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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第一章 嵐の港町 ~ストームポート~
27/90

25:捕虜 ≪プリズナー≫

25/02/19 誤字脱字の訂正、表現の一部見直しを行いました。

25/04/02 コマリの氏族名に誤りがあり訂正


「少し話を聞かせてもらっても良いでしょうか」


 少し離れた位置から声をかけ、ゆっくりとした足取りで近づく。

 最初にドロウと目が合う。少し印象的なすみれ色の瞳が僕に向けられている。仄かに温かみを感じる色だ。そして屈しないという強い意志と、エルフに対する嫌悪、そしてわずかに不安と恐怖。複雑な視線であることを感じる。

 一方レーヴァのほうはこちらを見る様子もない。彼らは基本的に表情を持たない。まずは彼から話をするべきだ。

 ドロウに視線を送りながら宮廷風の一礼をすると、レーヴァの檻に一歩近づいて話しかける。


「君は黒鷹(ブラックイーグル)公旗下、第3中隊の突撃隊にいたんだね。僕も第3中隊にいたことがある。ラウレンダ防衛線を知っているかい?」


 顔を上げて真っすぐにこちらを見据える。トパーズのような黄色い瞳…二つの彼の目が僕を正面に捉えていた。あからさまな反応である。

 不思議なことに表情のないはずの彼が驚きの表情を見せているかのように見える。


「あなたは、そこで戦ったのか」


 彼の口から低い金属質の響きを含んだ声が聞こえてくる。少し不明瞭な発音にも感じるが、十分に聞き取ることができる。


「ええ、ラウレンダ砦の戦いは悲惨極まると言っても過言ではなかった。私は運よく生き延びました。

 彼らの、屈強で勇猛果敢な突撃隊の献身が無ければ、この場にいないでしょう」


 正直に言えば話の前半は真実。後半は少しお世辞混じりだ。僕個人の見解としては突撃隊が僕たちの窮地を救ったという認識は無いが、彼らがそこで戦っていたことは知っている。彼らが勇猛果敢に戦ったのも事実だろう。

