81:永遠の友 ≪フレンズ≫
25/02/22 誤字脱字の訂正、ならびに表現の一部見直しを行いました。
その夜は、玉座門遺跡に逗留することになった。
文字通りお通夜のような夜だ。
Gさんが目を覚まし、悲しむその姿に僕は再び涙した。
最後の別れを言えなかったGさん、彼は自分を責めた。もしちゃんと動けていたらレイアは死なずに済んだかもしれない、と。
僕は彼に告げた。彼女を殺したのは自分だ。その罪はGさんのものではない。僕のものだ、と。
僕はレイアのことをほとんど知らないと言っていい。Gさんよりも付き合いは短い。
それでも、僕は彼女を譲りたくはなかった。
彼女の存在は僕の中にある。だから彼女の分も生きて、死者の王との契約を壊してやる。そう思っている。
レイアの蘇生の可能性に関してGさんとギヴェオン司教を交えて、協議したが、結論は恐らく不可能。
レイアの契約が完全に破棄されているのであれば、彼女の外見は人間に戻るはずだが、戻ってはいない。
つまり契約の履行が停止されているだけという判断だ。魂が戻れば、時計の針が進み、想像したくないことが起こるだろう。
契約を破壊するか、破棄させるしか生き返らせる方法はない。
魂が輪廻し、レイアが別の人生を始めれば、その時は契約は切れるだろう。その時は彼女の魂も最後の言葉は覚えていない。
だからその時は…新たな彼女の人生を守りたい。彼女の望む人生を歩ませてあげたい。そんなことを考えたりする。
翌日になって、司教の立会いのもと、ソウルイーターの破壊を試みる。
彼の手にする聖剣<執行者>によって破壊を試みたが、ダメだった。
Gさんの分解光線をもってしても破壊できない。
その後Gさんに『天の書』の破壊方法を調べてもらい、分解光線で塵にしてもらった後に、ソウルイーターを調べてもらったが、分かったことはこれが|現代の英知を超えた遺物であることだけだ。
これも今後調査するしかない。
厄介な両手刀をGさんの収納袋に入れさせてもらい、運搬してもらう事にする。
朝の段階で死体の保存の儀式を執り行ったレイアの亡骸は、ブランケットに包み、僕のホールディングバッグに入れた。
少しでも早くみんなに会わせてあげたかった。
来た時と同様に風乗りの奇跡を行使し、ラストチャンスに向かう。夕刻前には無事に到着した。
ロアンは大いに悲しんだ。
「アレンちゃんやGさん、ギヴェオン司教もいたのに、なぜ死んでしまったの?」
僕には答えられない。ただ一言、ゴメン。とだけしか言えなかった。
もちろんコマリも大いに泣いた。ザックは表情を変えないが、僕には彼の表情が悲しみに沈んでいるように見えた。
仲間の死を悲しまないものはいない。
陽が暮れた。
棺の手配をして、礼拝所を借り切り、仮設の寝台にレイアを寝かせて締め切る。
ろうそくの明かりに照らされたレイアは、死んだことが信じられないくらいに穏やかな、少し笑みを浮かべた顔をしている。
僕は考える。レイアがなぜ死んだのか。
僕の力が足りなかったから。僕がもっと強ければ、レイアは死なずに済んだはずだ。
僕の作戦が正しくなかったから。ローズを司教の援護に回さなければ、レイアは死なずに済んだはずだ。
オースティン・ヘイワードが彼女を呪わなければ…彼女はその時点で死んでいたかもしれない。
オースティン・ヘイワードがいなければ。僕は彼女と出会う事は無かったかもしれない。でも死なずに済んだはずだ。
神が、彼女を守らなかったから。そう、太陽の神が彼女を守ってくれれば、呪われもしなかったし、死ぬこともなかった。
違う。神は人の人生に干渉はなされない。人は自らの人生を自ら選んで生きるんだ。
神を恨むのは筋違いだ。オースティン・ヘイワードを恨むのも筋違いだ。彼を恨めば、僕の中にある記憶を否定することになる。
僕はレイアを知っている。彼女の心にも触れかけた。彼女は僕の前に存在したんだ。彼女の選択を認めない訳にはいかない。
彼女は最後までパラディンだった。自らに課せられた運命に立ち向かい続けたんだ。呪われても、魔剣を抱えさせられても。
彼女は最後まで、そして今でも美しい。その彼女を否定するようなことはできない。
行き着く結論は、僕が無力で愚かだったからだ。
その時扉をノックする音が聞こえた。
「アレンちゃん、ロアンだよ。入っても良いかな?」
僕は返事が出来なかった。
「入るよ」
そう言ってロアンが中に入ってくる。
「アレンちゃん、さっきはゴメン。話を聞いて少し落ち着いたから、謝りたくて来たんだ。
一番つらかったのはアレンちゃんだよね。ホントごめん」
僕はロアンの方を向けない。何も言えない。感情が爆発してしまいそうだったから。何を口走るかわからない。どんな目でロアンを見るかわからない。コントロールできない自分が怖い。
ロアンはレイアを挟んで僕の反対側で、レイアの顔を見ている。
「話を聞いてすごく納得したんだ。見てごらんよ、レイアちゃん、こんなに綺麗な顔して、こんなに満足そうで。
死んじゃダメだと思うけどさ。でも、レイアちゃんは幸せだったんだと思うんだ」
僕はそのまま泣いた。
涙が止まらない。
「僕が……レイアを、殺した」
やっとの思いで出た一言。
その言葉にロアンが声を荒らげる。
「レイアちゃんは納得して、こんなに満足してるんだよ?
