再:リデオン王国跡地
首無し戦車を繰りながら、首無し騎士達は〈リデオン王国〉跡地へと舞い戻ってきた。
それほど長い間……それこそ、聖騎士へとなるために〈クリミア聖王国〉へ赴いた時よりもだいぶ短い期間しか離れていなかったというのに、悠久の時間を過ごしたように感じられる。
人がいない故郷というのは心に来るものがある。
「初めて来たときと違って……普通の森って感じだね。」
「ああ、印象深かった陰鬱な雰囲気っていうのは無いな。」
首無し戦車から顔をのぞかせたクリス・ケラウスとロザン・リクレイがつぶやいた……首無し騎士が不死者として国中の中を彷徨っていた時も陰鬱な雰囲気というのは感じたことがなかったが、やはり生者と死者では感じ方が違ったのだろうか?
そうしている間にも首無し戦車は朽ち果てた外壁門を潜る。
門のそばには、もう役目を終えたバリケードが放置されている。
「このバリケードにも随分世話になったな。」
首無し騎士は懐かし気に呟く……どうにも感傷的になっているようだ。
「それで…ジャックはいったい何をしに〈リデオン王国〉にやってきたんだ?」
「まぁ……ちょっとした野暮用。」
「私に関することなんだろ?秘匿する必要あるのか?」
首無し騎士がジャックに質問を投げかけるが、ジャックは答えようとしない……何かを捜しているようで、あたりをキョロキョロと見回している。
だが……この〈リデオン王国〉跡地までの道中でも何度か質問を投げかけてみたが、明確な返答はなかった。
人に言えないようなことなのか、首無し騎士に言ったら否定や遠慮をされかねないモノなのかわからないが、自分が関わる事象についての用事だというのにその内容が当事者である首無し騎士が把握できないというのは、本人的には何ともモヤモヤする物である。
首無し騎士は首無し戦車を朽ち果てた広場に止める。
しばらく管理しない間に、広場は草だらけになっていた。
首無し戦車から全員をおろし、馬をしまうと振り返る。
「…………すまないんだが、久々の帰省だ……誰もいない我が家だが、少し顔を出しに行ってもかまわないだろうか?」
「……え?ああ……そうだな、言った方がいいよ。何か忘れ物とかあるかもしれないし。」
首無し騎士の申し出を真っ先に承諾したのはジャックだった。
まるで、首無し騎士がいない方が都合がいいというようなしぐさに、少しムッとしてしまう。
「…………じゃあ、しばらくしたらこの場所で待っているからな。」
そういうと、首無し騎士は実家のあった方へと歩きいていく。
姿が見えなくなったところで、ジャックの背中をトト・ルトラが小突いた。
「…………それで?なにが目的なの?あの人に話せないようだけど、関りのある事なんでしょ?」
「そうだ、俺らはいったい何を手伝えばいいんだ?」
ロザン・リクレイもジャックの発言をまっている……クリス・ケラウスも頷いて返答を見せる。
〈リぺリシオン王国〉王都での発言通り、みんな協力をしてくれるそうだ……ジャックは全員の顔を見ると、かつての仲間たちに語り掛ける。
「……妖精の首無し騎士を捜す。」
「………………妖精の?」
「……………首無し騎士?」
ジャックの発言に全員が顔を見合わせる……やはり誰もピンときていない様だ。
全員の表情を確認した後に、ジャックは今まで調べた事柄を記した用紙をクリス・ケラウス達に手渡す。
「ある気ながら話そう、ついてきてくれ。」
ジャックは首をクイッと廃城に向けると、そちらに向かって歩き出す。
クリス・ケラウス達も目を合わせると、ジャックに付いていった。
__________その後ろに自分たちをつける気配に気が付かないまま……。
・
「________すると何か?お前はあの首無し騎士が迫害されずに過ごせるよう、あの首無し騎士が不死者じゃなくて妖精だって証明しようってことか?」
廃城の廊下を歩きながらロザン・リクレイはジャックから受けた説明を復唱する。
ジャックは頷きながら先頭をずんずん進んでいく………向かう先はかつて侵入した宝物庫だ。
「でも妖精自体稀有な存在だよ?それに首無し騎士っといえば不死者だって浸透しちゃってるし……難しんじゃないかな?」
トト・ルトラの発言に、ジャックは振り返る……。
「それでも、やるって決めたんだよ。」
いつになく真剣な眼差しに、トト・ルトラとロザン・リクレイは気圧されたような感覚になる。
その様子に、クリス・ケラウスはふふっと笑うと悪戯気に発言する。
「そんな感じで、僕らに相談もなく姿を消したんだね。」
「……何?根に持ってんの?」
「ううん……そうじゃなくて、そういうことならクロスライトさんに説明したってよかったんじゃない?」
クリス・ケラウスの発言にも一理ある……かつてジャックが勝手に行動したせいで、ここにいる仲間と長いこと拗れてしまったのだから。
「わかったよ、ここの書物で手がかりを捜したらちゃんと相談するよ。」
ジャックは溜息交じりにそう返答すると、宝物庫の扉を開ける……………
「待て!!」
扉を開けた瞬間、後方から叫び声が聞こえる……振り返るとそこには実家に戻っていたはずの首無し騎士が立っていた。




