72:因縁 ≪フェイト≫
25/02/22 誤字脱字の訂正、および表現の一部変更を行いました。
キャンプに戻って、今日は使っていなかった奇跡で、死者を一人蘇らせる。
これで一応今日の仕事は終わりだ。
いつもよりも圧倒的に口数が少ないレイアの様子は気にはなるが、押しも引きもできないので様子見だ。突然いなくなったりはしないだろう。
灼熱の炎の直撃を浴びて、髪の毛もかなりチリチリになってたりする。
気分転換も兼ねてバッサリと切ってもらう事にした。髪の毛はまた伸びるし、そんなに時間はかからない。
髪を切り終わって思ったのは、頭が急に軽くなって、風通しが良くなった気がする。
首を振ると、いつもの感覚よりも全然軽い。今までは回した後に毛が動く感覚があって、何と言えばいいのだろう。少し引っ張られるような、頭が後ろに残るような感じがあったけど、今はすっと回る。
慣れがないので少し落ち着かないが、そのうち慣れるだろう。
司教はすぐにセーブポイントに戻るそうだ。一方、エウリはデニスの到着を待ってからキャンプを撤収し、戻る段取りとなった。
明日にはGさんたちも到着するだろうし、それまでは少しのんびりかな、と思っていたらロアンが、
「墳墓の中を調査しようよ。そんなに時間もかからないと思うしさ。ここにいてもすることないし、お宝の一つや二つはあると思うんだけど?」
まあ確かにその通りなんだけど、聖炎のみなさんの前で、墓荒らし的な発言は大丈夫なんだろうか。
「行ってくると良い、何かと必要だろう?」
とエウリのお墨付きが出た。
余談だが、聖炎ももう一度最下層に行くらしい。作業の痕跡があったから何か情報が無いかを調べるそうだ。
レイアはまだ動く気分には慣れない様子だし、僕とコマリとロアンの3人で再探索を行う事にする。
掃除は終わっているし、何か出るとしたら屍人だと思うので、何とか対応できるだろう。
僕たちは墳墓入り口に戻り、中に入る。
自然洞窟はスルーして聖炎の作った地図をもとにまずは墳墓の2階層目に向かう。一階層目は基本迷路だけだろうと言うのがロアンの見解だ。
ロアンが言う怪しい場所を巡っていく。
2階層目はざっくり言えば大きな十字型の構造だ。細かい枝道はあるけども、階段口から十字路に到りそこから3方向に進める。それぞれの突き当りが玄室になっている。入り口からまっすぐ進むところにあるのが主玄室だろう。
途中に作動していない罠があるが、これはロアンの手にかかれば造作もない。
左右の玄室を回ってそれぞれに副葬品などが収められた隠し部屋を発見した。そこにあるのは埋葬された人の生前の私物などと思われる。
断言はできないがそこで回収した副葬品は人間サイズのもので、恐らくは古代のドロウのものであると推測できる。
かなり古い時代のものだ。玉座門遺跡と同じかそれよりも古い感じ。
現時点では価値は不明ではあるが、それなりの金額にはなるだろう。
主玄室を捜索すると、最近作られた下の階層に続く隠し通路がまず見つかる。
他を慎重に調べていたロアンが何かに気が付いた。
「この石棺、多分ダミーだよ。この下に隠された構造があるっぽいね」
かなり慎重に埋葬されたということか。
「開ける仕掛けって分かりそう?」
「もう少し調べてみないと確定はできないんだけど、今のところ見つからないんだよね」
「壊すのは少し気が引けるね。Gさんが来てから相談してみようか?」
僕の提案にロアンは頷いた。壊すって言っても僕たちだと労働力が圧倒的に足りないし。
2階層はこれでひとまず回ったことになる。
僕たちは3階層に降りてみる事にする。エウリたちがまだ調査をしているはずだ。
3階層に向かうと奥の方でたいまつやランタンの明かりが見えている。
僕たちはそちらに向かう途中で、いくつかの宝石を拾った。どうも髭の悪魔の死体が消えた後に残ったものらしい。
詳細は後で調べるとして、ランタンで照らしながら拾い集める。運が良ければ臨時収入になるだろう。
それから再び奥に向かう。
エウリたちは真剣に調べているようだった。
「ロアン、何か隠し扉の類はありそう?」
