脱出劇
「貴様ぁ……!何を……彼らに内をした!!」
「くふふふ……そんな態度でいいのかねぇ…?キミが条件を飲んで従順になってくれたら、彼らの安全は保障するのにねぇ。」
噛みつく勢いで、首無し騎士は傀儡のアリスをにらみつける。
しかし、相変わらずアリスは不敵な笑みを浮かべ、首無し騎士の頭を踏みつけていた。
「私に協力しないならしないで……全然いいもの。貴女の代わりになりそうな人物に心当たりあるし……」
「なんだと……?」
「なんでしたっけぇ?現代の聖騎士隊隊長……リリア・フォードリアス、でしたっけぇ?彼女……かつての貴女によく似ていると思わなぁい?」
「き……貴様!!」
首無し騎士の憎悪に満ちた瞳は血涙をながし、彼女の身体からは再び黒炎が火柱のように燃え上がる。
……それでも、彼女は傀儡のアリスに手を出すことが出来なかった。
「……貴女が神殺しに協力をするのなら、貴女の大切な人々には手を出させないで上げる……それとも、同じように不死者にしてあげようかしら?それなら、死に分かれることもなくずっと一緒にいられるねぇ?」
「ふざけるなぁ!!!」
アリスの足の下で、首無し騎士は怒号をあげる。
こんな奴の言いなりになりたくはない……しかし、どうすればこの状態を脱却することができるだろうか?
「そう……それじゃあ、どうするの?私の軍門にくだるの?それとも大切な人々を見殺しにする?」
傀儡のアリスは首無し騎士の頭を踏みつけながら、返答を迫って来る。
どうすればいい……首無し騎士は脳内で答えを探しあぐねていた。
・
まるで人形の様な動作でクリス・ケラウス達を牢屋へと運んでいく兵士たち……その様子をジャックは天井伝いに観察していた。
兵士たちは全員無言で互いの意思疎通は皆無……そうだというのに、まるで示し合わせたように息がぴったりだ。
たまに一人の母から二人の子供が同時に生まれることがあるという……その子供はまるでテレパシーをしているかのように互いの思っていることが把握でき、抜群のコンビネーションを発揮できるのだとか……。
ジャックの目に映る兵士たちは、そういう”双子”という存在とは思えなかったが、その群体のような動作はそういった者を連想させた。
そうでなかったら、比喩できる他の表現はアリとかハチといった虫の類しかない。
そんな不気味な兵士たちが牢屋から離れるのを確認すると、張り付いていた天井から床へと降り立つ。
牢屋に近付き、牢屋の南京錠を調べると、素早い動作でピッキングを開始した。
「王城の鍵……こんなもんでいいのか?」
ジャックは難なく南京錠を開錠すると、中に入ってクリス・ケラウス達の肩を揺さぶる。
「ん……んん……?ジャック…………?」
「おい、しっかりしろ。ハメられたぞ。」
一人一人覚醒させ、意識がはっきりしだすのを待つ。睡眠薬を盛られたのだから酔った時のようにしばらは意識がはっきりしないだろう。
ジャックは、牢屋の出口から外を警戒しながら仲間たちの意識がはっきりと戻ってくるのを待っている。
この間に、ジャックの身体からだるさも抜けていく。
「これは……いったいどういう状況なんだ?」
一番最初に意識がはっきりしたロザン・リクレイがジャックに近付き、同じように牢屋の外の警戒しだす。
「俺たち、ハメられたんだよ……あの第一王子様にな。」
「はぁ!?なんで王子様が俺らなんかをハメるんだよ。」
「それは……まだ知らないけど。でも十中八九首無し騎士に関係があるんだと思う。」
「それこそなんでだよ。」
「…………あの王子様は旧クリミア王国……というより首無し騎士に過剰な関心をもっていたように思える……それに、この場所に首無し騎士の姿がない。」
もし首無し騎士も自分達と同じ立場なら麻痺などを用いて同じように投獄されている……と予想していた。
しかし、今現在彼女の姿は確認できていない……殺されそうになっているにしろ、密談をさせられているにしろ、目的が首無し騎士であることは確定のように感じる。
「なぁ……あの首無し騎士の人が俺らを売ったってことは……」
「…………あると思うか?」
「………ないと思いたいが、こちとら信頼されてたどっかの誰かさんに裏切られた経験があるからな……しかも、その裏切りすら嘘だったってさ・」
「…………あいつはそこまで器用じゃねぇよ。」
「…………そりゃそうか、あの人生きるの下手そうだもんな。」
ジャックとロザン・リクレイの二人は互いにニヤリとした……小馬鹿にしたような笑みをうかべる。
言うまでもなく、首無し騎士へと向けたものだ。
「でも……そういう人だからこうして僕らと旅ができてたんじゃないかな?」
「違いないね。」
いつの間に意識がしっかりと戻ったのか、トト・ルトラとクリス・ケラウスが近づいてきて会話に参加してきた。
全員体調が万全に戻った。
「…………よし、まず全員で脱出するぞ。できれば首無し騎士も見つけてやりたい。」
「わかった。」
ジャックの提案に、クリス・ケラウスが答える。
トト・ルトラとロザン・リクレイの二人もこくりと頷いて見せた。
首無し騎士には幾度となく助けられた……なら今度は自分たちが彼女を助ける番だ。
仲間は持ちつ持たれつ……その仲間の中には勿論、首無し騎士も含まれているのだから。




