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第15話「暗殺実行」

これから始まる物語は、少し変わっています。


設定が崩壊します。矛盾します。破綻します。


でも、それでいいんです。


なぜなら、この作品のテーマは「崩壊」そのものだから。


作者「MOON RAKER 503」が、その時思いついた設定を適当に投入します。


故に矛盾します。


作者自身、コントロール不能な物語です。


ゴールも分からないままスタートします。


完結するかも分かりません。


それも含めて、楽しんでいただければ幸いです。


では、始めましょう。


少年Aと、AI・Bの物語を。

 夜の街。


 ミラグレーンは、静かに揺れていた。


 建物の輪郭が、僅かに歪む。路地が消え、新しい道が現れる。


 街は、呼吸するように変形を続けていた。


 Aは、廃墟の屋上で狙撃銃を構えていた。


 Bが、銃の形に変形している。アンリミテッド・シェルが、装填されていた。


 Dは、Aの隣で端末を操作している。


 Eは、少し離れた場所で斧を握っていた。


 Cは、屋上の端に立って、塔を見つめていた。


 Aは、スコープを覗いた。


 塔の窓が、視界に映る。ミラースの姿が、そこにあった。


 Dが、囁いた。


「街の変形が、近い」


「どれくらいだ?」


「……30秒以内」


 Aは、息を整えた。


 心拍を落とす。呼吸を静める。


 しかし、心拍音が遅れて聞こえる。


 一拍。


 二拍。


 まるで、時間が歪んでいるかのように。


 街灯の光が、途中で止まった。


 光が、街路の中央で静止している。


 遠くの風車が、半回転のまま固まる。


 鳥の羽ばたきが、視界で引っかかる。


 世界が、静止している。


 Aの呼吸が、自分から離れていくように感じる。


 スコープを覗いた視界だけが、無風になる。


 Bの画面が、僅かに曇った。演算熱で、ガラス面に水滴が浮かぶ。


『A、演算開始。軌道修正の準備、完了』


「頼む」


 風が、一瞬止んだ。


 完全な、静寂。


 Cだけが、その風に触れなかった。風が、Cを避けて流れる。


 Dの声が、冷たく割れた。


「Eの準備は?」


 Eが、短く答えた。


「いつでも」


 Aは、引き金に指をかけた。


 時間が、ゆっくりと過ぎていく。


 街が、揺れ始めた。


 建物の輪郭が、溶けるようにズレる。


 影が、先に動いた。


 建物が、後からついてくる。


 まるで、影が本体を引きずっているかのように。


 遠景の塔だけが、静止している。


 その不気味さが、Aの背筋を冷やした。


 音が、一瞬だけ遅延した。


 0.8秒。


 世界が、認識を拒んでいる。


 Dが、冷たい声で言った。


「……来る」


 街の変形が、始まった。


 建物が、僅かに位置を変える。路地が消え、広場が現れる。


 その瞬間――。


 Dが、叫んだ。


「E、今だ!」


 Eが、斧を地面に叩きつけた。


 瞬間、近くの小石が浮いた。


 重力が、一点に集中する。


 空気が圧縮される音が、鼓膜に直接響く。


 ドン、という低音。


 重力が収束し、視覚的な歪みが生まれる。


 空間が、歪んで見える。


 地面に入るヒビが、規則性のない螺旋を描いた。


 街の変形が、0.5秒だけ止まった。


 空気が、凍りついたように静止する。


 時間が、止まった。


 Dの「今だ」という声が、空間に凍りつく。


 空気が、白くなる。


 音が、消える。


 Cの表情が、一瞬だけ柔らかくなった。


 Dが、端末を操作した。


「影、固定。電子妨害、展開」


 Dの影が、塔へ向かって伸びる。電子ノイズが、街全体を覆った。


 Bが、囁いた。


『A、軌道修正完了。同期――』


 Aは、引き金を引いた。


 弾丸が、放たれる。


 《超貫通弾》。


 アンリミテッド・シェルが生成した、特製の弾丸。


 弾丸は、空気を裂いて飛んでいく。


 弾丸の周囲だけ、色収差が起きる。


 赤が滲み、青が歪む。


 街の壁に当たらない。


 壁そのものが、避ける。


 弾丸の軌跡を追うと、視界にノイズが走る。


 画面が乱れる。


 その軌跡が、直線を描く。


 まるで、世界の線を描き換えるかのように。


 スコープ越しの視界が、白黒化した。


 色が、消える。


 数秒後、色が戻る。


 Bの補正演算中、異常データが流れる。


『計算不能値……存在しない角度……重力逆流……』


 街の変形を無視して、真っ直ぐに進む。


 Bが、リアルタイムで軌道を修正する。風の影響を、湿度の影響を、重力の影響を、全て計算して補正する。


 スコープ越しの視界が、ノイズ化した。


 画面が揺れる。


 世界が、弾丸を拒んでいる。


 しかし、弾丸は進み続けた。


 空間を貫通して。


 弾丸が、塔の窓に到達した。


 ガラスが、砕ける。


 その瞬間、街の変形が逆流した。


 建物が、一瞬だけ元の位置に戻る。


 まるで、時間が巻き戻ったかのように。


 街全体が、1センチ沈んだ。


 建物の影が、逆向きに揺れる。


 観測していないはずの遠方から、誰かの視線が降る。


 塔だけが、静止したまま。


 背後の街が、激しく変形する。


 道路の模様が、痙攣するように動く。


 そして――。


 ミラースの背中を、貫いた。


 Aは、スコープを覗いたまま、その瞬間を見た。


 ミラースの身体が、前に倒れる。


 血が、窓ガラスを染めた。


 しかし、撃った感触が、手の中に残っている。


 重い、冷たい感触。


