48:蠍人 ≪エルダースコーロウ≫
25/02/20 誤字脱字の訂正、ならびに表現の一部見直しを行いました。
25/04/24 一部表記を修正しました。
僕たちはジャングルの中の道にいた。かつてのセーブポイントに続いた街道だ。
周囲を見渡すとローズさんたちの背中が見える。
正面から接近してくるスコーロウの姿。
瞬間移動は成功した。僕はすぐさま奇跡を行使する。
そこにいるドロウ、ラッシャキンの近衛たちの背中に触れながら状態確認の奇跡を行使する。
2回目を行使した段階で、戦闘状態に入り、接触しての奇跡の行使が難しくなった。
4人のステータスは確認できるが、ローズさんはまだだ。
彼らの中で一番強いと思われるローズさんだ。たぶん、状態確認していなくても大丈夫だろう。
彼らが動き始めると同時にGさんの加速の呪文が再び放たれた。
僕は少し遅れて、彼らに祝福を行使した。
目の前にいるスコーロウは4体。数の上ではこちらの方が上ではあるが、1対1では向こうの方が強い。
ローズさんはその身軽さを最大限に生かして敵の攻撃を掻い潜りながら確実にダメージは与えているものの、一撃一撃はどうしても軽い。
長期戦になれば、疲労によってリスクが一気に増えるだろう。
そう思っていたタイミングで、ローズさんに攻撃を仕掛けて大振りしたスコーロウの蠍の尾がはじけ飛んだ。
少し回り込んだ位置からのレイアの一撃が尾を切り落としたのである。
事態を把握できなかったスコーロウは、直後にローズさんから複数の剣撃を受けて最後にレイアの2発目をもろに食らって動かなくなる。
その要領で、次のスコーロウを仕留める。
コマリのワンドによる蜘蛛の糸がその脇のスコーロウの動きを止めている。一度崩れたバランスを立て直すことなく、3、そして4匹目と次々に動きが止まった。
エルダースコーロウに向けて移動しながら治療を行う。
まだ自分の奇跡の力は使わない。
基本的に杖による回復がメインとなる。
たとえ同じ呪文であっても、唱える者が使う魔法と、杖による魔法では、唱えられた魔法の方が強力に作用する。
例えば今使用している致命傷の治療の杖は、実質的な回復能力で比較すれば、僕の唱える一段下の奇跡、重症の治療の回復効果と同じくらいだ。なので、少しでも多くの回復が必要な場合に備えて、自身の奇跡は残しておくのがセオリーとなる。
指導者クラスになれば、より強力なはずだ。まだ直衛も残っているはずだし、苦戦は必至だろう。
でも、勝たなきゃいけない。
見えてきた一回り大きなスコーロウの影。
エルダーを中心に直衛が8体。合計9体。こちらに気が付き、防衛体制を取り始める。
「レイア、ローズさん。スコーロウの親衛隊と接触後、隙を見て二人はエルダーを何とかしてください。僕たちでスコーロウ達は何とかします。魔法による援護は出来ないと思いますのでごめんなさい」
「わかった、何とかしてやるから、お前たちの方も何とかするんだぞ」
レイアがそう答える。
全く具体性がなくて、非建設的な会話だと思ったが、気持ちは伝わっているし、何とかなる。
僕はそう思って、声を上げる。
「ここで交戦します」
エルダーまではまだ少し距離がある、20メートル前後。だが、少しでも護衛のスコーロウを引きはがしたいので、ここから、初手の攻撃を入れる。
持ち替えた、灼熱の光線のワンドをスコーロウに向けて降る。
赤い一条の光が先頭のスコーロウに当たってその身を焦がす。致命傷には至らないが、当たればそこそこのダメージにはなるはずだ。
ドロウたちがその場で剣を構えると、スコーロウたちも猛然と突進してきた。
近接戦闘の距離に入る正に直前に、コマリとGさんがそろって蜘蛛の糸の呪文を放つ。
4体を捕捉し、その場に足止めに成功したが、まだ4体残っている。
