第6話:究極の達成感?
「やや、聞いて下さいよココアさん! 今度はもう少しで鳥の巣を覗けるというところまでいったんです!」
アタシの入れた紅茶で一息いれながら、学校で面白いことがあった小学生みたいな話し方をするアッシュ。
一応繰り返すが、今はコイツが死んだときの話をしている。
「でも、結局死んだんだろ?」
「そうなんですよ! やはり巣には親鳥が居たのですが、これが想像以上に凶暴で!」
「向こうからしたら卵やヒナを狙ってるように見えるだろうからな」
「本当ですね! おかげでつつかれるわ、蹴られるわで、結局バランスを崩して落ちてしまいました!」
あっはっは、とその時のことをなんとも思っていない風のアッシュ。
痛いとか、苦しいとか感じないのか?
「……で? まだ鳥の巣を確かめてないってことは、また行くのか?」
「もちろんです、『破片』を回収することが自分の使命ですから! 今度は、なんとかして親鳥を巣から引き離す方法を考えて挑戦します! どのみち、『破片』の手がかりはありませんし! 明日、また言ってきます! 風呂入って寝たら、いい手が思いつくかもしれませんし!」
アッシュのやる気は微塵もゆるがない。逆にこっちがげんなりするくらいだ。
そしてアッシュの言うとおり、親父の用意した魔法テレビには、他の『破片』の反応はない。山にある反応を調べる以外の選択肢は、アッシュにはないのだ。
……なんか、歯がゆいな。
× × ×
翌日以降も、アッシュは鳥の巣に『破片』があるとみてアタックをかけ続けている。その度にどこかでミスって『回生の光柱』で復活する、という毎日を繰り返した。
そして、ついにアッシュは『破片』の反応の原因を突き止めた。それは――
「木でできた数珠だったか……」
アッシュが持ち帰ったものを囲んで話し合うアタシたち。
「『ジュズ』? それはどのようなものですか?」
「この国の宗教のひとつが、祈るみたいなことをするときに使う道具だよ」
アッシュに数珠の説明をするアタシ。すると女神が口を挟んでくる。
「なるほど。宗教的な意味合いを持つもの、しかも木でできているなら『破片』と共通しています。だからジェローの『魔法テレビ』が反応したのでしょうね」
反応した理由が判明しても、これではアッシュは無駄に痛い目と苦労を見続けただけだ。さすがに精神的も疲れたのだろう。アッシュは先ほどから黙りこくって俯いている。
いつもコイツは底抜けに明るいから、なんだか少し気の毒だ。
「な、なあアッシュ。今回は空振りだったけどさ。じきに別の手がかりも見つかるって。アタシも協力するから……」
とか言いかけたとき、アッシュはがばっ! と顔を上げた。その表情はいつも通りの脳天気な顔。
「そうです! 今回の失敗のデータを魔道具に入力すれば、より正確に破片の場所を示してくれるのではないでしょうか!」
……別にアッシュは落ち込んでいたわけではなかった。心配して損した。
しかし、その指摘自体は的を射ていると思う。データ不足で『破片』の反応を探し損ねたのなら、そのデータを入力し直す機能があるはずだ。だが。
「ん~、テレビ単体じゃあ情報を入力できないっぽいぞ」
アタシはテレビを操作して調べたが、それっぽい設定は見つからない。
すると女神が助け船を出してくれた。珍しいことに。
「あ、ジェローに聞いたのですが、『魔法テレビ』へのデータの入力は『デンシレンジ』を使えばできるようですよ」
「は!? 電子レンジで!?」
「そうらしいですね。ほら、ジェローからもらった説明書がここに」
と言って女神は、水晶の映像越しに、プレゼンテーション資料みたいになっている説明書を見せてきた。
そこには確かに、データを取りたいものをレンジの中に入れて特定の手順で操作すれば、データを魔法テレビに送信できると書いてある。
マジでウチの家電どうなってんだ。
……まあいい。早速レンジにアッシュが持ってきた数珠を放り込み、説明書通りに動かす。すると――
『データが更新されました』というテレビの表示。加えて、今まで無かった光る円が地図に表示されている。
「おお! 次はここを調べればいいと言うわけですね!」
「でも、ここ明らかに海だぞ。お前泳げないんじゃなかったのか?」
「そうですね……このままでは、死ぬまでの短い時間しか活動できません」
「溺死前提かよ……」
アタシ達が困っていると、また女神が解決方法を持ってきた。
「それは心配ありません。水中でも息ができる護符をカロリーナから預かっています。それをそちらに送ります」
女神、珍しく今日は仕事するな。
……いや、違うか。さっきから親父とお袋が用意したものを持ってきてるだけだ。
そして、お袋の護符を女神から転送してもらって意気込むアッシュ。
「よし、それでは明日からは海の捜索ですね!」
「おい、海のど真ん中ってことはアタシも付いていってやれないからな」
「了解です!」
これで次の方針は決まった。いったんアタシのやることはないから、明日は……と考え出した時だ
「ではココアちゃんには、他の手段で情報収集をしておいてもらいましょうか!」
とか女神が言い出しやがった。
「あァ!? フザけんな! 誰がそこまでしてやらなくちゃ……」
当然、アタシが突っぱねようとすると……、
「あれぇ? ココアちゃん、さっき『自分も協力する』って言ってませんでしたっけぇ~?」
「うっ……」
クソ。確かに言っちまった。アッシュのヤツが珍しく落ち込んでると勘違いして、勢いで言っちまった。
言葉に詰まるアタシにたたみかける女神。
「あ、でも、いいんですよ無理なら。ココアちゃんはまだ背も胸もちっしゃい子供ですしね。特にできることもなさそうですしぃ~」
「あー、うるせーよ! やればいいんだろ!」
他の誰になら言われてもいいが、なんかコイツに言われると腹立つな! 相手神だけど!




