18【Side】アンブレア、スライムまみれのダンジョンへ入る
時は少し遡り、エフィナとライトがスライムまみれと化したダンジョンに入った前日のこと。
アンブレアは悩んでいた。
「うーん……五十二キロですか……さすがに自堕落のしすぎかしら」
アンブレアの体重が三キロ増えていた。
呪いのおかげで圧倒的な美貌とスタイルをキープしてきたアンブレアであったが、それがついに崩れ始めていたのである。
百六十五センチの身長に対し、今まで四十キロ代をキープしていたアンブレアにとっては、許し難いことなのだ。
「王立学園を卒業してから全く身体を動かしていませんでしたからね……。いくら呪いの力とはいえ、限界があるのでしょうね」
近日縁談相手のカルロスと会う予定がある。
そのため、アンブレアは残りのケーキを全て食べ尽くしたのち決心した。
「お母様、わたくし少々ダンジョンへ行ってきますわ」
「たった一人で!?」
「大丈夫ですわ。これでも卒業間近に測定したわたくしのステータス、身体が32で魔力が70。魔力ならソロで潜入しても問題ないレベル50の基準に満たしていますわよ」
「呪いの影響でアンブレアの魔力は高いのはわかっているけれど、それでも心配よ。どうして急に?」
アンブレアのプライドは高いため、たとえ母が相手でも本当のことは言えなかった。
「エフィナはダンジョンの浅層で運動していたでしょう? わたくしならもっと奥で活躍して見せますわという見せしめのためですわ」
「そんなことしなくても、エフィナは近々消えるわよ?」
「その前に悔しがらせておきたいのですわ。それに、少しは身体を動かしておかないとカルロス様に笑われてしまうかもしれませんし」
フォゲルダ公爵はアンブレアのことはとても大事にしている。
少しでも怪我のリスクがあると考えると、やはり心配は絶えないのだ。
「指輪はしっかりとあるのよね?」
「ええ。学園で装備していた指輪のままですわ。基本の四種類と、私の場合は小指にストレージ増加の指輪を身につけていますの。お菓子やお肉、美味しいものをよりたくさん収納しておきたかったので」
「帰還の指輪があるならば……。たしかエフィナには地下にあった使い物にならない指輪を与えていたのよね?」
「そうですわ。どんな指輪を身につけていたのかは知りませんが、ろくでもない指輪しかなかったはずなので確認もしていません」
「そう。ゴミ指輪なのに生き残ってしまうなんてなんて悪運の強い子なのかしら……。アンブレアは決して無理のないように!」
アンブレアは一人でダンジョンへ向かった。
エフィナが毎日通っていたダンジョンなのだから、安全なのだろうと思い込んでいる。
だがダンジョン内へ入った途端、信じ難い状況を目の当たりにするのだった。
「ぎゃあああああああああっ!!!!」
悲鳴以外の言葉すら出せなかった。
(どうしてスライムで埋め尽くされているのです!?)
人差し指に装着している帰還の指輪を起動させ、慌てて脱出した。
まだなにもしていないのに激しい息切れと心臓の鼓動。
スライムとはいえ集団で襲われたら命の危険すらある。
アンブレアは生まれて初めて、殺されるかもしれないという恐怖を体験した。
「エフィナめ……このわたくしを罠にハメたのですね……! 絶対に許しませんわよ!!」
アンブレアの見解はこうである。
エフィナがダンジョンでダイエットを始めても全く痩せない。アンブレアがダイエットを教えたのだから結果が報われないことをアンブレアのせいにする。仕返しとして、スライムを倒しては放置しての繰り返しでダンジョンを意図的にスライムまみれに変える。
いつかアンブレアがダンジョンに潜入したときにスライムに埋もれてしまえ。
こう考えていた。
「これは許されない行為ですわ。カルロス様とお会いしたら承認として来てもらい、国へ報告しなくては」
しかし翌日、ライトの活躍によってスライムまみれの層だけは、元どおりのダンジョンに戻っているのである。
その後にカルロスとともにダンジョンへ潜入したため、アンブレアはユメでもみていたのではないかと疑われてしまうのだった。
この絶大なストレスにより、アンブレアの身体は一気にポチャ化していく。




