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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第二章 月影の司教
86/90

79:闇の司教 ≪ザダークビショップ≫

25/02/22 誤字脱字の訂正、および表現の一部変更を行いました。

25/04/22 ターニングアンデッドの漢字表記を変更しました



 上空に上がって一路遺跡を目指す。

 毎時100kmという移動速度は体験したことがない。飛翔中ははっきり言って余裕はなかった。

 だが小一時間も経つと、慣れてきたようで、少しだけ余裕が出てくる。

 風になる感覚というのも悪くない。

 ジャングルの境を抜けて、忘却の王(オブリビオ)の呪いの影響を受ける地域に来ているが、今のところ影響は受けていない、気がする。

 荒野の上を吹き抜ける僕たちはおそらく誰の目にも見えていないだろうと思う。

 やがて前方の地平に遺跡と思われるシルエットが見える。同時にローズが減速し、降下を始めた。

 高度200メートルほどを維持して、速度は8割程度に落として遺跡上空へと接近する。

 それでもかなり早いし地上までは遠くも感じるが、敵に見つからないことを考えれば、良い所だと思う。

 ほんの10秒ほどで玉座の上まで達し、それからさらに10秒ほどで、遺跡を通過する。

 僕の目で見た限り、高い位置の玉座の周囲には10体前後の人型と、椅子の上に黒い鎧が見えたと思う。

 敵に気付かれた気配はない。

 先頭のローズは減速しながら降下を始める。

 そして地上付近まで降りると実体化を始めた。

 僕たちもその近くに降りて実体化する。


「確認できました?僕には黒い鎧が玉座にあるのが見えたんですけど」


「私も漆黒の鎧が玉座に座っているのを確認しました。周囲の敵は12~14という感じです。他に敵が見当たらないのが逆に気になります」


 僕の言葉にローズが応じた。


「私の目ではそこまで確認できなかった。エルフやドロウの視力には敵わんな」


 ギヴェオン司教が言った。Gさんもレイアも目視では何かがいるのは分かったが、それ以上は確認できていないらしい。


「墳墓の戦いで手勢を失い過ぎたのかもしれんのう。じゃとしたら絶好のチャンスじゃ」


「最初の案で行きましょう。近くの建物内に入って実体化し、そこから一気に奴を討ちます。

 Gさんは味方への支援と、奴の弱体化を中心に呪文をお願いします。ローズはGさんの援護を、僕は中心付近に陣取って、援護します。

 司教とレイアは奴を仕留めてください」


 全員が頷く。

 そして再度ガス化し、移動を開始する。

 高度と速度を上げ、再び遺跡に接近。上空から玉座の右側にある大きめの建物の跡に目標を決めて降下。

 実体化する。

 まだ敵に気づかれた様子はない。

 僕とGさんは目を合わせて頷くと、魔法の行使を行った。


加速(アクセラレイト)

祝福(ブレス)を」


 そして一斉に走り始める。

 高くそびえる玉座を目指して。


 敵の反応は悪くなかったが、広場に散っているので、防衛体制が整っているとは言い難い。

 髭の悪魔と屍鬼(ワイト)の混成だが、苦戦するほどの相手ではない。


「地獄の亡者どもよ、在るべきところに帰れ!神告浄化(ターニングアンデッド)


 聖印として掲げた三日月刀から神の威光が放たれると、近くにいたワイトが3体ほど塵と化す。

 先頭を行く司教とレイアは目の前の髭の悪魔に一撃ずつ入れて切り倒し前進の速度を緩めない。


気力吸収(エナヴェイション)


 Gさんは奴に向けて闇色の光線を放つ。それは見事に直撃する。


「おかしい。呪文が正しく機能しておらん」


 Gさんが何か言ったが僕は正確に聞き取れなかった。

 玉座の奴はこちらに手を向けると、赤い光弾を放った。

 火球(ファイヤーボール)の呪文?