なんでアレンちゃんはレイアちゃんを認めてあげないの?」
「僕はレイアの想いを尊重してるし、彼女を誰よりも認めてる!
そして、僕が殺したのは事実で、消せないよ!」
僕の感情が爆発しかかる。ロアンが少し静かに僕の言葉に答えた。
「アレンちゃん。辛いよね。そう、事実は消えない。もしあたしがアレンちゃんの立場だったら、同じことをできたかわからない。想像しただけでも怖いから。
でもさ、それがレイアちゃんの最後の望みだったんだよ。あたしにも少しだけわかる。
だからね、レイアちゃんの気持ち、想像できるんだよ」
「レイアの、気持ち?」
「うん。レイアちゃん、最後まで心配だったんじゃないかな。アレンちゃんが苦しむんじゃないかって。レイアちゃん優しいから。
でも、最後は信じたんだよ。アレンちゃんは一歩を踏み出せるって。ちゃんと未来に向かえるって」
ロアンは涙ぐみながら、続ける。
「だから、あたしは思うんだ。自分にできるかどうかを棚に上げて悪いけどさ、アレンちゃんはレイアちゃんの想いをちゃんと受け止めてあげないとダメなんだよ。
落ち込んで、自分を責めるアレンちゃんを、レイアは喜ばないと思うよ」
ロアンの瞳から大粒の涙が零れ落ちている。
レイアが残してくれたたくさんの言葉が、改めて僕に語りかける。
そして、ロアンが来る前に僕がたどり着いた結論が正しくないことを思い知った。
僕が無力で愚かなのは確かにその通りだ。
だけど、レイアが死んだ理由は別だ。彼女が選びうる選択の中から選んだんだ。
僕がレイアの立場なら…同じことを選んだと思う。窮地にある仲間を救い、未来への禍根を断つ。
それが唯一の方法だから。
「ロアン、ありがとう。大切なこと気付かせてくれて」
僕はそう告げた。
ロアンが僕を見る。そして僕は続ける。
「今レイアにも怒られたんですよ。おい、クレリック、お前にはまだ仕事があるだろうってね」
「そうだね。レイアちゃんはきっとそう言うよ」
「なので、ロアンに手伝いをお願いしたいんだけど、いいかな?」
僕は涙を拭いながらロアンにお願いした。
「もちろん、で、何をするの?」
「ロアンは葬儀の手伝いとかしたことあるかな?」
「参列はしたことがあるけど、手伝いまではないかな」
「そう。葬儀をするのは先になるけど、少なくともその準備はしたい。何より戦場帰りで汚れてるからね。レイアを綺麗にしてあげたいんだ」
「わかった、で何をすればいい?」
「まずは、宿に行って、古いもので良いのでシーツを4、5枚もらってきて欲しいのと、あとはバケツか桶か、少し大きめの方が良いかな。それを3つくらい確保してほしい、後で燃やすものがあるから、大きめの麻袋を2、3枚お願い」
「ちょっと待ってて、すぐに用意するから」
そう言い残しロアンは礼拝所を出ていく。
僕はレイアの身に付けている鎧のバックルを外していった。腕や足は鎧を外してしまうが、胸周りと腰回りは体を起こさないと外せないので、ロアンが戻ってから手伝ってもらう予定だ。
両手足の鎧を外し終えた頃に、ロアンが戻ってきた。
「持ってきたよ、って、何してるの?」
「汚れを落とすために鎧を外してるんだよ。ロアン、手伝って」
「えっと、みんなも何か手伝いたいって、そこに来てるんだけど、どうしたらいい?」
少し思案する。これからレイアの着ている物は全て外す。女性陣はいいとしても、と思ったが、ロアンだけ中に入ってもらい、他の人には外で少し待ってもらう事にした。
「鎧を外すのを手伝って」
僕はレイアの上半身を起こして支えて、ロアンに上半身の鎧を外してもらう。
奇跡の力によって死体の保存を行っているから、硬直はなく、僕の筋力が不足していることを除けば、作業に問題はない。
それから膝と腰を持ち上げる形で、下半身の鎧を外してもらう。
「外に鎧一式を持っていって、待っている人たちに鎧の清掃と、補修をお願いしてもらっていい?」
