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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第二章 月影の司教
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56:地下神殿 ≪アンダーグランドテンプル≫

25/02/21 誤字脱字の訂正、ならびに表現の一部見直しを行いました。





 ポータルをくぐると、そこはどこかの地下のようだ。規則正しく積み上げられた石壁が人工的に作られた空間であることを物語っている。

 通り抜けるとすぐに、ポータルを確認した。そこにはポータルが存在しており、双方向に通行できることが確認できた。

 ポータルが残っている間なら、元の場所に戻れる。

 明かりを灯し、迷宮(ダンジョン)探索時の隊列(マーチングオーダー)で進行を開始する。

 空気の感じからすると、どこかで地上に繋がっているのではないか、そんな気がする。風が吹いているわけでもないので、希望的観測に過ぎないが。

 慎重に、でも可能な限り早く進むために、先頭はロアンとケイトさんの二人体制にした。

 進み始めて3分。十字路だ。

 今通ってきた通路は横幅5メートルほどで、天井は高さ5メートルほどのアーチ状になっている。左右に分かれた道は、幅3メートルの単純に掘られた側道、という感じだ。このまま直進でも良いと思うが、進んで後ろからの不意打ちは避けたいので、確認は行うことにする。まず右手に進むと10メートルで、石の扉で通路が終わる。

 ロアンのチェックでは罠の類はない。鍵もないようだ。

 動作させる仕掛けも見当たらないので、力押しで開くだろう、とのことだった。

 ザックとレイアが慎重に石扉を押す。

 思ったよりも軽く、静かに石扉は開いた。中は10メートル四方の小部屋のようだが、中には何もない。

 一応部屋の中をロアンとケイトさんに調べてもらうが収穫は何もなかった。

 引き返して左の通路に進む。

 同様に石扉で行き止まる。扉の造りは同様、罠もないようなので同じように扉を押して開ける。

 中も同じようなサイズ感の部屋だ。

 ただし、先ほど何もなかったのと違い、4つほどの石造りの棺桶、石棺が置かれている。

 蓋は横に置かれた状態ですべて空だった。


「ここは墳墓の類ですかね?」


 僕はGさんに意見を求めてみる。


「この部屋が霊安室なのは間違いないじゃろうが、墳墓かどうかはまだわからんな。通路のサイズからすると適切にポータルが開けば通路サイズになるのだろう。

 あの仕掛けの本来の接続先に繋がっておると仮定すれば、あの造りで墳墓は無いじゃろうしな」


 ふむ。僕は血族しか通れないような墳墓が街の中心にあってもおかしくはないと思っている。

 宗教的に、あるいは一族の権威の象徴である可能性も十分にあると思う。

 いずれにせよ、この部屋にこれ以上用はない。

 元の通路に戻って、先に進む。

 直進する通路は両脇に大きなくぼみが並ぶ構造に変わり、そこにあったであろう石像が砕かれて地面に散らばっている。

 通りすがりに誰かが壊していった。もちろん、腹いせなどではないだろう。

 恐らくはここの防衛機構のようなものが生きていたんだ。壊された石像はゴーレムの類だろう。

 50メートルほど進んだところで、通路が終わりを告げる。突然広い空洞になっているようだ。

 中を覗いてみるが、天井は高く奥行きも先が見えないほど広い。ここが最奥だろうか。


 慎重に中に進んでいく。照明の明かりが届かないくらい壁まで距離があるようだ。

 最低でも30メートルは何もない。

 真っ暗闇のだだっ広い空間。照明があり足元は石の床が見えているから感覚を保てているが、そうでなければ上下の感覚すら失ってしまいそうだ。

 あのゴーレムと思われるものを破壊した奴がここにいる可能性がある。

 慎重に進んで30メートルくらい前進したところで、前方に何か見えた。

 高さ1メートルほどの石の塊、人工的な加工の跡が見える。

 僕たちはなおも慎重に前進する。

 ロアンが静止を促す。

 

