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第13話「アルファベット・サーカス」

これから始まる物語は、少し変わっています。


設定が崩壊します。矛盾します。破綻します。


でも、それでいいんです。


なぜなら、この作品のテーマは「崩壊」そのものだから。


作者「MOON RAKER 503」が、その時思いついた設定を適当に投入します。


故に矛盾します。


作者自身、コントロール不能な物語です。


ゴールも分からないままスタートします。


完結するかも分かりません。


それも含めて、楽しんでいただければ幸いです。


では、始めましょう。


少年Aと、AI・Bの物語を。

 魔天牢遠征から、1年が経った。


 野営地は、森の中にあった。


 焚き火が、静かに燃えている。木々の隙間から、月明かりが差し込んでいた。


 しかし、森は1年前とは違っていた。


 風が、金属音のような響きを持っている。


 木の幹の一部が、金属化している。樹皮が銀色に変わり、触れると冷たい。


 内部の年輪が、歪んでいた。


 中心から外へ、螺旋を描くはずの年輪が、不規則に曲がっている。


 夜空には、僅かな裂け目が走っていた。まるで、ガラスにヒビが入ったかのように。


 その裂け目が、時々パチパチとノイズのように瞬く。


 月が、時折二重に見える夜があった。


 野営地周辺の植物が、微かに時間差で揺れる。


 風が吹いて、0.3秒後に葉が揺れる。


 Aたちが感じる視界のラグ。


 音の遅延。


 世界が、少しずつ崩れ始めている。


 Aは、火の前に座って、仲間たちを見渡した。


 Bは、スマホの形でAの隣に置かれている。画面が淡く光り、Bの声が聞こえた。


『ねえA、また装備の点検するの?』


「ああ。これからのために、確認しておきたい」


『はいはい。相変わらず真面目だね』


 Aは、小さく笑った。


「お前がいなきゃ、俺は何もできない」


『……えっ』


 Bの画面が、一瞬だけ明るくなった。


『……べ、別に、嬉しくないけど』


「素直じゃないな」


『うるさい』


 Aは、Bの画面を軽く叩いた。


『痛い』


「痛覚あるのか?」


『ある……ような気がする』


 Cは、マントを羽織って、焚き火の光を見つめていた。その表情は、相変わらず静かだった。しかし、1年前よりも、僅かに柔らかくなっている。


 Dは、影の中に半身を隠して、端末を操作している。


 Eは、少し離れた場所で、斧を手入れしていた。


 Aは、腰に巻いたベルトからアンリミテッド・シェルを取り出した。


 黒い弾倉型のユニット。表面には、青い発光ラインが走っている。


「まず、俺の武器だ」


 Aは、シェルを手に取った。


「アンリミテッド・シェル。あらゆる弾を生成できる」


 Bが、画面を光らせた。


『そうそう。しかも、地球上に存在しない弾種も生成可能。……って、本当に地球外の弾なの? それとも、Aの妄想?』


「知らない」


 Aは、シェルを見つめた。


「ただ、撃てば当たる。それだけだ」


 Aは、シェルをBに装填した。Bが、銃の形に変形する。


 Aは、空に向けて引き金を引いた。


 弾丸が、放たれる。


 それは、通常の弾ではなかった。光を纏い、螺旋を描きながら飛んでいく。


 近距離に撃ったため、周囲の色が微妙に薄くなった。


 緑が、淡く褪せる。


 そして、空中で炸裂した。


 光が、四方に散る。


 Dが、即座に端末を操作した。


「……光学歪曲弾。波長が、可視光の範囲を超えている」


 Dは、端末を見つめた。


「弾の種類が……増えている?」


 Eが、短く呟いた。


「……異常」


 Cが、小さく呟いた。


「……綺麗」


「ああ」


 Aは、Bを元の形に戻した。


「弾は意思に従うのか?」


 Bが、静かに答えた。


『違うよ。世界の方が、Aに屈服してるだけ』


 Aは、眉をひそめた。


「……怖いな」


『でしょ? だから、私も時々怖いんだ』


 Bの声は、珍しく真剣だった。


『弾の中に……他の世界の残滓が混ざってる気がする』


「次は、Bだ」


 Bが、スマホの形から変形を始めた。


 まず、銃。次に、鞭。そして、盾。


 変形のスピードは、驚くほど速かった。


 しかし、以前より滑らかすぎる。


 変形の軌跡に、時間差の残像が一瞬出る。


『アンリミテッド・インプット。あらゆる形状を吸収して、再出力する能力』


 Bが、得意げに言った。


『私がいれば、Aはどんな武器でも使えるってわけ』


「助かってる」


『でしょ? だから、もっと褒めてよ』


「後でな」


 Dが、端末から顔を上げた。


「次は、私か」


 Dは、影の中に消えた。


 次の瞬間、焚き火の反対側に姿を現す。


 影移動の入口と出口に、静電気が走った。


 パチパチと、青白い火花。


「ブラックスーツ。電子化神経と影移動を補助する装備」


 Dは、手に持ったナイフを翳した。


「対人戦なら、私が最適だ」


 そう言って、Dはナイフを投げた。


 ナイフが、木の幹に突き刺さる。


 そして、Dは再び影の中に消えた。


 今度は、木の幹の前に姿を現す。


 ナイフを引き抜き、静かに戻ってきた。


「……電子妨害と影移動。これが、私の役割」


 Dは、影を見つめた。


「……影が、濁ってる」


「濁ってる?」


「ああ。1年前より、明らかに濁度が上がっている。世界の物理定数が、揺らいでいる」


 Dは、Aを見た。


「あなたは、見えている世界が他と違う」


 Aは、頷いた。


「頼りにしてる」


 Cが、マントを翻した。