 だが今の言葉で彼の表情が複雑に動いたように見える。僕の気のせいかもしれないが。


「そうか、かつての戦友なのか。戦友と言う言葉を使うのは初めてだ。戦争が終わってから戦友と再会するのも初めてだ」


「私もですよ、奇遇ですね。私はアレンと申します。あなたの名前を伺っても?」


「私はレーヴァマークイレブン、NDR114。」


「NDR114。もしよろしければ、あなたがこれまでどうやって来たのかを話していただけませんか?」


 僕のお願いに彼は素直に応じてくれた。彼にとって馴染みのない戦友という言葉が、少し距離を近づけてくれたのかもしれない。

 彼の話はかなり長くなったが、エルフの乾杯の挨拶よりははるかにマシだ。

 なので彼の話を要約すると次のようになる。

 戦後、彼は自分の中の人間性(ヒューマニティ)を求めて、人間(ヒューマン)の社会に暮らしていた。戦うこと以外の価値と意義を求めて。

 その結果、彼は人間性を理解するには至らなかったが、少なくとも人造人間(レーヴァ)という種族のある種のアイデンティティを得るに至ったようだ。

 その後自らが何者か、という問いの答えを求めて、南の大陸(サウザンランド)に渡り、ストームポートで暮らすのではなく、未開の地を放浪することになった。

 宛てなき旅の途中に、ドロウの集落に行きついた。放浪で傷を負っていた彼はそこで癒され、彼らと生活するようになっていた。

 そこで最も親しかったのが、今隣にとらわれているドロウ、コマリであったらしい。

 コマリの氏族は比較的穏健であったらしい。そんなときに近隣の氏族を束ねる長から生贄の通達が来たそうだ。

 コマリは生贄として蠍神(スコルピウス)に捧げられることになった。

 集落から蠍神(スコルピウス)の神官たちによって移送される途中に彼はこれを襲撃し、コマリを救出。

 その後ジャングルを追手の手を逃れながら生活していて、この地域に迷い込み、聖炎と接触。彼らは逃走しようとして戦闘となった。


 彼が嘘を言うべき理由が見つからないので大筋で正しいと思う。だが客観的に真実であることの証明にはならない。

 少しでも補強できる情報が欲しかった。

 僕は彼にありがとうと言って、コマリと言う名のドロウに向きを変える。

 真正面に淡い紫色の瞳。肌の色は漆黒に近いがわずかに赤みを帯びている。手入れをされていたであろう長く白い髪。僕たちと変わらない耳の形。

 肩回りは華奢で、全体的に細いイメージ。僕より頭一つくらい背が低く少女と呼ぶのが適切な感じだ。

 座り姿は凛として、動じる様子は微塵もない。誇り高きものの振る舞いに見える。

 僕は共通語ではなく、エルフ語で話しかける。


「エルフの言葉で話すことをお許しください。

 私はアレン・アンドレア・アドニウス・アレン・アンドリュース・ディープフロストと申し、月の女神に(まつろ)います旅の者にございます。

 若き妖精族(アールヴ)の兄妹よ、麗しき御名をば風の囁きとして我が耳に接する栄誉をお与えくだされば、至上の喜びにございます」


 これでもエルフの挨拶としてはかなり短い。ポイントは周囲の人間とは違い、自分が縁者であることをひそかにアピールする点。

 アールヴと言うのは古いエルフの祖先の呼び方だったりする。普通のエルフは自らをアールヴとは言わないし多分だけどドロウも言わないと思う。

 まあ、アールヴと言う表現をするとドワーフも含んじゃったりするけど。

 兄妹と呼んだのもその為だ。言い回し的に正しいのは乙女、あたりだろう。だが敢えて兄妹と呼びかけた。

 一呼吸おいてコマリが答える。


「ディープフロスト氏族の月の使徒にして精霊族(アールヴ)の姉妹よ。

 我が名はコマリである。大地の守護者にして大いなる恵みをもたらす、偉大なる蠍神(スコルピウス)の巫女である」


 エルフ語で帰ってきた。ただ、まだ終止の形になっていないので、言葉が続くはずだが、そう思い少し待っていると…


「エルフ語は酷く不快?面倒!」


 と恐らくはドロウ語だろう。で言ってきた。たぶん意味は合っていると思う。

 その一言を受けて共通語で話す。


「私もエルフ語は嫌いですよ。確かに面倒臭いですよね。コマリさんは共通語は話せますか?」


「共通語、話せる、少し。」


 片言だな。意味はちゃんと通じるみたいだけど。


「でしたら簡単な自己紹介をドロウ語でお願いしていいですか?」


 僕のお願いを彼女は聞いてくれた。いい感じで会話の主導権を握れた気がする。


「私はドュルーワルカの一族、ラッシャキンの娘でコマリ。もうすぐ40になる乙女。蠍神(スコルピウス)の妻」


 要約するとこんな感じ。正確には拾えないが、概ね、の意味では間違っていないと思う。

 これは余談であるが、エルフで40歳と言うと外見的にはかなり大人に近い体つきになっていてはいるが、認識としては半人前以下だ。100歳を過ぎたぐらいで成人として認められることが多い。

 ドロウの生存環境が厳しいのは間違いないだろうから、エルフ程の寿命は恐らくないだろう。そこを差し引いても、たぶん未成年は間違いない。

 乙女と言う翻訳はしてみたが、ニュアンスは未通女(おぼこ)が一番近いだろう。

 彼女はエルフ語はある程度理解できるようだが、しゃべることは共通語と同じで片言。たぶんドロウ語で話してもらってそれを僕が拾う方が正確に事情を確認できると思う。理解できなかった部分は共通語とエルフ語で補う。何とかなりそうだ。


