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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第一章 嵐の港町 ~ストームポート~
26/90

24:セーブポイント ≪エンカウンター≫

25/02/19 誤字脱字の訂正、表現の一部見直しを行いました。



 セーブポイントは直径100メートルちょっとの円形の陣地、という感じだ、

 周囲は頑丈な木柵で囲まれ、東西南北に監視塔、南北に人が出入りできるゲートがある。

 僕たちは北側、表門と呼ばれるゲートから中に入った。

 木柵の外は50メートルくらいは切り開かれていて、見通しが確保されている。その先は鬱蒼としたジャングルが広がっている。

 ここにいる者のほとんどが聖炎(ホーリーフレイム)の関係者だ。

 ざっくりした見積もりでは聖戦士(パラディン)が15、聖戦士見習い(スクワイア)が同数ほど、聖職者(クレリック)10~15、その他聖炎信者と思われる労働者が30~50人。総勢で100人くらいはいるのではないだろうか。

 単純な数という意味では砦と呼ぶには些か心もとない。が、パラディンだけで15人がいてサポートするクレリックが同数程度、さらには見習いとはいえここにいる連中は完全武装しているので、普通の兵士と同等以上には働くだろう。

 戦力として評価すれば確かに小砦と呼ぶにふさわしい。


 到着が日暮れ間近という事もあり、荷下ろしは明日行われるようだ。 

 キャラバン一行にはいくつかの宿舎があてがわれた。

 と言っても木製の柱に布を張った、どちらかと言えば天幕のようなもので、休むこととなった。


「まさか二日半で到着するとは、思ってもみなかった」


 レイアが笑顔交じりに火の番をしながら言う。

 僕は芋などの根菜の皮をむきながら彼らの話に耳を傾ける。


「かつて飛空艇を使って輸送を行ったことがあるらしいじゃん?そん時はやっぱ5日かかったって聞いてるけど、ホント?」


「そうじゃな、記録に残っとるから事実じゃろう。魔法的手段を用いておおよその距離は算定されておる。

 ラストチャンスからファーストポイントまではおよそ150Kmとされておる。魔法を使っておおよそ、とは馬鹿げた話じゃがな」


「なるほど、それで見積は5日。≪呪い≫の影響を考慮して、7日程度で見積もるんですね」


 僕は皮をむいた根菜類を鍋に放り込む。そこに干し肉を手で裂いて放り込む。


「俺が知る限りじゃ二日半ってのは最短記録だよ」


「まあ、良いんじゃない?短くて済むならリスクも少ないわけだしさ」


 塩と香辛料、香りづけに使う木の葉を入れて、蓋を乗せる。


「15分くらいで食べられますからね、もう少し待ってください」


 そんな感じで和やかな雰囲気だ。ここは一応の安全地帯。僕たちが見張って警戒しなくても、周囲は十分に警戒されている。

 最前線に位置する砦の防衛は、そこにいるだけでかなりすり減る。これは僕も身をもって経験しているからよくわかる。

 ここは開設されて一年ほどと聞いている。定期的に人員は後退させるのだろうが、高い士気を保ち続けているのは…聖炎の規律のなせる業だろうか。

 そんな事を思っているうちに鍋の蓋の隙間から、湯気が昇り始める。ほのかに甘い根菜と肉の匂いが漂い始める。

 どれ、味見を……と思ったとき、南ゲート付近で何か騒ぎが起こったようだ。


「行こう」


 レイアの短い言葉に僕たちは、反射的に武器を手に取って駆けだした。


 南ゲート付近はちょっとした混乱状態であった。何人か負傷者がいる。

 僕たちは比較的場所が近かったため、かなり早くに駆け付けられたようだ。


「重傷者がいる、そこのクレリック、すまんが手を貸してくれ」


 近くにいた聖戦士が僕に声をかけてきた。


「どの方ですか」


 僕は駆け寄り負傷したパラディン…彼はスクワイアだ。近くにいたパラディンが治療を施したが、回復しきれていないようだ。