「分かった」
ロアンは一式の鎧を持っていこうとしたときに、僕に何か言いたげにこちらを見た。
「どうしたの?」
僕が問うと、
「んと、鎧のスカートの部分は、私が洗っても良いかな?」
「いいけど、どうして?」
「アレンちゃん気が付いてるんじゃないの?その、言い難いんだけど、レイアお漏らししてるみたいだから…」
「ああ、鎧まで行っちゃってるか。えっとね、それはお漏らししてる訳じゃないんだよ」
「でも、これってさ…」
「うん、そうなんだけど、それは仕方のないことなんだ。意識していなくても力が入っている筋肉とかってあってさ。死んでしまうと筋肉が緩んじゃうからね。自然と出てくるんだよ」
「そうなんだ…」
「そう言う事もあるから、ロアンだけに手伝いをお願いしたんだよ。ほら、イメージの問題ってあるからさ」
「うん、何となくわかった。んじゃ、ざっとだけあたしが洗ってから、他のと一緒にみんなにお願いするね」
「うん、そうして」
僕は引き続き彼女のキルトのアンダーアーマーと下着を取る。
鎧の当たる部分を中心に少し斑紋が出ている。日に当たらない部分は白いだけに目立つ。
幸い顔には出ていなかったのだが、僕としては残念に思う。
死体の保存の奇跡が死亡直後に使えていたら、文字通り生きているようにしか見えなかっただろう。だが、普段から準備している奇跡ではない。
僕は奇跡を行使して、用意してある桶に水を頂く。
次にシーツを適度な大きさにナイフでカットしてから、布を固く絞ってレイアの体を拭く。まずは腰回りから。時間が少し経っているので固まって取りにくい。
水分を含ませると取れやすくなるが、一気に匂いが広がる。
力をあまり入れないよう、こすらないように、慎重に何度も拭く。
ロアンが戻ってきて手伝ってくれ始めた。
「こんな格好を他の人には見せられないよね」
「うん、僕も見せたくないし、何よりレイアに殴られる」
「それは言えてるね」
そんな事を言いながら、手を動かし続ける。
レイアの体をうつ伏せにする。翼がある今のレイアをひっくり返すのは、想像を絶する労力だったが、なんとかなった。
それから腰回りを再び丹念に洗う。
それから背中を洗い終えて再び仰向けに。
「うつ伏せは少し苦しかったね。ごめんね」
自然とそんな言葉が口から洩れる。
ロアンと二人で黙々と足先から上に拭いていく。
「レイアちゃん、プレート着てても露出高めだから、結構土ぼこりついてるね」
「この気候だからね、賢明だとは思うけど」
「アレンちゃん、プレート着てて暑くないの?」
「暑いよ。死にそうになるくらい。でも、不意に矢を受けて死にたくないからね。だから連戦になった日の夜とか、鎧の中はものすごいことになっているよ。
今度匂いでも嗅いでみる?」
「絶対にヤダ」
1時間くらいで全身の汚れを拭き終えた。首から上は後でするとして。
シーツをカットして簡易な下着を着せてから、二つ折りにしたシーツでアンダーアーマーと同じように体を覆う。
これで鎧を着せ直せばいい。
次にレイアの顔を綺麗に拭く。彼女の表情を変えたくないから、可能な限り優しく、降れる程度に。
最後に髪を梳かす。毛先からこれも慎重に、櫛を入れていき、櫛どおりが良くなった段階で固く絞った布で、少しづつ毛を揉むように洗っていく。
そしてもう一度全体に櫛を入れて、一通り完了だ。
「うん、レイアちゃん、きれいになったね。普段お風呂に入るよりもきれいになったんじゃないかな」
「怒られても知らないぞ?最後に一仕上げをしないと」
僕は荷物から小さなポーチを取り出して、いくつかの道具を取り出す。
「そんなもの持ってるんだ」
ロアンに驚かれる。最小限度ではあるが化粧用品だ。
「僕は吟遊詩人でもあるからね、商売道具みたいなものだよ」
