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弱いからこそ強くなれる!  作者: かみかみん
第一章 ネコ科!?
19/30

第十九幕

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

――――――テテレテッテテ~ン


ケットシーの『ヤス』が仲間にして欲しそうな顔をしている。



仲間にする


逃げる


→しばきたおす



「イヤイヤイヤ、なに初対面で物騒極まりない事を選んでいるんすか!?」


「いや、何となく……」




――――ギン


 成り行きで仲間となったヤス曰く、裏切りのウルフのボスはコボルトのリーダーが軟禁されている洞穴にいるとのことだ。

 先日の怪我が酷いのか、奴は基本的に怪我を治すのに専念しており、配下に置いたコボルトに薬草を持ってこさせたり、仲間のウルフに指示を出したりと表に出てくることは少ないとの事だ。 ただ、ココ最近は姿を見ていないから今の状態等は不明らしい。


 だが、残念な事に裏切りのウルフがいる詳しい洞穴の場所は解らないらしい。唯一解るのは、コボルト達は階級ごとにより住む洞穴の高さが変わるということ。

 リーダーのコボルトともなると、崖の上の方に住居がある。 つまり、崖の上部にウルフがいる可能性が高い。


「スイマセンっす……大口を叩いておきながら詳細が解らず仕舞いなんす……」


「いや、そこまで解るなら頂上に近い洞穴を調べれば良いだけだから大丈夫だと思う」


 ヤスが申し訳なさそうな顔をしながら頭を垂れた。 まぁ、自分でウルフの居場所を教えるって大口をたたいておきながら実際に持っている情報はそれほど有益なものではないと思っているのだろう。

 だがしかし、少なくとも俺は余計な洞穴を調べる必要もなくなったし、それだけココの奴らに見つかるリスクも減らすことができたからある程度は感謝している。

 まぁ、敢えて教えてやらないけれど。


「……さて、大体の場所がわかったんなら俺はその辺りを白みつぶしに探すとしようかな。 ヤスはどうするんだ? 終わるまで身を潜めておく事を推奨するけれど」


「そうっすね……旦那さえよければ自分も同行させていただいても宜しいっすか? いやはや、見付かった時を考えたら……」



 ――――――とまぁ、こんな流れでヤスも同行する事になったんだけれど……

 だけれど、この時すでに俺はミスを冒していた。

 俺が出来てもごく一般的なケットシーには出来ない事が多々あると言う事を……










「まぁそもそも、俺が持っていてもヤスが『隠密スキル』を持っているかは別物なんだよな……」


「スイマセン、スイマセンっす! まさか、オイラの足音がこんなにも響くなんて予想外だったんっす!」


 結果的にコボルト達に見つかっちまって取り囲まれちまいました☆


 今回のことでわかったのだが、俺の『隠密スキル』と言うモノは俺が身を隠したいと思うと発動するスキルらしく、足音・気配諸々を消失ではなく低下させる効果があるようだ。

 そのおかげで、ヤスは俺の存在を認知することが出来た。そして俺は入り口辺りに、誰もいないことを確認して茂み等に身を隠しながら行動を開始した。

 しかしヤスはと言うと、その『隠密スキル』が未習得だったらしく、足音・気配・息遣いを潜める事なく俺の後を付いてきた。

 それが仇となったんだ。 ただでさえ人間以上に気配に敏感な魔物を相手に気配を隠さずにいるのは自殺行為もいいところだ。

 例えるならば、コンクリートで囲われた兵の基地内で海パン一丁で靴底に鉄板を仕込みながら乗り込んでいるようなものだ。


 ヤスが見付かれば、幾ら『隠密スキル』か発動しているとは言え、側にいる俺の存在に気が付かないわけがない。

 強行突破しようとも考えはしたが、側にはヤスもいる。 これがルジーナさんやクリーヌだったら以前ウルフ達に囲まれた時のように実行へと移したかもしれないが、ヤスはレベルこそ不明だが、オリジン内にいるケットシーなのだ、低レベルである可能性が高い。

 つまり強行突破しても、ヤスがただでは済まない可能性が高い。


「ど、どうしましょう旦那……これって絶体絶命超ピンチってヤツじゃないっすか!?

あわわ~コボルトやウルフの旦那方! お、オイラ達ケットシーは喰っても決して旨くは無いですぜ~身は筋張っていて皮と骨が大半なんでさぁ! 喰うんでしたら……そう、そこの洞穴に寝転がっている雌コボルト達を喰ってくだせぇ……性的な意味で!!」


 ……コイツ、結構余裕が有るんじゃないか?