 状態をみて命に別状は無いことを確認すると、重症の回復の奇跡を行使する。

 意識は戻っていないが、外傷は完治している。心配はないはずだ。


「もう大丈夫です。他の方を」


 そう言って周囲を見ると少し遅れて駆けつけてきた聖職者たちが治療に当たっている。問題は無さそうだ。


「何があったんですか?」


 僕の問いかけにそのパラディンが答えた。


「詳細は分からないが、哨戒部隊が何かと遭遇戦になったようだ」


 状況は落ち着いてきていた。これなら部外者である僕たちが出張る必要もない。

 問題なさそうなので戻りましょうか、とレイアたちに告げる。

 と、そこにきつく縄で縛られ、槍を突きつけられた状態で連れていかれる人影が目に入った。

 気がつけば、僕は思わず口に出していた。


人造人間(レーヴァ)穢れたエルフ(ドロウ)…」


 そしてレーヴァの方に小さな見覚えのある紋章が見えた。

 距離があるので断定はできないが、僕は確かめる必要があると感じた。

 二人の虜囚は少し奥にある簡易の監獄…檻に入れられたようだ。

 先ほどのパラディンに尋ねる。


「あれは?」


「詳しい事は分からんが、遭遇した敵の捕虜だろう」


「敵ですか…」


 僕は色々と考えてみたが、どうするべきかの結論に至れない。なので、この場は一度戻ることにした。




 焦げ付く前に鍋に戻り、具沢山のスープとパンを齧る。

 レイアが食事をとりながら聞いてきた。


「何があったんだって?」


「まだ詳しい事は分かっていないそうですが、哨戒の部隊が遭遇戦になったらしい、という事です」


「レーヴァとドロウが捕虜なのか?」


「そのようですね」


「なーんかアレンちゃん、気になることがあるの?ちょっとセンチな感じだけど?」


「ええ、気になることがあります」


 僕も食事を続けながらロアンに答える。


「今頃は報告が上がっている事でしょうし、状況も少しは分かってきているでしょう」


 そう答え、立ち上がり


「少し情報を仕入れてきますね。皆さんは先に休んでください」


 そう言って歩きはじめる。


「無理はいかんぞ」


 Gさんが僕の後ろ姿に声をかけてくれた。なので僕は振り返って笑顔で答える。


「はい、心得ています」


 さて、と。

 周囲を見渡し、檻の近くにパラディンたちの集団を見つけるとそこに向かった。


「こんばんは、聖騎士の皆さま」


 僕はにこやかにそう言って近づく。


「先ほどご尽力いただいたクレリック殿か、どうかされたのか?」


「実は私は南の大陸(サウザンランド)に着いたばかりで、ほとんど何も知りません。このあたりの事をお話しいただけると嬉しいのですが」


「ああ、構わんよ、こっちに来て座ると良い」


「ありがとうございます」


 そうして彼らの輪に加わり、世間話から始めた。方々を旅して来た事や、そこでの出来事を語り、彼らから日々の生活とか、この辺に住む魔獣の類の話を聞いたりする。その中で僕の口にした地名が彼らの中の一人の出身地であった事もあり、徐々に警戒心が下がってくるのがわかる。

 発言のなかに「エルフの聖職者とは珍しい」とか「エルフはもっとお高く留まっていると思っていたとか」、会話の中に遠慮のない言葉が混じり始めていたからだ。

 頃合いを見て、まずドロウの話題を振った。


「この辺は穢れたエルフ(ドロウ)は多いのですか?」


「連中の事が気になるのか?同族だから?」


「気になるのは確かですが、連中を同族とは思っていません。同族と認めれば我々の手で滅ぼさねばなりませんし、それは面倒でもありますから」


 少し強い口調で切り捨てた言い方をして見せる。

 穢れたエルフ(ドロウ)は、遥か昔にエルフと袂を分かった一族である。彼らは独自の宗教観を持ち、他のエルフと相いれなくなってしまった。4万年以上昔の話である。

 当時は激しい戦になり、最後にはドロウたちは南の大陸に逃げ延びることになったそうだ。そしてそれから古代巨人族エンシェントジャイアントの奴隷として生きていくことになったと聞いている。