 とっさに身構えて受けるダメージを最小に抑える。


「司教、レイア、それは囮じゃ!」


 Gさんが叫んだ。


「囮だろうが何だろうが、悪は滅ぶのみ!唸れ執行者(エンフォーサー)悪を討つ一撃(スマイトイービル)


 司教の声に彼の手のバスタードソードが呼応し光の雷が刀身を走ると、最上段から繰り出された一撃が、鎧の兜からその玉座までを一気に引き裂いた。

 そこに座っていたのはおそらく手下のリッチ。だが司教の一撃で沈黙した。


「そんなの反則だろ」


 脇にいたレイアが漏らすが、すぐに向きを変えて下の雑魚を片付けにかかる。


「奴は地下にまだいる可能性があります、一気にゲートへ」


 その声を聞いていたのか、ゲートから赤い炎を纏った巨体が現れる。同時に玉座から少し離れた場所に魔方陣が浮いたと思った瞬間に、二回りほど小さいが赤い巨体に似た悪魔が現れた。

 僕は反射的にゲートの地面に静寂(サイレンス)の奇跡を放つ。


「地獄の諸侯、まだそんな手駒を持っておったか」


 司教が忌々し気に呟く。そして言った。


「奴はまだ地下にいる。急ぎ奴を討て。ここは引き受けた!」


 ゲート前に居座るつもりだったかもしれないが、奴はいくつかの攻撃手段を封じられた状態を嫌い、ゲート前から移動した。


「行け!」


 再び司教が叫び、地獄の諸侯に向かって突進する。


 僕たちはゲートに向かい走る。

 ゲート前で立ち止まり、サイレンスを解除してから祈祷(プレイアー)の奇跡を行使する。

 ほぼ同時にGさんが地獄の諸侯に向けて、タイミング計りながら呪文を放った。


過労の(ウェイブズオブ)(イグゾースチョン)


 大きな悪魔とその後方から接近してくる髭の悪魔と一体の小さい諸侯を巻き込みながら負のエネルギーが波のように進んでいく。


「私も司教の援護に残ります」


 ゲートの前で向きを変えローズが戦闘態勢に入る。


「ご武運を!」


 僕は言い残してゲートをくぐった。

 前回同様に通路に出る。僕とレイア、Gさんは祭壇に向けて走る。罠はないはずだ。

 通路を抜けて薄く輝く祭壇が見える。前に見た時とは状態が違う。稼働中なんだ。

 そしてその脇に黒い鎧の男。僕はその顔を初めて見る。


静寂(サイレンス)