「罠だよ、少し待って」


 そう言うとロアンは慎重に床を調べている。


「少し移動するよ、あたしよりもあの石に近づかないでね」


 ロアンはそう告げて、地面を確認しながら動いていく。僕たちは周囲の警戒をしながら横に移動し、その後さらに奥に向かって移動。

 すると突然前方に青白い輝き。


電撃(ライトニングボルト)!」


 ケイトさんの声に全員が一斉に回避行動に入り、石の塊と反対方向に転がるように躱そうとする。

 一瞬にして飛来した電撃はロアンのいたあたりを通過してレイアとGさんを通過し、闇のかなたに消え去る。

 幸い、今の一撃で重傷を負ったものはいないようだ。

 僕はコインを一枚取り出して、照明(ライト)の奇跡を行使し、前方に投げる。

 闇の中にふわっと明るい空間が浮かび上がり、約20メートルほど先に人影が見えた。


「人型1、他にもいるかも」


 僕の叫びと同時にGさんの加速(アクセラレイト)の呪文が効果を発し、ほぼ同時にコマリの祝福が行使された。


「邪魔をするなぁ!」


 酷くしゃがれた声が前方から発せられる。人間の老婆のような声。

 その直後に奴の姿が4つに分裂する。と同時に、奴から猛烈な負のエネルギーが噴き出し、あたりにまき散らされていく。

 レイアは猛然と突進し、ザックもそれに続く。ケイトさんと僕も前に出る。

 少し前進したところで、ケイトさんが矢をつがえ、2本の矢を同時に射出する。2本の矢はそれぞれ違う奴に命中し、当たった奴は消えた。

 鏡像(ミラーイメージ)の魔法のようだ。複数の自分と同じ姿の幻を作り出す呪文。

 だが、いくついようとまとめて焼き払えばどうということはない。

 僕は聖印を描き、奇跡の力を行使する。


業火(フレイムストライク)!」


 光と炎の柱が、奴にいたあたりを一気に焼き尽くす。

 幻は消えて奴の姿のみとなる。

 そこに駆けこんできたレイアの一撃。

 勢いそのままにレイアの手に握られた両手刀(ファルシオン)が空間ごと引き裂く。


「!?」


 レイアは手ごたえを全く感じなかった。

 そこには何もない。

 ほぼ同時に石の塊の方からごおぉっと音が聞こえたかと思うと、強烈な光を浴びて崩れ去ろうとしている奴の姿があった。


「テレポートか何かで飛んだ先の罠にかかったか!」


 ケイトリンさんが弓を構えたまま言ったが、奴はその石の上にあった何かをつかむと、宙に投げた。

 何が宙に舞ったのかは分からないが、闇の中から音もなく飛来した何かがそれを掴んで、我々の入ってきたポータルの方に向かっていった。

 石の上にいた、奴は灰のように崩れて消えた。


「なんだったんだ?」


 レイアが戻ってきながら言う。

 僕はわずかな明かりの中でその姿を見た気がする。


「ケイトリンさん、見ました、よね?」


「ああ、見た。あれは悪魔の類だ。私たちが戦っていたのは、あれの手下だろう」


「戦っていたのは、屍王(リッチ)ですよね。そんなに強い感じではありませんでしたが」


 その会話にGさんが入ってくる。


「屍の王とて、ピンキリよ。大したことのない魔術師でも運が良ければ屍の王となることがある」


 持ち去られたものが何かは分からないけど、あいつらはあれを手に入れるためにここに来た。

 僕らの相手をすることなく去ったのは目的が達せられたからだろう。


「ロアン、この石の周りの罠って解除できそう?」


「出来ると思うよ、少し時間がかかるけど、まずは罠を避けて、あの石のとこまで行けば多分解除装置があるんじゃないかと思う」


「出来るだけ急いでお願い」


 僕たちは警戒しながらロアンの解除作業を見守る。

 敵がいないという保証は無いので、皆緊張状態が続いている。その中でロアンの作業は難航していた。


「たぶん大丈夫。もし罠が動いたらごめんね、ってことで」


 作業が終わったようだ。

 レイアが真っ先に石に近づいていく。


「ロアンを信用しない訳じゃないが、何かあってからでは遅いからな。俺の歩いた後を歩くようにしろよ」


 僕たちはそれに従い一列になって石に近づいた。

 それは精緻に加工された祭壇のようなもので、長方形の石の台に見える。その天板部分にはこれも緻密に作られた魔方陣。

 今も機能している。

 

