主のせい、はあるある
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「川の主がでた!!!」
のんきに窓の景色を眺めていたら、それをぶち破るように大声が聞こえた。
主って何ぞや。でかい魚か何かか。
その言葉を聞いたマルセイユさんや竜の翼の人たちもざわついてる。
びっくりしてちょっと飛びあがっちゃった。
ギルドに駆け込んできたお兄さんは、肩で息をしてる。
「川の主が、また出ました。しばらく通行止めです…」
受付のお姉さんに落ち着かれながらそう言った。
マジかよ。国まであとちょっとだったのに。
通行止めって、どれぐらいよ?
ルネアの方に飛んで行って肩に乗る。
自分はデカいからそれなりに重いハズなのに、ルネアはあまり気にしていないらしい。
むしろお腹のモフモフを触っている。
報告をしてきたお兄さんによると、川の主はここ最近橋の近くに居着いてしまい、端を通る人たちに襲いかかっているそうだ。
幸い主に食われた人はいない(馬車を引っ張る馬が食われた、はあるが)が、万が一食われてしまえばひとたまりもないし、そもそも主の時点でそれなりに凶暴。とても危険だ。
主が姿を現すたびに橋を封鎖して主が過ぎ去るのを待つが、過ぎ去るまでの時間は短時間の場合もあるし、数日橋を彷徨く場合もある。
こうなってしまえば、オール村の人たちはたまったものではない。
渡し賃で生計を立てている人たちがほとんどだから生活が成り立たない。
当然オール村の人たちは元は渡し守の人たちなので、川を渡る時に襲いかかってくる魔物を退けることはできる。
しかし、冒険者ほどの技量があるわけでもないのだ。
川の魔物に対して(ある程度とはいえ)対処に慣れているオール村の人たちでも手が出せないほどの主とは一体なんなのか。聞くには巨大なんだとか。
橋の管理費を出している国やその冒険者ギルドに要請を出してはいるものの、水辺の魔物自体が珍しいため「討伐ができる」と自信を持って名乗りを上げるものがいない。
一応、国から調査団、もとい魔物に詳しい人たちが訪れてみたいで、「シェイオ大森林から流れに乗ってやってきたのだろう」という見解をいただいた。
シェイオ大森林から来た、つまり元は大森林の魔物、ということだ。
この一文がつくだけで、討伐難易度が跳ね上がる。
というか、この一文のせいで、討伐に来る人がいないようなものだ。
ほとほと困っていた時にちょうど私たち(というよりも「竜の翼」の人たち)が村に着いた、ということだそうだ。
「…ということです。なんとかなりませんか…」
「そう言われてもなぁ」
「水生の魔物は討伐経験がないぞ…」
「でも橋が渡れないのは困るしなぁ」
「竜の翼」の人たちはみんな苦い顔をしている。
オール村に着くまでの道中、ルネアとの話を盗み聞きしていたが、「竜の翼」は陸上の魔物の対処には慣れている…というかそっちが専門で水上の魔物は対象外だそうだ。
しかし、討伐経験がないわけでもないので、まずは主の姿を確認することにした。
・・・・・
お兄さんの案内で橋に到着。
デカいな。レインボーブリッジみたいな幅の広さだ。確かにこれは主要道路。
これが通行止めかぁ。確かに大打撃。
橋が架かる川の流れもそこそこ早い。
水は澄んでいるけど、魚の影が見つからない。
「竜の翼」の人たちと共に川に近づく。
「ルネア、お前はここで待機だ」
「え」
「ルネアは仮登録とはいえまだ冒険者じゃない。さらにここからは命懸けだ。マルセイユさんと一緒にギルドで待っていてくれ」
「…」
「竜の翼」の人たちからストップが降りた。そりゃそうだ。ルネアは不満そうだけど。
ルネアは魔法が使えるから自分も戦えると思っているのだろう。
でもここは引いたほうがいいんじゃない???
なんでぶすくれてるのさ…。
「竜の翼」の人たちがどうやって主を誘き寄せるか相談しているのを睨みつけてる。大方、自分を舐めてるとか思ってんだろうな。
確かにルッタ王国で出会った時から魔法の練習しているのは私がしっかり理解しているし、魔法をよく知らない私の目から見てもかなり強い魔法使いだ。
でも実戦で振るったことはない。魔物はほとんど私が狩り尽くしていたし、「竜の翼」の人たちと出会ってからは村に着くまでに出てきた魔物は全部「竜の翼」の人たちが倒していた。
自分の力を試せないのが不満なんだろうな。力を持て余してる。
スキルに古代魔法とかあった気がするから、元から力があるのだろう。
「アンドレさん」
「なんだ?」
「…僕が主を誘き出して見せましょう…ノレイア」
自分がおびき寄せろってことっすね。了解。
腕から飛び立って川の方へ向かう。
水面を飛べばいいかな??
うーん空から見るとこの河、ブロッゼ河川?だったかな?マジで大きいな。
水面を飛ぶために高度を下げた。
・川の主
ブロッゼ河川はシェイオ大森林が水源となっている川。川の主は元々シェイオ大森林の川に住む魔物。どういうわけか流れに乗ってオール村へと辿り着いた。馬が食われる被害はあるものの、人身被害が出ていないのが幸い。