「僕はドロウの言葉を話せない、僕はエルフの言葉で話す。コマリはドロウの言葉で話す。僕は言葉解る。分からないは、共通語とエルフ語で補う。いい?」


 エルフ語を崩して話しかけてみる。こちらの意図はかなり正確に伝わった、気がする。彼女は首を縦に振って了承の意を表した。

 少し余計に時間がかかるが、かなり正確に彼女の口から事情は分かった。概ねNDR114の話した内容と合致する。

 ただし、一点、合致しないというか、個人の意見が合わない部分がある。


 NDR114は彼女を生贄にはしたくなかったから、彼女を奪った。彼は彼女に生きて欲しいと願ったんだ。

 コマリは誇りをもって蠍神(スコルピウス)の妻になることを受け入れた。

 そして妻になるという事の意味も理解している。だから今この場にいる事が不本意なのだ。


 正直、どうしたものかと悩んだ。

 二人の意思は分かった。そして相反している。

 とりあえず。

 これは罪に問われる可能性もあるが…神のシンボルを宙に描く。


「わが神、月の神(デミムア)よ、勇敢なる戦士に対し、その御力をもって恩賞をお与えください。重症治療(キュアシリアス)


 続けてもう一つ。


月の神(デミムア)よ、願わくば誇り高き異教の娘に、ご慈悲をお与えください。中度の治療(キュアモデレート)