 その瞬間、Cの気配が消えた。


 視界には映っているのに、存在感がない。


 世界の影が、Cの動きに合わせて少し遅れる。


 マントの柄が、一瞬だけ変わった。


 白と灰色だった柄に、淡い紫の線が走る。


 そして、すぐに元に戻る。


 草が、Cの足を避けて揺れた。


 Cの手の影が、一瞬遅れて動いた。


 Bが、ノイズを起こした。


『うわ、また……C、やめてよ。センサーが狂うから』


「……ごめん」


 Cは、マントを元に戻した。気配が、戻ってくる。


「クラウン・マント。世界を欺く能力」


 Cは、小さく呟いた。


「……私、これがないと、多分……消える」


「消える?」


「うん。世界が、私を忘れちゃう」


 Aは、Cの肩に手を置いた。


「忘れさせない」


 Cは、Aの言葉を信じすぎていた。


 その信頼が、仲間たちを少し驚かせる。


 Cは、小さく微笑んだ。


 そして、最後にEが立ち上がった。


 Eは、背中から斧を引き抜いた。


 《グラビティ・ヘルムアクス》。


 巨大な両刃の斧。その刃は、月明かりを反射して、鈍く光っていた。


 斧の中心に、脈動のようなものがある。


 トクン、トクン、と。


 Eの足元に、多重影が出ている。


 一つの身体から、三つの影。


 Eは、斧を地面に叩きつけた。


 瞬間、地面が沈んだ。


 重力が、一点に集中する。


 木々が、僅かに傾いた。


 Bが、驚いた声で言った。


『ちょっと、E! それ、危ないって!』


「……制御している」


 Eは、斧を持ち上げた。地面が、元に戻る。


「グラビティ・ヘルムアクス。重力を操る武器」


 Eは、斧を背中に戻した。


「……これが、俺の全てだ」


 Eは、焚き火を見た。


「温かいのに、なぜか重い」


 Aは、仲間たちを見渡した。


「これが、俺たちの力だ」


 Bが、囁くように言った。


『……A、私たち、結構ヤバイ集団だよね』


 Bの声に、僅かに心が芽生えている気配があった。


「ああ」


 Aは、焚き火を見つめた。


「でも、だからこそ、俺たちにしかできないことがある」


「……何?」


「世界の謎を解く」


 その言葉に、仲間たちが顔を上げた。


 Aは、立ち上がった。


「この世界は、混ざり合ってる。地球と異世界、過去と未来、魔法と科学。全部がバラバラで、でも同時に存在してる」


 地図が、毎回ズレる。


 森の位置が、微妙に移動している。


 夜の色が、毎晩少し違う。


 空気の密度が、急に変わる。


 遠くで、誰かの足音がする。


 しかし、森は無人だ。


 焚き火が、二重に見える瞬間がある。


 Aは、仲間たちを見た。


「俺たちは、その謎を解く。なぜ、この世界はこうなったのか。なぜ、俺たちはここにいるのか」


 Dが、端末を閉じた。


「……目的が、明確になったな」


 Eが、短く答えた。


「了解」


 Cが、小さく呟いた。


「……A、一緒に行く」


 Bが、疲れたような声で言った。


『やれやれ……また、面倒なことになりそう』


 Aは、小さく笑った。


「悪いな」


『別に。慣れてるから』


 Aは、仲間たちを見渡した。


「……俺たちには、名前が必要だ」


「名前?」


「ああ。パーティの名前だ」


 Aは、少し考えた。


 焚き火の火の粉が、空へ舞い上がる。


 Cが、マントを撫でた。


 Dが、影の濁りを観察している。


 Eが、斧の重みを感じ直している。


 静かな、間。


 風が、木々を揺らした。


「……アルファベット・サーカス」


 Bが、画面を光らせた。


『アルファベット・サーカス?』


「ああ。A、B、C、D、E。俺たちは、アルファベットで呼ばれてる。そして、Cはサーカス出身だ」


 Aは、Cを見た。


「だから、アルファベット・サーカスだ」


 その瞬間、空気が変わった。


 五人の影が、一斉に揺れた。


 夜風が、止まった。


 森の裂け目が、微かに脈動した。


 地面が、小さく震えた。


 Bだけが、外部から干渉された感覚を得た。


『……何、今の』


 Cのマントが、一瞬だけ別の紋様を浮かべた。


 淡い金色の、幾何学模様。


 そして、すぐに消えた。


 焚き火の炎が、一瞬だけ揺れた。


 風が、止まった。


 まるで、世界が名前を聞いたかのように。


 Cは、小さく笑った。


「……変な名前」


「ああ、変だな」


 Dが、冷たい声で言った。


「……でも、悪くない」


 Eが、頷いた。


「了解」


 Bが、囁いた。


『……この世界、案外ちゃんと回ってる。……壊れてるのは、私たちの方かもね』


 Aは、焚き火を見つめた。


「かもな」


 その夜、アルファベット・サーカスは、正式に誕生した。


 五人の流れ者が、世界の謎を解くために。


 ただ、その時――。


 Cのマントが、僅かに揺れた。


 Eの斧が、微かに振動した。


 まるで、世界が反応したかのように。


 Aは、それに気づかなかった。


 ただ、Dだけが、僅かに眉をひそめた。


「……影が、濁ってる」


 その呟きは、誰にも聞こえなかった。


 遠くで、木の幹が金属音を立てた。


 空の裂け目が、一瞬だけ広がった。


(了)


アルファベット・サーカス、正式発足です。五人の武器と能力が明確になり、パーティの目的も定まりました。ただ、CとEの武器が”世界に干渉している”という異常な兆候が……。


これが何を意味するのか、作者もまだ分かっていません。ただ、確実に何かが動き始めています。


……たぶん。

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