道中誰かに会う、のはあるある
草原街道を歩む私たち。
見晴らしのいい草原を私の先導でルネアは進んでいく。
飲み水はルネアに待たされたバケツを使い泉へと飛び、その水を汲む。
ルネア曰く、「魔法で足した水は熟練の魔法使いじゃないと飲めたものではない」らしい。
魔法とは興味深い。なんでもできる便利な力ではないようだ。
…ハルピュイアに転生してから泥水とか平気で啜ってたけど。
味覚もすっかり魔物になっていたから、「美味しい水」の重要性を忘れていた。
3日ほど街道を歩き続けて、ルネアは休憩をすることにした。
ルネアにバケツを持たされて水を汲みに行く。
近くの泉まで飛んで水を汲むのだ。なお水質は鑑定によってちゃんと保証されている。
泉の淵に降り立って水を汲もうとしたら、魔力探知に何かが引っかかった。
レベル?経験値?が上がってから気配に敏感というか、「魔力探知」なるスキルも手に入れたんだよね。これが結構便利。
気配を薄くして背の高い草むらに潜めば、反対側から何かがやってきた。
黄色い鹿の魔物、ライトディアだ。
森にいた頃はこんなに貧弱そうな感じじゃなかった。子供か、もしくは地域によって差があるのかもしれない。
鑑定をしたら成体だった。
マジで? こんな弱そうなのに? 大人なの??
ライトディアは私に気づかず呑気に水を飲んでいる。
最近はうさぎばっかりだったから、たまには鹿肉もいいかもしれない。
ルネアがこの鹿を捌けるかは別だけど。
捌けなくても私の胃の中に入るだけ。
この草原街道、ひいてはルネアの目的地までどれぐらいかかるかは分からない。
だったら尚更食料はあったほうがいい。
私はその場で狩りをして食事にありつけるが、ルネアはそうはいかない。
だったら狩る。
そう決めて、持たされたバケツを放置してライトディアに襲いかかった。
・・・・・
仕留めるのにすっごい時間かかった。
あのライトディア、めちゃくちゃ素早いんだけど。
しかも魔法を撃ってきた。
森にいたライトディアのほうが遥かに魔法も体格も明らかに違うし、威圧感が半端ない。
なのに草原のライトディア、魔法はしょぼいし体も小さいのに素早すぎる。素早さに値を全部りしているのかもしれない。
おかげで夕暮れになってしまった。
ちょろちょろ逃げ回るライトディアにムカついてムキになったのもあるけど時間がかかりすぎた。
狩りがうまく行ったというよりは私の粘り勝ち。
ライトディアをしつこく追いかけ回して、疲れ切ったところを仕留めた。
草原中を走り回ってこのザマである。私も疲れた。
息絶えたライトディアを鷲掴みながら、泉に戻る。
あとはバケツに水を汲んで戻ればいいだけ。
ライトディアをアイテムボックスに入れようとしたら、頭を入れただけで動かせなくなった。
【アイテム容量が上限に達しました】
なんで今ここで容量上限が来るわけ??
え、じゃあこのライトディアとバケツを持ったままルネアの元に戻るの??
こんなバカ重い獲物を掴んだまま??
そこそこ距離があるのに??
疲れてるのに??
……嫌すぎる。
でも、せっかく仕留めた獲物を捨てていくわけにもいかないし…。
仕方がない。ここは気合いだ。
唸れ! 私の翼!
・・・・・
何とかルネアのところまで戻ったら人が増えていた。誰だこいつら。馬車があるから行商っぽい。
ルネアは?…と思ったら男たちがこっちを見て騒いでる。
ハルピュイアがこっちに向かってきたらそりゃ騒ぐか。
申し訳ないけど、ルネアの仲間なんだ。ちょっと失礼するよ。
間に押し入るようにして無理やり着陸する
マジで疲れた。本当に疲れた。次からはアイテムボックスの容量を確認してから狩りをする。
そう心に誓えばルネアが声をかけてくる。
大丈夫だよ。疲れただけ。
と思ったら、冒険者らしきおっさん達がひそひそしてる。
ハルピュイアが単体でいるのが珍しいのかも。
悪いハルピュイアじゃないよ。
その日の晩御飯は鹿の焼肉になった。美味しかった。
・・・・・
一夜明けて次の日。
ルネアは行商の人の荷馬車に乗せてもらうことになったらしい。
馬車に揺られ、遠くなっていく景色を見る。
飛んだり歩くのとは違う景色だ。
一団はやがて草原を抜け、山道へと進んでいく。
ルネアが生肉を朝食代わりとして差し出してくる。うむ。うまい。美少年のあーんは心が潤う。
堪能していたら、冒険者の人_この荷馬車の護衛依頼をこなす「竜の翼」の人達_がルネアに話しかけた。
そこそこの距離を進んだと思ったけど、まだ距離があるのか。
記憶が正しければこの山道を超えた先に大きな川があったはず。それを超えないと国から「近い」と言えないのかもしれない。
とにもかくにも。
ルネアはビトリック王国についたら冒険者として身分を登録するつもりのようだ。
それで身分が安定するなり路銀が稼げるならそうしたほうがいい。
道中魔物が出てきたが、「竜の翼」の人たちの手によってあっけなく倒されていく。
何もせずにただ乗りしているのは少し心が痛んだので先回り魔物の情報をつかんだり、魔物と戦う人たちをさりげなくサポートしたりした。
・ライトディア(その2)
ノレイアが捕獲してきたライトディアは冒険者ギルドで討伐依頼が出ていた。草原「街道」である以上魔物が出るとかなり厄介なのだが、草原が広すぎること、ライトディア自体がそれなりの強さを持っていることが原因で受注をする者がいなかった。