 聞いていた通りリーヴァの傷の直りは通常の呪文の効果より悪いが、それでもあちこちに見えていた傷はたちどころに塞がった。

 コマリも小さな擦り傷など何か所かあったし、見えないところにも怪我があるかもしれないので、残っている最上位の治療を施した。

 僕はそのままの姿勢で、神に感謝を告げる。


「私の友人にお力添えを頂き、感謝申し上げます」


 自分でもいささか芝居掛かっていると思うが、これは本心でもある。

 あざといと思う。小賢しいとも思う。

 それでも、何か変えられる可能性があるならば、僕は諦めたくない。そのためには可能なことは全部やりたい。

 それが途轍もなく大きなエゴである自覚はある。

 それでも僕は僕の思いを貫きたい。

 だから…


「神様、僕が道を踏み外しそうなときはお叱り下さい」


 誰にも聞こえない声で祈った。


 傷を治してからNDR114に向き直り話をする。


「少しだけ難しい話をしたいんだ。たぶんだけど君にとって気持ちのいい話ではないと思う」


「なんなりと」


 僕の言葉にNDR114は短く答える。

 僕は少し強い調子で彼に言う。


「君はコマリをどうしたいんだい?彼女は蠍神(スコルピウス)の生贄になる事を受け入れている。

 彼女は命を懸けてその誇りを守って死のうとしているんだ。

 もう一度聞くよ、君はどうしたいんだ?」


「私は…」


 NDR114は言葉に詰まった。僕は黙って彼の答えを待つ。

 少し重い沈黙が続いた。

 5分までは経っていないと思うが、十分に長く感じられた沈黙が、彼の口によって破られる。


「私は、コマリに生きてほしい。ドロウとして生まれたのだから、最後までドロウとして生きてほしい」


「それは常識的に考えて?誰かに命じられたから?コマリにとってそれが一番良いと思うから?君がそうしたいから?」


 矢継ぎ早に、彼を問いただす。


「この状況に適用する常識など、私は知らない。

 誰かに命じられた訳ではない。

 コマリにとって最善なのかは、分からない。

 私がそうしたいから。そう、私がどう望むからだ」


 彼は結論を述べた。

 僕は口調を和らげて、彼に言葉を返す。


「少し意地悪な質問だったと思う。ごめんよ。

 でも君は自分の意思をはっきりと示した。それが君の希望で我儘であると認めたうえでね。

 それをひとはエゴとも言うんだよ。

 そしてエゴって人の持つ性とか、業と言ったものなんだよ。

 君は紛れもなく人だ。自分の意思で望むように生きる権利を有する、自由な人なんだよ。

 だけど、他人にそれを押し付けることは間違っている。仮に自分の意見がどんなに正しいとしても、だ」


「それは心得ている、つもりだ」


「そう、まずは君の意思が確認できてよかった。そして君が人であることを僕に証明してくれてよかった。

 ひどい事を言うようだけど、正直に言えば僕は君たちが人なのか、そうではないのかを決めかねてる部分があってさ」


「そういう反応は慣れている。気にしないで欲しい」


「そう言ってくれると助かるよ、戦友」


 彼の言葉で僕の心の霧がゆっくりと晴れていくのを感じた。でもまだだ。

 次はコマリの意思を確認しないと。

 コマリに向かって言う。敢えて共通語で。


「次はコマリの番だ。コマリは主大陸(ヴェリタス)はどういう所だか知ってる?」


「エルフや人間たちが住む土地だ」


 彼女はドロウ語で返してくる。それで構わない。


「そうだね、そこにどんな世界が広がっているか想像できるかな。

 空を飛空艇(フライングシップ)が行き交い、大きな街と街を鉄道が結ぶ。

 こことは全く違う世界だ。

 コマリはドラゴンたちと会ったことはある?」


「ドラゴンは去ったと聞いている。巨人族と同様に過去のものだ」


「ドラゴンはいまだこの世界にいるんだよ。彼らの島に閉じこもって隠遁生活を送っているらしいけど。

 でも、ヴェリタスにも龍の寝床ってあってね。そこを目指す冒険者たちは沢山いたりするけど、誰も帰ってこないんだ。なんでだろうね?」


 僕は続ける。


「世界には、コマリも僕もまだ見たことが無いものがたくさんあるんだよ、そんな世界を自分の目で見てみたいとは思わない?正直に聞かせて」


 彼女は少し考えると小さくぽつりと呟く。


「そうだよね。僕も見てみたい。だから旅を続けてるんだ。その旅先で素敵な人たちと出会う事もある。

 僕は今、冒険者のグループに入っているんだけど、彼らはとても素敵な人たちだ。つい最近知り合ったばかりだけどさ。

 彼等は僕を信頼してくれていて、僕は彼等を信頼している。僕は彼らの為に命を懸けられる。そう、君が部族の為に命を懸けられるようにね」


 彼女は黙ったままだ。

 構わず続ける。


蠍神(スコルピウス)がどんな神か、多分だけど僕も知っている。そしてそれが君たちにとって敬い従うべき神だという事もわかってる。

 かの神は君たちを時に守り、時に救ってきたんだろうと思う。

 でも一つ言えることがある。かの神は無慈悲で、必要とあれば君たちを簡単に切り捨てる」


「…!」


 わずかに怒気を含む視線が僕に向けられる。信仰する神を侮辱したものに対して当然の行いだ。

 でも怯むことは無い。僕は続ける。


「僕の信じる神はとても優しいから、好きなようにやってみなさいと仰ってくださる。

 僕がお願いしたら、どの神を信じているものであっても、癒してくださる。

 僕が特別だと言っているんじゃなくてさ。神様がとてもお優しいから、僕の行いを信じてくださっているからなんだよ。

 ここにいる、君たちと戦うことになったパラディン達。彼らですら君たちを敵だとは思っていないんだ。出来れば助けたいとさえ思っている。

 でもそれが彼等にはできない。なぜだかわかるかい?

