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God Bless You !!  作者: 灰色狼
幕間
54/90

幕間2 借金返済 ≪インタレスト≫

 センシティブな表現(若干性的)なものが含まれます。

苦手な方はご遠慮ください。


25/02/20 誤字脱字の訂正、表現の一部見直しを行いました。

25/02/23 一部表現を削除しました。




 キャッスルに呼び出しがあって少しだけ顔を出した後に、時間ができたのでマーケットをふらついてウインドウショッピング。

 正直、欲しいものは山ほどある。防具類ももう少しいいものに新調したいし、武器もそろそろ考えなきゃいけない。

 だけど先立つものが……

 順調に稼げば比較的すぐ手が届くのだろうが、こっちに渡ってきてから、大きな収入になる仕事はしていないのが現実だ。

 僕はギュンターの銀行に行って残高を確認し、とりあえず必要な現金を引き出す。

 宝石類は保証価格で預金として扱えるのは便利だが、口座にあれば、の話で。

 引き出し後は、心もとない金額しか残らない。

 聖職者(クレリック)はある程度能力があれば絶対に飢えて死ぬことは無い。そんな事もあって、どちらかと言えば僕は金に無頓着な方だと思う。

 南の大陸(サウザンランド)に渡る前にも銀行を必要とするほどの財産を持ったことは無いし、必要もなかったし。

 今の所、せっかく作った口座も保管庫も、宝の持ち腐れな状態だ。


 それから錆釘亭(ラスティネイル)に向かう。レイアとロアンと待ち合わせをしているのだ。

 借金のとりあえずの清算の為に。

 僕が行くと二人はテーブルでおしゃべりをしていた。


「お待たせしました」


 そう言って僕もテーブル席に着く。

 昼食がまだなので、軽食とエールを頼んでから、早速本題に入った。


「まずは、借りたお金になります。確認してくださいね」


 二人の前に金貨の詰まった袋を置く。二人とも中身を確認もせずに確かに、と言って受け取った。


「中身の確認もしないのですが?」


「まあ、返してもらわなくても良いと思っている金だしな、返してくれるっていうだけで」


「結果から言えば、確かに返してもらわなくてもいーかな、って思うけどさ」


 冒険者の金銭感覚からすれば大した金額ではないかもしれないし、結果的だが二人とも今は仲間だ。

 だけど、見ず知らずの奴隷を開放するためにお金を出す人はいない。

 これは僕の個人的な我儘の類であるから、お金を返すのは当然だと思う。僕は基本的に貸し借りが苦手だ。何か借りていると、それが結構気になってしまうし、貸しているのも時々思い出したりする。そう言う部分が神経質なのは、多分だけど自分の物がない環境で育って、自分の物がとても大切だったからじゃないかと自己分析している。

 いずれにせよ、清算自体は終わったので少しほっとした。


「で、利子のお話なのですが、今日の午後と明日の午後の予定が空いていますので、その時間を使って僕の提供できるサービスをご堪能いただけたらと思うのですが、いかがでしょうか?フェイランで大枚をはたくのと遜色ないサービスを提供できると思いますよ?」


「それは興味があるところだね、エルフと遊んだことは無いしさ、エルフの噂は色々聞くしね」


 僕の申し出に、ロアンはすぐに飛びついてきた。ハーフフットらしい好奇心もくすぐられるところなのだろう。

 それに比べるとレイアは引き気味だ。


「別に利子なんぞ要らないし、気にすることはないんだぞ?それにパーティ内の色事ってのはトラブルの種になる」


 常識的な意見にも聞こえる。


「利子は僕が気にするんです。ですので出来れば受け取っていただきたいです。それに色事になるとは限りませんし、僕は責務を果たす立場ですからトラブルにはならないと思いますけど?」


 少しだけ煽るように言ってみる。遠回しに、レイアが僕に惚れちゃうの?という意味にもとれるはずだ。


「そりゃまあ、そうだろうけど……」


 彼女も興味が無い訳ではない、それは分かる。強い遠慮は、僕への配慮じゃないかと思う。これは推測だけど。

 なのでもう一押ししてみる。


「僕はレイアに楽しんでもらいたいだけですし、利子も払えれば僕的にもスッキリします。僕にとっても悪い話ではない思いますので協力してもらえませんか?」


「そこまで言うなら、好きにすればいいさ」


「ありがとう、レイア」


 話がまとまったので、簡単に段取り。今日この後からロアン、明日の午後はレイアと決めて了承を取る。これくらいの時間にロビーに迎えに来るので少し待っていてもらうようにお願いして、ロアンにこれから少ししたら始めるけど、準備をしたいので、1時間後にここに迎えに来ます。そう言って僕は準備に入った。