「今のところ、何も見つからないね。鍵のあるチェストもあったけど、鍵は開けられた状態だったし。重要なものは全部運び出されたあとじゃないかな」
「聖炎が調査を開始した段階で、撤退の準備をしていたのかもしれませんね」
コマリの意見は正しいと思う。
当面の闇の司教がここを拠点にして、本に関して研究していた可能性もある。祭壇の造りや防御魔法なんかも調査の対象だったのかもしれない。
いずれにしても、何かを企んでいたのは間違いないだろうし、その手掛かりが見つかると良いが。
その後も周囲を調べてみるが、見つかったのは闇司教が脱出に使ったと思われる通路だけ。これもすぐに行き止まりで、魔法のトンネルか異次元の門か、そう言った類のものがここにあったのだろう。
一通り回収物もまとまったようなので、僕たちは墳墓を再び後にした。
「アレン、ちょっと良いか?」
そうレイアに声をかけられたのは、その日の夜、夕食の後だった。
彼女の重い口調に何かを察したロアンは、
「コマリ、少し女同士の内緒話をしない?」
そう言ってその場を離れてくれた。レイアに対する気遣いだろう、ありがたい。
「レイア、大丈夫ですよ。何でしょうか?」
「今日の昼間の出来事に関してだ。俺はかつてオースティン・ヘイワードと戦ったことがある」
レイアはそう切り出してきた。
淡々とレイアはその時の事を語る。
16年ほど前のこと。
彼女は太陽の神に仕えるパラディンだった。
いくつかの功績を上げて、教導隊の教官に任命されて、その日は隊長のクラインというパラディンと、彼女、そしてユリウスと言う名の司祭と共に、12名の従士を率いて野外訓練を行っていたそうだ。
そこに近隣の村の調査を行うようにとの命令が下った。そこに最も近いのが彼女たちだったのだ。
伝令に来た司祭を含めて16名でその村に向かい、その途中で襲撃を受けた。
吸血鬼に率いられたアンデッドの部隊。が深い霧と共に攻撃してきたのだ。
確かに強力なアンデッドではあったが、力を合わせて撃退に成功した。
だが、その直後に異変が起こった。ヴァンパイアは露払いでしかなかったのだ。
空間が捻じ曲がる感じがしたかと思うと、従士たちが一斉にその場に倒れた。
司祭が咄嗟に防御の奇跡を行使したが、間に合わなかったようだ。
強力で禍々しい悪のオーラを纏った男が目に入った。
奴は漆黒の闇のような両手刀を手にして近寄ってくる。そして彼の近くで倒れていた従士の首を何の躊躇もなく刎ねた。
奴は魔法を行使したかと思うと一瞬にして防御陣が消え去り、次の瞬間に二人の司祭が切り倒された。
クラインと共にレイアは奴と戦ったが、直前のヴァンパイアとの戦いで消耗していたこともあり、二人とも力尽きた。
奴はクラインの首を刎ねてからレイアに近づき、その両手刀を振り上げたが、何かを思ったように振り下ろすのを止めて、こう言った。
俺を楽しませろ、と。
それから奴は呪いをかけた。
一つ目の呪いは、奴が手にしていた剣とレイアを一対の存在として定義し、レイアに鞘としての役割を与えること。
二つ目の呪いは、レイアにかけられた呪いに触れようとするものは、地獄の苦しみを味わう。
三つ目の呪いは、この三つの呪いはオースティン・ヘイワードの存在が地上から消えた時のみ、解除される。
「この呪いを聞いた時に、こいつは何がしたいのか全く理解できなかった」
レイアはここまで話して一息入れる。そして続けた。
「俺は二日ほどそこで苦しみ続けた。奴が俺に持たせた両手刀は悪属性の、知性ある武器だったんだ。
悪属性の武器を善の属性の者が持つと、ひどい反発を起こし、ダメージを受ける。
だが、俺はその剣を手放せなかった。俺が持っている限りその剣は眠ったんだ。鞘の意味が何となく分かったよ。
死者の王の遺物で名を魂を喰らうものという、魔剣中の魔剣って代物だ。
二日目で、ようやく剣を黙らせることに成功した。奴も俺が持ち主であることが我慢できないらしいが、それは覆せない。ソウルイーターは俺を支配しようとしたよ。主導権を握って主従を逆転させようとな。だが、俺はそれを許さなかった。許すわけにはいかない。この剣が振舞いたいように振舞ったらどうなる?