左端で近衛が受け止めていたスコーロウに、レイアがファルシオンを2回3回と叩きこんで蠍の部分の殻を砕き、生じた隙にドロウの近衛は、スコーロウの人間の部分に渾身の一撃を加える。
右端でイシュタルがスコーロウと激しく打ち合っている。イシュタルも左右の手に短めの剣を持っての二刀流。手数で相手を上回り、押しているようにも見えるが、致命傷を与えることは出来ていない。突然スコーロウは大きくバランスを崩す。ローズさんが片側の蠍の足をその関節から2本ほぼ同時に切り離した。イシュタルもその隙を見逃さない。防御が薄くなった相手の懐に飛び込んで胸と首に一撃ずつ入れる。
Gさんが前衛が全員ギリギリ入るタイミングで加速の呪文。僕はその場で戦場の祈祷を神に願う。
コマリが目の前の2匹に対して杖による蜘蛛の糸を張って、動きを止めた。
レイアと僕は一瞬視線を交わす。彼女はそのまま最初に拘束したスコーロウの脇をすり抜け、エルダーに肉薄する。同じタイミングで反対側からローズさんも大きく前進した。
「よし、いける」
前の2体のスコーロウを叩くべく、僕は抜刀して、攻撃の列に加わる。
だがそのタイミングで、突如そこに展開されていた蜘蛛の糸が一斉に消えた。恐らくエルダーの仕業だ。魔法解呪か何かで蜘蛛の糸を無効化したのだろう。
「!」
最初に拘束したスコーロウが一斉に前進してきて戦闘態勢に入る。僕も含め5人の前衛がその前進を食い止めるが、左側に開いた位置から一匹がGさんとコマリの方に向かった。
とっさにコマリはダガーを構えてスコーロウの攻撃を受けようとするが、蠍の大きなはさみに跳ね飛ばされる。
同時に僕にも大きな衝撃が走る。
コマリのダメージを肩代わりする呪文が効果を発揮して、彼女へのダメージの半分が僕にもたらされた。
ステータスを見るとコマリは重症状態。呪文を仕込んでいなかったら一撃でやられていた可能性もある。
僕は盾で攻撃を受け止めつつ、コマリに重症の治療を願う。すぐに効果が表れ、ステータスは回復している。だが、近接戦闘で魔術師二人のみ、危険な状態には変わりない。
コマリが咄嗟に聖域の加護を起動させた、良い判断だ。Gさんはスコーロウの攻撃を捌き切れていないが、コマリからの回復で何とか持ちこたえている。ただ、執拗に攻撃されているために、呪文の行使は出来そうにない。
前衛ポジションの5名は何とかスコーロウを足止めしている状態で、後方の援護に回る余裕がない。もちろん援護に向かうことは出来るだろうが、そうすればそこから一気に崩されてしまう可能性がある。
多少のダメージを与えても向こうは自らに対して治療系の奇跡を施して回復するので、全体的にはこちらの方が分が悪い。
僕は周囲の敵の状況を今一度確認して、自らに聖域の加護の奇跡を行使。見た目的に一番ダメージを受けているであろうと思われる、イシュタルと対峙するスコーロウを最初に排除すべきと判断し、使いたくない奇跡の行使を決める。神様、ごめんなさい。
敵の攻撃を誘発しないように右隣の近衛とポジションをスイッチしてから、さらに右手のスコーロウに手を触れると同時に解呪の奇跡を反転させて行使した。
「呪詛」
呪いの効果はすぐに表れる。目に見えて相手の動きが悪くなり、イシュタルの攻撃が一段と深く相手に届き始める。だが圧倒するには至らない。
続けて僕は僕的に最後の手段と思っていた奇跡を使用する。
「信仰の力」
僕の体に力がみなぎり、手にする三日月刀は鋭さと速さを増し、本来の武器としての力を取り戻す。
正面のスコーロウは無視して、イシュタルと戦っているスコーロウに切りかかる。
本職の戦士と遜色ないスピードと力でイシュタルと同時に攻撃をするが、ローズさんと変わらないほどの戦闘力とまではいかない。
確実に弱らせているが、僕の正面のスコーロウが回復を施すので、仕留めきれない。
だったら。
素早く月の神の印を反転させて残り僅かな奇跡を使う。
「致命傷を与える《インフリクトクリティカル》」
