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弱いからこそ強くなれる!  作者: かみかみん
第一章 ネコ科!?
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第十八幕

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものです。

「取り敢えず聞くけれどさ、コボルトは兎も角ウルフ達は一度戦ったよな? ……勝てると思ったのか?」


 今俺の目の前には阿鼻叫喚と言ってもいい位、血生臭い光景が広がっている。


 勿論、散乱している血肉を構成しているのは俺ではなく、俺を待ち伏せしていたウルフ5頭と同様に待ち伏せしていたコボルト10体だの事だ。

 ただ、決して命は奪っていないので誤解はして欲しくはない。


 確かに、待ち伏せって言う作戦は問題ないけれど、今回に限ってはコイツ等の運が悪すぎる。

 だって、寄りにもよってレベルだけを見るとオリジンには存在してはいけない魔物レベルなケットシーに喧嘩売ってんだぜ?

寧ろ、命が無事だと言う事を感謝してもらいたいくらいだ。


 俺は死屍累々な奴らを一見すると、とあるコボルトの方へと歩み寄った。

 他の奴と比べて流している血の量が多い感じも見受けられるが、それは騙した分だけ多めにこずいただけだから問題は無いはずだ。


「さて……さんは付けないよコブロク。 一体どういうつもりだ?」


「ククッ……貴殿はバカか? この状況を見ても理解できぬか?」


 あ、カッチーン。 スッゴいバカにされているよ。 まぁいいや、ここまでされたらバカにされた云々の前にルジーナさんの忠告を無視した自分に腹が立ってくるだけだし。

 コブロクは自分に体を横たえながらも俺の方を始め会ったときみたいな誠実そうな目ではなく意地の悪そうな目で、そして何を考えているのか分からない目で見つめてきている。


 それにしても、ウルフが5頭とコボルトが10体の待ち伏せか……さっきのコブロクの話を信じたとして後ウルフが5頭にコボルトが20体分か。 まぁ、あの話がうその可能性もあるから一概に信じられないけれど。


「おい、何だって俺を嵌め様とした?」


「クキキッ! そ、そんなことを話すはずがなかろう……」


 真実は語らずか……仕方ない、ここまでコボルトの縄張りの中心に近づいちまったんだから手ぶらで帰るわけにはいかないか。

 少なくとも、ウルフが数頭いるみたいだしクリーヌの叔父がいる可能性がある以上無視するわけにもいかないか。

 俺は再びコボルトの住みかと言われている崖を見据えた。

 相も変わらず生き物が住んでいるようには見えない崖だが、きっと裏切りのウルフがいるのだろう。


 俺はそこら辺に転がっているコボルトとウルフを捨て置き、崖へと歩を進めた。


「――――ま、待っていただきたい!」


 そんな俺を呼び止めたのは満身創痍状態のコブロクであった。


「なんか用?」


 俺は振り返えることなくコブロクへと問い掛けた。

 振り返えらなかったのはコブロク顔を見るとトドメをさしてしまいそうな衝動にかられそうだったからだ。


「ど、どこへ行かれる? 貴殿は帰るのではないのか!?」


 当然と言っちゃあ当然か。 騙した相手がこのまま敵地へと乗り込もうとしているんだから。

 しかし、こちとらルジーナさんの制止を振り切ってコボルトの縄張りに来たんだ。 手ぶらで帰っちまったら、それこそ二人に会わす顔が無い。

 俺はコボルトの問いに答えることなく、歩を進めることとした。


 何も答えない俺に対してコブロクはそれ以上声を掛けることはなかった。



 さて、某コードネームが蛇の傭兵ばりに隠密スキルをフル活用しつつコボルトの崖へと近づいて、いくつかある洞穴の内、一つを覗いてみたんだが……


「胸くそ悪い光景だね……」


 俺の眼下には何やら白い液体にまみれたコボルトが数頭、転がっている。

 むせ返るような異臭に顔を顰めながら中へ侵入を試みてみると、転がっているコボルト達は皆が皆、メスのコボルトのようだ。 見回してみると、動いているコボルトの姿はみえない。

 どうやら、皆気絶しているみたいだ。 その瞬間、ここで何が行われたのかを悟った。


「……コボルトとウルフって子供作れるんだな」


 ……冗談はココ迄にしておこう。

 気分が悪くなってきた俺は足早にこの洞窟から飛び出した。


 外に出た俺は新鮮な空気を求めて何度も深呼吸を繰り返した。 冷たい空気を吸って脳をクールダウンさせながら今見た光景について考えてみた。

 普通に考えたら、同族のコボルト同士であんな結果になるのは考えにくい。 まぁ、特殊性癖な奴の塊だったら考えられない事もないんだけれど……


 しかし、ここはウルフが来てからあんな状態になったと考えるのが妥当だろう。 だと考えたら、コブロクが何故俺を嵌めようとしたのかも容易に説明が付く。


「……脅されたな(――――ガサッ)――――ッ!?」


 俺の呟きとほぼ同時に崖の目の前にある茂みが音を立てた。 風が吹いていない現状から推察すると、誰かがこの崖へと近付いているのだと咄嗟に判断した俺は半ば反射的に今入った洞穴とは別にある近くの洞穴へと飛び込み息を殺しながら身を潜めた。


