表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

ユニーク個体、はあるある。

2025年12月26日・加筆しました


殻を破って、眠って起きるを幾度となく繰り返した結果、私は転生していることに気がついた。

どう考えても異世界。しかも自分は人面鳥ときた。周りが人面鳥ばっかり。


確かに「空を飛びたい」とずっと願ってたけど、魔物になりたいわけではなかった。冒険者とかに「人面鳥ゲットだぜ!」されそうな予感しかしない。


母親(と思しき人面鳥)から無理くり押し込まれるゲロ(という名の餌)を飲み込みながら、まずは独り立ちすることを心に誓った。


母親からの愛のゲロを吐き出さずに飲み込み続けしばらく。

すくすくと成長した私はそこそこの大きさになっていた。そろそろ空を飛ぶ練習が始まる。

背伸びをする感覚で翼を広げたり巣の中で立ってみたりしていたので、体の動かし方は大体つかめている。

にしても、この巣はだいぶ高いところにあるようだ。地面が霧で見えない。人間が落ちたら死ぬ。


下を見ながら巣に引っ込んでいると、母親に首根っこをつかまれ引っ張り出された。

何を言っているかはわからないがたぶん飛べ、ということだろう。スパルタすぎる。

耳元でギャアギャア言われれば飛ばざるをえない。

それに空を飛ぶのは私の長らくの夢だったのだ。飛べずに墜落死しても後悔はない。

意を決して太い枝から飛び降りた。



杞憂だった。空飛ぶの楽勝だった。

マジで死ぬかと思ったけど。翼を広げたらあっという間に空を飛んでいた。

数回も繰り返せば母親に負けず劣らずの飛行性能を手に入れた。


飛行訓練を続けて気がついたが、私、デカすぎる。

母親よりもデカくなるのは、生物におけるあるある(だと信じている)だが、それを抜きにしても私は二回りぐらい大きい。

空を飛び始めてから出会った仲間の人面鳥を見てもそれは明らかだ。マジででかい。

人間と比較した時の大きさが分からないからなんともいえないけど、確実に肩を破壊できる大きさだと断言できる。


空がちゃんと飛べるようになってから始まるもの、狩りのお時間。肉食の宿命。

自分たちが過ごすこの森、獲物となる魔獣がマジで凶暴。え、これを狩るの?あ、だから群れなんですね…。

殺気に気づいて魔法を撃ってくるし、足の強靭な爪はなかなか通じないしで散々。それでも初めて得た獲物は美味しかった。味覚も魔物になっている。

反撃してきたとはいえ、命を奪ったのだ。心が痛むはずなのにそこにあるのは達成感だけ。

なるほど。弱肉強食。

自分の適応力にびっくり。


今日の狩りでゲットした獲物(ツノと牙が生えたウサギのようなもの)を食べながら考える。



「(異世界転生したんだし、ワンチャン鑑定とかあるんじゃね…?)」



群れからほんの少し外れたところにある枝に餌を引っ掛けて「鑑定!」と言ってみた。

なぜか私だけ人語(ぽい言葉)を話せるんだよな。


しばらく待ったけど、何もないので、「都合がいいことはないか」と思いながら戻ろうとしたら、餌の前に光るウィンドウが現れた。マジで使えた!?



【ホーン・ラビ】

ツノと牙を持つ魔物。跳躍力に優れ、肉は美味。

跳躍力で獲物の急所を狙う。



なるほど、ホーン・ラビというのか。鑑定で「肉がうまい」と書かれるだけあって生肉でも美味しいわけだ。

ワンチャン自分も鑑定できるのでは……??


もう一度「鑑定!」



【ハルピュイア】

女の体に鳥の体を持つ魔物。鳴き声が醜く、身も不味い。

群れで喧しく行動して、人が過ごす街では糞害をもたらす。



自分の種族、最低すぎない…?カラスを最底辺にした感じだ。

まぁ確かにやかましいな、と思うことはあったけどそういうことか。

もっと自分について知りたい。できるかな。



【ハルピュイア(ユニーク個体)】

通常のハルピュイアから生まれる特殊個体。

体が大きく獰猛。通常とは異なり、人間も捕食対象。出現は稀。

神話に出てくる「本来のハルピュイア」がユニーク個体であると言われている。



………みなかったことにしよう。それがいい。

何も知らずにハルピュイアのフリをしていたほうがいい気がする。


自分のステータスを見れそうな気がする。ここまで来たら行けるとこまで行ってみたい。

こういう時ってなんで言うんだっけ…?

あっ!「ステータス!」



【ステータス】

ハルピュイア(ユニーク個体)


[スキル]

鑑定

ステータス表示

神話の獣



なるほど。神話の獣ってなに。



【神話の獣】

神話に出てくると言われる獣の総称。

元祖帰りとも。通常とは異なる異質な力を持つ。

この個体が発生すると世界が混乱しやすい。



よくわからないが要するに、デカくて強いやつのことか。

弱肉強食の世界でハルピュイアとして生きるなら強いことに越したことはない。やばそうな予感はするがまぁいい。


仲間に呼ばれた(相変わらず「ぎゃあぎゃあ」という鳴き声だが)ので、群れに戻ることにした。


・・・・


群れに戻れば、リーダーがみんなを連れて街に行く、と言い出した。

その一言でみんなそわそわし始める。なにそれ聞いてないんですけど。

そもそもハルピュイアって渡り鳥だったっけ。

頭に「???」を浮かべ困惑していると既に出発していたので、慌てて後を追いかけた。


群れのみんなで飛ぶことしばらく。始めて森から離れた。

森は常に薄暗く気が立ち込めていて、いかにも「陰険!」「超危険!」「マジヤバイ!」って空気だった。

てっきり自分が過ごすこの世界は世紀末と思っていたけど、そうじゃないことに安心した。


青い空に白い雲、に感動していたけど、空をを埋め尽くすハルピュイアの群れで一気に気分が萎えた。

しかも騒がしいし。きれいな空があっという間にハルピュイアに占領された。

一匹でいるときはあんまりうるさくないのに、群れになると途端に公害レベルの騒音になるのはなぜなのか。

群れのことが嫌いなわけではないけど、ずっと病室という静かな空間で過ごしてきた自分にとっては少しつらい。


さらに飛ぶことしばらく。街が見えてきた。穏やかで活発な空気だ。活気にあふれているともいえる。


おお! マジで異世界だ!