「強力な魔法じゃな。おそらくは秩序と善属性の防壁の類じゃと思う。さっきのリッチもどきが燃え尽きたのはこのためじゃろう。

 中に何が置かれておったのかまでは分からんな。少なくともリッチと悪魔はこの防壁を突破して中のものを手に入れたかった。

 じゃが、わしらが来たことで事を急ぎ、最終手段を取ったという所じゃな」


「リッチが身を挺してまで、っていったい何が」


「リッチは普通は魂を安全なところに保管しておって、今の体が壊れたとしても、数日で復活するからな。

 復活に際して魔力を相当量使うので、通常は避けたい方法じゃろうが、あらかじめ想定しておったんじゃろう」


 僕とGさんは祭壇を細かく調べていく。

 Gさんは天板を僕は側面の彫刻を調べる。

 側面の奥側に、どうも文書らしい石板がある。僕は解読を試みるも、読めない。魔法文字の類のようだが。


「Gさん、これ読めますか?」


 僕はGさんに石板を示し尋ねた。


「ほう、これは」


 Gさんは石板を見ながらメモを取っていく。内容は理解できているのだろうか?


「Gさん?」


 僕は声をかけると、Gさんはメモを取り終えて告げた。


「これは古代魔法文字の類じゃな。おそらくは巨人族の栄えておった頃のものじゃろう。ワシにも読めぬ文字がある。

 じゃが、内容は概ね理解できた。とおもう。

 ここにはこう書かれておる。

 ここに禁断の書を封印する。禁忌と呪いが世に出ぬように」


「それって、ろくでもない本か何かってことですか?」


「たぶんそうなんじゃろう。無理矢理にこの魔方陣を通したから無傷と言う訳にはいかんかったじゃろうて。

 奴らもこういう回収の方法は避けたかったんじゃないか?」


 結局、肝心なところで何者かの企みを阻止できなかった。

 その企みがなにか、敵が何なのかも、全く分からないままだ。

 僕たちは来た道を引き返してみたがポータルは消滅していた。

 まあ、当然だろう。ここを開けた奴が出ていった訳で、そのまま出口を残してくれるわけがない。

 僕たちはくまなくこの地下建造物を調べて回ったが、出口らしきものは見つからない。

 祭壇のあった部屋が奥行き120メートル、幅80メートルほどの空間であることが唯一の新しい情報だ。

 参った。僕たちは閉じ込められたのだ。

 こういう事態を想定して、脱出の手段の一つや二つあっても良いだろうに、と思うが、ここは大きな保管庫で、人が出入りすることを想定はしていなかったのだろう。


 で、どうしたか。

 ここがどこかは分からないが、地下であることは間違いない。

 Gさんに飛行(フライ)の呪文で天井付近まで行ってもらい、そこから分解光線(ディスインテグレイト)で、地上に出る穴を作ってもらう運びに。ちなみに分解光線は一日に2つしか使えないとのことだ。

 幸い大きな空間で、窒息する心配はすぐには無さそうだった。

 翌日から作業を始め、3日後には都合6回の分解光線で地上に通じる穴が出来た。

 飛行の呪文をかけてもらい、全員無事に地上に出ることができた。


 ちなみに出た場所は玉座門遺跡。あのポータルは、真下に繋がっていた、というオチだ。

 ロアンは身なりのいい骸骨の所持品だけでも、と確認に行ったが、すべて持ち去られており、何も残っていなかった。ああ、死体はそのままだったが。


 決断は正しかった。だが、結果として何も成し遂げられなかった。

 チャンスはあったはずだ。

 だが、今の僕はそのチャンスを掴むだけの能力が無かった。それが現実だ。

 きっと挽回する機会は訪れる。

 僕はその時に思った。

 根拠なんてない。そんな気がしていたんだ。









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