険者のボク達のレベルではゴブリン1体を倒すのも簡単なことじゃない。

それが急に10体も現われたんだ。 しかも、ゴブリン達の後ろには明らかに他のゴブリンとは違い、身体が一回り以上大きな見たこともないようなゴブリンが控えていた。

 そんな恐ろしい相手に駆け出し冒険者のボク達がかなう筈もなく、持っていたショートソードとかは没収されて、つい先日味わったばかりだけれど丸太に手足を括り付けられて運ばれていったんだ。

 ボクの脳裏につい先日起きた出来事が甦った。 あの時は偶々ギンが通り掛かってことなきをえたけれど、そんな都合が良いことが起きる筈もない。

 そしてボク達はゴブリンの巣に連れてこられた。


 巣に連れ込まれたボク達をゴブリンは木の格子で閉ざされた牢屋に閉じ込めたんだ。

 更に悪いことに、手足はロープで縛られて自由に動くこともままならない状態だったりする。


「でも、見たこともないゴブリンもいたよね? 身体もボク達よりも一回り大きかったし」


「確かに、普通のゴブリンだったら私達よりも小柄だよね?」


 幾ら考えても抜け出す方法は解らない。 だから、気を紛らわせる為に捕まった時にみたゴブリン(?)の話題を出した。

 ボクと同じように話をして気を紛らわせようと思ったのか、カレンがのってきてくれた。


「しっかし、ついてないわね。 冒険出て直ぐに捕まるなんて…森に入った後だから目撃者もいないはずよね?

ギルドが動きだすには時間が掛かりそうだわ……」


 アンは話に加わらずに冷静に結論を出し、半ば諦め気味に呟いた。


「まぁ、何とかなるよ。 ボクってこう見えて運だけは良いからね♪」


「アンタの場合は悪運が強いって言うのよ。 普通の人間だったら真冬の川に浸かったら風邪引くし、出所不明な茸を食べたら食当たりじゃ済まないわよ」


 ……酷いなぁ~ボクだって好きでこんな暮らしをしていたわけじゃないのに。


「2人とも、誰かが近付いてきているみたいですよ」


 ボクとアンがヤンヤヤンヤ言い合っていると、カレンが静かにするよう呼び掛けてきた。

 よく考えたら、ボク達はゴブリンに捕まってしまったんだ、下手をすれば命だって危うい状態なんだった。 ……今更ながら思い出しちゃったよ。


 少しだけ場違いな会話をしていた事に自己嫌悪したけれど、カレンが言う牢屋に近付いてくる足音へと意識を集中した。

 ……成る程、確かにカレンの言うとおり、誰かがボク達のいる牢屋へと近付いてきているみたいだ。

 だけれど……何だか一つ二つの足音じゃなくて五つくらいの足音が聞こえるんだけれど?


 息を潜めていると、すぐに足音の正体が姿を現した。 足音の正体は数体のゴブリンだった。

 その姿を見て、ボク達は一様に身を固くした。 だって普通に考えたら、ボク達をユーカイしてきた魔物が集団でやってきたのだ、焦らないほうがおかしい。


 そしてその内、一体のゴブリンが木で出来た格子を開けた。


 あぁ……きっと今からとてつもなく辛いことが起きるのだろうとボクは反射的に目を閉ざした。

 こんな結末を迎えるのなら、きっとアンの言うとおり、ボクは決して運が良いわけじゃないんだ……


 等と少しどころか、かなり現実逃避してこれから起こるであろう肉体的苦痛を待った。


――――――ガンッ!


 荒々しく木製の扉が開かれて中にだれかが……



















――――――ドサッ!



 ……あれ? 誰も入ってこない。 寧ろ、何かが投げ込まれてきた気が……

 もしかして、お腹が空かないためにご飯を届けに来てくれたとか!?

