密談
リペリシオン王国の宿にジャック達は集まっていた。
その中の一人、トト・ルトラが怪しげに廊下を見渡すと、ばたりと部屋の扉を閉める。
「誰もいなかったか?」
ロザン・リクレイの問いかけにトト・ルトラはこくこくと頷く。
その様子を確認したジャックが部屋の明かりを消す。
今から誰にも聞かせることが出来ない話をするのだ、周囲には就寝したと思わせなければならない。
「じゃあ……密談を始めるよ。」
「なんか、改めていうと変な感じがするね。」
クリス・ケラウスがそわそわと緊張した様子で仕切り始める。その様子がなんだか可笑しくてトト・ルトラは茶々をいれてしまった。
「遊びじゃないんだぞ……これから作戦について話し合いを始めるんだから。」
ジャックは呆れた様子を浮かべながら紙を広げ始めた。
その紙は間取り図のようで、一番目立つ広間に聖堂と書かれている。
「これが、中央教会の間取りだ。」
「間違いないのか?お前どうやって……」
「以前出入りしてた時に下見はしておいたんだ。いつか使うかもしれないと思って。」
「さすが、情報情報ってうるさいジャックだ……抜け目がないねほんと。」
周りの発言を無視して、ジャックが話を始める。
「首無し騎士が囚われている場所はこの地下牢だ。通常時は王城の牢に納めきれなかった時に使用される牢だが……今は王城が瓦礫の山だからな。」
「でもさ、あの人はいちおう“魔物”だぜ?教会の牢屋に入れるか?普通なら魔物使いに協力を仰いで……」
「城に勤めていた人間のほとんどが不死者となって滅びた。今じゃ中央教会が代理に国の舵を切ってる……。そして、リトス司祭もリリア・フォードリアス聖騎士隊長も、首無し騎士をほとんど人としてみなしてる。アイツ自身も暴れたり反抗したりしないだろう。」
「たしかに……イライザさんはそうかも……」
皆が一様にうんうんと頷く様子を確認すると、ジャックは見取り図の上に駒を配置する。
「ただし、問題はある。デューク司祭だ。」
「………………だれ?」
「公爵家から教会へ入った変わり者の司祭様だよ。お父様とも面識があった。」
「お偉いさんじゃねぇかよ……」
クリス・ケラウスの補足にロザン・リクレイが憤りを示しながら腕を組む。
クリス・ケラウスは元は貴族のお嬢様だ……この話には信憑性があると判断したのだろう。
だからこそ、警戒しているのだ。
「デューク司祭は首無し騎士に対し、厳しい見解をもってる。」
「なんで?」
「首無し騎士がもともとはデューク司祭の先祖だからだ。」
「ーーーーーーーーっっ!!???」
あまりにも衝撃的な発言にその場にいた全員が大声で叫びそうになったが、今が密談の真っ最中だと全員が思い出し、咄嗟に口を両手で塞ぐ。
ジャックも全員が叫ぼうとしたのを見て、咄嗟にしぃーっとジェスチャーを行った。
「デューク・クロスライト………イライザ……クロスライトっ!!」
「あの人はあくまで身内であるからこそ厳しく接していると俺は見た。誰よりも堅牢な警備を敷いているに違いない。」
ジャックは身を乗り出すと、発言を続ける。
「だが、このまま手をこまねいてると確実に首無し騎士は殺される……いや、殺すことも出来ずに幽閉されたままかもしれない。」
「それは……可哀想だよ……」
「それどころじゃない。このままじゃ今度は中央教会が主戦場になるかもしれない。」
「…………え?それはなんで?」
「あの時、あの魔族は自分から頭を切り離していた。魔族が自害なんて選ぶはずかがない……生き延びてると考えるのが妥当だ。」
「そんな…………っ!」
「そうなる前に何としてでも首無し騎士を国外に連れ出さないと……っ!」
全員が決心した面持ちで頷き、身を乗り出す。
「じゃあ、作戦を練るぞ。」