俺は剣をコントロールすることには成功したが、パラディンとしての能力をすべて失った。
魔剣を持っているパラディンは存在しない。存在が許されないからだ。
その時同行していた俺以外はこいつに食われちまったんだ。ああ、俺のパラディンの部分もな」
僕は口の渇きを覚える。
闇司教の狂気じみた行いが怖かった。
「それから別動隊が俺を救出して教会に戻った。事態を報告し、解呪が行われようとしたが、失敗した。
解呪を行おうとした司祭の目が突然焼かれたんだ。呪いに関しては普通の呪いではなく、願いに準ずる効果だろうと。
その時に俺を呪った男が、オースティンヘイワードという闇に落ちた聖職者だと知ったんだ」
理屈は分かる。呪いをより強固なものにするために、3つ目で敢えて解除条件を願ったのだ。
でも納得は出来なかった。奴は恐らく三つの願いの指輪を使ったと思われるが、そんな貴重なものを呪いのために使う意味が僕にはわからない。
「教会は俺からこの剣を引き離す方法を見つけられないし、呪いは解けない。だから解除方法が見つかるまで俺を幽閉することにした。
俺はパラディンだ。その決定は理解できたし、それに従った。
だが、半年もしたころに、考え方が変わった。教会の連中は対策を見つける見込みがなく、放置を選択したんだと思った。
だから、脱走した。自分で対処する方法を見つけようと思ったからだ。なんせ俺は善ではなくなっていたからな。
そして船で南の大陸に渡った。お尋ね者大歓迎の土地だ。教会の影響も少ないし、まだ見ぬ魔法ならこの呪いを解けるかもしれないと思ったからだ。生き残るのに必死だったよ」
壮絶な過去だ。仮に感想を求められてもなにを言えば良いのか分からない。
「よく復讐に走りませんでしたね」
僕は合いの手をやっとの思いでいれる。
「復讐は最初に考えた。呪いを解く唯一の方法だからな。だが、奴の足取りは一向につかめない上に、教会からも追手が掛けられている。
俺にはほとんど選択肢が残ってなかったんだよ。
こっちに来て普通に冒険者稼業になって、この生活も悪くないと思った。
死んじまったら色々迷惑をかける事にはなるが、まあ、それは俺の責任じゃないと割り切ったしな」
生き残るのに必死だったという言葉の重みが一層増した。
そして一つの事実に気が付いた。
「Gさんはご存じだったんですね」
僕は錆釘亭でレベルを訪ねた時の違和感を思い出した。レイアは自分のレベルを公言せずに、Gさんがレイアのレベルを言ったのだ。
「ああ、俺はガイアが大魔導師だってのを知ってたからな。だからこっちで見つけた時に相談はしてみたさ。だがガイアも転生して人生やり直し中ってのには少し笑ったが。俺はレベルとしては聖戦士7を今でも持っていることになっている。元パラディンって奴だな。その後は成長できないから戦士としてやってきたのさ」
当時戦士9レベルと言っていた。今は多分10レベル。だけど、実際に彼女のレベルは17レベル相当という事になる。
ああ、ギヴェオン司教とどちらが強い、と言う話もそういう意味か。条件付きなら互角。なんでもありなら司教の方が強い。パラディンとしての能力の部分だ。
「色々と納得がいきました。オースティン・ヘイワードの話が出た時の反応も納得です」
「細かい所をよく見てんな。お前らしいけどさ。それに気づいてて、話せるときに話してくれと言ってくれたんだな。ありがとうよ。そんでもって今まで話せずにすまん」
レイアは頭を深く下げる。
軽い話じゃない、それどころか僕が教会の関係者であるなら話せる内容じゃない。
「問題ないですよ、レイア。僕もあなたも目的は同じだ。今までと何も変わることはないじゃないですか」
僕はそう言って右手を差し出す。
「そうだな。あの野郎をぶっ飛ばさないとな」
レイアはそう言って僕の差し出した手を力強く握り返す。
レイアの顔は少しスッキリしているように見えた。胸の中の小さな棘が一本抜けたようだ。
だけど闇の司教の考えていることが僕には全く見えない。
何のためにレイアを生かし、呪ったのだろう。楽しませてくれ?意味が分からない。
レイアがパラディンだったからこそ、自分と同じように闇に落としたかったのだろうか?
だとしても、非常に貴重な、というか誰もが欲しがるような貴重な品を使ってまでする事なのだろうか。
狂っているとしか言いようがない。だから僕はそれで片付ける事にした。
まともに考えても答えに至れる気がしなかったからだ。
因縁か……オースティン・ヘイワードにまつわる人が複数集まっている状況。なるほど、Gさんじゃなくても因縁めいていると思うよね。
話が終わるのを見計らってコマリがやってくる。少し赤い顔をしているが、酒でも飲んだのだろうか?
僕の隣に座ってから耳元で小さく言う。
…
「ロアン、どこにいるんですか?どこに隠れてるんですか!」
ロアン、コマリに何を教えたんだ。
見つけたらお説教をしないと。
今週の更新はここまでになります。
良いペースで書けましたので少し多めになっております。
と申しますか、来週は少し時間が取れない見込みで週一更新が難しそうなので、一週お休みとさせてください。(一話だけでもアップしたいとは思っています)
引き続き応援をお願いします。
是非とも何か感想やメッセージをください。よろしくお願いいたします、




