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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第二章 月影の司教
83/90

76:決断 ≪デシジョン≫

25/02/22 誤字脱字の訂正、および表現の一部変更を行いました。

25/07/25 地名の間違いを訂正しました。


 Gさんとの会話で一定の成果を得ることができたと思う。

 確かなことは、まだ何も言えない。だからこそ調べて、確かにしなくては。

 後片付けを終えてのんびりしているレイア達の元に行き、話をすることにする。もちろんザックも呼んで。

 Gさんと至った結論を話してから、その調査のために再度墳墓に戻ることを告げる。


「なので明日は朝一で墳墓に向けて出発します。そのつもりで準備をお願いしますね」


 僕がそう告げ終えると、頭の中に声が響いた


-アレン、聞こえるか?-


 レンブラント司教だ。奇跡の力を使って直接話しかけてきている。


「聞こえます、司教。何かあったのですか?」


-伝言を頼まれた。闇の司教が玉座門遺跡で確認されたと-


「その情報は確かなのでしょうか?」


-行政官からの伝言だ。確度は高いと思う-


「分かりました、対応をこちらで協議します。結果は後程お伝えします」


 僕は司教との会話を終えた。その様子を見ていた皆が少し緊張しているようだった。


「レンブラント司教からのメッセージでした。闇の司教が玉座門遺跡に現れたと」


 一同は顔を見合わせる。


「どうする、向かうか?」


 真っ先にレイアが尋ねてきた。

 一通り考えてみるが、結局の所向かうしかない。


「行きましょう、最短で行く手段を考えないと。あと、ギヴェオン司教に報告してきます」


 僕は司教の天幕に向かう。

 天幕前に警備の従士がいるが「司教はおられますか?」とだけ尋ね、「おられます」と答えを聞き、


「失礼します」


 さっさと中に入る。普段なら取り次いでもらい、呼ばれるのを待つところだが、待っていられない。

 中に入ると、夕食後に書類などに目を通しているところだったようだ。


「アレンか。貴殿にしては随分と慌ただしいな。何かあったのか?」


「無礼はご容赦ください。いまレンブラント司教からメッセージが届きまして、玉座門遺跡で闇の司教が確認されたそうです」


「レンブラント司教?情報の出どころは確かなのか?」


「ストームポートの行政官殿のようです」


「ああ、あのエルフか」


 ギヴェオン司教の顔にあからさまな嫌悪感が浮かぶ。


「貴殿の前でなんだが、私がエルフに良い印象を持てぬのは、半分は奴が原因だ」


「ごもっともかと。私個人としてもあれ程エルフらしいエルフはなかなか見かけませんから」


「何にせよ、奴が誤った情報を流すとは思えん。だとすれば、早々に向かうしかなかろうな」


「はい。当初墳墓の再調査をするつもりでしたが、明朝玉座門遺跡に向かおうと思っています」


「再調査?」


 ここで、先ほどのGさんとの会話の内容をかいつまんで説明する。


「あくまでも仮説ですが、他に手がかりもないので再調査を検討しておりました」


「なるほどな。それはガイアでなければならんだろう。だが奴が現れた今、そちらが優先だろう。空路を使うのか?」


「使いたいのはやまやまなのですが、二つ問題があります。天馬(ペガサス)をお借りするのに、一度に3頭が限界で。人数分となるとそれだけで二日必要になります。もう一つの問題が、こちらの方が大きいのですが、この奇跡を使うには、私の生命力を大きく削ります。二日続けて呼べるかが怪しいのです」


「なるほど。いざ戦場に向かうのに、現場で役に立たない状況では意味がないな」


「我々も全軍とは行かんが、私とエウリシュアが同行しよう。2部隊残せばここの守備は問題なかろう。誰かあるか」


 司教が声を上げると天幕の外で返事が聞こえ、若い従士が入ってくる。


「すぐに士官3人を召集せよ。急げ」


 はっ。と短い返答と一礼を残して従士が駆けていく。


「私も準備に入りますので、これにて」


 そう言って天幕を出た。

 仲間の天幕に戻って、ギヴェオン司教も同行することを伝える。


「聖炎の部隊も同行しますし、馬を使って陸路を進む予定です。なのでGさん、馬を使えるように準備をしてほしいのと、最短になるルートを検討したいのでお付き合いください」


