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God Bless You !!  作者: 灰色狼
第一章 嵐の港町 ~ストームポート~
23/90

21:出航 ≪デパーチャー≫

25/02/18 誤字脱字の訂正、一部表現の変更を行いました。



 前日のショッピングの影響で僕は少し良い気分だった。

 勿論、僕の財産で買えるものはなかなかないが、通常だと高級店のショーウインドに飾られるような高級品をマジかに見ることができたり、手に取ってみることもできたりと、購買意欲をそそられる。

 そんな中で僕でも買える、そしてずっと欲しかった物を買ってしまった。


 一つ目がこれ、じゃじゃーん。

 貯蔵袋(ホールディングバッグ)

 袋の内部が閉鎖された異空間になっていて、見た目を遥かに超える量を入れることが出来、重さは変わらないという、長期の旅をする人の必需品だ。

 今回僕が手に入れたのは一般的な袋型ではなく、なめし皮で補強された背負い袋型の逸品だ。担いで両手が開くし、型崩れしないので背負っていても動きやすい。売っていた商人のおじさんに言わせると、見た目は良いが、口が少し小さいんで使いにくいよ。普通より高いし、袋型の方がおすすめだけどね。

 と言われはしたが…少し高くても、大きなものが入らなくても、このデザインが気に入ったんだ。袋を担ぐよりはスマートだし、常に両手を使えるから戦闘中にいちいち地面に落とさなくても良いし。袋に比べて丈夫そうだし。

 これがあれば必要に応じて状況に対応するために多くの物を持ち運べる。

 僕は能力には自信がある。聖職者としても吟遊詩人としてやっていくにしても。

 でも、冒険者としては致命的に近い弱点があって、一言で言うと虚弱体質。筋力は一般成人としても足りてないくらいだ。

 だから重装鎧なんか着たりしたら、他に荷物を持てなくなるし、それ以前に何かあったらあっという間に行動不能になりかねない。

 大きくて重い武器を振り回すのも苦手だ。

 このバッグは僕の弱点を少し克服してくれる。

 僕にとっては夢のような品物(アイテム)。それが貯蔵袋(ホールディングバッグ)なんだ。


 購入したもう一つの品がこれ、じゃじゃーん。

 薬袋ポーションボトルポーチ

 これは小さめのベルトポーチなのだが、ホールディングバックに似た機能を持つアイテムで、いや、そこでまた袋物?って言わないで。

 これは容量が品物の個数、と決まっている。

 中にはスロット、と言われる区画が存在してそこに一つ、ものを入れることが出来る。うまく表現できないんだけど、スロットよりも大きなものがそこに押し込もうとするとすっと吸い込まれるように収納される。見れば入れたものがミニチュアのように見えて何が入っているか確認できる。

 で、物が入っているスロットに指を入れると入っている物がふっと手の中に戻される。

 表現が難しいし伝わらないかもしれないけど…なんかね、物凄く魔法感があるんだ。

 一般的には(ポーション)用として前衛職に使われることが多い。前衛職はここに回復薬(ヒーリングポーション)を詰め込んで運用するのが一般的だ。

 中のポーション類を外の衝撃から保護できるし、勝手に飛び出すこともない。

 僕の買ったものは5×3の15スロットで、確認したところではワンド類までなら入るらしい。もう少し大きなもの、例えばロングソードとか収納できるものもあるらしいけど、それはめちゃくちゃ値段が高くなる。3列あるので、1列は緊急用のポーション類、2列目はワンド類、3列目は緊急使用するためのスクロール類を入れて使おうと思っている。もちろん、内容物の重さを考慮しなくてもいい点もポイントが高い。


 この買い物でハーバーで手に入れた結構な額はほとんど使うことになったが、後悔は無い。

 だって、どっちも欲しかったものだし、便利なんだもん。

 都会でもちょっとした家、場所によっては豪邸が買える値段だが、冒険者ってそういう生き物なんだよね。


 一つ困ったことがある。

 それは昨日教会から逃げ帰るのに、出発の日を間違えて伝えてしまっている事。まあ、これはあまり大きな問題ではない。

 ただ、レベルの認定を受けるのを忘れてたことだ。計画では昨日教会に行ったときにトレーナーに認定してもらって一応公式レベルを得ておく予定だった訳だ。

 今日になってどうしたものか、と考えはしたが、まあ…仕事を新たに受ける訳でなし、自分の中でのレベルアップは確認しているから、実害はない。

 このメンバーで動き続けるなら、公式なレベルはそれほど問題にならないと思うし…

 そう考えて、困ったことから外すことにした。

 そうすると、今日一日、時間をどう過ごすか悩ましい所だが…

 そんな事を悶々と考えているうちに結構な時間が過ぎた。

 結局のところやることは無いので、今日もマーケットを見て回ることにする。

 冒険に役立つ立たないかは別にして、見てるだけでも楽しいのは間違いない。

 そう思い、今日も散策を楽しんだ。

 どうしても欲しいと思って、誰かに借金をしてでも…と思うものがあったのだが、ま、背伸びは良くないと今回は見送ることにした。

 何がそんなに欲しかったかって?魅力的な魔法のアイテムは星の数ほど存在するしね。今は内緒にしておく。

 錆び釘亭(ラスティネイル)に戻るとカウンターにいたお姉さんに声をかけられる。伝言があるそうだ。

 メモを受け取ると自室に戻る。

 メモの内容は「明日午前9時に1階フロアに集合。出発準備は済ませておくこと。レイア」

 とあった。予定通り出発できるらしい。宿はもう一泊残っているが、出発が遅れる可能性もあったという事だろう。


 翌朝、僕は朝の祈りを済ませ、身支度して荷物をまとめる。

 来るとき持ってきていた荷物は背中の袋に全部入っている。超身軽で、しかも着替えなんかいつでもある。なんてすばらしいんだろうと思いながら下に降りてチェックアウトの手続き。と言っても持っている金属プレートのカギを返却するだけだった。

