6、呪いからの解放
憧れであるライトからの誰もいない場所への呼び出し。
思春期でもある年頃でもあり、あらゆる妄想も膨らむ。
どのようなことになろうとも、エフィナにとってはご褒美である。
「ステータスに呪いと表示されていたな? それを解除しようと思う」
「え……えーーーーーっ!? 呪いを解除!? ――ふぐうっ」
ライトは慌てながら、エフィナの口を両手で塞いだ。
エフィナにとっては本来とてつもないラッキーハプニング。
だがそれよりも呪いを解除できるかもしれないということに頭がいっぱいだった。
「静かに……! 王家には呪いを消し去る特殊な道具が極秘に存在している。それを使いキミにかけられている呪いを消そうと思う」
「大変嬉しいことですが、なぜ私なんかに……?」
「俺も少なからずステータスが偽りなのではないかと疑ってしまった。だが、先ほどの動きを見てハッキリとした。その罪滅ぼしというわけではないが、せめてもの償いだ。許してほしい」
第二王子であるライトがエフィナに対して頭を下げた。
いくら学園内が平等とはいえ、エフィナは驚いていた。
(外見が美しいだけでなく、心も性格も美しいだなんて……)
エフィナは本気で惚れてしまうと思ってしまった。
だが、念願の挨拶ができて顔見知りになれたとはいえ、この初恋のような感情がうまく実るなどと微塵も思っていない。
「どうか顔を上げてください。私自身でも驚いていました。疑っても当然だと思いますし、怒ってもいません」
「そうか……」
「ですが! その呪いを消せるというものだけはどうしても使わせてほしいですっ!!」
ライトはほんの一瞬だが、くすりと笑った。
「おかしなヤツだ。誠実かと思えば欲望にはまっすぐなのだな」
もしも呪いさえなくなれば本格的にダイエットが上手くいくのではないか。
エフィナにとってはそれが全てだった。
♢
翌日指定された場所へ行くと、すでにライトは待っていた。
「待たせてしまって申し訳ないです!」
「たいしたことはない。俺が早く着き過ぎただけだ」
とにかく人に見つかるわけにはいかなかったため、ライトは用件を手短に終えたかった。
それはエフィナも理解していたため、スンナリとことが進んでいく。
エフィナが受け取ったのは体力回復用のポーションに使われる見慣れた小瓶。
「それを全て飲み干せば呪いは消えるだろう」
「ほんっとうにありがとうございます!」
エフィナはすぐに中身をごくりと飲み干した。
実感はないものの、これで呪いは消えたとあっさりと信じていた。
「なぜ疑おうとしない?」
「え? むしろなんでそうなるんです? ファーゼント殿下が嘘をついているのです?」
「そうではない。だが、俺のことをあまりにも信じ過ぎているではないか?」
ふとエフィナは考えてみた。
しかし、どう転がっても王子がウソを言っているとは考えられなかったのである。
「私たちのことを助けてくれたからですかね?」
「なぜ質問なんだ?」
「疑う必要なんてないかなと思ったまでです。むしろ、罪滅ぼしにしてはものすごいリスクなことをしてくださったなとは思いますが」
「この回復薬のことか? キミが悪人だとは思えなかった。そうでなければあの場で男たちに立ち向かうはずもないだろう。あれほど正義感ある者が不正をするとはありえない」
エフィナにとって、初めて褒められたようなものだった。
ただでさえ嬉しいのに、さらに追い打ちをかけられる。
「昨晩、学園長から聞かされ驚いた。まさかダイエットのために危険なダンジョンへ潜っていたとはな」
「へ……変ですよね」
「そんなことはない」
「え?」
「呪いにも負けず、争い続け前を向く姿。俺はむしろ好きだが」
エフィナは初めて自分のやっていたことが認められた気持ちになっていた。
たとえダイエットは成功していなくとも、それを好きと言ってくれたことが本当に嬉しかったのだ。
「ありがとうございます……!」
エフィナは心の底から感謝の気持ちを伝えた。
それに対し、ライトは照れ臭そうにしながら一言。
「ん」
そう言ってライトはこの場から去った。
呪いは消えている。
そう思っているエフィナは改めてダイエットを頑張らなければと心に誓う。
今度こそは絶対に痩せてみせる。
そして、ライトと友達になれることを目標にしたのである。
とはいえ本来のステータスがバレないように色々と気を使わなければならない。
エフィナの力を自重するダイエット学園生活が始まった。
一方で、エフィナの呪いが消えたことなど知る術もないアンブレアは、今日もまた欲望に正直で甘いものや脂身の多い肉などをたくさん食べていた。