 僕は先ほどの地図を広げて、位置を確認する。最短距離はここからジャングルを抜けて直線的に遺跡を目指すルートになるが、最短時間になるとは限らない。途中までラストチャンスへの街道を使ってジャングルに入るか、それともラストチャンスを超えて、旧陸路、かつてストームポートとの往来に使われた道を途中まで使った方が早いか、検討する必要がある。この地域に一番詳しいであろうローズにも加わってもらい、ルートを決定する。


「馬を使って一気に進むことを考えると、ラストチャンスを経由してから旧街道を途中まで進んで、そこからジャングルを通過、荒野に入って玉座門遺跡の経路が時間的には早いと思われます。途中で馬の換えが用意できないので、どの程度走らせられるかによりますが」


 最初にローズが意見を述べる。この辺を普段回っているだけあって、状況には詳しそうだ。


「であればそれが早かろう。馬は毎日用意せねばならんし、潰れる心配は低かろう。夜も休息は必須じゃしな」


「でしたら、ラストチャンスまで最短二日で行けますし、ジャングルを抜けるまでそこから1日。荒野を進むこと二日、5日で到達できると思います」


 Gさんとローズの話し合いでルートが決まる。これは明朝出発する際に、司教たちに伝えればいいだろう。


「なんじゃと?」


 突然Gさんが言った。あまりにも突然で周囲はハッとなりGさんを見る。


「Gさん、どうかしたんですか?」


「今、風の囁きの術でメッセージが届いた。ケイトリンじゃ。

 奴はこう言った。

 『セーブポイントは危険だから、まだいるのなら離れなさい』 と」


 ここが危険?どうして?なぜケイトさんが警告を?