 ラスティの貴賓室(スイート)を2泊確保して、一度部屋に向かう。流石に一泊150ゴールドの部屋。設備も備品も申し分なし。

 一通りの準備を済ませてから、少し早いがロアンをお迎えに上がる。


 その後、日付が変わるころにロアンをロビーまで送ってから、この日は終わった。


 翌日は朝から食事の後に少し買い出し。あと、カウンターのハイテンションなおねーさんに、水にぬらしてしまっても問題の無い、でも十分に柔らかいマットがないかを尋ねる。彼女は、それでしたら通常客室用ですが、どのようにお使いいただいても構わないマットをお届けしますと言ってくれた。必要なものは一通り揃った。

 一度部屋に戻ってから大きく豪華なベッドでゴロゴロして時間を潰す。

 そろそろ時間なのでロビーに出てみると、レイアの姿はすでにあった。この人も大雑把に見えて几帳面だな、と思う。


「お待たせしました。さあ、参りましょう」


 僕はレイアに声をかける。レイアは少し緊張気味に見えた。

 部屋に入って僕はまず、口上を述べる。ちょっとした儀式のようなものだ。


「本日は貴重なお時間を賜りましてありがとうございます。ご満足いただけるよう誠心誠意努めますので、至らぬ点は遠慮なくお申し付けください。

 恐縮ではございますが、私から2点ほどお願いがございます。

 一つは今日の出来事は外で他言なさらないでください。

 二つ目は、万一粗相がございましたら、笑ってお許しいただけると幸いです。

 では、夢のひとときを心行くまでご堪能下さい」


 そう述べてから深く一礼する。

 レイアは、ちょっとばかり面を食らったようで、立ったまま固まっている。


「その、何って言うか本格的?改まってなんか落ち着かないな」


 彼女の口から正直な感想が漏れる。まあ、ロアンも似たような感じだったけど。


「ある種のお約束みたいなものですよ。気楽になさってください。お食事は御済になってますか?」


「ああ、軽く食べてきたよ」


 僕はまずはレイアを座らせて、飲み物を給仕する。アルコール分を少し飛ばし、少しだけスパイスを利かせたホットワイン。

 椅子は背もたれの無い一人掛けのタイプだ。


「鎧を外させていただいてもよろしいですか?」


「いや、そんな事は自分でやるからー」


「今日は私はあなたの召使です。ご主人にそのようにお手を煩わせるのは、召使として恥でございますので、どうか私にお任せください」


 こう言われるとレイアも嫌とは言わない。じゃあ頼む、と短い返事を受けて、彼女の鎧を外しにかかる。

 肩当の胸部への連結バックルから始めて肩、手甲、左右の脛当て、胸部プレート。少しだけ立ってもらってアーマースカートを順番に外していく。

 レイアは鎧下(アンダーアーマー)を身に付けただけの格好になったので一度座ってもらい、ブーツの紐を解いて脱がせて室内履きを足にかはせる。

 そこで一度彼女から離れた位置に立ってから。


「失礼します」


 そう言って僕はローブを脱いだ。

 ローブの下に下着の類は身に付けていない。つまり全裸になったのだ。


「いや、お前が脱ぐ必要はねえだろ?」


 レイアが少し狼狽している。想定外の初心な反応だ。


「これからわが主にもお召し物を脱いでいただくのに、召使が服を着ているのはおかしいでしょう?服の下に凶器の類を隠し持っているかもしれません。

 もし、お見苦しいとおっしゃるのであれば、服を着用いたしますが?」


「いや、そうはいってねえ。好きにしてくれ。あと、そのご主人様とかやめてくれ。ケツがむず痒くなる」


 少しやけくそな反応に、笑いそうになる。もちろん笑ったりはしない。


「分かりました、レイア。では失礼しますね」


 そう言ってから座る彼女の前に跪いて、鎧下の前留め(ボタン)を外していく。前開きの袖なしシャツのようなデザインであるが、所々が大きく切り開かれている。暑さ対策で加工したものだろう。ボタンを外し終えて彼女からグラスを一度預かり、背後に回って鎧下を脱がせる。