そう言って、まず、レイアに頬紅をさす。日焼けしたレイアの顔はそれ程血色が悪いようには見えないが、これだけで印象が随分変わる。
少しレイアの顔を眺めてから、濃いめの鮮やかな紅を選び、彼女の唇に、指を使って色を入れる。
彼女の髪の色よりわずかに濃い、鮮やかな赤。
首の脇に少し見える斑紋を、白粉に紅と茶の染料を混ぜて色を調整してから、まず自分の手の甲に塗って色を確認し、微調整をしてから指にとって、斑紋よりも少し大きめに塗ってから、周辺を少しこすって自然になじませる。
「どうかな、ロアン。少し自然に見えるよね?」
「うん、化粧ってすごいね。考え方を変わりそうなレベル」
これで鎧が仕上がれば終わりだ。
「この格好ならみんなに見てもらってもいいよね?」
「うん、レイアちゃんキャンプ中って、こういう格好でいるのを、あんまり気にしなかったからね。鎧が終わってるか見てくるよ」
そう言ってロアンは外に出て行った。
僕は締め切っていた礼拝所の窓を開けて回る。少しこもっていた空気がジャングルの夜の風で入れ替わってゆく。
「アレンちゃん、鎧の補修まで終わってるって。みんな、中に入ってよ」
そう言ってロアンは、外で作業していたみんなを中に招き入れる。
「それじゃ鎧を着せようか。この格好じゃレイアも落ち着かないだろうからね」
僕は指示を出して、ザックにレイアを抱きかかえてもらい、腰のアーマーと胸のプレートを仮止めした。
ゆっくりと下ろしてもらってから、位置を微調整して固定。ショルダープレートも順番に付けていく。
手甲を付けていると、反対側をロアンが、足をコマリやローズが担当して、すぐに鎧を着せ終わった。
「うん、いつも通りのレイアちゃんだね」
ロアンが言う。Gさんが目頭を押さえているのが見える。
一番若いんだからさ、そう言うのはやめてよ。もらっちゃうじゃない。
「とりあえず、食べるものとお酒を持ってこようか」
泣きそうになる前に、僕は雰囲気を少し変えたかった。
「良いのですか?ここは礼拝所ですし、問題があるかと思いますが」
ローズらしからぬ常識的な発言。
「いいんですよ、どこだったか忘れましたけど、亡くなった方と一緒に夜通しで飲み食いするって習慣があるところもありますし。
それに、神官の僕がいいって言ってるんですから」
「宿にいっておじさんにお願いしてくるね。コマリ、ローズ、一緒に来て」
そう言ってロアンが二人を連れて出て行った。
残された僕とGさんとザックは、無言のまま突っ立ってる。
Gさんがポツリと言った。
「一人だけ幸せそうな顔をしよって。こっちはお前の残した宿題が残っとるんじゃぞ」
そして、無言で肩を震わせる。
僕はGさんの肩をポンと叩き、隣に立っていた。
程なくして3人がいくつかのバスケットを携えて戻ってくる。ギヴェオン司教も連れてきたのは少し驚いた。
レイアの横に小テーブルといすを並べて、皆で円になり、酒のカップを回していく。
7人全員にカップが渡り、ギヴェオン司教が立ち上がる。それに合わせて僕らも立ち上がる。
「史上最高のパラディン、レイアに」
司教がカップを掲げる。
「私の師であり、友であるレイアに」
ザックがカップを掲げる。
「敬愛する戦士、レイアに」
ローズがカップを掲げる。
「いつも優しい姉様、レイアに」
コマリがカップを掲げる。
「頼れるアネキ、レイアちゃんに」
ロアンがカップを掲げる。
「いつも無理難題を押し付けるレイアに」
Gさんがカップを掲げる。
「僕たちの永遠の友、レイアに」
僕がカップを掲げて、一同とカップを合わせる。軽いコンッという木の音が鳴り、皆がカップを飲み干す。
そして皆が椅子に座り、二杯目を注いでいるときに、ギヴェオン司教がもう一度席を立って、言った。
「まず、一つ報告させて欲しい。セーブポイント脱出組は、明日にはラストチャンスに到着する。死者は全部で25名。
