14【Side】アンブレアの婚約
時は少しばかり遡り、エフィナ=フォゲルダの学園生活二日目のこと。
エフィナにかけられていた呪いが解けたことを知らないアンブレアと母は、優雅に甘いものを食べながらくつろいでいた。
「ようやくお荷物が片付いたわ。アンブレアも良い機会だから結婚してもらいたいのだけれど」
「そうしたいのですが、王立学園にはろくな男がいませんでしたのよ? 本来ならば王立学園でお相手を見つけなければいけない風潮があれど、さすがにあの中からでは選べませんでしたわ」
実際のところはアンブレアは数名の男を口説いていた。
だが、高望みのしすぎでうまくいかなかっただけである。
「アンブレアのお目にかなうかはわからないけれど、一人うってつけの婚約候補がいるのだけれど。その人ならば婿養子として迎え入れ、フォゲルダ家を継いでもらうのにも申し分ないわ」
「どのようなお方ですの?」
「カルロス=カイネス伯爵子息。彼はあなたの二つ上の十九歳で伯爵家の次男よ」
「年上ですわね」
貴族の人間は王立学園で相手を見つけたり意気投合して婚約に発展するパターンが多い。
そのため、学園以外での婚約は珍しいとされている。
「私とカイネス伯爵夫人がとあることに意気投合していてね。せっかくならばより深くということで向こう側から縁談を提案してきたのよ」
「意気投合?」
「まあ……色々とね」
アンブレアにも話せない内容であった。
お互いに不倫をし合った仲であり、互いに訳ありの子がいる。
王立学園生活において死んでもらえたら願ったり叶ったりという話をしたことにより急速に仲良くなったのであった。
「カイネス伯爵家はね、貴族の風潮をとても大事にしているのよ。だから、アンブレアなら絶対にふさわしいと思うの」
「わたくしがですか?」
「アンブレアはどんなことをしてもその綺麗な体型を維持できるから」
「ああ、そういうことですね」
エフィナにかけられた呪いのおかげでアンブレアはどんなに食べてもぐーたらしても太ることは決してない。
アンブレアもそう思っている。
「カルロスさんの縁談に対しての望みは三つ。まずは体型が貴族に相応しい状態であること」
「それならば全く問題ありませんわね」
「二つ目。相手が上位貴族であること」
「公爵になれるのだから、それも問題ありませんわね」
「そして三つ目。自堕落な生活になっても決して文句を言わないこと」
「あ、完璧ですわね。つまりわたくしの生活も今までどおり自由にしていられるということでしょう?」
婚約条件面においては、アンブレアにとっての望みがすべて揃っていた。
これは期待せずにはいられたなかったのである。
「お顔はいい感じです?」
「もちろん。なにしとカイネス伯爵家といったらとにかくスタイルと体型に命をかけているような家柄だもの」
「だとしたらまずいのでは? 妹のエフィナのせいで」
「それも知っているから大丈夫。どのみちあの子はこの公爵家からいなくなる。もしくは学園生活で死んでもらうことも話してあるから」
アンブレアは男に関しては諦め気味だった。
悠々自適で自堕落な生活を最優先していたのである。
「それでね、もしも縁談が正式に成立であればの話なんだけれど……」
「その表情だととても良い条件があるのですね?」
「そう。向こうの家にも問題な子がいるそうでね。エフィナも一緒に始末してしまうという案が出ているの」
「わたくしとしましては、カルロスというお方がカッコよく、なおかつわたくしを自由にさせてくださるのであれば結婚しますわ」
「いい返事よ。では前向きに話を進めるということで」
アンブレアの楽しみが増えた。
その影響もあってか、今日のケーキは一段と口の中に進んでいき、おかわりを何回もした。
その日の夜、アンブレアは今までに経験のないような腹痛を起こしたのである。
食べすぎた分が身体に影響が出始める兆候だった。