中世ヨーロッパを豊富とさせる石畳の街並み。馬車が走って露店が広がってる。


なんか人間が空を見て騒いでる。こんなでかい群れで飛んでたら目立つか。上空失礼しますよ。

…と思ったら群れが降下した。この街の屋根で休むらしい。てっきり通過するつもりで飛んでたから、自分も後を追いかけて降下した。


・・・・・


屋根でみんなで休むと思ったら、バカ騒ぎが始まった件について。いやマジでうるさいんですけど!!!


羽をバサバサさせながら町の人に襲いかかって食べ物を強奪するわ、耳元で大音量で鳴き声をあげるわ、挙句の果てにフンをまき散らしてる。


私たちハルピュイアの鳴き声なんて、金属をすり合わせたような、だみ声の悲鳴のようなものだから、お世辞にもいい声とは言えない。そのくせ声量は馬鹿でかい。


右を見れば母親は通行人に襲い掛かって、手に持っていたバスケットを強奪していた。

左を見れば群れのリーダーは子供に襲い掛かってるし、後ろを見たら同じ日に生まれた私の幼馴染(?)はパン屋と思しき店に押し入ってパンを食べてる。

ほかの仲間はゴミをあさったり、民家に押し入ってキラキラしたアクセサリーや金貨を強奪する。


鑑定で見た通りのド畜生行為が目の前で繰り広げられていた。

鑑定でボロクソに書かれていたけど、そんな気配なんてなかったから完全に油断した。


が、害悪すぎる…流石害鳥と名高いハルピュイア。


そら世界から嫌われるわ。

こんなことをしておいて、よく根絶やしにされなかったな。

いや大森林で生活してるから根絶やしにされないのか。



街の人たちは逃げまどってる。活気があった街は今やハルピュイアの鳴き声と住人の悲鳴が飛び交っている。


目の前で繰り広げられるド畜生行為にドン引きして屋根の上で動けずにいると、母親が隣に降り立った。

ド畜生行為に参加しない私を不思議に思っているらしい。足を器用に使ってバスケットの中身の野菜を食べている。

いらないです。押し付けないでください。



目線をそらすようにして屋根から下を見下ろしたら、路地の陰に隠れる小さい男の子と目が合った。

母親が「はよ行け」と言わんばかりに見つめてくるので仕方なく、男の子のほうに向かって飛び始めた。


襲うつもりはない。低空飛行で頭上を飛んで驚かすだけだ。


路地を縫うようにして追いかければ、路地を出て通りに出た。

通りでは群れの仲間がド畜生行為をしている。見なかったことにした。


男の子を追いかければ突き当りに出てしまったらしい。逃げ道がない。

地面に降り立って男の子を見下ろす。自分の体がでかいから余裕なんだよな。


顔を近づければ、男の子は泣き出した。すまん。泣かすつもりはなかった。

泣き声にびっくりして顔を引っ込めれば、悪寒が走り、本能的に空へ舞い上がる。



屋根にひらりと降り立てば、剣を振り切った状態の兵士がいた。

まわりを見たらほかにも兵士の手によって追い立てられるハルピュイアたちがいた。

どうもこの騒ぎを聞きつけ、兵士たちが押し寄せてきたようだ。


群れの仲間が空に逃げていく。どうやら撤退するようだ。

それに合わせて私も飛び立つ。


男の子はちゃんと兵士に保護されたようだ。驚かしてごめんよ。


・・・・・


群れの仲間と少し遅れて合流すれば、みんなから心配されていた。

どうやら戻ってこない私が兵士に殺されたと思ったらしい。心配かけてごめん。


みんな首にアクセサリーをつけていたり、麻袋を握っていたり食べ物を握っていたりしている。

収穫がなかったのは自分だけらしい。

母親をはじめ、仲間たちからめちゃくちゃ慰められた。

狩りがへたくそと思われたようだ。

複雑な気分。


用語解説

・ホーン・ラビ

ツノと牙をもつウサギ型の魔物。ツノと牙に脚力を駆使して襲いかかるが基本は臆病。ツノと牙、毛皮、肉はそこそこの値段で取引される。毛皮は保温性に優れる。


・ユニーク個体

通常の個体とは隔絶する要素を持った魔物のこと。本来の種では取得することができないスキルを所持している。討伐は非常に厄介。ユニーク個体が発見され次第、国家間での情報共有が協定として結ばれている。


・ド畜生行為

正確には「ハルピュイアの襲撃」。不定期に起こるハルピュイアの群れが街に降り立って民間人に危害を加えたり、街を荒らす行為のこと。街からすればはた迷惑でしかない。数が多いために兵士や冒険者(緊急クエスト扱いになる)を動員させて追っ払うが、出費が出るだけで収穫は何一つない。

ハルピュイアだけが得をする最悪なイベント。ついでに街も汚れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