 畳んで置いてから彼女の背後に座って


「こちらも失礼します」


 そう言って両手を腰の側面から触れて、下着を少しずらす。レイアは特に抵抗することなく腰を自然に浮かせてくれたので、太もも辺りまでずらしてから前に回り、足下まで下ろして畳んで脇に置く。

 これで二人とも全裸だ。

 一度小テーブルを挟んで向かい側に座って、自分のカップに少し冷めたワインを注いで一口含む。


「落ち着きませんか?、椅子を変えましょう」


 背もたれが無いこともあってレイアは少しだけ前かがみの姿勢だ。リラックスにはまだほど遠い感じに見えるので、背もたれのある椅子をレイアの横に運んで、座りなおすことを勧めた。

 レイアは勧めに応じてそちらに座り替えて、背もたれに寄りかかって力を少し抜いたようだ。

 さっきからレイアの口数が極端に減っている。緊張は解けていないが、まあ、仕方ないだろう。


「エルフにとっては服は体を呪縛するような物なのですよ。なので、多くのエルフにとっては服を脱ぎすてるのは開放を意味したりするんです」


「そんなもんかねぇ。俺は正直に言うと、素っ裸ってのは落ち着かない。お前は落ち着けるのか?」


「ええ、解放感は感じますよ。少しだけ自由になれた気がします。まあ、人間社会ではレイアのような反応が普通だと思いますし、僕もヌーディストって訳に行かないのは分かってますよ。だからこそ、今は目の保養をさせて頂いてます。これは役得ですね」


「目の保養?それは見え透いた世辞だな」


 レイアは自嘲気味に笑うので、僕は大まじめに言葉を返す。


「レイアは十分に美しいですよ。しなやかで良く鍛えられた筋肉、均整の取れたスタイル。僕には芸術品のように見えますけど」


「筋肉はともかく、スタイルなんざ、およそ女らしくないだろ?」


「そこは僕はエルフだからかもしれませんが、あまり気にしないところですよ。エルフは男も女もあまり見てくれは変わりませんからね」


「それに俺は十分年増だからな、ロアンはまだ若いだろうが、俺はとっくに下り坂だ」


「他の女性の話をするご無礼をお許しください。ロアンから聞きましたが、偶然同い年だそうですね」


「同い年と言っても加齢の速度が違うからな。あいつの女ざかりはこれからだろう?」


「そうかもしれませんが、エルフは余り加齢も気にしないんですよ」


「そうなのか?」


「ええ、エルフと人間の恋物語は結構多いですが、あまり良い結果にならない事が圧倒てきに多いんです。その一つが加齢です」


「それはエルフは年を取らないが人間は老けていく。それで100年の恋も冷めるってことか?」


「逆ですよ。人間が加齢していく自分を嘆く事が理由です。共に過ごす日々が長くなると、人間はどうしても加齢での老化が進みます。けど、相手は一向に年を取ったように見えない。こんなに見にくくなった自分を、昔の姿のままの相手が愛してくれているのだろうか?そんな疑心暗鬼に陥るという話です」


「いや、普通そう思うだろ?」


「エルフは人間の変わりゆく姿もまた美しいと感じるんですよ。エルフから見て、人間は儚く生きるからより美しく見える。実際に人間と婚姻関係になって死に別れた後、相手の習慣を重んじて誰とも交わる事を止めたエルフ、と言うのも数人、実際に見てますしね」


「そう言うもんなんだな。で、気になるから聞いてみるけど、上手く行かない理由の他のはなんだ?」


「人間から見た時にエルフは浮気性に見えるんです。まあ、実際の所人間の価値観からすれば浮気だと思いますけど。そう言う場合は早々に破綻します」


 レイアは笑いながら聞いてきた。


「いや、微妙な言い様だな、人間からすれば浮気、エルフからは浮気でない。もう少しわかりやすいように教えてくれよ」


 そうですね、場所を替えましょうか。こちらにどうぞ。

 そう言ってレイアの手を取ってから浴室に向かう。

 石造りの部屋の中央にタブが設置されており、お湯が張られた状態だ。


「湯あみを、どうぞ。疲労回復に効果がありますよ」


 お湯の中につかるようにレイアに薦める。


「お湯が溢れるが大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ、深くは無いので少し体を横たえて下さいね」