 僕の頭の中は少し混乱した。


「それは、どう理解すればいいんですか?」


「文字通り、じゃろう」


 慌てるあまり、馬鹿な質問をしてしまった。深呼吸をして落ち着いたふりをする。


「Gさん、どう見ます?」


 何と聞けばいいかわからないから、とりあえずGさんに丸投げの形を取る。


「このメッセージから分かることは……セーブポイントで何かが起こる。それをケイトリンが知っている。この二つくらいじゃな」


 Gさんが少し噛み砕き、間を与えてくれたことで僕は冷静さを取り戻す。

 情報を整理する。ケイトさんの現在地は不明。

 彼女が僕たちの居場所を知っているのは不思議でない。ストームポートを出発する前に言いふらしてきてるのだから。

 危険を警告している。ここが聖炎の拠点であり、ギヴェオン司教がいることも知っているだろう。それでも警告だけでなく、退避を推奨している。

 僕たちでは対処できないレベルの何かが起こると予想しているのだろうか。知っているのだろうか。

 いずれにせよ、これは司教にも知らせるべき内容だと僕は思った。


「Gさん、僕はこれは司教に伝えるべきだと思いますが、どう思います?」


 やっと具体的な質問ができた。


「うむ、それが正解じゃろう。聖炎も退避すべきと考えるが、今回は前の時ほど簡単には決断をできんかもしれんな」


「その判断は司教がなさるでしょう。まずは司教の所に行ってきます」


 僕は慌てて、再び司教の天幕に向かい、前に立っている従士を無視して中に飛び込む。


「ギヴェオン司教!」


 そこには軍議中と思われる司教と3名の聖戦士(パラディン)の姿があった。みんな、僕が血相を変えて飛び込んできたことに驚いている様だ。


「大変です!ここにも危険が迫っています!」


 これでは何も伝わらない。僕は馬鹿か。


「まあ、落ち着けよ。ほら、水でも飲んで」


 そう言って、ソウザが水差しからカップに注いで、手渡してくれた。僕はそれを一気に飲む。


「ぶどう酒じゃないですか!」


「こうして飲んでいると周囲からは水に見えるだろう?」


 デニスがさらっと言う。なんでそんなに不真面目なの。と僕が思っているところに、


「アレン、そろそろ何が大変なのか教えてもらえるか?」


 エウリシュアが言った。その一言で冷静さが戻ってくる。


「今、ガイアさんの知り合いからメッセージが届いたんです」


 先ほどのメッセージの内容と、僕の推測を話す。そして


「今すぐに撤収の準備を。何か起きてからでは遅いですから」


 そう結んだ。


「アレン、お前の言いたいことは良く分かったが、確証が一切ない。何が起こるかもわからん。

 ましてや以前のセーブポイントとは違い、本腰を入れて建設中の我々の拠点だ。仮住まいを放棄するにのとはわけが違う」


 エウリシュアが僕に言った。それは正論なんだけど、リスクの大きさを考えれば、僕は撤収する以外の策を思いつかない。


「どれだけ費用が無駄になろうと、生き延びさえすればやり直せます」


 僕はもう一度強く言った。


「言いたいことは分かるが、そこまでのリスクは考えにくいだろう?猊下がおられないところを奇襲されるという話でもないだろうし」


 デニスがそう返してきた。

 確かに現時点で司教がここから発つことを知っているのは僕ら少数だけだ。そうなら未来を知っていることになってしまう。


「だからこそ、この警告は非常に危険だと判断しているわけです。僕たちのパーティがいて、司教をはじめとする聖炎のパラディンや司祭がいて。

 それでもケイトリンさんはここから逃げろと警告してきた。この意味を察するべきだとは思いませんか?」


「そもそもケイトリンって何者なんだ?」


 僕の必死の訴えは今一つ届いていない感じだ。司教が強く絶対的な信頼があるのは分かるけど。


「ケイトリンとは、エルフか?」


 ここで初めて司教が口を開いた。


「はい。エルフの弓使いです。ガイアさんの主大陸(ヴェリタス)時代からの知人だそうです」


「魔弾の射手、だな」


「はい、そう呼ばれることもあると。司教はご存じなのですか?」


 驚いた。司教は心当たりがありそうだ。


「直接は知らんが名の通った弓使いだな。ガイアと旧知であったのか。ああ、そうか、ガイア。大魔導師ガイアか」


 司教が独り言のようにつぶやく。そして僕に尋ねてきた。


「この件に関して、ガイアは何と言った?」


「私と同様に、聖炎は撤退するべきであろう、と」


 なんかGさんの意見を聞かれることに少し憤りみたいなものを感じるが、それで決断してくれるのであれば、それでもいい。

 司教は腕を組み、眉間に深いしわを寄せて考え込んでいる。


「そうだな。暫く留守にしたとて、何かが大挙してきて住み着くということもあるまい。

 デニス、ソウザ、お前たちは早々に撤退の準備を始めろ。

 時間はあまりないので、荷物は最小限で良い。遅くとも明日中に全員を撤退させよ。良いな?」


「はっ!」

「はっ!」


 二人が姿勢を正し返事をした。


「エウリシュア、お前は当初の予定通り私と玉座門遺跡に向かう。早々に出立の準備をせよ。配下にもな」


「はっ!」


 それからギヴェオン司教は僕に向き直り、こう言った。


「アレン、貴殿の忠告、しかと承った。まだ礼は言わんが……お前には悪いが、礼を言わずに済むことを祈ってくれ」


「はい、喜んで」


 僕は一礼した。

 何もなかったら『ごめんなさい』で済む。何かあってからでは遅いのだ。


 こうして夜の騒動は終わったが、夜通しで撤退の準備をする人々のざわめきが、一晩中ジャングルにこだましていた。




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