――――――ザッザッザッ……


 誰かの足音が洞穴の外から聞こえてくる。 それがつい先程俺が瀕死状態まで追いやった魔物なのか、はたまた唯の見張り番なのかは分からなかった。

 しかし、今俺が外に出て行ったら面倒くさいことになるということだけは理解できた。

 そして、幸か不幸かその足音は俺が潜む洞穴の前を通り過ぎるとそのままそこを素通りしていくのが分かった。

 その正体を確かめようと、俺は洞穴からほんの少しだけ顔を出して外の様子を伺ってみた。


 そこには、2体のコボルトの後姿があった。 どうやら見張り番のようだ。

 しかし弱ったもんだ……俺は全くここの地理について分からない。 外から見た感じだとこの崖に作られた洞穴の数は相当数あるようにも見える。

 しかも、人工的に作ったのかわからないけれど、崖の中腹に向けて階段のようなものまであるし……しかもご丁寧に階段の先には洞穴がいくつも点在していた。

 虱潰しに裏切りのウルフを探さないといけないってわけか……俺、鼻は利かないんだよなぁ~ こんな事なら無理を承知でクリーヌに来てもらうべきだった。

 だが、今更悔やんでも後の祭りだ。 早いところウルフを探し出して倒すことに専念しよう。















「――――――あのっ!」


「(――――――ビクッ!?)な、なんだぁ!?」


 そんな決意をあらわにしたとほぼ同時に俺は誰かに声をかけられた。 どうやら、逃げ込んだ先には気が付かなかったけれど、先客が居たみたいだ。

 俺は反射的に身を屈めて何時でも飛びかかれるように臨戦態勢をとった。
















「やっ、オイラは決して怪しい者では……いやいや、寧ろたった今入ってきた旦那が一番の怪しい者ですが……あいやや、決して旦那が怪しいと言っている訳では……」


 ――――――何故かそこには、俺と同じような猫型の魔物……黒い毛並みのケットシーが居た。

 しかし、その様子は酷く怯えていると言うより……俺がここに居て混乱しているって言った感じかな?

 そう言えば、何だってコボルトの縄張りにケットシーがいるんだ? お世辞にも戦闘向きの種族って言うわけではないはずなんだけれど……


「俺はギン、訳合ってここに来たっていうウルフに会いに来たんだ」


「あ、こいつはご丁寧にどうもです。 オイラは見てのとおりの同属ケットシー、名前はヤスっていいやす。 ……それで旦那、何だってあんな物騒なヤツに会いに来たんでさぁ?」


 自己紹介をして打ち解けたのか、ケットシーのヤスは先程見られた混乱した様子は見えなくなり、態々危険を冒してまでウルフに会いに来た俺に対して疑問をぶつけてきた。

 どうしようか……このまま闇雲に裏切りのウルフを探すのもしんどい、そして目の前には何故かケットシーが居る。

 ここに進入したのか、それとも元々ここに居たのかは不明だ。 しかしながら、俺以上に土地勘があるのは違いないはずだ。 ここは一つこのヤスに事情を説明してウルフがいる場所へ案内してもらうって言うのが得策かもしれない。


「実はな……」


 俺は始めて会ったばかりのヤスにこのコボルトの縄張りへと侵入した経緯を説明した。 コボルトのコブロクに助けを求められた事、コボルトの縄張りに近づいたところで襲撃にあったこと、返り討ちにしてボスウルフを探し始めた事。 俺の言葉をヤスは最初から最後まで真剣な面持ちで傾聴してくれた。

 俺もきっと、同じケットシーという種族だからこそヤスにここまで話してしまったのだろう。

 そしてヤスは俺の説明を全て聞いた後、少しの間目を閉じ何かを考えるような素振りを見せた。


 数秒間その体制で固まっていただろうか。 ヤスはゆっくりと目を開けてこのように切り出した。


「旦那、そのウルフって言うのは体が他のウルフよりも大きい奴の事ですかい?」


「あぁ、そうだ。 あと目が潰れていて片足の骨が折れているはずだ」


 どうやらヤスには心当たりがあるようだ。 しきりに首を縦に振り『ウンウン』と一人でぶつぶつ話している。


「――――――旦那、オイラがそいつの所まで案内いたしやす」


「お、マジで? それなら助か「ただ、オイラのお願いを一つ聞いてくれやしませんか?」……内容にもよるかな」


 まぁ、これくらいは覚悟していたさ。 何の見返りもなく情報を渡すなんて草々あっちゃあいけない。 この地で数日暮らしてみたけれど、魔物の状態で生きるのに情報っていうのはとても重要なものだ。 俺はルジーナさんやクリーヌに色々と教えてもらえたけれど、実際にはそう都合よく教えてもらえる事は少ない。