 問答無用で先手を打つが、魔法は発揮されなかった。


「祭壇は魔力によって守られている。魔法はここには届かんよ。それにしても気が短いようだな」


 男はそう言ってから宙を払うような動作をした。

 奴に向けて接近の速度を落としていなかったレイアが、その手の動きに合わせて横に倒される。


「運命とはなんと劇的な計らいをするものだな。かつて呪った聖戦士(パラディン)が月影の司教を名乗る者を伴い、私の目の前にいるのだ」


 僕はじりじりと奴に接近する。魔法がダメなら物理的に叩くしかない。

 レイアも立ち上がり、奴に近づき始める。


「パラディンにクレリックが、そんなに下品に殺気を垂れ流して、恥ずかしくないのか?」


「黙れ!」


 僕は一気に加速して奴に斬りつける。レイアも同時に動いたようだ。


「やれやれ、おしゃべりも楽しめないのか」


 奴はサイドステップで僕の剣撃をかわすと、レイアの重たい一撃を盾で払い、一撃を放つ。

 レイアも冷静にそれをかわして剣を構えなおす。

 奴がレイアを狙った直後に僕は再度胸元を狙い突きを出すが、鎧に弾かれた。


「いい攻撃だ。だが、月影の司教を名乗るには、力不足だ」


 奴がそう言った直後に腹部に激しい衝撃。奴の膝が僕の腹部を直撃した。

 鎧越しに食らった一撃だが、衝撃が凄まじく、一瞬息が出来なくなる。


「鍛え方が足りんよ。来世では筋トレに励むといい」


 さらにもう一撃蹴りが来る。踏ん張って受け止めようとするが、簡単に蹴り倒されてしまった。

 だが、僕が蹴り飛ばされたのは無駄ではなかった。

 Gさんが放った光線が奴の足を捉える。


「小うるさい魔術師が!」


 奴は奇跡の力を行使した。岩の壁がGさんを取り囲み閉じ込める。

 そのタイミングでレイアが再び切りかかる、奴は盾でしのぐが、2撃、3撃と連打されて後退している。

 そこに僕も再度切りかかる。

 奴とて防戦一方になればどこかで隙も生まれる。こちらは二人だ。力押しでいい。

 二人がかりの攻撃に奴はじりじりと後退している。


 Gさんが石の壁に穴をあけて出てきた。今なら魔法の攻撃が通るはず。

 いける!そう思ったときに突然奴の姿が消えた。

 空を切るレイアの剣と僕の剣。


「うぐっ!」


 背後からうめき声が聞こえてきた。

 呪文の行使態勢に入っていたGさんの腹部から剣が生えている。


「もちろん織り込み済みだ」


 奴はGさんの背後に瞬間移動したのだ。そして背後から一突き。

 だが、Gさんは呪文の行使を中止していなかった。

 よろめきながら前に出て、振り返りざまに呪文を放つ。


連鎖する雷(チェインライトニング)


 だが、呪文は最後に発動しなかった。


「見上げた根性だが、少しばかり力が足りなかったな。お前から死ね」


 そう言って奴は再びGさんに剣を突き立てる。


「やめろおお!」


 僕の叫びは届かなかった。


 が。


「こいつは加護持ちかなにかか」


 奴の剣は手ごたえなく、地面をたたいていた。

 Gさんの存在が揺らいでいるように見える。彼のいう呪いが今発動している。

 Gさんは死んでいないし、あの状態なら一切の干渉を受けないはず。

 僕は奇跡の力を放つ。


業火(フレイムストライク)


 眩い光が奴を包み、神の炎が直撃する。

 これくらいで終わるはずがない、僕は再度奴に向かって走る。

 レイアも同じように奴との距離を再び詰めた。


 光が収まると同時に爆発的な力が底から発せられた。

 思わず足が止まる。

 風圧を伴った圧倒的な力の波。


「さすがに痛えな。だが、その程度で俺が倒せるわけがないだろう」


 そう言うと奴も奇跡の力を行使した。


地獄の業火(ヘルフレイム)


 瞬間的にどす黒い炎が僕の体を包み込む。

 歯をくいしばって耐える。それしか方法がない。一瞬の炎のはずだが、永遠に続くかのような熱と苦痛。

 意識を刈り取られるのは免れたが、立っているのがギリギリだ。

 レイアが僕と奴の間に入るように剣を振るっている。


「15年も経って腕はたいして上がってねぇな。元パラディン」


 先ほどまでに比べて奴の速度と力が上がっている様だ。アンチマジックの外にいるからか。


「ぬかせ!こっちはてめえをぶっ殺すために生きてきたんだ」


「いい気迫だ。3人いれば倒せたかもしれんが、魔法使いは戦線離脱。クレリックはあのざまだ。勝てると思っているのか」


 奴は余裕を見せつけるように言う。

 ここから見ている分にはほぼ互角に戦っているように見える。

 僕はまず自分の治療を行い、そしてレイアにも治療の奇跡を使う。

 そして攻撃のための奇跡を行使する。


灼けつく光(シアリングライト)


 収束した光の束が奴を直撃する。効いている。まだだ、まだいける。

 僕の攻撃に合わせてレイアもすさまじい剣撃を数度入れる。そのうちの一撃が、見事に奴を捉えた。


「いい連携だ、だが!地獄の業火(ヘルフレイム)


 奴はノーモーションで奇跡を行使してきた。再び地獄の炎が僕の体を焼く。

 

「うわああっ」


 歯を食いしばっていたが、今度は声が漏れる。

 熱く、痛く、苦しい。

 だけど、ここで倒れる訳にはいかない。

 何とか耐えきって、再び自らを治療する。

 奴とて無傷ではない。

 だが決定打が無い。

 どうすればいい、どうすれば。





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