称号獲得、はあるある(下)
後編です。
そんな感じで群れの仲間たちとギャアギャア騒ぎながら成長すること数年。
ド畜生行為のたびに冒険者ギルドへ赴いて魔物図鑑を拝借して読んだりして知識を蓄えた。とはいっても、拝借した魔物図鑑はあまり当てにならなかった。というのも、図鑑の方は人間が書いているせいか、間違った情報が多く記されていて鑑定の方が正確に情報を示している、という状態だった。
地図は冒険者ギルドに掲示されている大きいすぎる物だったり、精度があまり良くない物しかないので、ド畜生行為による地図の入手は早々に諦めた。
それでも私が魔物図鑑などで情報を得ることは無駄ではないと信じている。
群れの仲間からはすっかり変わり者扱いだが、邪険にはされていない。リーダーには相変わらず収穫品のマウントを取られるが。
すっかり成鳥となった私は群れから離れて単独行動をとることが多くなった。
正確には群れから一歩引いて様子を見る、だけど。
もちろん群れの仲間に呼ばれたら近づくし、仲間も私を嫌っているわけではない。
ただ、ド畜生行為のたびに手に入れるものが装飾品ではない、という変わり者であるのもそうだが、それ以上に仲間よりもはるかに大きい私の体が、群れとなじまなくて居心地が悪いのだ。一応、母親も私のことを気遣ってくれている。
図鑑で得られた情報だけでなく、鑑定やらステータスで自分達が過ごすこの森のことを知るのは楽しいから、もっと知りたくなっていく。そうなると群れから離れて行動をしなくてはならない。
ハルピュイアとしての本能と、人間だったころの私の好奇心。
どちらを取るか迷っている。
・・・・・
迷ったまま数日を過ごしたある日、人間と会った。
その日は森の入り口付近で狩りに勤しんでいた。
体が大きいということはつまり、その分大物を狩ることができるということ。仲間が狩ることができない大物を狩ってみんなに分け与える。
これのおかげか、群れの中で飢え死にするハルピュイアはかなり減った。
おかげで私は「変わり者ではあるが、いざという時の頼れるエース」というような立ち位置になった。
閑話休題。
とにかく、狩りをしていたその付近が騒がしかったので、気になってそちらへ飛んでいくと、大きなキラーベアーと戦う人間がいた。
鎧に身を包み、武器を手にしている。所々に紋が見えるので国の軍だろう。
キラーベアーが振り上げた前足が盾を構える兵士に直撃し、あっという間に前線が崩れた。近くには死体が転がっている。
たまらず団長と思しき男が声を上げて撤退を始めた。それを追ってキラーベアーも走り始める。熊に背を向けてはいけない、は鉄則。
その様子を少し外れた木から見ていた私は、人間の気配がなくなったのを確認して死体の近くに降り立った。
私の感覚がずれてなければ身長は180cmぐらいだろう。木に体を預けてこと切れていた。私はその男の上半身と同等以上の背丈。でかいな。
試しに足を男の顔にかざす。余裕で鷲掴みができる。しかし、なかなかイケメン。ここで死んでしまうのには惜しい。
ついでだし、死体を漁らせてもらった。武器しかなかったが、念願の地図を手に入れることができた。小雨覆いのところに、始祖鳥みたいなかぎ爪があるから、物は少しつかめる。
が、自分の現在地がわからない以上使い物にならないと思いつつ鑑定をしてみる。
【地図】
ファルロテ大陸を中心に描かれた地図。質がいい。
おお! 鑑定で見ても質が保証された物だ!
現在地とかもわかったらいいけど。そう思ったら、赤いピンが地図上に示された。
【地図】
ピンを「現在地」に設定しました
めっちゃ便利。
なるほど。今は南西にいるのか。
この軍はどこの国だ?「鑑定!」
【ロタク王国軍】
南西に位置する王国、ロタク王国の王国軍。
規模は小さいが、防衛線に秀でる。
ロタク王国…。何でこんな魔境に来たんだ?
…多分ド畜生行為が頭に来てハルピュイアを殲滅しに来たんだろうな。予想がつく。最近南西の方にド畜生行為しに行ったからね。
んー…。ロタク王国、その他にも地図には色んな国がある…。
東のほうにある国結構大きいな。リーダーが「絶対に行きたくない」って言っていたから何か理由があるとは思うんだけど…。
【チェザニル帝国】
シェイオ大森林の東側に隣接する王国、帝国の中で最も強大。
人間至上主義で亜人の待遇は悪い。
なるほど。帝国。そりゃ近づけるわけがない。
近づかんとこ。くわばらくわばら。
念願の地図も入手できたし、面白いものを見れた。ほかに収穫もなさそう。仲間が呼んでるしもう戻ろ。
ロタク王国の軍人さん。埋葬できなくてごめんなさい。
…地図どうしよ。持ってると潰しそう。
【条件達成】
「知的探求心」を満たしたため新たなスキルが追加されました。
【スキル追加】
スキルに新しく「アイテムボックス」が追加されました。容量は経験値を得るごとに増えます。
マジか。ラッキー。散々魔物図鑑を読み耽っていた甲斐があったぜ。
経験値ってなっていたけど、要するに「たくさん魔物を狩って強くなれ」ってことかも。狩りは生きるために必須の行為だから、明日から狙う獲物を少し考えよう。今より少し手強いぐらいがいいかもしれない。自分よりも強い相手に勝ったら経験値が増えるのはお決まりだからね。
早速アイテムボックスに地図を入れて、仲間と共にねぐらに帰った。
用語解説
・キラーベアー
シェイオ大森林に生息する固有種。爪が鋭く当たるだけでも致命傷となる。背中に生える魔石は純度が高く高値で取引される。
・ロタク王国
シェイオ大森林南西に位置する小さい王国。軍事力には秀でないものの、外交力、交易力に秀でる。ロタク王国の王国軍は防衛線に秀でたものが多く、籠城戦を得意とする。
・チェザニル帝国
シェイオ大森林東側に位置する大帝国。圧倒的な軍事力で周辺の国を属国としている。人間至上主義のため、亜人の扱いは非常に悪い。
・亜人
人間以外の種族のこと。エルフ、ドワーフ、獣人などが属する。見た目や能力、特技などがそれぞれ異なる。亜人は差別用語ではないものの、近年は「亜人」と総称することを避ける傾向にある。