 まるで、何か間違ったものを撃ってしまったかのような。


 成功なのに、胸が冷たい。


 街が、こちらを見ていた気がする。


 Dが、端末を閉じた。


「……標的、沈黙確認」


 Eが、斧を持ち上げた。重力が、元に戻る。


 街の変形が、再開した。


 建物が動き、路地が消える。


 しかし、塔だけは、変わらなかった。


 Aは、狙撃銃を降ろした。


 Bが、スマホの形に戻った。


『……A、成功だよ』


「ああ」


 Aは、仲間たちを見た。


「撤退するぞ」


 Dが、頷いた。


「了解」


 Eが、斧を背負い直した。


 Cが、静かに振り返った。


 その目は、相変わらず静かだった。


 まるで、最初から結果を知っていたかのように。


 Aは、Cに声をかけた。


「C、行くぞ」


「……うん」


 Cは、マントを翻して、Aの隣に並んだ。


 五人は、廃墟を降りた。


 街の裏路地を抜け、ミラグレーンの外へ出る。


 撤退する方向だけ、街の揺れが追ってくる。


 影が、逆光なのに伸びる。


 街の入口に、来た時と違う門がある。


 Aが、1秒だけ自分ではない視点で街を見た。


 上空から、街を見下ろす視点。


 誰の視点だ?


 Cの姿が、森に出る直前に一瞬だけ消えた。


 完全に、存在が消える。


 そして、すぐに戻った。


 夜の森が、彼らを迎えた。


 森に入った瞬間、世界の音が一気に戻った。


 虫の声。


 風の音。


 木々の揺れる音。


 まるで、耳栓を外したかのように。


 Aは、立ち止まって、振り返った。


 ミラグレーンが、遠くで揺れている。


 街は、相変わらず変形を続けていた。


 Cが、塔を見たまま数秒動かなかった。


 Cの瞳に、街と同じノイズが宿っている。


 画面が乱れるような、歪み。


 Eの斧が、微細に振動している。


 重力核が、一定周期で脈動し始めている。


 トクン、トクン、と。


 Dだけが、異変を察知して眉をひそめた。


 遠くの塔の窓に、赤い光が残っている。


 血の光ではない。


 何か別の、光。


 ミラグレーンの影が、生きているように蠢いた。


 Aは、風の流れを感じた。


 風が、自分の動きに同期している。


 Aが一歩動くと、0.2秒後に風が吹く。


 まるで、風がAに従っているかのように。


 Bの声が、わずかに遅延した。


 波形が、揺れている。


 Bが、囁いた。


『……A、今日は妙に静かだね』


「静かか?」


『うん。いつもなら、もっと喋るのに』


 Aは、空を見上げた。


 月が、雲の隙間から覗いている。


「……風が、変わった気がする」


「風?」


「ああ」


 Aは、仲間たちを見た。


「俺たちが動くたびに、世界が変わってる気がする」


 Dが、冷たい声で言った。


「……気のせいではない」


「どういうことだ?」


「Cの存在が、世界に影響を与えている。そして、Eの斧も」


 Dは、端末を見せた。


「今日の狙撃。弾丸の軌道が、僅かにズレていた」


「ズレ?」


「ああ。Bの補正でカバーできたが……弾丸が”空間を貫通し過ぎた”」


 Aは、眉をひそめた。


「空間を貫通?」


「そう。まるで、弾丸が”世界の形を無視した”かのように」


 Bが、小さく呟いた。


『……それって、Cのクラウン・マントと同じ現象じゃない?』


「可能性は高い」


 Dは、Cを見た。


「Cの世界欺瞞能力が、Aの弾丸に影響を与えた可能性がある」


 Cは、何も言わなかった。


 ただ、マントを握りしめていた。


 Aは、Cの肩に手を置いた。


「気にするな」


「……でも」


「お前のおかげで、成功したんだ」


 Cは、小さく頷いた。


 Eが、短く言った。


「……俺の斧も、同じだ」


「同じ?」


「ああ。重力を固定した時、地面が”世界の形を無視して”沈んだ」


 Eは、斧を見つめた。


「……この斧は、世界に干渉している」


 Aは、仲間たちを見渡した。


「……俺たちの武器は、全部異常だ」


 Bが、囁いた。


『そうだね。アンリミテッド・シェルも、アンリミテッド・インプットも、クラウン・マントも、ブラックスーツも、グラビティ・ヘルムアクスも』


 Bは、小さく笑った。


『全部、この世界の”外側”から来たものだ』


 Aは、月を見上げた。


「……だから、俺たちは世界の謎を解ける」


 Dが、端末を閉じた。


「そうかもしれない」


 Eが、頷いた。


 Cが、小さく呟いた。


「……A、これから……どうする?」


「どうするって?」


「世界の謎を解いたら……その後は?」


 Aは、少し考えた。


「……分からない」


 Cは、小さく笑った。


「……そっか」


 Aは、前を向いた。


「でも、今は進むだけだ」


 仲間たちが、頷いた。


 五人は、夜の森を歩き出した。


 ミラグレーンが、遠くで揺れている。


 街は、相変わらず変形を続けていた。


 しかし、塔だけは、動かなかった。


 その塔の窓から、血が滴っていた。


 誰も、それに気づかなかった。


 ただ、街だけが、静かに呼吸していた。


 世界が、僅かに歪んだ。


(了)


超遠距離狙撃、成功です。しかし、Dの分析により、CとEの武器が”世界の形を無視している”ことが判明しました。弾丸が空間を貫通し、重力が世界を無視して沈む。


これは、アルファベット・サーカスの武器が全て”この世界の外側”から来たものである証拠かもしれません。


世界の謎は、少しずつ姿を現し始めています。


……たぶん。

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