 な~んだ、ゴブリンって思ったより良い奴なのかも。


 そう判断したボクは意気揚々と目を明けると……


『…………』


『…………』


「……流石に蛇と犬を食べる趣味は無いかな」


「アンタは何言ってんの?」


 何だかアンにバカにされた気がする。 そんなことよりも、牢屋内に2つの動物……なのかな? 取りあえず、生き物っぽいものが投げ込まれた。

 カレンは……今投げ込まれた動物?…魔物? どちらか解らないけれど、容態を確認しているみたい。


 それにしても、この2体……どれだけ激しい争いをしたのだろう? 2体共に血で身体全身が真っ赤に染まっている。 この犬っぽい動物は全身が血で染め抜かれているし……

 ソレにこっちの蛇っぽい動物……パッと見、蛇だと思ったんだけれど、よく見たら、ボク達みたいに手足が生えていたみたい。 少しだけれど、腕と足が生えているのが解る。

 でも、先の方は何かに喰い契られたみたいにガタガタの断面をしている……人ではないにしろ、ボク達と同じ命を持つものがこんな酷い状態だと……なんだか辛いな。


「……レンちゃん、この子達辛うじて息があるみたいだよ」


「ほ、本当!? ――――そうだ!確かアンって簡単な治療スキルを覚えていたよね?使ってあげてよ!」


「ちょっと、マジで言ってんの!?コイツ等ってどうみても魔物じゃない! 回復した後、私達が襲われるかもしれないのよ!?」


 カレンの言葉に安心したボクはアンに治療するようにお願いした。

 アンはこう見えて治療士の家系で、簡単な治療スキルなら習得済みなんだ。


「何で!?この子達、死にそうなんだよ!それなのに……うぅ」


「ウッ……はぁ、泣くのは反則よ……その代わり、襲ってきたらアンタが対処しなさいよ!」


 何だかんだ言いながらもアンはココぞと言うときは優しくなる。

 何だかアンをいいように遣っちゃっている気がするけれど、今はどうでもいい事だよね?


 手足を縛られているので、アンは身体をモゾモゾとまるで芋虫のように動かして蛇(?)に近づいた。

 アンはあまりの血の多さに一瞬だけ顔をしかめたが、直ぐに精神を集中させた。


「――――――ヒール」


 アンが詠唱を唱えると、蛇(?)の身体に黄色い光が降り注ぎ始めた。

 すると、身体にあった無数の傷が見る見るうちに塞がっていく。

 ただ、手足の切断面は塞がる事はなかったが、それ以上血が流れてくる事は無かった。


「……ふぅ、血を止めるのが精一杯みたいね。 それじゃあ、次はこっちの犬っぽい奴ね」


 次にアンは身体全身が血に塗れた犬(?)へと向き合った。

 犬(?)は身体全身が家に覆われているから、傷こそは目立たないけれど、身体を染める血の量から重傷だっていう事が伺える。


「それじゃ――――――ヒール!」


 アンはさっき以上に気合いをいれて詠唱を唱えた。

 すると、蛇(?)の時みたいに犬(?)の身体に黄色の光が降り注ぎ始めた。

 だけれど、毛が多いから傷が塞がったのか分からないな……


「――――はあぁ……な、何とか終わったわね……流石に連続ヒールは堪えるわ」


「あ、アン……その子たちは大丈夫なの?」


「へ?……あぁ、一応出血は止めといたわ。 ただ、無くなった血は戻らないからね……何時になったら目覚めるか――――」


 そっか……でも、命が助かったみたいでよかった――――


 ボクが安堵して軽く息を吐いたとき、思いもよらない事が起きた。


『――――う……ぐっ…くぅ~』


 なんと、たった今アンが治療したばかりの犬(?)が動きだしたんだ。

 アンの話では、意識が戻るのは何時になるのかわからないって事だったのに……これが野生のプロってやつなのかな? ……自分で言っておいてあれだけれど、プロって何だろう?


『――――ッタタタ……一体何……って人間!? んでもって、ルジーナ! あんた、蜥蜴だと思っていたのに実はスネークだったの!?』


 ……あり? 何だか、このわんちゃんが何を言っているか解るんだけれど。


『オイこらルジーナ! 何時までも寝てんの。……ってココ何処よ!?』


「今更な疑問!?」


「……急にどうしたのよレン?」


 ボクの言葉を聞いて不思議そうな顔をしながらアンが話し掛けてきた。

 カレンも黙ってはいるけれど、アンと同じで不思議そうな顔をしている。


 ……何かがおかしい気がする。


「いや、だってそこのわんちゃんが……」


『だぁぁれが【わんちゃん】かーーー!私はれっきとしたウルフって魔物だ!』


 そっか、魔物だったんだ。可愛らしい見た目だからつい……やっぱり何かがおかしい気がする。


「レンちゃん、どうしたの?」


 不思議そうな顔をしていたカレンが段々とボクの事を心配しているかのような目で見てきた。


『……あれ?私、コイツが何言っているか理解できる』


「やっぱりそうだよね!ボクも君の言っていることがわかるもん!」


『やっぱりそうよね!』


『「あ~スッキリした~…………え?」』


 何で…ボクってば何で魔物とお話ししてんの!?

 ……いや、ちょっと待つんだ!そう確か、ボクは前にケットシーのギンと話した事があるじゃないか。

 あの時は色々と有りすぎて混乱しちゃっていたけれど、何でボクってば魔物と普通にお話しができるの!?


ありがとうございました。

さて、本日は『弱いからこそ強くなれる!』の更新のみとさせていただきます。


ココで一つお知らせがあります。以前お話しました『Re:俺!?』のブログ移転に関するお話なのですが、こちらのほうで続けて欲しいという読者様の意見がございましたので、二次の禁止令が出るまではこちらでお世話になろうと思います。

そしてもう一つ、本日3月25日はなんと……『Re:俺!?』の掲載が始まった日なのですよ~

いまだに30話も書いていない事実に驚きなのですが……


さてさて、最後になりましたが感想&ご意見&誤字脱字報告は随時お待ちしております。お気軽に書き込んでください。

もし、よろしければモンスター案なども受け付けております。

ではでは、次回もお楽しみに~

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