 彼らはドロウとは友達になれるかもって思ってるけど、蠍神(スコルピウス)とは決して相容れないんだ。だから君たちと戦うしかないんだよ」


 一息入れ、そして続ける。


「NDR114、レーヴァの彼は、彼の意思で、君に生きて生を全うしてほしいと願っている。自分のエゴと自覚したうえでそう語った。

 僕も、君に生きてほしいと思っている。君がそう望むのであれば。

 さて、ここで君に尋ねたいんだ。コマリ。

 君はどうしたい?それでも生贄になりたい?それとも生きたい?」


 沈黙が再び辺りを支配する。

 長い沈黙。

 どれくらい時間が過ぎたろうか、小さなな消えてしまいそうな声が聞こえてきた。


「…生きたい。この先も私のままで時を刻みたい。だけど、一族がひどい目に合う。私はどうしたらいいの?わからないよ!!」


 まだあどけなさの残る声が震えながら響く。

 僕は自分でもひどい奴だと思う。

 でも僕が折れちゃいけない。だから言葉を続けた。可能な限り優しく響くように。


「ごめんね。つらい事を言わせた。ひどい事を言っている。その自覚が僕にはあるから、僕を憎んでもいい。

 でも君の意思はちゃんと確認できた。君は生きたいと思っている。だけどそれは叶わないと思っている」


 彼女は泣いている。周囲には悟られまいとこらえながら。でも僕の声は届いている。だから続ける。


「今の段階では何の約束もできない。でも、悪いようにはしないつもりだ。君にとっても君の部族にとっても。

 だから二つ、お願いしたいんだけど聞いてくれるかな。

 一つ目は諦めない事。仕方ないとか、どうせ無駄だ、とか思わないこと。

 二つ目は暫く君の身柄を僕に預けてほしい。

 君がこの願いを聞き入れてくれるなら、僕は全力をもってこの事態に最善を尽くすことを誓います。

 僕の一族を背負う名前に懸けて。天空にてご覧になっておられる月の女神の名に懸けて」


「…一つ聞いても良いか」


 僕の言葉にコマリが口を開く。「何でも聞いて」と笑顔で言うと、


「なぜ貴方はそうまでして、私を助けようとするの?私はドロウなのに、なぜ?」


 彼女の問いはもっともだろうと思う。エルフとドロウは双方とも親の仇レベルでいがみ合っているし、個人的に彼女の事を知っているわけでもない。

 僕の答えは明確だ。少しだけ間をおいてから、


「僕がそうしたいから、と言うのが全てです。僕はとても我儘なんですよ」


 と笑いながら答える。


「え?」


 まあ、突っ込みどころだよね、と自分で思う。真っ当な理由には聞こえないだろうし。

 彼女は神の導きとか、もう少しこう英雄の言うような事を期待していたのではないだろうか。

 ぶっちゃけこれは分別のある人のする事ではないという自覚はある。


「そうですね、まだいくつか理由がありますよ。

 一つはコマリがドロウだから。話して思ったんだけど、別にエルフとドロウがいがみ合う理由なんて大したことじゃないよねって思えたから。

 過去に対立した歴史があるし、多くの人が死んだことも聞いている。だけど、もうずいぶん昔の話だよね。僕たちが直接憎しみ合う理由にはならないんじゃないかと思うんだ。それで僕たちが種族の垣根を超えられるって示せたら、素敵な事じゃない?

 もう一つはコマリが飛び切りの美人だからね。助けないわけにはいかないよ」


 そう言うと彼女は少し微笑みながらこう言った。


「月の使徒たる者との契約は今ここに成立した」


 孤高の光が辺りを照らしている。

 心なしか月が笑ってる気がした。

 明日は朝から頑張らないと。


「明日また来るから、ちゃんと休んでね」


 そう言い残して立ち去ろうとして一つ気が付いた。


「NDR114。君も僕に身柄を預けてくれるかな?」


「異論はない」


 彼の答えは短かった。

 表情のないはずの彼が、心なしか拗ねているように見えるのは気のせいだろうか。


 うん、きっと気のせいだ。


 僕は天幕に戻ってしばしの休息を取ることにした。


 思いのほか、観客の受けもよかったみたいだし。

 僕たちの会話を他にも聞いていた人がいる事は承知している。


 なんか、神に対する離反をそそのかす悪魔みたいだな、そんなことも思うが、邪神に嫌がられることをするのなら、それはきっと良い事なんだ。

 僕は足早に天幕に向かった。

 ジャングルの空のに浮かぶ月は、優しく微笑んでくれているように思えた。





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