再開
「誰かと思えば、キミたちだったか!」
首無し騎士は剣を鞘にしまうと、固まっている冒険者多胎に話しかける。
あの銃声が聞こえた後のこと、すぐに現場へと駆けつけたジャックと首無し騎士は物陰から山賊たちを奇襲……襲われていた人々の救出に成功していた。
「貴女は……リデオン森林にいた首無し騎士さん!?」
その場に座り込んでいたクリス・ケラウスは立ち上がり、お礼を述べようとする……。
しかし、立ち上がろうとした瞬間、被弾した足に激痛が走り、うめき声をあげながら、その場にまた座り込んだ。
「ちょっと!!まずは回復薬を飲まないと!!」
「ああ……うん、ごめん。」
「怪我をしていたのか……無理をさせて悪かった、私も昔のように治癒の祈祷ができればよかったのだが…」
クリス・ケラウスを取り囲むようにして、首無し騎士とトト・ルトラが心配する。
その場に加わっていないのはロザン・リクレイと、彼らの依頼人である少女だけだ。
「………いるんだろ?隠れてないで出て来いよ。」
ロザン・リクレイは鬱蒼と広がる木々の中に向かって話しかける。
すると、彼のすぐ上からジャックがとびおりてきた。
「………ごめん。」
「チっ!」
ジャックの開口第一声にロザン・リクレイは舌打ちを鳴らす。
今回は助けられたのだ、本来は礼儀にかける行動だが……どうもこいつには例をいう気になれない。
「あ!!ジャック!!」
「ジャック……?やっぱりジャックでしたか!」
ジャックの姿を目撃したクリス・ケラウスは回復薬を片手に駆け寄ってくる。
「な……!ちゃんと飲んで回復させろよ!!」
「だって!!また逃げるかもしれないし!!」
「………?なんだ、やはりお前たちは知り合いだったのか。」
目の前で繰り広げられる再開劇に首無し騎士は納得したような表情を浮かべる。
依然、別の街でクリス・ケラウスとトト・ルトラがジャックと顔を合わせた際、場の空気が一気に変わり、街中で逃走劇を繰り広げていた。
あの後いろいろあり…結局二人との関係を聞くことをすっかり失念していたわけだが……
「いや!!ちょっと!?な……なにのんきに話こんでいるんですか!?不死者!!!!不死者出没してるんですけど!!?人殺してるんですけど!!?」
彼らの再開に横やりを入れたのは、他でもない……この場の隅で腰を抜かして震えている少女だ。
恰好を見る限り薬草採りのようで、首無し騎士の姿にすっかり怯えてしまっている。
「あ……アリサさん…この首無し騎士さん、クロスライトさんは大丈夫な不死者なんですよ、今だって現に僕らを助けて……」
「いや!!不死者に大丈夫もへったくれもないと思うんですけどーーーー!!!?」
アリサと呼ばれたその少女はよっぽど先ほどの”殺戮”が恐ろしかったのか、悲鳴に近い叫びを山の中にこだまさせる。
「い……依頼したんだからちゃんと私のこと守って欲しいんですけどーー!!」
少女はガクガクと口を震わせたまま首無し騎士を指さす。
対する首無し騎士は困ったような表情を浮かべたまま、頬を搔いていた。
すると、おもむろにジャックがギルドカードを取り出し、少女に突き付ける。
「はら、ここ、見て……俺、死霊術師の資格、ある……アレ、俺の、使役不死者。」
ジャックが妙な片言言葉で少女に説明する。
その後ろではクリス・ケラウスやトト・ルトラが「死霊術師の資格なんていつの間に取得したの!?」とか「使役不死者って何!?クロスライトさんを!?」とか騒ぎ立てている。
「使役……不死者…?襲ってこない…の?」
少女の問いかけにジャックが無言でうなずく。
それに合わせるように、首無し騎士も持っていた頭を地面において、両手をあげる。
その様子を確認した少女はやっと震えを抑えると、深いため息を吐いて脱力した。
「それなら……そうと早く言って欲しかったんですけど………」
「安全だとは言ってたんだけど……」
クリス・ケラウスも一触即発を免れて、胸をなでおろす。
あのまま首無し騎士とことを構えるというのは考えたくもない……心情的にも、実力的にも………
「私達は、クリミア聖王国方面からこの山を越えてリぺリシオン王国に帰るところだったんだ。」
「え!?じゃあ私の村経由するってことだよね!?ついでだから一緒に行こうよ!!不死者のこと、私から村のみんなに口利きしたっていいよ!!?」
先ほどまでの怯えようが嘘のようなこの変わりよう………どうやら彼女はなかなか強かな娘のようだ。
「私、アリサ・ルル!よろしくね!」
・
ジャックは思いもよらない事態に内心動揺していた。
いままで避けてきた昔の冒険者パーティと、図らずも行動を共にすることになったからだ。
しかも仲違いした理由や敬意を首無し騎士には説明していないし、事が事なだけに説明もしづらい……。
この状況を脱する方法を導き出すのに、ジャックの頭の中はいっぱいだった。
「どうしたもんかな……」
御車台で首無し騎士の頭を抱えながら呟くジャック。
そんな状態で呟いた言葉を、首無し騎士が聞き逃すはずがなかった。
「どうしたんだ?」
「………首の位置がずれてるやつに馬車の操縦を任せるのは不安だけどどうしたものかなって悩んでただけだよ。」
「なんだそれは……今更すぎじゃないか?」
ジャックが咄嗟についた嘘に、首無し騎士は呆れた様子で答える。
少し無理やりすぎただろう?しかし、どう説明したものか答えが明白に出ないのも事実だ……。
今度は首無し騎士に聞こえないように、彼女の耳を塞ぎ、ため息を吐く。
「おい!!こら!!危ないだろ!!!」
隣に座っている首無し騎士の身体に肩を叩かれてしまう。
「わるい。」
ジャックはため息を吐き終わると、首無し騎士の耳を塞いでいた手をどけた。
・
「ここが私たちの村です。今、みんなに首無し騎士のこと説明してくるね!!
アリサ・ルルはそういうと、勢いよく村の中へと帰っていく。
「なんとも気持ちのいい娘だな、思わず心がほっこりしてしまう。」
その様子に首無し騎士は何とものんきな感想を述べていた。
常々思うのだが、この不死者は小さな子供に多少甘すぎるのではないだろうか?
「………クロスライトさんって、子供好きなのかな?」
「……………いや、あの感じだと単に庇護欲が強いだけじゃね?」
後方でロザン・リクレイとトト・ルトラがひそひそと声量を抑えながら首無し騎士について言及している。
よかった………他者から見ても首無し騎士の言動は”そう”見えるらしい………。
……いや、それはそれでよくないのだが
しばらくすると、遠方からアリサ・ルルがこちらに向かって走ってくる。
「みんなに説明してきたから入ってきて大丈夫だよ~」
どうやら入村許可が下りたらしい………ジャック達は首無し騎士を囲うようにして村の中へと入っていった。