 僕の知る限りでは、日常的にお湯につかる習慣はない。かなりの贅沢に当たる。

 王侯貴族でさえ、頻繁につかることはないのだ。

 もっとも、貴賓室くらいになると用意されているわけで、このクラスの部屋を使う人は、入浴するということなのだろう。


「お湯につかるって言うのは、悪くないもんだな。水浴びとは全然違う感じだ」


 レイアの緊張はかなりほぐれている。リラックスしてるようだ。


「で、さっきの話の続きだが、どういう事なんだ?」


「ある人間がエルフの里に迷い込んだ時に、エルフは乱痴気騒ぎをする、貞操観念の無い種族だ、と思ったらしいです。

 お茶を飲むようにセックスする。と言ったらしいですよ。

 でも、これは人間という種族から見た話で、その通りではあるんですが、実際の所は違います。

 エルフはそもそも性的な欲求が極めて薄いんですよ。繁殖力も極めて弱い。これは生き物として個が完成し過ぎた故の反動じゃないかと僕は思っています。

 エルフは基本的に自由を愛する種族です。ですから疲れたら普通に休みますし、おなかが減ったら食事を取ります。人間みたいに決まった時間に働き、決まった時間に食事を取る、そう言う生活ではありません。

 そのエルフの生活の最も根底にあるのが、子供を増やすことなんです。ここからは僕の推測混じりですが、子供を作る機会を少しでも増やすために、エルフ同士のスキンシップが過剰になっていったのではないかと思うのです。

 お茶を飲むように、と言うのは言い得て妙だとも思いますよ。人間からすれば立ち話をしていたエルフ同士が、少しすると事に及んでいるように見える訳ですからね。でも当のエルフからすれば、それは挨拶の延長みたいなものなのです。もちろん、お互いに気分が昂れば実際にそうなりますが、それはある意味推奨されているわけです。この辺は文化の違いとしか言いようがありませんね」


「ちょっとまてよ、流石にまずいだろ。その、子供の教育とかどうすんだ?」


「それが自然だから、大きな問題にはならないんですよ。もちろん、未成熟な子供は対象外ですが、徐々にそう言う振る舞いを教わりながら身に付けます。

 エルフで半人前と認められる頃には男も女も子供を作れるようになりますから、実際に体験することになるんです。それまでは見様見真似でそう言う挨拶はしますけどね。正しい意味を理解して、子供を作れる体になって半人前、と認められるわけです」


「って事は、半人前になって子供が出来て、結婚なんてこともあるのか?大人ではない、子供のうちに?」


「そこも一つ誤解があるのですが、エルフには基本的に婚姻と言う考え方はありません。誰かが子を為せば、もちろん母親はいますが、一族の子として育てられるんですよ。だから一族の人たちは殆どが兄弟のように育ちます。子供は一族の宝であり希望ですからね。なのでもしそう言うケースならそれは大人として認められて、良かったね、と言う話になります。まあ、本当に稀なケースだと思いますけど」


「良かったね、済む話じゃないだろ?」


「済む話なんですよ。産んだ当人に育てる能力が皆無だとしても、子供は一族の宝ですから、一族皆で育てます。それに本当にまれなケースと言うのも事実で、先にお話しした通り、エルフの出生率は極めて低いのです。200人くらいが一般的な集落になりますが、20年から30年くらいに一人生まれるってレベルですからね。とにかく子供が生まれるのはとても良い事なんです」


「今までの話だと、産む母親はそりゃ解るが、誰の種かは分からないって事か?」


「ええ、まあ、その通りですね。父親は出産した母親が指名する習わしです。時期的に覚えがあれば父親は決して否定しませんし。一族としてはそれで問題ないのですよ。全く問題ないわけでもないですが」