 ヤスは始めに俺が入った雌コボルト達がいた洞穴を指し必死になり命乞いをしている。

 俺の事も一緒になり庇っている姿を見ていると、何だかそれだけでも嬉しくなるんだが……あれか、同族のよしみって奴だな。


 しかし、そんなヤスの必死な答えを歯刃にもかけず俺達を取り囲んでいるコボルト達は徐々にだが円陣を小さくしていき、距離をつめてくる。

 ヤスはこの世の終わりと言わんばかりに頭を抱えながら地面へと伏せている。


 ……そうだ、確かワイルドキャットのスキルの一つに『咆哮』ってのがあったよな?

 俺的には敵を威嚇する類のスキルだと考えていたんだが……敵に見付かって尚且つ囲まれてしまった今現在の俺達にとって正に打ってつけスキルじゃないか?

 もし、効果が俺の予想と反していたらそん時はワーキャットにでもなってヤスを抱えて逃げれば良いしね。

 ――――――よっしゃ、ものは試しだ!


「ヤス、今から俺が合図するまで耳を塞いどけ。 絶対に周りの音を聞くなよ」


「旦那何で……いや、了解っす。 言うとおりにするっす」


 ヤスは一瞬だけ躊躇いの表情を浮かべたが、藁にも縋る思いなのか、俺の言うとおり頭を抱えていた前脚で器用に耳を折り畳んだ。

 その姿を確認した俺はまずはケットシーからワイルドキャットになるべく『トランスマイグレーション』を胸中で唱えた。


 俺の身体が一瞬光に包まれる。 ソレとほぼ同時に身体の構造が書き換えられ、身体全体が巨大化していく。

 無表情に俺達を囲っていたコボルト達に初めて驚いたような表情が伺え、動けないでいる奴が殆どだ。

 だが、中には賢いコボルトもいたようで、俺の進化を脅威と感じ取り飛び掛かってくる奴もいた。


 しかし、そんな奴の攻撃はワイルドキャットになった俺には虫に蹴られた程度にしか感じられない。

 それに、へたに避けてそばにいるヤスに当たったら本末転倒だ。 俺は敢えて、その場から動くことなく一身で受けた。 幸いな事に飛び掛かってきたのはコボルト一体だけだったので、其処だけに集中することが出来た。

 コボルトの拳が胴体にめり込むが、その拳はワイルドキャットの毛皮に阻まれて皮膚に届くことはなかった。


 俺は身体を翻し、スキル『咆哮』を発動させた。


「――――――■■■■■■■■■■!!」


 俺の口から言語ではなく、獣自味た何かが発せられた。

 俺を中心として全方位へと伝わっていく咆哮……そして次の瞬間、俺の近くにいたコボルトが一体…また一体と白目を剥きながら地面へと倒れこみ始めた。

 全てのコボルトが気を失ったわけではないが、正気を保っているコボルトでさえ戦意は削がれて何とか意識を保っている状態になってしまっている。


 ……まぁ、何となく予想していた効果とは若干違う気がするけれど、結果オーライかもしれない。


「ヤス、もう良いぞ」


 俺は方が付いたことを伝えるべく、未だ地面に伏せっているヤスを指先で軽く触れた。

 そしてヤスは俺の合図を受けて恐る恐る顔を上げ……


「お、終わったんすか……って凄いじゃないっすか旦那! コボルトの群をこうもあっさり――――――ってギャアアアア!! そ、其方におわす凶悪そうな顔をなされた魔物様はどちら様でぇぇ!? そして旦那はいずこにぃ!? ――――――ハッ!ま、まさかこの魔物が喰っちまったので……こ、コラーー! 旦那を返すっす!!」


 ……うん、ぶっちゃけこういった反応が見たいが為に敢えてレベルや進化の事は伝えなかったんだけれど……予想以上に驚きまくっているもんだから逆に引くわぁ。

 今にも驚きで意識を失うのではないかと思ってしまうくらいヤスは見事なリアクションをしてくれた。

加えて恐怖を押し殺しながらも俺に向かって威嚇してきているではないか。


「ヤス、俺がギンだ」


「旦那ーーー! いずこに…………へ?」


流石に可哀想だったので俺は早々にネタバレする事と決めた。

おそらく、事情を察知した瞬間の間の抜けた表情をしたヤスを後にも先にも見ることはないだろう。



「うぅ~…旦那も猫が悪いですぜ。 オイラはてっきり旦那が喰われちまったのだと思っちまいましたよ」


「だから悪かったって。 咄嗟に判断したもんだから伝える余裕が無かったんだよ」


 俺が自由に進化することが可能だとヤスに話したのは、意識を辛うじて保っていたコボルトを寝かせた直後のことだった。

 その話をヤスは半信半疑で聞いていたのだが、ヤスの目の前でワイルドキャット状態からケットシーへとトランスマイグレーションし、強引に信じ込ませた。


「それにしても、旦那は進化出来るんすか……でも、元はケットシーだからオイラもがんばれば旦那みたいなワイルドキャットって魔物に……」


「俺は元々、猫から始まったぞ? ……じゃなくて、進化談義については今はいいから早いところウルフを探すぞ」


 何だか話が脱線してきたので取りあえずは今目の前でやらなければいけないことをするべく強引に話を戻した。

 えっと……ここには現在ウルフが10頭、戦闘用コボルトが30体いる。 そのうち、ココに来るまでにウルフ5頭、コボルト10体を戦闘不能状態にした。 そんでもって、たったいまコボルトをヒのフの……10体を戦闘不能にさせた。 そして残っているのはウルフが5頭、コボルトが10体か。