 一般的にエルフはドロウの事も口にしない。それは良くても一族の恥、普通はエルフにとっての害悪。そういう見方が定着しており、ある種の忌言葉であるからだ。

 もっとも、近年でエルフがドロウと接触することはまずない。ドロウは南の大陸にしかいないし、エルフでここに来るのは冒険者くらいのものだからだ。


「そうなんだろうけど、まあ、必ずしも悪い奴って訳じゃないかもしれないぞ」


 意外な反応だった。

 ドロウは異形の邪神の類を崇拝していると聞く、その一点においてだけでも聖炎の連中とは相いれないはず。

 彼らは狡猾なハンターである意味、エルフ以上にエルフらしい、閉鎖的だとも聞く。交戦は一度や二度ではないだろうし、被害も出ているはずだ。


「確かに奴らは手強いし邪教徒でもある。立場的には擁護は出来ん。だが、個人となると話は別だ。話の出来る平和的な奴らもいるし、彼らに助けられたものも少なからずいるんだ。共存の道もあり得ると思うんだよ」


「だが、言い方を替えれば、結局のところ俺たちは奴らを討たねばならないって事でもあるけどな」


 パラディンたちが口々に言う。

 正義の名のもとに邪神の信徒は滅ぼさねばならない、その点は間違いないが、一方で人としてドロウを認めてもいるのだ。

 僕の聖炎の連中に対して、大きな先入観を持っていたことを認めざるを得ない。

 彼らの名を一躍有名にした≪狂獣化病(ライカンスロープ)≫撲滅、それは過酷を極めたと聞いている。苛烈なまでの正義の行いは、僕の目には狂気の沙汰とも映るが、一方で現場は必ずしもそうではなかったのではないだろうか。

 少なくとも、ここにいる彼らは苛烈な原理主義の正義の使徒ではなく、善良で苦悩を抱えながらも、人の命と向き合えるパラディンなのだと感じた。


「そうなんですね、ありがとうございました。ついでにお聞きしたいのですが、レーヴァは南の大陸(サウザンランド)に多いのですか?」


 ケイニス・テクニカの説明で少し触れたが、レーヴァとは人造人間で自立した意思を持っている。先の大戦の終結時に、人として認められた。

 人として認められたのは良い事だと思うが、少なからず彼らが混乱に陥ったのも事実だ。

 基本的に彼らは主に仕え、戦うために生まれてきた存在だ。それがある日突然、君たちは人だから自由に生きると良い。そんな事を言われたらどうなるだろう。

 聞くところによれば、彼らを所有物として主張し、法の隙をつく形で、終身奴隷として権力者たちに抑えられたのが全体の1/3。

 他にかなりの数がレイブンズギルドに傭兵として雇い入れられた。あとは自らの生き方を模索し社会に溶け込もうとしたと聞く。その過程で南の大陸(サウザンランド)に渡ったレーヴァも少なくないと聞いている。ちなみに終戦時にどれくらいの数のレーヴァがいたのかは正確には分かっていない。


「ストームポートの守備隊にレーヴァだけで構成された部隊がいるって聞いたことあるよな?」


「ああ、鋼の監視団(アイアンウォッチ)だな。見たことは無いが、いるのは事実だそうだ」


「その割に街中では見かけないよな」


「冒険者として活動しているレーヴァもいるらしいが、俺は見たことがない」


「放浪者のレーヴァもいるらしいから、あいつはその類じゃないか?」


 口々に教えてくれる。僕にとっては貴重な情報だ。

 頃合いを見計らって、本題を切り出した。


「後程彼らと少し話をしてもかまいませんか?」


「なんでまた?」


 このパラティンの疑問はもっともだ。だから僕は答えた。


「実は私は、こう見えて従軍の経験があるんです。で、彼はその時の戦友じゃないかと思われますので、確認したいのです」


「そういう事情か。気持ちはわからんではないが…」


「まあ、話をするくらいなら問題ないんじゃないか?」


「明日裁判になるだろうし、そのあとは分からんからな」


 口々にそう言って、総意として話をする許可はもらえたと思う。

 一人のパラディンが釘をさすのを忘れなかった。


「くれぐれも、妙な気は起こさないでくれよ。幸い死者はいないが被害者は出ている」


「はい。心得ております。皆さんの意向に反したり、不利益になることはしません」


 僕は再び話題を変えた。

 場を和ますのに、一曲披露し、しばらく雑談を続けた後、礼を述べてその場を離れた。


 直接檻に向かわず、一度天幕に戻って静かに装備を外して着替えた。

 武装して彼らの元に向かうのは、パラディンと虜囚の双方に心証が良くないだろうと判断したからだ。

 ローブに着替え、ベルトとダガーのみ。首からは聖印を下げて、再び移動。

 先ほどのパラディンたちに会釈して檻を指さすと、彼らは意図を察して頷いてくれた。



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