「そりゃ問題だろう」


「たぶんレイアの問題と言うのは倫理的にか、血縁者の問題じゃないかと思うのですが、倫理観的には問題になりません。極端ではありますが、兄弟の間や、親子の間に子供ができるケースも実際にあります。男の子なら精通後、女の子なら初潮後に初めて本当の意味でのセックスをするわけですが、その相手はほとんどの場合、親ですからね。正確には両親と、となるんでしょうか。男の子なら母親と、女の子なら父親と実際に体験する訳です」


「だめだ、俺の常識では理解できない」


 レイアが降参した。まあ、生き物として根本的な考え方が違うのだから、理解しろと言うのは無理な話だ。


「そう言うものだと思ってくれれば大丈夫ですよ。出来たらエルフが色狂いだと思われないでくれたら嬉しいですけど」


「そこは納得してやれるが、全体的にその、話が理解の外にあるからな、少し混乱してる気もするし」


「そりゃそうですよ、だからこそエルフを勘違いする人が後を絶たないわけですし」


「そう言えばお前はエルフの里で育ったわけではないのだろ?随分と詳しいな」


「方々を旅した時にはエルフの集落に立ち寄った事が何度かありますしね。最初に訪れた時はそりゃびっくりはしましたが、そこは何食わぬ顔で乗り切りました。

 なにせ、僕の常識はエルフのそれではなく、人間のものでしたからね。まあ、性的なことに関しては必ずしも人間に物でもありませんでしたけど」


「お前、よく壊れなかったな」


「壊れかけたのは事実ですよ。歓迎の宴が執り行われて、興が乗ってきたら、乱交騒ぎ、ですからね。特に客人である僕はひっきりなしに女性に誘われる始末でしたから。でも、ちゃんと理由がある事もわかりましたし」


「理由があんのか?」


「ええ、ありますよ。さっきの話につながるのですが、一族の血が濃いので、違うエルフの一族からの子種がすごく欲しいんです。

 外からもたらされた子供は一族に繁栄をもたらす、と言われるくらいにね。旅人を歓待して子供が出来たら、一族の子供ですから。

 そうすると近親配合が進まなくなって健全で強い子供が生まれる、と言うわけです」


「近親間での子供が多いと問題があるのか?」


「人間の社会では近親婚は禁じられていますよね?理由はシンプルです。血が近いと正しく子供が生まれないケースが圧倒的に多いからです。

 統計的に証明できるんじゃないですかね。人間はエルフに比べてサンプルを取るのが容易ですし」


「正しく生まれない、ってのは…?」


「人間だと死産、極端な早産、四肢が不完全で生まれる、等のケースが圧倒的に多いと聞きました。

 エルフではそう言うケースはないのですが、取替子が生まれるケースがあると言われています」


「取替子?」


「ええ、エルフとエルフの間に生まれたのに、肌は黒く髪の毛は真っ白で、赤みを帯びた子供が生まれることがります。それをエルフは取替子と呼びます。

 正しく魂が導かれずに、この世に生まれてきた子供ですね」


「それって…」


「一度お湯から出て、こちらにお越しください。」


 レイアを促して準備しておいたマットレスに横になってもらう。


「体を洗いますから、楽にしてくださいね」


 仰向けになったレイアを足先から洗い始める。石鹸を少し過剰なくらいに泡立ててから、タオルですくい、指の間、脛、膝、腰回りまで進み反対の足に。

 洗いながらレイアに話を続ける。


「取替子は、外見からしてドロウですね。それだけ種族的に近いって証明だともいえると思います。ちなみにドロウにも取替子は産まれるそうですよ。ある意味どちらも似たような環境で生きてるって事なんだろうって思います」