 何故かというとその情報を共有するという事は、ある意味で自分の首を絞める行為に他ならないからだ。

 簡単な例で言うと、『今日はあの場所で餌が豊富に取れる』という情報があったとする。 それを知っているのは自分だけ、しかし目の前には見ず知らずの腹を空かせた奴がいる。

 この腹を空かせた奴に餌場を教えるのは簡単だ。 しかし、そうする事によって自分の食べる量が減るかもしれない。 だからこそ、相手から何か見返りが欲しい……元日本人の俺からしてみたらお返しは意識しないで行うことなんだけれど、あいにくとここは弱肉強食な世界。 そう易々と見返りが来る事はまずない。

 まぁ、今の例えは極端な話なんだけれど、用は情報って言うのは重要な事なんだ。 さて、ヤスは俺にどんな無理難題を引っ掛けてくるのやら……


「お、オイラをココから出しちゃくれませんか? 実はオイラ、最近コボルト達に世話役兼非常食として連れて来られたんですが、ウルフが攻めてきた今となってはいつ非常食にされちまうか……もう毎日がハラハラ状態でして……ですからお願いいたしやす! オイラを連れて行ってください!!」


「あ、いいよ。 それ位なら」


 一世一代のお願いに対してものすごく軽い返事をした俺を見るヤスの間抜けっぷりな顔はきっと忘れる事は無いと思う。




―――― 一方その頃…



「ちょっと~ギンの事を許してあげたら?」


「……うるさい、我に指図するな」


 所変わってこちらは中央湖の畔。 ルジーナの忠告を無視したギンの事をクリーヌが必死になり弁明しているところだ。

 しかし、肝心のルジーナはクリーヌの話に耳を傾ける事なく、目蓋をキツく閉じている。


「ほ、ほら、ギンが常識はずれなのは何時もの事じゃない」


「…………」


「だ、だから、今回は……ね?」


「…………」


 如何に弁明しても反応が無いルジーナの姿を見てクリーヌは内心でこの場にいない猫型の魔物ギンへと悪態をつき、大きく溜め息をついた。


「まぁ、この際ギンの事は置いておくわ。 最近だけれど、ゴブリンが多くなっているじゃない? そろそろ動きがあると私は思うんだけれど……アンタはどう思う?」


 気分転換なのか、クリーヌは話題変換にと最近活発化しているゴブリンについて話題を出した。

 何故かゴブリン達は退治してもどこから沸いてきているのかと言うくらい引っきりなしに出現している。

 もう、いっそのこと人間がゴブリン型のゴーレムを大量生産していると言っている方が納得できる。


「何処にあれだけのゴブリンがいるのかって感じよ」


「…………」


 しかし、ルジーナはクリーヌの言葉が耳へと入ってきていないかのように沈黙を貫き通している。

 流石のクリーヌも反応が無いルジーナに対してイライラ感がつのってきた。


 そこまでギンのことに苛立っているのか、しかしルジーナの姿は先程のように目蓋を閉じてはおらず、何処かを見据えているようだ。

 その様子にクリーヌもただならぬ空気を感じ取ったのか、真剣な目付きへとかえルジーナが見据えている先を注視した。


「――――何があるの?」


「……正体はわからぬ、だが複数の気配が此処を取り囲んでおるのは確かだ」


 クリーヌもルジーナに習い、神経を張り詰めてみた。

 クリーヌは小さく『成る程』と呟き、体を低く何時でも動ける態勢へと姿勢を変えた。


「確かに……嫌な気配の団体さんが登場ね」


「全く……これだけの数を捌くのは骨が折れる。 だからこそギンを遠くに行かせたくなかったのだ」


「あ~……うん、今となってはアンタの意見に同意だわ。――――――ギン! さっさと戻ってきなさいよぉ!!」


 クリーヌの心の叫びが中央の森中に響き渡ったのであった……

お、おかしい…前回、次の更新は『Re:俺!?』だと豪語していたのにも拘らず気が付けばこちらを更新していた…だと!?


まぁ、大体は書きあがっているのですが気に入らない文章とかを打ち直している段階なんですがね(笑)

さて本当にいつごろ更新できるのやら……

あと、今更ですが両作品共に更新は不定期ですのであしからず


ではでは、ご意見&感想&誤字脱字報告は随時受け付けております。お気軽にお書きください~


それではかみかみんでした~

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