神様もう一回ごめんなさい。
奇跡の力は正しく発動される。呪いの効果もあり、奴はその破壊的な力を軽減できない。
体の数か所から一気に切り付けられたように血が噴き出し、そのもたらされる痛みによって、攻撃の手が止まる。
イシュタルはその隙を的確につき、奴の上半身に対して、致命傷となる一撃を放った。
「イシュタル、後衛の援護に!」
僕はそう叫んで目の前のスコーロウとの戦闘を継続する。
イシュタルは素早く移動し、Gさんとスコーロウの間に割って入ったようだ。
僕は牽制を兼ねて一度切り付けたのちに、三日月刀を仕舞い、ワンドに持ち換える。
攻撃を捌きつつ、前線を維持するドロウの近衛たちに回復を施す。
辛うじて拮抗する形を形成できた。僕の奇跡はネタ切れに近いが、Gさん達の火力は当てにできる。
少し心に余裕が出来たので、レイアのステータスを確認すると、ダメージこそ軽微であるが、何か呪いの類を受けているようだ。
明らかに苦戦中。でも援護する手立てがない。こちらを片付けなきゃ。
だが、前線の4人も、イシュタルも、敵を倒しきれないでいる。
僕は咄嗟に叫ぶ。
「コマリ、前に行ってレイアを援護して。自分から攻撃は絶対にしないで!」
その声はコマリに届いたようで、戦闘中の脇を回ってレイアたちの方に走っていく。
これで、杖による回復と加速の支援が出来る。
そう思っていたらGさんの方から赤く輝く光点が飛来した。火球の呪文か?
あっという間に隣のスコーロウに直撃、一気に火炎が周囲に広がる。
まずい、味方全員に被害が出る。
僕は冷や汗をかいたが、それは杞憂に終わった。
繊細にコントロールされた火球の炎は、味方に一切のダメージを与えることなく、スコーロウ達だけを炎で焼いた。
Gさん、疑ってゴメン。そして魔法使い凄え。
目の前のスコーロウが治療を自分に行う隙に、左隣のスコーロウに攻撃を集中させる。
そこにもう一発、Gさんの火球が飛来し、再度周囲を炎で焼き尽くす。
さすがにスコーロウ達は瀕死と見える。必死に回復を図ろうとするが、僕は目の前のスコーロウに止めを刺し、左隣のスコーロウも沈む。
こちらが数的優位になると形勢は明らかに逆転した。
3対2となったその場を一度離れて、イシュタルの戦う場所に移動。彼に杖による治療を施す。
僕は信仰の力の効果が終わっているので、抜刀して攻撃は行わず、灼熱の光線の杖を手にして、攻撃に参加。
Gさんからは魔法の矢が5本、2セット放たれ、僕からは炎の光線がスコーロウに命中する。
そしてイシュタルによって止めが刺された。
振り返り前線の近衛に治療を入れる。イシュタルは端から先頭に加わり、一人が目の前のスコーロウを足止め、残りの3人でもう一体を集中的に攻撃している。
Gさんは4人と僕が上手く範囲に含まれるように調整して、加速の効果を発揮させると、エルダーの方面に移動を始めた。
僕は一人踏ん張っているドロウの回復を中心に時折攻撃を混ぜる。
3人がかりだとさすがにスコーロウと言えど、目に見えて刀傷が増えていき、その場に崩れ落ちた。
4人の状態を確認し、倒しきれると判断すると、
「先に行く、片付けてから合流して」
そう言い残して、先に進む。
そこから約20メートル離れた場所でエルダーとレイア達は戦闘を続けていた。
「ローズさん、一度下がって!」
僕の声にローズさんは反応し、エルダーとの距離を取る。
僕はそのタイミングで彼女にステイタスの奇跡を施してから、解呪を施した。
ローズさんはそのタイミングで再びエルダーに切りかかっていく。
「レイア!」
僕はレイアの名を呼ぶ。彼女はその意図を正確に理解して僕の前まで後退してきた。
すぐに巻物を取り出し、解呪を行使する。
そしてすぐにレイアも戦闘を再開する。
「コマリ、僕の後ろに。攻撃を行って」
僕はポーチから次の巻物を取り出してエルダーに向けて奇跡を行使する。
「静寂」