 テーブルに着くと食事が運ばれてくる。集合時間まではまだかなり余裕があるし、のんびりした朝のひとときを楽しもう。

 食事を摂っていると、レイアさんが姿を現す。


「おはようございます」


 僕から声をかけると彼女は同じテーブルの向かいに座って、僕に向かって開口一番。


「朝からしっかりと食べるのは戦士の基本だ。良い事だ」


 そう言ったと思うと、近くにいた給仕に、パンとスープ、あと軽めに卵料理を、と注文していた。


「戦士は朝からしっかりと食べないとダメですよ?」


 僕の言葉に彼女はにやりとしながら


「俺は船は苦手でね」


 短く一言告げた。

 その言葉に、僕は先の長い航海の初日を思い出し、急に食欲が消えるのを感じた。


「ああ、今日は船で移動でしたね…」


 僕の今朝の優雅な食事はそこで終わりを迎えた。


 程なくロアンさんとガイアさんがテーブルに着いた。ガイアさんは軽め、ロアンさんは普通に食事をしている。


「エルフにしては時間に正確だね」


 ロアンさんが僕に向かって言う、ある種のエルフに対するお約束みたいな言葉だ。

 僕は平然と、人の世暮らしが長いですから。と笑って答えると彼女は少し面白くなさそうだった。

 からかわれたことに対しての反応を期待していたのだろう。みんな気が付いていないかもしれないが、このテーブルにいる4人…つか南の大陸(サウザンランド)も人類に限って言えば、僕より年上の人は数えるほどしかいないはずだ。まあ、レベルは僕が一番下なんだろうけど。

 そう言えばこの人達のレベルってちゃんと聞いたことが無かった気がする。


「今更なんですけど、僕は今非公式ですが聖職者(クレリック)6の吟遊詩人(バード)1なんですけど、皆さんってどれくらいなんですか?」


「えーなんか意外だね、吟遊詩人混じりなんだ。エルフっぽいって言えばエルフっぽいけど。てっきり純クレリックだと思ってた。

 あたしは探索者(シーカー)6、軽戦士(レンジャー)2」


「わしは魔術師(ウィザード)9、レイアは戦士(ファイター)9じゃよ」


 ほぼ想像通りな感じ。まあ、頑張ろう。


「それとさ、そろそろ『さん』つけるの止めないか?お前がその方が良いんなら我慢してやるが、正直俺はそう呼ばれるとケツの落ち着きが悪い」


 ぶっきらぼうにレイアさんが言うと、ロアンさんもそうだそうだーなんて言ってくる。

 少しだけ沈黙が生まれる。僕の言葉を皆が待っているのだ。


「レイア、ロアン、…Gさん、改めて、これからよろしく」


 僕がそう言うと口々によろしく、と言ってくれる。なんでわしだけがさん付けなんじゃ?とGさんが不満げに漏らすので


「だって、見た目的にあんまり軽く呼ぶのが躊躇われたんで。Gさんっていい呼び方だと思いません?」


「爺さんは確かに爺さんだからな」


 レイアがそう言うとロアンも


「お爺ちゃんはお爺ちゃんだよね」


 と口をそろえた。

 実際のところGさんっていくつくらいなんだろう。そんな事を思っているとレイアさんが小声で


「ああ見えて爺さん、30台なんだぜ」


 と小声で僕に伝えてくれた。それを聞いていたGさんは「ばらすな!」と一言だけ言ってテーブルが笑いに包まれる。

 なんか、ちゃんとパーティの一員になれた気がした。


 食事を終えてからはバーゲートをくぐって桟橋に。僕にはまだこちらの景色の方が見慣れている。

 桟橋に着くと出港準備ができた船が一隻。僕が乗ってきた帆船は出航済みのようだった。

 その船は少しずんぐりとしたいかにも輸送船って感じの船で、僕が乗ってきた帆船よりは二回り小さい。

 近くまで行くと船の上から身なりの良い船員、恐らくはこの船の船長だろう、が声をかけてきた。


「荷物の搬入は終わっとる。護衛のパーティーはあと一組」


 良く通るだみ声がいかにも海の男と言う感じ。ちなみに彼はハーフフットのようだ。

 ハーフフットと言うと一番に「あの人」を思い出すのはインパクトがどれだけ強かったかって事だよね。

 ロアンは女性だし少し雰囲気違うから。

 そんな事を僕は思いながらレイアの後に続いて船に乗り込む。


 今日こそは酔いませんように。


 タラップを上りながら僕はちょっとだけ神様に願った。




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