 それくらいなら一気にこられても俺一人で軽く対処できる数かな。


「そうっすね。 ……でも、何だかおかしいっすね」


「おかしいって…何がだ?」


 それほどおかしい事ではないと思うのだが、ヤスはどうにも腑に落ちない顔をしている。


「いえ、ココにはまだまだコボルトもウルフもいるんすよね? 旦那の『咆哮』ってスキルがどれほどのものか全力で耳を塞いでいたもんですからわからないんすけれど……なんで、誰も来ないんすか?」


 確かに、おかしい話だな。 『咆哮』は自分で言うのもあれだが、騒音ってレベルじゃないくらい音量が大きかったはずだ。 俺も声帯が逝かれるんじゃないかって言うくらい苦痛があった。

 少なくともこのコボルトが住んでいる崖全体に響き渡るくらいの声量だったはずだ。

 それなのに、他のウルフ&コボルトが1体も出てこないって言うのはおかしすぎる。


「もしかしたら、旦那の咆哮の範囲が余りにも大きすぎて皆気絶しているとも考えたんすが……」


「どうだろうな、少なくとも咆哮に耐え切ったコボルトが居るからな……少しの間、行動不能になってたから、どついて気絶させたけれど。 でも、気絶させて居なければ既に行動できる状態になっていてもおかしくないよな」


 いや、そもそも何で俺はここに裏切りのウルフがいるって断定して来たのだろう? ヤスがここに居るって言ったから? そもそもヤスはあの洞穴で自由に身動きが取れない身分のはずだ。

 もしかしたら、あの洞穴に居る間にどこか言ったとしても気が付くはずがない。 コブロクが言ったから? いやいや、それこそ有り得ない。 アイツは俺を騙して――――――ッ!? も、もしかしてあいつが俺をココに連れてきた本当の理由って言うのは……ヤバイ半端なく嫌な予感しかないんだけれど。


「旦那、どうしたんでさぁ? 目つきが怖くなってますぜ?」


「……なぁ、コボルトのコブロクって奴……知っているか?」


「コブロクっすか? アイツはここのリーダーの右腕みたいな奴でさぁ。 元々、コボルトにしては頭のきれる奴でして……」


 ってことは、かなり策士な奴と考えてもいいかもしれない。 さて、俺だったらどんな策を立てる? 少なくとも自分で言うのもへんだけれど頭脳だけは人間と同じなんだ。 魔物のコボルトに負けてはいられない。


 裏切りのウルフが居るって言うのはたぶん間違いない。 アイツの特徴とかを言っていたし。 それに、あのウルフの性格からするとコボルトを傘下に加えたって言うのも間違いないだろう。

 姑息っぽそうな奴が俺やクリーヌに負けたまま簡単に引き下がるか?


 ――――――答えは否だ。


 奴に限って引き下がるっていうのは考えられない。 だったら復讐っていう形がどこかで出てくるはずだ。 このコボルトを傘下に入れるということも俺たちに対するブラフだとしたら。

 復讐を成し遂げる上で一番邪魔な奴は俺か? 確か、以前奴の前に現れた時はケットシーの姿ではなくワイルドキャットだった筈。

 見慣れない魔物であった俺のことを一番の脅威とみなしているはず。 俺だったら一番危ない奴はなるべく遠ざけておく戦法を採るけれど……あり? も、もしかして俺ってば囮に捕まったのか? だとしたら、中央に居るルジーナさんやクリーヌが危ない?


「……ヤベェ入れ違いになったって言うのか!?」


「旦那何か分かったんっすか?」


「ヤス、急いで引き返すぞ。 俺の考えが正しければ中央に居る俺の仲間達が危ない!」


「旦那のお仲間……了解っす! ここまできたら一蓮托生っすよ!!」


 そして、俺たちは急いで中央の湖へと向かったのだった。

ありがとうございましたかみかみんです。

久々に『Re:俺!?』も更新しました。そちらも見て頂けると幸いです。


さてさて、言いたい事は二次の『Re:俺!?』あとがきに書きましたので、少し覗いてもらえるとうれしいです。


では、感想&誤字脱字&ご意見は随時お待ちしております。 遅くなりますが、確実に返信いたします。


それでは、次回もお楽しみに~

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