「人に体を洗ってもらうってのは、気持ちいいもんだな。そりゃガキの頃は洗ってもらったんだろうけど、記憶にはないし」


「リラックスできていないと、なかなかそうもいきませんよ。いい感じに力が抜けてる証拠でもありますね」


「ああ、確かに。無駄な力が抜けてるし、裸でいる事も気にならなくなってるな。でもいいのか?何て言うか、お前はこういう事に抵抗があるんじゃないかって思ってたんだが」


 レイアの遠慮の理由が口からこぼれる。


「僕のこれまでを聞くとそう思われる方は多いです、まあ、この話を聞いた人の数自体が少ないんで、統計としては成り立ちませんけど。

 今現在の僕の本音で言えば、こうして、あるいはこれ以上に他の人と肌を触れるというのは、僕はとても好きなんですよ。

 娼夫は僕にとって天職かもしれないと思うくらいには。あ、これは違うな、仕事にしてしまうと相手を選べないですからね。

 昔を思い出さないのか、と聞かれれば、思い出すこともあります。今思えば限りなく地獄に近い所でしたから。

 特に虐待趣味のド変態は洒落になりません。少々言葉が過ぎました、今のは忘れてください。

 で、当時の事を思い出すんですけど、なんだかんだ言ってこの時期に今の僕の基礎が作られているわけですよ。僕は恵まれていたんです。稼ぎが良かったんだと思いますが、一人部屋が与えられ、時には本をもらったりしました。ひどい傷を負ったときには、早々に治療を受けましたし、目玉をえぐられても、足をもがれても奇跡の技による再生(リジェネレーション)が受けられたんです。死んだら死からの帰還(レイズデッド)も受けられたんじゃないかと思います。いや受けてるかもしれない。何にせよ、死ぬことは無い環境だったんですよ。

 当時の僕がどんなことを考えていたか、とてもシンプルなんです。あんまり痛くないといいな、とか、ご褒美にお菓子をもらえると良いな、とか。

 少なくとも死にたくないとか、飢えて何も考えられないなんてことは無かったんですから。

 夢も希望もない生活、と言えばそうなんですけど、そもそも知らないものは想像も希望することもないですからね。

 その中で自然といろんな技術を身に付けました。

 相手の言葉の裏にある心理とか、相手の希望に沿うための演技とか。

 欲望を満たすためにその場に来てる人達ですからね、結構わかりやすいんです。この人は、必要以上に怖がった方が喜ぶとか、淡々と無表情の方が好きなんだとか。必ずしも口から出る言葉と一致しないんですよね。だから自然とうそを見抜いたり、言葉の裏側にあるものを見る技術が身に付く。

 その次は相手の望む姿を演じることが上手になる。それって、僕の生活にも危険性にも直結してる事でしたから。

 レイア、申し訳ない。少し不快な話をしましたね。うつぶせになってください」


 レイアは無言でうつぶせになる。リラックスした感じが消えている。僕もレイアに引きずられるようにリラックスし過ぎていた。これは僕のミスだ。

 さっきは洗えなかった裏側を足から丹念に洗っていく。


「そもそもエルフであることが幸いしたかもしれませんね。人間であれば30年とか考えたくもないでしょうけど、エルフにとってそれは決して長い時間ではないですし、それに、人と肌を合わせる事への抵抗感も少なかったんじゃないかと思います。だからこうしてレイアと裸の付き合いができる今って、とても幸せな気分なんですよ」


