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God Bless You !!  作者: 灰色狼
幕間
53/90

幕間1 秩序・混沌・善・悪 ≪アライメント≫

25/02/20 誤字脱字の訂正、ならびに表現の一部見直しを行いました。



 一日の作業も一通り終わり、少し時間ができたのでコマリの所に行く。

 今日もGさんがコマリに魔法の指導をしているはずだ。

 この2週間ほどでコマリの能力はかなり向上した。Gさんによれば、先天的な才能に恵まれているそうだ。

 3人でハーバーから坂道を登ってシティに入り、居酒屋不死鳥亭(フェニックスタバーン)に向かう。

 ここで出されているパンケーキが最近のコマリのお気に入りだ。

 おしゃべりをしながら夕刻のティータイム。こういう時間も大事だよね。

 まあ、目の前の老人風の人物が、フルーツが景気よく盛られたパフェなるものを食べているのに、若干の違和感を覚えるけども。


 「秩序?なにそれ?」


 何でもない会話の中でコマリが発した疑問。確かにドロウにはそういう概念はないかもしれない。推測ではあるが、エルフにもそういう概念は基本的にはなかっただろうと思う。

 アライメントに関してはちゃんと説明しておいた方が良いかもしれない。

 Gさんもこの意見には賛成のようだ。魔法を扱う上で、時に属性は考慮すべきことがある。特に神秘の力(ディヴァインマジック)聖職者(クレリック)の扱う奇跡の力は善悪に関する呪文がたくさんある。いい機会だしGさんと相談して、触れてみることにした。


「コマリよ、世の中には良い人と悪い人、そのどちらでもない人がいるのは分かるな?」


 Gさんがコマリに尋ねた。僕は少し様子見することにする。


「うん、コマリも師匠も、アレン様も良い人。ローズも父様も良い人。ロアンちゃんも良い人。……?皆良い人」


 食べながら考えたからか、コマリは口の端にクリームをつけて答えた。僕は『ほら』と言いながら指でコマリの口元を拭い、そのまま口に運ぶ。


「まあ、そうなんじゃが、ローズやラッシャキン、ロアン辺りはコマリにとっては良い人かもしれんが、世間一般的には良い人とは言えんのじゃよ」


「師匠、それおかしい。ローズや父様やロアンちゃん、良い人。悪いことしないよ?」


「そうじゃな、いったんそこは置いておいて、悪い人ってどういう人か解るかの?」


「悪い人…嘘をつく人、仲間の物を盗む人、掟を守らない人、あとは…解んないけど、悪いことする人」


「概ね正しい。じゃが、少し違うものも混じっておるな。今コマリが言うた中で掟を守らない人、は悪い人とは限らんのじゃ」


「なんで?掟守らないのは悪い事。じゃないの?」


「掟と言うのは、コマリの場合はドュルーワルカの掟じゃな。ここでは法律などと言うが、生活をする上での決まり事な訳じゃよ。

 多くの場合、それは社会を安定して正しく機能させる、一族の中で争いを減らし、皆が安心して暮らせるようにするための決まり事じゃ。

 じゃが、その決まり事が、あまり正しくない事もある。そうじゃな、例えばドュルーワルカの族長を決める儀式で、負けた方は追放になるのが掟。

 じゃが、その掟は不要にしてラッシャキンを一族に残らせたアレンは悪い人か?」


「父様が一族を追われてもそれは一族の決まり。だけど残ってくれてコマリは嬉しい。だからアレン様は悪い人違う」


「そうじゃな。わしもアレンの判断は正しいと思うておる。掟を守らない人は確かに悪い人であることが多いのじゃが、必ずしも悪い人ではないんじゃよ。

 この話は後でもう一度するから、一度、横に置いておこう。

 良い人、悪い人、のどちらでもない人、あるいは、状況次第でどちらにもなれる人を中立と呼ぶのじゃよ。

 ロアンやローズ、ラッシャキンもおそらくは中立じゃ。コマリに悪いことなど絶対にせんだろうが、必要とあれば人を殺すことも、盗むことも厭わない。

 そう言う人を中立というのだよ」


「でもみんな良い人だよ?」


「うむ。そうじゃな、皆良い人じゃ。じゃが、魔法を用いる際は彼らが中立と覚えておいた方が良いぞ?」


「うん、納得?出来てないけど、分かった。覚えたから大丈夫」


「コマリは賢いのう。それで良い。世の中には良い人即ち(グッド)、悪い人である(イーブル)、どちらでもない人、あるいはどちらでもある人が中立(ニュートラル)。この3つがあると覚えておきなさい」


「はい、師匠」


「それで、さっきの横に置いておいた、掟の話じゃ。掟を守らないのは必ずしも悪い人ではない。例えばアレンが、そうだ、と言う話をもう一度することにしよう。

 さっきの善・悪・中立の分類の他の分類の仕方があって、それが秩序(ロウフル)混沌(カオス)中立(ニュートラル)の3つになる」


「こっちにある中立はさっきの中立と同じ?」


「意味合いは似ておるが、少しだけ意味が違うんじゃ、これから説明するからな?」


「はい。師匠」


「世の中の決まり事、掟や法律、その他にも一族の誇りや神の教え、そういった決まりごとを重要と考えて、それを守ることを第一に考えるのが秩序、と呼ばれる属性なんじゃよ」