エルダースコーロウの足元に効果を発動する。レイアやローズさんも言葉を発せなくなるが、奴の回復呪文を阻止するために最も有効な手段だ。
二人はそこから移動しようとするエルダーの足を上手く止めながら戦っている。
コマリの杖による蜘蛛の糸がエルダーを捉える。一瞬動きは封じるが、奴はその束縛から簡単に抜け出す。
「コマリ、今一度ウエブを」
Gさんがコマリに指示を出し、蜘蛛の糸が広がると同時に、呪文を行使した。
「炎の壁」
エルダーのいる場所に燃え盛る炎の壁が現れ、エルダーの身を焼くと同時に展開されてその場に残っていた蜘蛛の糸も一斉に燃える。
さすがに焼かれ続けるのはきついらしく、右へ左へと移動を試みているが、それぞれの方向にローズさんとレイアが立ちふさがり移動を許さない。
僕は回復用の杖を2本目に持ち換えて、レイアとローズさんの回復を続ける。
Gさんは魔法の矢を唱え続ける。
コマリは、灼熱の光線の杖でダメージを与え続ける。
一瞬にして、とは行かなかったが、やがてエルダーは力尽きて、その場に崩れ落ちた。
「なんとか、なりましたね」
「何とかなったが、オッサンの救援に向かわないとな」
レイアが、息を荒くしながら答える。
ここにいる敵の数から考えると、半数以上は司教の迎撃に向かったはずだ。いくら司教でも、圧倒的多数に苦戦は必至だろう。
敵が戻ってきていないということは戦闘は継続中ということになる。
「そうですね。ドロウの皆さんが揃ってから急いで移動しましょう。この道沿いのはずですし」
すぐに4人の近衛と合流後、速足で向かう。
移動しながら治療を施し、前方にスコーロウの群れが見えた。
多分囲まれているはず。生きてはいるだろうけど、まずは敵を散らさないと。
レイア、僕、Gさんとコマリの順でスコーロウの群れに接近する。ローズさんは見当たらない。
その直後に僕らの脇を複数の矢がスコーロウに向けて飛んでいく。
4人の近衛が左右に開いた位置から矢の掃射を始めた。
矢が刺さり、何体かのスコーロウがこちらに向きを変えると、そのドロウの部分に矢が集中して放たれてくる。
4人しかいないはずだが、飛来する矢の数は明らかに人数よりも多い。
すぐに防ぎきれなくなり2体のスコーロウがその場に崩れた。そのタイミングで接近してくるスコーロウの先頭がレイアと激突する。
その両脇からさらに2体。
さすがのレイアでも3対1はきついはずだ。僕は抜刀してレイアの左側でブロックの姿勢を取る。
レイアの初撃をスコーロウは大きな蠍のハサミを使いブロックする。人間の上半身が手にした剣でレイアに切りつけるが、レイアは余裕を持ってその剣を払う。
右側の一体が側面からレイアを攻撃しようとしたときに、そのドロウの上半身の首から剣の先が生えて、崩れ落ちる。
ローズさんが背後から隙をついて、一撃で絶命させたようだ。
僕はスコーロウのハサミの一撃を盾でしのぎ、防御姿勢を取る。
今の僕の腕力じゃ、こいつにダメージを入れるのは難しい。動きを見ながら壁に徹する。
そうすると背後から矢が集中的に目の前のスコーロウに突き刺さる。奴らは的としては大きいし、僕のはるか上に頭があるので、後方から弓で狙いやすいようだ。
確実に敵の数を減らしていくが、思うようには進めない。敵も相当に手強いのだ。
ローズさんも不意打ちで初撃こそ一撃で仕留めたが、向き合っての戦闘となると、一発で仕留められるほどやわな敵じゃない。
レイアが最初の敵を仕留めてから、さらに前に進む。
僕はその左側を並行して進む。僕は盾で防御しながら他の二人のステータスを確認しつつ治療を行う。
自分も含めて無傷と言う訳には行かない。一撃が重いので耐えると言ってもダメージなしとは行かない。
主に自分の回復をしながら、レイアとローズさんの回復、それを繰り返すのが精いっぱいだ。
それでも二人は確実に敵を切り伏せて進む。