 ダメだ、レイアのテンションが下がったまま。少し卑怯な手を使う事にする。


「それでは座ってください。石鹸を流しますから」


 手桶でお湯を救ってからレイアの体にお湯をかけていく。バスタブにお湯を流しながらバスタブから何度も汲んでは掛けて行く。


「ねえ、レイア、聞いても良いですか?」


「なんだ?」


 少し表情を伏せたまま、レイアが答える。表情は読めないが、言葉に含まれるのは悲しみか、それに類するもの。


「レイアは僕を汚らわしいと思いますか?僕が嫌いですか?」


 レイアが一瞬固まる。あれ、逆効果だったかな。

 そう思った瞬間に急にレイアに抱きしめられた。


「そんな訳ないだろ。お前は俺以上に綺麗だし、嫌いな奴を抱きしめようなんて思わねえよ」


 少し涙声だ。この人は多分だけど僕の知らない苦しみを抱えている。だから人に優しくなれる。


「レイア、暖かくて気持ちいです」


 僕の声にレイアが何かに気付く。


「お前・・・?」


「さっきから言ってますが、レイアは僕から見て美しい人なんですよ。急に抱きしめて貰ったら、驚きもします。これは正常な生理的反応だとおもいますよ」


 少し鼻をすすってから、レイアが言う。


「生理現象ねぇ。お前も物好きだな。したいように、好きにしていいぞ?」


 彼女が顔を離して、涙目で笑っている。むしろこっちが反則だ。


「いいんでんすか?好きにして良いなんて言って。あとで泣いても知りませんよ?」


「お前みたいな青っぴょろいのに、俺は負けないと思うけどな」


「本当に知りませんからね。あ、これは決めておきましょう。レイアが許してください、って言ったらやめてあげます」


「言ってろ」


 不意にレイアが姿勢を低くしたと思ったら、下腹部が暖かな感覚が襲ってくる。

 こうしてレイアの不意打ちからの格闘戦が始まる事となった。

 考えていた段取りは全部吹き飛んだが、そこは臨機応変だ。


 そして一時間ほど後に、僕の勝利が決まった。



「お、おまえ、魔法か、なにか、使ったんじゃ、ないのか?」


 レイアの息はまだ荒い。

 僕はそのまま一度浴室から出て、冷たい水をカップに注ぎ、レモンをわずかに絞って匂い付けしてから、浴室に持って戻る。


「まずはお水をどうぞ、そして少し休んでくださいね。ああ、あと、魔法も何も使ってませんよ。正々堂々として勝負の結果ですから」


 僕は笑ってレイアにそう言う。実際に魔法なんか使ってないし、そもそもそんな都合のいい魔法があるなら世の中の男性諸氏は大喜びだろう。


「なんか、納得いかねぇ」


 レイアはかなり不服のようだ。僕は少し悪戯に笑って見せてから、


「納得いかない、まだ足りないのでしたら、もう少し続けましょうか?」


「いや、それは勘弁してくれ。明日は動けなくなる気がする」


 足りない訳ではなさそうだ。


「大きい武器を持っている方が強いとは限りませんし、技術や切れ味なんかも重要な要素ですよね?」


「ああ、そうだな。認めるよ、俺の負けだ」


「全くの余談ですけど、ハーフエルフを産むのは圧倒的に、というかほとんどエルフなんですよ」


「なんでだ?」


「理由はエルフの男の精が弱い事と、これは認めたくありませんが、物理的に大きな武器が必要なこともあるって事じゃないですかね」


「なるほど。それも納得だ」


 勝ち負けじゃないと思うけど、レイア的にはそう言う部分もあるのだろう。本人は納得したようだし満足もしたようだから、これでOKだ。


「魔法的に感じたのは、心理的な部分も含めてのテクニックですよ。力の向きを変えてみたり、力の入らない方向から攻めてみたり。そう言う部分も剣術と似てるところがあるかもしれませんね」


 レイアが体を起こす。少し体が重そうだ。普段使わない部分の筋肉も相当使ったんだろう。


「まだ動かないでくださいね。相当疲れたはずですから」


 そう言って彼女の体にゆっくりとお湯をかける。


「湯冷めするといけませんから、少ししたらもう一度湯船につかってください」


「お前なんでそんなにタフなんだ?」


「夢のひとときを演出するには最後は体力勝負なんですよ」



 レイアを湯船に付けてからそのまま髪の毛を洗い、お湯で流してから、タオルドライ。髪を別のタオルで巻いてもらって、あったまったら湯船から出てもらい、体の隅々まで拭きあげる。