「じゃあ、ドュルーワルカの一族はみんな秩序なんだね」


「そうじゃのう。ドュルーワルカは誇り高く、一族の掟を順守する。確かに秩序なのじゃが、結論から言うと秩序ではない」


「えーーー意味が分からない」


「まあ、説明はちゃんとするから、少し我慢して聞いておくれ。

 秩序の反対側にあるのが混沌で、法律や決まり事をあまり重視せず、自分が正しいと思ったことを優先するような人を差す。

 そして秩序でも混沌でもないもの、その状況で使い分けるものは中立と分類されるんじゃ。

 善悪中立、同様に秩序、混沌、中立、の3つが存在する。まずこれは覚えておきなさい」


「はい」


「で、先ほどのドュルーワルカの例じゃが、この世界では混沌に分類される」


 そこまで言ったところでGさんが僕の方をちらりと見る。彼の口からは少し話しにくいのだろう、その先を僕が引き取る。


「確かにドュルーワルカは誇り高く、一族の掟にも従うけど、混沌に分類されてしまう理由は、世界における力関係が原因なんだよ」


「世界における力関係?」


「うん、ドロウも、エルフも、他の種族も、人間に比べると圧倒的に少ないんだ。言い方を変えるとこの世界には人間が圧倒的に多い。

 だから最も多数の価値観が世界における属性を決定するんだよ」


「多数が世界の属性を決定?」


 あ。僕の説明だと理解してもらえていない。

 Gさんがそこで会話を再度引き取った。


「例えばドュルーワルカの長老会議で掟の変更を話し合ったとする。族長が反対しても他の長老や、評議員が賛成した場合、掟は変わるじゃろ?」


「うん、族長は複数として数えても、他の者がすべて賛成なら、そうなる」


「この世界でも同じようなモノなんじゃよ。誰かが数を数えておるわけではないが、全体を見た時に人間の数が一番多いので、人間の価値観や法律に基づいた認識が秩序や混沌の属性を決めるんじゃ。ドロウでも人間の法律を正しく理解して、それを守る事を大切と考えればその者は秩序属性、という事になるが、ドュルーワルカの者たちは一族の掟と、人間の法律のどちらが正しいか、と問われると、ドュルーワルカの掟が正しいと答えるじゃろう。故に混沌、となる訳じゃ。

 わかるかの?」


「うん、なんとなく分かった。世界の理は人間が支配している。そういうことだね?」


「少しばかり誤解があるな。支配しているわけではなく、もっとやんわりとした総意ともいう状態かのう」


「でも、例えばドロウが、人間を駆逐して、支配すれば、人間の方が数が多くてもドロウの法が秩序として認められるのではないの?」


 ちょ、それは過激な発言に聞こえるから、公衆の面前でそう言うのは。

 だが、Gさんは意に介さず話を続ける。


「うむ、理解としては正しい方向じゃが、そうなるとは限らん。人間の数が多いうちは人間の価値観が優先されると思うし、その状況で他の種族の方が数が多いようであればドロウでも人間でもない、第3の種族の法が秩序として扱われるじゃろうな」


「ふーん、そう言うものなんだね」


「うむ、そう言うものなのじゃよ。この概念は考えれば考えるほど複雑に感じるものじゃて。時に理不尽さすら感じる事もある。

 じゃが、そもそも普通に暮らす者は意識する必要すらない。

 冒険者はある程度知識を持っておった方が良い。職能(クラス)によっては、これらの属性(アライメント)の制限を受けるものもある。

 呪文もこの分類によって作用が違うものもあったりするし、武器などにも属性の影響効果を持つ者もあるからのう」


「コマリのクラスにも影響ある?」


聖職者(クレリック)魔法使い(ウィザード)ともにアライメントの影響は受けんよ。ただアイテム類は属性指定の物があったりするから気を付けんとな」


「はい師匠」


 ホント、孫に物を教えるお爺ちゃんの図、だよな。僕よりもGさんの方がこういう説明は上手いし。まあ、コマリの方が実年齢が上なのはこの場合気にしない。

 コマリもGさんによくなついてるし、魔法使いの弟子、と言う感じがする。


「ちなみに、わしは愛と正義の人、秩序にして善(ローフルグッド)じゃ」


 うんうん、そうだよね。それは僕も疑わない。中途半端に悪ぶるとか、悪ふざけとかしなくても良いだろうに。


「でも師匠、ロアンちゃんに、変態とか、スケベジジイとか言われてるよ?」


「!!!」


 コマリ、真実というものは時に残酷なものなのだよ。

 意外とGさんのダメージは大きいようだ。そこで傷つくんだから、普段から普通に過ごせばいいのに。


 コマリとの会話では触れなかったが、僕のアライメントは混沌にして善(カオティックグッド)、ということになっている。

 善でありたいとは思っているが、多分中立にかなり近いんだろうと思う。治癒の反転(リバース)して行使するのは、禁忌、悪しき行いとされる。

 僕だって使いたくはないんだけど、背に腹は代えられなかった。


 こんな感じで二つの分類を組み合わせて表現するのが属性(アライメント)だ。

 聖戦士(パラディン)などは、常に秩序にして善である事が求められる。

 神に誓いを立てており、それに背くような事があれば即座に力を失うという徹底ぶりだから、大変だと思う。

 神の啓示を受けなければなれないのに、その上厳しい戒律に従って戦い続ける。それだけでも尊敬に値するし、僕には無理だろう。

 アライメントはその行いで変化することがあり、これはパラディンにとっては致命的だ。

 そうだ、アライメントの呼び方について、もう一つだけ説明しておこう。

 中立にして中立ニュートラルニュートラルという組み合わせもあるが、これは慣例として真に中立(トゥルーニュートラル)と呼ばれる。




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