13、護衛
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エフィナの視線と優しい金色の瞳が交差し、心臓が破裂するのではないかと思うほどの興奮を覚えた。
さらにライトはエフィナの耳元に顔を近づける。
すでにミモザへの怒りなど些細なことで、どうでもよくなってしまったのであった。
優しい金色の瞳をした表情から一変、ミモザに対して鋭い視線を向けた。
「残念だが、俺は心に決めた相手がいる! だからおまえと婚約はできない」
「「なっ……」」
エフィナとミモザは同時に叫んだ。
まるでこの世の終わりを迎えたかのような声で。
「そうですわよね……。エフィナ……いえ、エフィナ様。巻き込んでしまってごめんなさい」
「……………………」
「もうわたしは長くありません。せめてエフィナ様にした行為の償いだけでも……その前に動機をしっかり話さなければ……」
エフィナはミモザに対しての怒りなどとっくに消えていて、それよりも失恋したことで頭がいっぱいだった。
(私なんかに脈なしなことくらいはわかってはいたけれど、ファーゼント殿下に意中の相手……。ううううう、そのお方が羨ましい!!)
「――というわけで、エフィナ様をダンジョン内に閉じ込め、わたしは奥深くへの転移ができるようにしたかったのです……ほんとうに申し訳ございませんでした」
「ああ……うん」
エフィナは無我夢中でライトのことを妄想していたため、ミモザの動機を全く聞いていなかった。
「ですから、エフィナ様のお望みどおりにしてください」
「え、ああ……どうしよう」
どう立ち直っていくか、ミモザに対してどう処罰すればいいのか二重にして悩んでいた。
しかも肝心なことを聞き逃してしまったため、もう一度話して欲しいなどとは決して言えなかった。
エフィナはしばらく真剣に考える。
(ミモザってスタイルがとてつもなくいいし私の憧れでもあるんだよなあ……。動機を聞き逃しちゃったけど、理由はなんであれ殺そうとしてきたことは許せない。けれど、そのおかげで色々といい思いもできたし……)
「うん。許す」
「「え?」」
二人とも信じられないという表情をしていた。
「睡眠薬みたいなものには勝てないってこともわかったし、これから気をつけていこうとも思えた。それに結果的には私も無事だし」
しかし口にしなかった心境はこうである。
(ファーゼント殿下と一瞬だけでも脈あるかもと思えるくらいいい雰囲気味わえたし、今後スタイル抜群のミモザと一緒にいたら新たな痩せる方法を知れるかもしれない! 望みどおりになんでも従うって言っているし、私のダイエットのために付き合ってもらうからね!)
「本来なら死罪であるが、いいのか?」
「(私のダイエットのために)ミモザは死んではいけませんので」
「エフィナ様……ほんとうに申し訳ありませんでした!!」
何度も謝罪をするミモザ。
その真剣さが伝わったのか、エフィナはよしよしとミモザの頭を撫でていた。
「殺されるかもしれないと言っていたな。カイネス伯爵との間になにかあったのか?」
「さすが殿下ですわ……。殿下もしくは第一王子、どちらかと婚約が果たせないようならばわたしなど必要ない、不要な子だと脅されていまして……」
再びミモザは涙をこぼし始めた。
エフィナも親に捨てられたも同然の立場であるからこそ、この話には共感していた。
エフィナも詳しく話を聞こうとしたのである。
「わたし、お母様との不倫相手の間に産まれた子のようです。ですからなんとかしてわたしを排除しようとしているようで。良血の相手と婚約ができるならば生き残れる、そうでなければ命などない……そう脅されていました」
エフィナは思った。
ミモザの境遇には同情するが、だからと言って私を排除しようとしなくてもいいではないか。
だって、いくら推しと話していたと言っても、こんなにおデブな私と良い関係になるだなんてありえないでしょ、と。
しかし、エフィナがそう思っているだけである。クラス内ではすでに、ライトがエフィナのことを異常に気に入っているのではないかという噂が流れているのだ。
「なるほど。だが、それが彼女の命を危険にさらしたこととは全くもって関係のないことだ。やっていることはおまえを排除しようとしている両親と変わらないではないか」
「本当に申し訳ありませんでした。わたし、どうしてもエフィナ様のことが憎くて仕方なかったのも相まってしまい……」
何度も何度もエフィナに頭を下げていた。
ミモザだけでなく、貴族には風潮がある。体型に難がある者は自分の管理もできないという理由で、叙爵や称号継承といったことが認められないことすらある。
ミモザ=カイネスの家庭では特にその思考が強く、そう育てられていた。
その成り行きも話したのち、自身の心境も打ち明けた。
「でも、エフィナ様は話してみるととてもお優しく寛容なお方なのですわね」
「私、寛容ではないと思う」
「厚かましいことだとは承知の上でどうかお願いします。もしもエフィナ様がわたしのことを許してくださるのであれば、護衛になっていただけませんか?」
「はい?」
「先ほどのドラゴン軍を睡魔に襲われながらもあっという間に倒した姿、まさに無双でしたわ。わたしを守って欲しいのです」
ライトが止めようとしたのも間に合わず、エフィナは即答であった。
「うん。暫くだったらやってみる」
「本当ですか!?」
エフィナとしてはこれほど好都合なことはなかった。
「そのかわりひとつお願いしてもいいかな?」
「はいですわ! わたしの持ち合わせのある限り全部お支払いしてでも……」
「ダイエットに協力して欲しい!!」
「……へ?」
「ミモザのスタイルに憧れてたんだ。私もミモザみたいになりたい!!」
ライトがクスクスと笑い始めた。
あまりにも自分自身の欲望に正直で、なおかつ周りに迷惑がかからない要望しかしないエフィナの姿勢がさらに気に入ったのであった。
「これは守秘義務になることだが、キミはすでにエフィナの本来の力を見てしまった。俺から伝えておこう」
ライトはエフィナの本当のレベル、そして呪われていたから体型が太ってしまっていたこと、その呪いは今は消えていることまで話したのである。
「――と、いうわけだ。これから護衛してくれる相手は世界最強でこれ以上の護衛はいないと思ってもいい」
「そうだったのですわね……。脂身の多いものを食べすぎや不規則な生活での体型ではないのに、責めてしまい改めて申し訳ありませんでした」
「それはもういいよ」
「でも、本当によろしいのですか? それほどの力があればわたしなどの護衛よりももっと高待遇な仕事もありますでしょうし」
「お金よりも痩せたいから、ミモザの護衛でいいよ」
再びライトがクスクスと笑った。
(この調子だと地位や名誉にも興味がなさそうだ。今ここでエフィナに気持ちを告白したいが、さすがに婚約を申し込んできた相手がいる前でするのはやめておくか)
「俺もこの件には協力をしよう。カイネス伯爵らが命を狙っていることが事実であるなら、放っておくことはできない」
「殿下……」
「そもそもそんなことがなければ、エフィナが危険な目にあうこともなかったはずだ」
「そう言われてみれば……」
エフィナはライトから言われたことではっとした。
怒りをぶつける相手はミモザではなかったということに。
ミモザの命を狙っている相手のせいで、間接的にエフィナの命も危険になったというふうに捕えたのである。
(ミモザを狙うやつ、ぶっとばす!)
エフィナはそう誓った。
次話予告、ついにざまあSideのお話になります。
最近私の性格が歪んでいるのか、じわじわと毒化させていくのが好きなもので……。そのため次話ではまだまだざまあ感がないかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
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