 それから再度マットレスの上に横になってもらって、オイルを使ったマッサージを施す。

 筋肉をほぐしながら、筋を少し伸ばしてストレッチと、骨に沿って少し力を加えた状態で滑るように動かしていく。


「意外と痛いものだな、だが、痛いのが不快じゃないというのも初体験だ」


 とレイアは気に入ってくれたようだ。

 全身にオイルを塗りながらマッサージを続けいくと、普段の彼女からは想像のできないくらい艶っぽい声が漏れる。

 その声をきっかけに第2ラウンドが始まる。


「ああ、レイア、その昔(グリース)の呪文で転んだ経験てあるでしょ?今はそういう状態だからあんまり動くと危ないですよ?」


 僕は注意事項を忘れずに伝えてから、第2ラウンドの攻めに転じる。

 オイルは彼女の体験したことのない効果をもたらし、意外とあっさり、彼女は負けを認めるのであった。


 その後もう一度湯船につかってもらい、その間にオイルの処理を簡単に済ませてから、もう一度彼女の体を洗う。

 さっきほどしっかりではないが、全身くまなく、は同じように。

 流して再度湯船につかってもらい、その間にフロントに食事のオーダーを入れる。

 レイアに湯船から出てもらって、体を丁寧に拭きあげてタオルを巻いて外に出ると、冷たい水を差しだす。


「お前本当にマメだよな」


 レイアに感心される。


「普段からこれだけマメには出来ませんからね。こういう時だけでも」


 そう言って僕も水を飲む。


「こちらには立派なベッドもご用意させて頂いておりますが、いかがなさいますか?」


 少しだけわざとらしく言うと、


「しばらく男は無くていい」


 だそうだ。

 ちょうど玄関先にオーダーしたものが届いたようだ。ここはセキュアルームなので、出入り口は無い。

 向こうからワゴンだけ送られてきたわけだ。

 ワゴンを引いてテーブルの脇に置くと、その上で蓋を取って料理をつまめるようにする。

 飲み物を尋ねると最初にのんだホットワインで良いと言われたので、暖かいものを再度注文しようとしたら、これでいいから、と暖かくないホットワインをカップに注いで飲んでいる。


「注ぐのは僕の仕事ですから、言うか、空のカップを手にしたまま揺らして見せるとかしてくれれば」


「面倒でやってられるか」


 僕のささやかな抗議は却下された。リラックスは継続したままで、いつものレイアな感じだ。

 それからおしゃべりを続ける。

 さっきからの流れと言うのもあるが、エルフってどんな生き物なのコーナー的な話が続いている。僕はレイアの後ろに立って、彼女の髪を粗めの櫛で髪を梳かしながらタオルで少しづつ拭いていく。決して引っ張らぬように細心の注意を払いながら。

 ハーフエルフの話を少しして、落ち着いた辺りで、レイアがしみじみと言った。


「エルフってのも、知ってるようで知らなかったな。色々と。

 正直Gさんが最初にお前に声かけた時は、エルフかよ、って思ったんだよ。それまでエルフにはあんまりいい感じを受けたことが無くてな」


「僕に言わせてもエルフは横暴な人が多いですよ。人間を自分達よりも下だと見下す傾向がありますからね」


 一通りタオルドライを終えて僕もレイアの前に腰かける。


「結局エルフも人間の存在を認めざる得ないし憧れのような感情もあるんです。でもプライドが高くてそれは認めたくない。

 そんな感じの人は多い気がしますね。」


「ハーフエルフもそう言う部分があったりするから余計にこじれる訳か」


「そうですね、それもあるんじゃないかと思います」


 それからは飲み食いしながら少しまったりした時間が流れる。

 Gさんにもそれとなく声をかけたんですが、早々に逃げられました。Gさんを見ていたら、人間は童貞がこじれると魔法使いになる、って話を思い出しましたと言ったら、レイアに大うけしたのが、最大のトピックかもしれない。

 

 予定の時間が近づいてきたので、レイアの身支度を行う。脱がせたときの順序とは逆に一枚一枚丁寧に着せて、鎧を固定していく。

 この後に出かける予定が無いことを確認して、鎧の固定は極めて軽めに、外れない程度で留めておく。


「さて、今宵はありがとうございました。くれぐれも最初のお願いをお忘れなく。あと言い忘れてたのですが、マッサージの効果が現れるので、明日は一日体が重いはずです。明後日には抜けると思いますから、少しのんびりと過ごしてくださいね」


「わかった。思いのほかいい夜になった。初めての体験も結構あったし、夢のようなってのは言い過ぎって程でもないと思うよ」


「お褒めの言葉、ありがとうございます。では、ロビーまでお送りしますが、その前に一つお願いしても良いですか?」


「なんだ、ろくでもない頼みは聞かねえからな?」


「ささやかなお願いですよ、レイア。あなたから僕にキスしてほしい」


 レイアは少し乱暴に僕の顎を持ち上げると、そのまま口づけしてくれた。

 所作は乱暴に感じたけど、彼女のキスはこの上なく繊細だった。

 沈黙だけが時間を支配し、時が止まったかのような感覚。

 どちらともなく二人は離れて、少しだけ見つめ合う。


「ありがとう、レイア。さあ、お送りしましょう」


 僕たちはそろって部屋を出る。


 また明日からは普通の日々が始まり、そのうち命がけの闘いの日々にもなるだろう。

 こんな日があってもいい、僕は部屋に戻ってそう思った。

 しかし、二日続けては流石にキツイな。


 僕は早々に休息をとることにした。






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