さらに外から回り込もうとするスコーロウは矢の狙撃と、Gさんやコマリからの攻撃で、急速に削られ、弓隊に攻撃を替えようと向きを変えるころには、その場に崩れる。それを何度か繰り返して少しずつであるが進み続ける。
サイズが大きいだけ、その場に崩れるスコーロウの数が多くなってくると、進みにくくなってくる。
「おっさん、周りに死骸が多すぎて動けなくなってんじゃねえのか」
何体目かのスコーロウを切り倒して、レイアが僕に声を掛けてきた。
「そうかもしれませんね。うまく立ち回りながらまとまった数を相手にしないようにしてるとは思います」
がこーん、と重たい響きを盾で奏でながら、レイアに答えた。
「こんだけ群れてんだ、生きているのは間違いない。掘り出してやらないとな」
魔法の援護こそないものの、一気に囲まれなければ対処は可能だ。もちろん、弓の援護があればこそ可能なのだが。
「加速の呪文きたーっ!」
後ろから杖による支援が飛んできて、レイアのテンションが上がる。
上手く敵が効果範囲に入らないようにレイアが敵と離れたタイミングで魔法が放たれる。
矢の射出速度も上がったようだ。
僕には来ないが、まあ、そこは仕方ない。
しばらくして弓による攻撃が止まった。矢が尽きたようだ。
4人のドロウが近接武器を手に殲滅の列に加わる。それと入れ替わり僕は2歩ほど後ろに下がった。
味方のステータスを見ながら一定間隔で杖での治療に専念する。
前線に立つ人数は先ほどより一人多いだけだが、そのうち二人はスコーロウと比べてもより高い戦闘能力を有しているように見える。
先ほどみたいに前線を突破される事無く、確実に敵の数を減らしていく。
接敵から10分後。最後の一体が司教の手によって切り倒された。
「お疲れさまでした、大丈夫ですか?」
「こっちに来たという事は首は取ったのだな?」
「はい。司教のご尽力が無ければ上手く行かなかったことは間違いありません。ありがとうございます」
「俺たちもいるんだけどな」
司教の後ろでおもむろに声がする。ソウザとマッカラン?!
「お二人もいたのですか、大丈夫ですか?」
「まあ、なんとか、な」
そう答えて立ち上がったマッカランは右腕を失っている。出血は見当たらないので治療は行われたようだが。
「なに、名誉の負傷で命に別状はない。本国に帰れば無くなった腕も治してもらえるだろうよ」
司教の説明によると、ソウザとマッカランは引きつれた騎兵に帰還命令を出したのち、司教の後を追って抜け駆けしたそうだ。
司教の周りに集まり始めたスコーロウに馬上突撃してそのまま合流。最中でマッカランは右腕を失ったが、彼が杖による回復役に徹したのが功を奏して乗り切れたという話である。
「結果的には二人がいなかったら、私でも持ちこたえられたかわからん。まあ、命令違反は命令違反だからな」
「皆さん動けるようでしたら戻りましょう。まだ一仕事残っています」
確認してラストチャンスに向かい歩きはじめる。
「司教、あの竜騎兵の槍はどうされました?」
僕はちょっと気になって聞いてみる。
「ここの少し前に地面に突き刺しておいたから、盗まれておらねば、そこにあるだろう」
司教の言ったとおりに道の真ん中にランスが突き立てられている。
「お疲れのところ恐縮ですが、もう一仕事お願いします」
僕は司教にそう言ってランスを抜いてもらう。その先端に、エルダースコーロウの首級を刺して、掲げていただく。
こうして僕たちはラストチャンスに向かった。
先頭に3人のパラディン。戦闘を行くパラディンの手には、常識外れに大きな槍と、その先にはエルダースコーロウの首級。
さすがに皆疲れていたのだろう、言葉は少なかったが、胸を張り、堂々と行進する。
ジャングルの中から多くはないだろうがドロウの部族の人たちも見ているはずだ。
夜明けが近づく暗闇のジャングルで、僕らの行進はしばし続いた。