少ない犠牲ではないが、不幸中の幸いと言わざるを得ない。諸君らの警告がなければ、全滅だったと思う。
改めて、聖炎を代表して礼を言う。ありがとう。諸君らのお陰で多くの命が救われた」
そう言って頭を下げた。
「そうですか、25名。少なくはないですね」
「ああ、勿論失われても良い命などないが、多くが生き残ることが出来たのも事実だ。我々はその分も生きて明日を作らねばならない」
「そうですね。その通りだと思います。
レイアも闇の司教と戦っているときにこういってましたよ。
憎しみに縛られては明日は来ない。俺はお前が憎くて殺すんじゃない。未来に害があるから殺すんだ。って」
「彼女らしい言葉だな。そしてとても重い言葉だ」
ギヴェオン司教が頷きながらカップを空にする。
「アレンが、ゲートから戻ってきてこれで勝てると思ったが、その直後にすべてが終わったと思った。
正直に言うと最初はレイアだと気が付かなったのだよ。新手がアレンを追ってきたと思ってな。
レイアの力を見て思ったよ。私も引退するときなのかもしれんと」
「あれだけの力をお持ちなのに、引退とか、納得できませんね」
ローズが司教に噛みついた。酔うの早すぎません?ローズさん?
「口止めする人はいないから言っちゃってもいいかな。レイアちゃん結構乙女なところもあったからさ、あたしに漏らしたことがあるんだよ?
アレンの子だったら育てみたいってさ。どういう意味だと思う?色男??」
「ロアン、そう言う事って口止めされたんならバラしちゃダメでしょ?」
僕は慌ててロアンの口を塞ごうとするが、
「ああ、そう言えばこんなことも言っておったか、教会に集まる子供たちの世話をする生活も良いかもしれん、だったかのう」
Gさんが思わぬところからの奇襲攻撃。
「そうですね、戦場を駆けるレイアさんも格好いいですけど、子供たちに囲まれているレイアさんも似合いそうですよね」
コマリの純真な追い打ちが痛い。
「アレン師匠。師匠は人の世で言う、スケコマシなるものの定義と重なるようなのですが、スケコマシなのですか?」
少し遠慮がちに発言したザックの言葉に、一同が大笑いする。
「スケコマシか。アレンの女性関係はあまり知らんが、人たらしなのは間違いないと思うぞ」
司教がさらに油を注ぐ。一同は口々にそれは間違いないと言い、さらに笑った。
ネタにされているのは分かるけど、怒る気にはならない。
そうやって皆で騒いでいると、入り口にシティガード達の一団がやってきた。
騒ぎ過ぎで近所から苦情でも出たかと思っていたら、
「お許しいただければ非番の者は献杯を、勤務中の者は献花をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
先頭に立っている指揮官と思われる人物。先のラストチャンスの防衛戦に参加していた人だ。
「もちろん、喜んで。中にお入りください」
とても異様な光景がしばらく続いた。
レイアに近づき彼らはその姿に驚愕して恐怖すら覚えるようであったが、次の瞬間には笑顔になるか、涙を流すか、のいずれかであった。
彼らは、天の使いのように神々しい、とか、なんとお優しいお顔をされているのか、とか、口々に言い、その場を後にしていった。
僕たちは騒ぐわけにもいかないので静かにその様子を見ている。
シティガード達の訪問が落ち着いたかと思ったら、ドロウたちがやってきた。
みな街道の警備や護衛に来ていた人たちである。
彼らは入るとローズに一礼し、僕に一礼し、司教に一礼した後に、レイアの前に進み、やはりシティガード達と同じような反応を見せた。
僕はこうして多くの人がレイアの姿を見て、知ってくれることが嬉しかった。
そして気が付けば礼拝所の前には長蛇の列ができている。
先ほど献花や献杯に来たシティガードたちの家族や近所の人が集まってきていた。
理由は分からない。ただ、その列は朝まで続いた。




